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【イベントレポート】レガシー産業のDX推進 ―ラクスルの事例に学ぶ、物流業界に変革を起こした裏側とDX推進3つのポイント―

マーケティング戦略

19,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2022/01/26回では、業界全体のDXを実現したいという想いはあるが、何から着手したら良いかわからないという皆様に向けて、ラクスルのDXを推進し、物流DX事業ハコベルの急拡大にも貢献した齋藤氏に、レガシー産業のDX推進を進める上で大切にしているポイントを事例とともにご紹介いただきました。
「業界全体のDXを実現したいという想いはあるが何から着手したら良いかわからない」
「自社のDX化を進めているが、ツールを入れても現場に浸透しない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

齋藤 祐介氏

齋藤 祐介氏

ラクスル株式会社 ハコベル事業本部ソリューション事業部パートナー 元デジタル戦略部長
東京大学卒業後、新卒で入社したA.T.カーニーでは銀行オペレーション再構築・消費財の価格戦略・合併プロジェクトなど企業向け戦略コンサルティングに従事。その後東南アジアのファンドグループの中で会社を立ち上げ、農業・食関連の事業を展開し国際的な賞であるForbes30under30とEcheloneTop100Startupに選出される。フリーのコンサルタントとして1年半の活動を経て、事業開発担当としてラクスルへ入社。ハコベル事業本部にてデジタル戦略部長として運送業界のデジタル化推進、その後そのシステムとノウハウをもとに大手企業向けに物流DXを支援するソリューション事業部を立ち上げ。

松井 優作氏

松井 優作

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2022/01/26時点のものになります。

レガシー産業におけるDX推進の課題はアナログ業務と属人化

DX推進には生産性の向上や働き方改革、データドリブンな経営の実現などさまざまなメリットがあるが、多くの企業が抱いているのは「DXを推進しなければ競合他社に取り残される」という危機感だろう。だがデジタルの知識・知見がないままDXを推進しても、成功率は低い。実際に日本企業でDXに成功している企業はわずか7%と低水準である現状も、それを物語っている。

こと物流業界などレガシー産業に目を向けてみると、DXにあたっての課題は山積みだ。特にアナログな業務体質や業務フローの標準化の難しさなどがハードルとなっている。

職人的なベテラン社員による業務が付加価値を生んできた、歴史ある産業。だからこそDXが困難になっている背景を踏まえ、ラクスルの齋藤氏には現場の徹底理解や戦略的な価値の定義――すなわちKPIの設計などをポイントとして、レガシー産業のDXについてお伺いした。

ラクスルが展開する物流事業ハコベルとは?

ラクスルは著名な印刷・広告のシェアリングプラットフォームだが、そのほかにも近年、数多くの事業をグロースさせている。そのうちの一つが、今回取り上げる物流事業「ハコベル」だ。

齋藤:ハコベルでは主にトラック輸送に関するサービスを大きく2つ展開しています。1つ目が車両手配で、トラック版のUberだと思ってください。3万台のトラックを有する運送企業様とのネットワークを通じて、システム上に例えば「東京~大阪、明日」といった内容を入力すれば、条件に合った車を手配するというサービスです。
2つ目が管理システム。これは運送会社の物流業務をデジタル化するSaaSです。多くの運送会社では電話やFAXなどアナログな方法で情報連携をしているのですが、それらをデシステム化したサービスです。

ラクスルの物流事業ハコベルがDXに成功した裏側とは?

[Phase.1]ハコベル事業の自社DXの4つの推進ステップ

これまでも物流業界は業務デジタル化のためにさまざまな取り組みが行われてきたが、情報の伝達方法などが標準化されていなかったために、浸透には至らなかったという。このため、物流業界では生産性の低いアナログな業務が続くという問題が解決されないまま現在まできている。
そんな大きな課題に乗り出したハコベル事業が成功した裏側について、今回は大きく「ラクスルの自社DX」そして「ノウハウの外販」、2つのフェーズに分けて教えていただいた。

【Sep.0 戦略策定】ハコベルのビジョン、戦略、体制を動画で浸透させた

まず、ハコベルが掲げるミッションは「物流の『次』を発明する」だ。ハコベルは6~7年前にスタートした事業で、物流業界のさまざまな課題に対して対策を考える中でミッションも策定されたという。

齋藤:課題が山積みとなっている物流業界は根本的に変えなければならない一方で、かなり規模が大きく経済を支えているような産業でもあります。ハコベルはそんな業界の「次」を発明することに貢献したいと考えました。

ハコベルが描く運送の新しい形。それは、荷物情報を基にムダのない配送計画を算出し、効率的な配車以来を実現。運送会社には最短かつ効率的な配送を実行してもらう――。こうしたプロセスを、デジタルによって実現するものだ。
具体的ビジョンは動画に落とし込み、社内に浸透させたという。

【Sep.1 デジタル化】オペレーション全体の時間内訳を把握

松井:いざデジタル化をするにあたっては現場理解から進められたと思います。オペレーションを「案件受注」「運送会社打診」「運送前準備」「運送中」の4つに分けてみると、ハコベルの場合は「運送会社打診」に多くの時間を割いており、ここをスコープとしてデジタル化するべきと判断したそうですね。このとき現場理解、現場調査はどのように進めたのでしょうか?

齋藤:前提として、物流業務は内容がマニュアル化されておらず属人化しており、業務に必要な時間などもわからないような状態でした。
私が幸運だったのは、隣のデスクに日本トップクラスの配送に関わるメンバーがいたことです。恐らく、彼らが行っている業務が正解なんです。そこで彼らの業務を計測・定義するために、後ろから動画を撮影し、項目を書き出し、必要な時間をさまざまな尺度から測りました。
洗い出した項目の一つが「運送会社打診」です。1案件につき100社に連絡を取ることもあったので、ここに一定のROIを見込み、デジタル化のメインKGIとして設定しました。

現場理解で得た情報をベースに、配車や運行状況の共有、請求・支払い、経営分析といった業務フローの自動化を行っていったハコベル。「デジタル化したが使われない」状態に陥らないよう、エンジニアも交えながら業務の重要度を定義し改善を繰り返し、さまざまな工夫をこらしたという。

【Sep.2 可視化】可視化によってデータを戦略と紐付け・アイデアを出し日々改善

デジタル化した業務フローはただ自動化で終わるのではなく、可視化してモニタリングを行う必要がある。このときハコベルがKPIとして定めたのが「顧客」と「マッチング」、そして「サプライヤー」だった。ハコベルはこれら3つを結び付けるサービスとして、それぞれがどの程度受注しているのか、マッチング率はどうなのかといった指標を測っていったという。
そして可視化した顧客・委託先ごとの主要データを基に、要因分析を行っていった。

齋藤:業種によっては当たり前のことですが、レガシー産業だと大きな売上はわかっても、中身は人が頭の中で想像して上手くやっている、という話が多いかと思います。
デジタル化によってあるべき粒度で情報を得て、リピート率が顧客ごと、委託先ごとにどうなっているかなどを、戦略上重要な視点から見ています。

【Sep.3 最適化】委託先をグループに割り振りAIが内容を変えて順次通知する仕組み

松井:可視化されたデータを活用してシステムも最適化していかれたそうですが、その結果どのような効果を得られたのでしょうか。

齋藤:左側のAIは、「金曜日に東京~大阪間でこういった荷物を何時発で送りたい」といった情報を入力すると、値段が出るような仕組みのものです。ただ、「では4万7000円で」と決まらなかったらどうなるのか。トラックの値段は時価で変わるため、右側のような仕組みにしました。
細かくは話せませんが、AIが金額を予想して一定的に提示して各社に価格を出してもらうといった、人間が行う交渉のようなことを実現して最適化しました。

[Phase.2]ハコベルの物流DXノウハウ外販の3つの事例

ハコベルの大きなポイントとなっているのが、ここまでご紹介したように自社の運送プロセスをデジタル化し、そのDXノウハウを他社に横展開したことだ。具体的には顧客の持つSCM・物流戦略の課題と将来のあるべき像についてハコベルが一緒に議論し、DXプロセスを共同設計しているという。
ここでは実際に齋藤氏が関わった3事例を取り上げ、ビフォー・アフター形式で取り組みを解説していただいた。

【事例1.外資食品】解像度高くSCM全体業務に向き合い、日々実行可能な業務を構築

最初の事例は、外資食品企業の支援だ。支援前の図にある通り、当初は営業、オペレーション、工場間などで物流の情報連携が行われていたが、情報の単位が統一されておらず、メールとエクセルで属人的に回していた状態だった。

齋藤:現場の状況を理解せずに「これを使えばいい」とITツールを渡しても、それぞれのプロセスが最適化してしまっているので、結局使われません。しかも既存業務なので一旦停止というわけにもいかないのが壁でした。
ですのでこの事例は一言でいえば、「設計をきちんと行う」支援でした。それぞれの業務を行う方が大事にしているポイントをフォローしながらも、シンプルにする。新たにやってみて見えることや慣れるまでにかかる時間もありますので、そこは現場業務もわかる経験を持った人がジョインして、丁寧にオンボードしていきました。

【事例2.日清食品】簡単に手に入るデータではなく、戦略上価値のある切り口で可視化

2つ目の事例は日清食品に対して行われた支援だ。以前は配送情報がアナログな形でしか連携されておらず、本社に価値あるデータが集まらないのが課題だった。

齋藤:レガシーあるあるなのですが、データは現場にありなおかつメモで書いていました。これまでも集まった粒度のデータを用いて戦略策定は行っていたそうですが、もしそれよりも細かい粒度の分析ができるようになれば、今までにない施策を検討できるようになる、というのがこの支援の主旨です。

松井:今回のご支援で、現場の方々がシステムに情報を入力するような形にしたのでしょうか?

齋藤:いえ、「勝手に取れるようにした」のがキーだと思っています。現場の方が何かアクションをすると、それがいつの間にかログとして残って蓄積されるようにしました。その結果、これまでエクセルに入っていた情報が統合された形で見られるようになっています。

【事例3.NTTロジスコ】棚卸ししきれていない属人的・事業部依存の知見を継続的に棚卸し

最後がNTTロジスコの事例で、同社の場合は経験頼りに行っていた配車業務をAI化したという。

齋藤:これまで属人的に行われていた、「出荷データを見てエクセルをいじり配車を行う」というプロセスをAI化したわけですが、やはりAIが全てゼロベースで考えても上手くいきません。まずは知見がある優秀な人がどういう動きをしているのか、学ぶ必要があります。そういう方々を巻き込んでノウハウを教えていただき、制約条件を基に仕組みを作るということが鍵になりました。

松井:言語化しづらい現場の方々の意思決定を棚卸しするのはかなり難易度が高いかと思いますが、具体的にどのように行ったのでしょうか?

齋藤:プロダクトチームも一緒に入り、クライアントの皆さんにご協力いただきながらヒアリングをしました。AIではなく人間でも実行できるような運用しやすいルールを最初に作り、それをどうAI向きに崩していくか、というスタイルを取っています。

レガシー産業DXまとめ

今回のウェビナーのポイントを、以下の3つのポイントにまとめた。

また齋藤氏からはウェビナーの総括として「DX推進できているか確認できる3つの問い」と、最後にコメントもいただいた。

齋藤:DXを考えるときは、やはり現場やプロダクト、オペレーション、ビジネス、時間軸など、さまざまな部分で整合性を取らなければ前に進めません。全体像を見たときに今日ご紹介した話の一つひとつは非常に大事なのですが、それはあくまで部品です。どのような会社のプロジェクトであっても、全体像をさまざまな視点で見ながら進めることです。一人ではできませんので、チームやビジョンをどう作っていくのかもポイントになります。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。レガシー産業のDXにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
レガシー産業のDX推進 ―ラクスルの事例に学ぶ、物流業界に変革を起こした裏側とDX推進3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2022年1月26日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。業界全体のDXを実現したいという想いはあるが、何から着手したら良いかわからないという皆様に向けて、ラクスルのDX推進事例をもとに、レガシー産業のDX推進を進める上でのポイントをご紹介しています。