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【イベントレポート】三井不動産式新規事業の育て方 ―MaaSのオープンイノベーション事例と5つの実践ポイント ―

オープンイノベーション

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/1/20回では、社会変革を起こす規模の 新規事業を立ち上げたい/DXを推進したい とお考えの皆様に向けて
三井不動産にてオープンイノベーションでMaaS事業を推進したご経験を持つ川路氏に、オープンイノベーション×MaaSの実践ポイントをご紹介いただきました。
「社会インフラの変革を目指す新規事業が途中で頓挫しうまく推進できていない」
「社内に新規事業創出の仕組みはあるが、実際にリリースできた事業が一つもない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

川路 武氏

川路 武氏

三井不動産株式会社 ビジネスイノベーション推進部 事業グループ グループ長
1998年三井不動産入社。官・民・学が協業するまちづくりプロジェクト「柏の葉スマートシティ」などで、コミュニティ作りや環境マネジメント案件を担当・開発に携わった。その後、ビルディング本部・法人営業統括部にて2017年にワークスタイリングの立ち上げに携わる。現在はビジネスイノベーション推進部にて不動産×テクノロジーの新規事業開発に取り組む。さらに個人として2011年にNPO法人「日本橋フレンド」を立ち上げ、次の100年を見据えた日本橋でのまちづくり活動を行っている。

鈴木 亮裕氏

鈴木 亮裕氏

株式会社サーキュレーション パートナー
NTT東日本、中国での起業、組織人事コンサルティングファームを経て2015年創業期のサーキュレーションに参画。トップコンサルタントとしてIT領域を開拓後に執行役員に就任。その後、組織急拡大期に人事部長として人事制度設計の再構築を主導、インサイドセールスと大企業のオープンイノベーションを推進する機能を持つビジネスデベロップメント部を管掌した後、2022年8月よりエキスパート職として、エンタープライズ企業向けコンサルティングのパートナー職を担う。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2022/01/20時点のものになります。

なぜ日本では大規模な新規事業立ち上げが難しいのか?

「オープンイノベーションごっこ」と揶揄される日本企業の新規事業立ち上げ

現在、日本国内においてデジタルビジネスへの期待値は非常に大きい。この点は海外と遜色ないほど経営者の意識は高まりつつあるものの、実際に企業としてデジタルを推進するための準備は、遅々として進んでいないのが現状だ。

こうした状況を反映するように、新規事業立ち上げは難易度が高く成果が見える事例は少ない。メディアでは、大企業の取り組みを「オープンイノベーションごっこ」と揶揄する風潮もあるほどだ。

オープンイノベーションの課題と阻害要因

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が策定しているオープンイノベーション白書に目を移してみると、大企業の新規事業立ち上げの課題や阻害要因がいくつか挙げられている。

新規事業の立ち上げに際し、外部連携をするのかどうかが曖昧。経営トップのコミットメントが不十分。専門組織は機能していない。
こうした数々の課題がある中で、三井不動産は「オープンイノベーションごっこ」で終わらせない新規事業立ち上げに成功している。今回はその道程と成果について伺った。

【オープンイノベーション事例】三井不動産によるMaaS領域の3事業

ボトムアップで実現する三井不動産の新規事業創出の仕組み

登壇いただいた川路氏は、三井不動産のオープンイノベーションの中心組織であるビジネスイノベーション推進部に所属しており、遡ること4年前から新規事業立ち上げのために奮闘してきた。
ビジネスイノベーション推進部自体も、立ち上げは4年前の2018年だ。不動産業界にも迫るデジタル化の波に企業として危機感を抱いたことがきっかけで、「MAG!C」と呼ばれる事業提案制度も創設された。

ビジネスイノベーション推進部はこの制度を利用して、2018年のスタートから現在までに累計5事業、ことMaaS領域では3事業のリリースに成功した。各事業は今後本格始動していくという。
以下では、その3事業――MIKKE!、HUBHUB、&MOVEについて、簡単にご紹介いただいた。

【MaaS事業領域.1:移動販売プラットフォーム】MIKKE!

川路:MIKKE!はいわゆる移動販売の事業です。なかなか難しい領域なのですが、ポイントは車両を用意することと、どこで売るのかという場所の問題です。我々の得意分野である場所の開拓を行うのと同時に車両もご用意し、デジタルも絡めてどんどん事業を拡張していこうとしています。

【MaaS事業領域.2:移動型宿泊施設】HUBHUB

川路:HUBHUBは宿泊施設ですが、宿泊だけではなくバーベキューやプール、ヨガなどが行えるようなワークスペースもご提供しています。トレーラー形式で簡易的に設置・撤去が行えるわけです。
プロジェクトの第一号としては、日本橋の人形町に宿泊施設を設置しました。今後は同様の施設を景色の良い郊外やエンターテイメント施設の横に設置するなど、街中に余暇空間をどんどん広げていこうとしています。

【MaaS事業領域.3:不動産×MaaS】&MOVE

川路:&MOVEはシンプルにいうと、一つのアプリでさまざまな交通を自由に組み合わせて乗ることができるものです。
なぜこういったアプリを三井不動産が開発するのかというと、どこかに出かけるときの起点と終点、例えば家を出て会社に行く、買い物に行く、といったことはどちらも不動産が関わるからです。「家を出て特定の交通を使って別の不動産に行く」という体験をセットでご提供できたら、不動産の付加価値アップや街づくりの共創につながるのではと考え、さまざまなトライアルをしています。

MaaS事業をリリースまで導いたオープンイノベーション実践の5ポイント

三井不動産では、数々のMaaS事業をどのようにしてリリースにまで導いたのだろうか。今回は大きく5つのポイントに絞って解説していただいた。

[Point.1:共通言語]「四輪駆動モデル」

最初のポイントは社内では共通言語を用いることで、三井不動産の場合は「四輪駆動モデル」という言葉が使用されているという。

川路:「四輪駆動モデル」というのは部内共通で語られているモデルです。四輪駆動の車は後輪と前輪がありますが、前輪を「将来」、後輪を「現在」だとすると、ついつい目の前のお客さんや自社の環境、つまり後輪に話が寄りがちです。

川路:ですが、例えば3年後には現状ある課題は解決されているかもしれない。このように事業の行く先を想像するのが、前輪の議論です。
社内ではよく、「それは前輪の議論なのか、後輪の議論なのか」と問います。こういった形の議論を社内でできるようにしていますね。

鈴木:バックキャストとフォアキャスト両方を考えることで、上手くイメージできるものがあるということですね。

[Point.2:会議体]ビジョンディスカッション

鈴木:実際にはどうしてもバックキャスト・フォアキャストの切り替えが難しい部分があると思いますが、その視点では会議体の作り方がポイントになると伺っています。

川路:「ビジョンディスカッション」という会議体を月1回入れています。普段プロジェクトに入っていないメンバーも参加可能です。

鈴木:スライドの写真が実際のビジョンディスカッションの様子だということですが、どんなポイントがあるのでしょうか。

川路:会議室ではなくソファに座って行うのですが、書類の準備も不要です。「今思っていることを前輪でいうと……」と話しながら、ホワイトボードに書いていきます。

鈴木:事前準備をしてしまうとスコープが小さくなり、現実味が強くなってしまいそうですよね。あえて準備なしで、ラフな場でコミュニケーションをするということですね。

[Point.3:社内広報]WARP PORTAL

3つ目のポイントは社内広報だ。イノベーションの取り組みプロセスを積極的に社内に伝えていくことが大事だという。

川路:イノベーションに携わっている人と既存事業で利益を出して会社を支えている人は、比率でいうと1:9程度です。どうしてもお互いに距離ができてしまうので、イノベーション側のメンバー専門のチームを作り、積極的に広報を仕掛け続けています。

成功事例だけではなく、イノベーションの大変さも織り交ぜて伝えているという。また、部署を問わずイノベーションという大きなくくりで、社内のあらゆる取り組みを巻き取って紹介している点もポイントのようだ。

鈴木:発信をすることで、既存事業とのシナジーも生まれそうです。

川路:人材交流を生む仕掛けにしようとしていますね。

[Point.4:外部活用]WARP SUPPORTERs

三井不動産は新規事業立ち上げに際し、さまざまな場面で外部活用を行っている。その知見を最大限活用するために、過去に活用してきた外部サービスや専門家の情報を社内ポータルの「WARP SUPPORTERs」に掲載しているという。

鈴木:プロシェアリングのほか、スポットコンサルや代理店などは、どのように使い分けているのでしょうか?

川路:常駐、出向のほか時々話を聞かせてほしい、Slackでやり取りできれば十分など、求めるコミュニケーションの頻度で判断することが多いかもしれません。

鈴木:多様な手段を選択肢として持っておきながら、その特徴を理解して使い分けるのがポイントなんですね。

[Point.5:場づくり]WARP STUDIO

最後のポイントが場づくりだ。三井不動産は、イノベーションを行うためのクリエイティブな場所として、「WARP STUDIO」というコワーキングスペースを新たに設けた。

川路:カーペットが敷いてあるので靴を脱いで上がります。ソファや巨大なプロジェクターを設えることで、20~30人でワークショップを行っても全員が同じ体験ができるような場所を作りました。
コワーキングスペースとして人同士の交流が生まれる仕掛けにはしていますが、あくまでビジネスイノベーション推進部の目的は「新規事業を作る」ということです。交流をしすぎて収拾がつかなくならないように、プロジェクトに関わる方だけが使える形にしています。

コロナ禍にあって現時点での利用は若干停滞しているものの、活発なコミュニケーション空間を活用することで、イノベーション推進はかなりスピードアップしたという。

三井不動産式新規事業の育て方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下のようにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。三井不動産式新規事業の育て方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
三井不動産式新規事業の育て方 ―MaaSのオープンイノベーション事例と5つの実践ポイント ―
本ホワイトペーパーは、2022年1月20日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。社会変革を起こす規模の 新規事業を立ち上げたい/DXを推進したい とお考えの皆様に向けて三井不動産の事例をもとにオープンイノベーション×MaaSの実践ポイントをご紹介しております。