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【イベントレポート】元BCGパートナーが語るDX推進 ―100のDXプロジェクトより生み出したDXの組織能力獲得4つのポイント―

業態変革・DX

18,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021/12/15回では、DX推進が急務となり戦略を立てたものの、経営者がデジタルを使いこなせないといった課題に悩まれている企業様に向けて、20年間で100プロジェクト以上のDX推進に携わった坂倉氏に、DX推進の成功/失敗の分かれ目の一つである「DX組織創り」のポイントについてご紹介いただきました。
「DX推進を担当し、戦略はつくったが、実行フェーズで立ち往生している」
「デジタル人材に自社の魅力を感じてもらえず採用できない、採用しても離職してしまう」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

坂倉 亘氏

坂倉 亘氏

One Capital (ベンチャーキャピタル) 共同創業者・取締役COO
2005年にボストン・コンサルティング・グループ (BCG)に参画し2013年に当時最年少でManaging Director &Partnerに就任。約20年間のキャリアを通じて、産業財、消費財、メディア、 通信などの幅広い業界の企業に対して、オープンイノベーション、デジタル・トランスフォーメーション、新ビジネスモデル構築、全社的構造改革、ポートフォリオ再構築、営業改革などのプロジェクトを主導。2020年4月にOne Capital株式会社を創業、取締役COOに就任、翌年独立系VC1号ファンドとして最大の165億円にてファイナルクローズ。エン・ジャパン独立社外取締役。

鈴木 亮裕氏

鈴木 亮裕氏

株式会社サーキュレーション 執行役員 プロシェアリング本部ビジネスデベロップメント部長
NTT東日本などを経て、中国にて起業。同社を後任に託し帰国後、組織人事コンサルティングファームにて大手企業の次世代リーダー育成や、合弁に伴う人事制度統合などのプロジェクトに携わる。2015年創業期のサーキュレーションに参画。トップコンサルタントとしてIT領域を開拓後、組織急拡大期に人事部長として人事制度設計の再構築を主導。現在は執行役員としてインサイドセールスと大企業のオープンイノベーションを推進する機能を持つビジネスデベロップメント部を管掌。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2021/12/15時点のものになります。

日本企業のDX推進は、なぜ実行段階で停滞してしまうのか?

「日本はDX推進において諸外国から遅れている」――そんな情報を目にしたことがある人も多いだろう。例えばスイスの世界的ビジネススクールIMDの調査によれば、デジタル競争力ランキングの1位が米国、2位がシンガポール、3位はスウェーデンだった。日本はといえば23位で、遅れがあることは事実としても明らかだ。
その具体的要因はさまざまだが、特に実行段階でDX推進が停滞してしまう理由を紐解くと、以下の3つが考えられる。

DX推進に適した手法や体制を取れず、人材もいない。こういった現状は、多くの企業に当てはまるだろう。

大手2社の事例で学ぶ、DX推進組織創りの成功・失敗の分かれ目とは

体制作りと人材の確保が必要だと言ってしまえばそれまでだが、実際のDX推進にはそのほかにもさまざまな要素が絡む。一体何がDX推進組織創りの成否を分けるのか、元BCGのコンサルタントである坂倉氏に、失敗・成功事例それぞれの要点を伺った。

【DX失敗事例】役員のデジタルスキルが不足していた産業財企業

最初にご紹介するのは、製造業の大手企業における失敗事例だ。同社は高度経済成長期を経て大きく成長してきたが、市場的に20~30年後には会社規模がシュリンクするという予想があった。そこで、デジタルを活用したプロダクトを新たに生み出すためのDXを推進したという。

坂倉:この企業は組織創りという観点において、いくつか失敗のポイントがありました。中でも一番大きな問題だったのは、役員の方々がテクノロジーを活用したビジネスの立ち上げ方に関する知識がなく、勉強もしてもらえなかったことです。
そうなると若い世代が良い事業提案を持ってきても、役員の方には面白さや長期的な可能性を判断できません。結果として、意思決定に非常に時間がかかってしまいました。

そのほかベンチャー企業のアクハイアリング――いわゆる買収や人材の採用面でも失敗を重ね、結果として成長線には乗せられなかった。

【DX成功事例】DXを手段ではなく目的としたヘルスケア企業

一方で、成功事例の場合はどのようなポイントが要因となったのだろうか。続いて紹介するのが、ヘルスケア企業におけるDXだ。

坂倉:よくDXは手段か目的かを問う議論があると思いますが、この企業の場合はDXを「目的」としました。事業や組織をどう変えたいかという目的があった上で、デジタルを手段として活用することも重要ですが、その場合結局デジタル人材が社内にいないと採用が必要になります。だからこそ、まず「DX組織能力を身に付ける」ことを目的として推進されました。

鈴木:一般的に手段と目的は逆にしたほうがDXを推進できると言われることが多いので、面白い事例ですね。

坂倉:個人的にはDX推進を目的として、そのための人材や組織創りを早めに行うことが成功のポイントだと思っています。

DX推進の成否を分けたのは社内のDX推進能力や外部人材の獲得・活用

鈴木:2社の事例をまとめると、分かれ目となるのは経営者の方々のDXに対する知識の有無と、社内内部のDX推進能力の向上ですね。

坂倉:そうですね。最近は社内の既存社員をどうリスキリングするかがトピックとしてよく挙がりますが、これは本当に重要なテーマです。それをまずは役員から、というのはどの会社でもなかなかできていません。
まずは役員の方をリスキリングする、あるいは役員自身が新しい時代に対して知識をキャッチアップするところからスタートするのがポイントです。

社内の能力を向上した上で、どれだけ外部人材を獲得し、活用できるか、社内外の人材の関係性を構築できるかといった点がポイントとして挙げられる。「内部と外部が融合するには、インテグレーションのための時間や機会が必要」と坂倉氏は語る。

100のDXプロジェクトから生み出したDXの組織能力獲得の4つのポイント

2社の事例や坂倉氏がこれまで手掛けてきたDX推進の経験を基に、実際に企業がDX組織能力を獲得するための要素を伺った。ステップは大きく1、2-1、2-2、3に分けられ、それぞれにポイントがあるという。ここではまずステップ2-1から解説していただいた。最も重要であるステップ1は、後述する。

【step.2-1】自社のDX組織能力を向上する

ステップ2-1の論点は、ずばり自社内におけるDX能力の向上だ。ここでは事例でも軽く触れたように、まず役員のデジタル能力を高めることが重要だという。

鈴木:役員のリスキリングは、やりたいけれどできない企業が多いと思います。具体的にどういう形で取り組めば良いのでしょうか?

坂倉:例えばAIの画像認識やクラウドツールなど、トピックス的な勉強にチャレンジする企業は多いのですが、DXの時代に最も大事なのは「価値観の転換」です。そのためには、役員の方に今までとは違う仕事の仕方をしてもらう必要があります。
例えば、秘書は不要です。上場企業の役員の方はスケジューラーを使ったスケジューリングやZoom、Teamsなどの設定を全て秘書にやってもらっているケースが多いのですが、これらの足元の簡単な仕事から、自分がデジタルのプロダクトを使ってみることです。あるいは、流行っているゲームを実際にスマホでやってみて、使いやすいUIを体験してみるといった形でデジタルを使いこなすのが、わかりやすい入り口になります。

坂倉氏が実際に支援に入る際は、例えばIoTデバイスを実際に使ってもらうといった形でデジタルに親しんでもらうことも多いという。
その上で、次はSpeed/Connected/Data Drivenの文化を創る必要があるということだが、これはどういうことなのか。

坂倉:Speed/Connected/Data Drivenというのは、私がCOOを務めるOne Capitalがデジタル時代において重要だと考えている3つの価値観です。まずSpeedは、速ければ偉いということですね。「メールの返信は24時間以内」と言っていたのでは遅すぎます。ビジネスチャットの返信は1時間以内です。
Connectedもチャットを例にすると、私は普段仕事をする中で毎日数十人以上とチャットをしています。会議で改めて物事を整理しなくても、常に人とつながりながらどんどん意思決定をしていくのです。
そしてData Drivenというのは、感覚や定性的なインタビューなどではなく、データを基にしながら改善点を決めていくということです。
こういった文化を創ることがDX時代においては重要ですし、これら3つを実践できている社員は褒めるべきです。

【step.2-2】外部からDX組織能力を獲得する

ステップ2-1を実践するだけでも企業としては大きな変化がもたらされるが、本格的に事業をDXで変革していくためには、外部人材が欠かせない。ここでも以下の2つのメソッドを教えていただいた。

坂倉:まず、これまでのように要項を決めて募集し面接で採用するやり方では、リーディングポジションの人材は獲得できません。役員・本部長クラスが直接レジュメを見て、可能性がある人材を見つけたら直接口説きましょう。その後にデジタル能力を判断するという順番でないと、なかなか入社まではたどり着きません。

鈴木:そうなるとトップの方がどういう目的でDXを推進したいのか、思いを語れないと魅力付けできないというのも大きなポイントですね。

人材獲得のためにはプロシェアリングサービスの利用をはじめ、SNSやnoteなども入り口とする必要があると坂倉氏は語る。
では、事例紹介でも軽く言及された、アクハイアリングはどうか。

坂倉:アクハイアリングとはAcquireとHiringを掛け算した造語で、一言で言えば人材の獲得やチームの獲得のためのM&Aです。伝統的な企業が自社の能力を高めようと思うなら、ベンチャーの優秀なチームを丸ごと買収するのが、非常に有効な手段となります。
では優秀なチームをどう口説くのかというと、一番大事なのは鈴木さんもおっしゃったように夢を語ること、そしてIPOと同等のメリットを提示することです。
アクハイアリングを頑張らずに一人ひとりを採用してインテグレートする手法では、いずれスピードが追いつかない企業が増えてくると思います。

【step.3】インテグレーションでDX組織力を高める

外部人材やチームそのものを獲得したら、自社と外部の人材を融合させなければならない。そのために必要なのが、まずはお互いに認め合う・分かち合う・溶け合うことだ。

坂倉:基本的に外からやってきたDX人材やチームというのは外国人のようなものなので、なかなか受け入れられません。あるいは外部人材から「全然デジタルのことをわかっていないじゃないか」と思われるケースも多いです。
ですから初日からチャレンジしてほしいのが、シンプルに言えば仲良くなるための機会を十分に作るということです。企業側はオンボーディングチームを立ち上げ、イベントを企画するなど徹底的にコミュニケーションを促進する。「この人たちと一緒に働きたい」と思わせるために必要なのは、やはりスキルではなく人と人の理解なんです。

「デジタル」という分野のイメージから、人材活用もどこかクールに進める印象があるが、実際にはDXもこれまでと変わらず、人と人の熱量によって進められるものなのだろう。
相互理解が進んだら、当然お互いの能力を生かしてビジネスにコミットする必要がある。

坂倉:仲良くなった後は、お互いにどんな能力を持っているかを詳細に理解することが非常に重要です。特に「彼はDX人材だからできるでしょ」といって無茶振りをしたら、そんな専門性はなかったということも頻繁に起こります。外から獲得した人材・チームのスキルを自社でしっかり定義できるようにするのが、第一歩です。

根本的なstep.1を飛ばすとstep.2、3はうまくいかない

ここまでステップ2、3という流れをご紹介してきたが、坂倉氏が最も重要だと考えているのが、これらの手前にあるステップ1だ。ステップ1に失敗すると、どんなに良い条件を提示しても外部から人材を獲得できず、さらには若手人材の離職率が高まってしまい、DX自体も推進できないという。

【step.1】自社のDXストーリーをセクシーに尖らせる

肝心要のステップ1の内容が、坂倉の言葉で表現するところの「自社のDXストーリーをセクシーに尖らせる」ということだ。

まずはこれまでにも何度か話に出たように、将来的な夢物語とコミットメントを確立するのが重要だという。

坂倉:その会社がDXを推進した先でどうなるのか、なりたいのか。それがどれだけ面白く、社会に貢献できるようになるのか。ここがユニークだと人を採用できますし、社員も辞めません。企業が自社なりのDX推進の先の姿をどれだけ面白く魅力的に語られるかは、かなり重要です。ここが尖っていない企業は、あまりに多いです。「自分がジョインするとこんな未来につながっていく」と感じてもらえるセクシーなストーリーを役員一丸となって創り上げないと、後工程をどれだけ頑張っても苦しくなってしまいます。

セクシーなストーリーを語るにあたって、自社ならではの強みを見出し、同時に失敗リスクも語れるようになる必要があるというのが、メソッド2の内容だ。

坂倉:リスクも併せて語れないと、信ぴょう性がありません。強みとリスクの両面をしっかり定義して、夢物語のロジックのバックアップにしましょう。

元BCGパートナーが語るDX推進まとめ

今回のウェビナーのポイントを、以下のようにまとめた。1~5まである内容は、坂倉氏が定義するDXの5pillars(柱)の内容だという。

坂倉:今日お話しさせていただいたDXに向けた組織能力の向上というのは、上記のうち5番にあたる部分です。組織能力がないとほかのどのテーマも進められないので、まず組織能力の向上に積極的に取り組むことが大切です。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。DX推進にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
元BCGパートナーが語るDX推進 ―100のDXプロジェクトより生み出したDXの組織能力獲得4つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2021年12月15日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。20年間で100以上のDX推進を支援してきた元BCGパートナーの坂倉氏が生み出した、DX推進の明暗を分けるDX組織創りのポイントについて、事例とともに実践的なノウハウををご紹介しています。