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【イベントレポート】数百億ビジネスを創る新規事業検討 ―デジタル系事業立ち上げの壁を越える3つのコツ [新規事業計画書サンプル付き]―

新商品開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/01/25回では、デジタル技術を活用した新規事業の立ち上げを検討している皆様に向けて
新規事業開発のプロ 播摩氏に、事業開発を成功させるために検討すべき事項や事業計画書に盛り込むべきポイントをご紹介いただきました。
「経営者や責任者として、現場からの提案を承認する評価基準に自信がもてない」
「事業検討にあたり、フレームワークの実際の使い方や社内調整に不安がありうまく進まない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

播摩 将人氏

播摩 将人氏

デジタル新規事業立ち上げ20本以上、ディスラプション級の新規事業開発のプロ
リクルートにて全社横断組織の変革プロジェクトや新規事業の立ち上げに従事。その後、ローソン銀行やメルカリなどで20本以上のサービスの事業化に携わる。前例が少ない中でのディスラプション級の大規模なFinTech事業を複数ローンチさせるなどの実績を残す。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2022/01/25時点のものになります。

現代において、DX社内新規事業の立ち上げは非常に困難

新型コロナウイルス感染症の拡大後、新規事業を積極的に実施している企業はわずか19%に留まっている。また世界と比較してみると日本のIT投資額はわずか3%程度で、DX新規事業に対する投資も進んでいない可能性が高い。
こうした脆弱な環境下で仮にDX新規事業立ち上げに乗り出した場合、CTOやPO、PdM、PMM、VPoEなどが保持するITスキルを、社内外を問わず調達しなければならない。さらにそれぞれのケイパビリティに対しては、正しい定義・評価が求められる。
以上のように、新規事業――特にDXを絡めた取り組みを行うのは、非常にハードルが高い。要因をまとめると以下のようになる。

新規事業の立ち上げが成功する確率は、1000分の3。「千三つ」とも言われるが、現代において難易度はさらに増しているといえる。

事例に見る、新規事業立ち上げの成功と失敗を分ける要素

今回ご登壇いただいた播摩氏は、営業からマーケティング、企画、新規事業立ち上げなどさまざまなキャリアを積み、現在はアウトソーシング事業化や決済ビジネス、金融系リテールビジネスの立ち上げなど、大規模な新規事業を継続的に創出している人物だ。
その実績の中から今回は成功事例と失敗事例をそれぞれ一つずつ取り上げ、明暗のポイントを解説していただいた。

【異業種からの新規事業参入事例】失敗要素:計画の詰めの甘さ

最初の事例における新規事業立ち上げ最大の課題は、そもそも立ち上げのフローが社内に存在していないことだった。新規事業立ち上げ自体は経験したことがあるメンバーもいたが、文化の差異などが原因で上手くコンセンサスが得られなかったという。

村田:文化の違いが、新規事業立ち上げに際しどのように障害になってしまったのでしょうか?

播摩:事業経験はあっても業界の知見がない、あるいは異なるカルチャーのバックグラウンドがあると、仕事の進め方や意思決定のスタイルが異なります。その結果、なかなか噛み合わない状態が発生していました。

そこで播摩氏が策定したのが、自社独自のフローと評価基準だ。

播摩:まずはルールを決め、その上でどんなタスクを踏めばいいのかプロセスをさらに分解し、合格基準を定めました。これによって、全社的にコンセンサスを取っていくという取り組みです。

フロー策定は上手くいったものの、本事例は失敗に終わった。原因の一つについて、「事業責任者の思いが先走ったこと」と播摩氏。評価基準を設けた一方で、ビジネスのスケールが見込めない状態にあっても思い優先で事業を推進してしまったという。
その他失敗要因はいくつもあるが、最も根幹となるのは「計画の詰めの甘さ」だ。提携パートナーとのファクトの確認不足や現実離れした事業計画を通してしまったこと、ピボット時の軌道修正プランを用意できなかったことなど、いわゆる新規事業の「よくある失敗」が凝縮されているといえる。

【異業種からの新規事業参入事例】成功要素:PDCAサイクルの運用

もう一つの事例は、新規事業のアイデア自体はあるものの難易度の高さが障壁となっていたパターンだ。ケイパビリティなどの問題で社内的にコンセンサスを得ることが難しかったが、競合の成長に後押しされ新規事業計画をスタートした。事業は最終的に成長し、アカウント数を目標計画どおり継続達成したという。
成功の要因の一つが、事業計画と検証のPDCAサイクルを回したことだった。

播摩:計画を立てたら踏襲すべきではありますが、今は環境や競合の変化が読めません。事業環境がスピーディに変わっていく中では、同じ計画を追い続けるほうが高リスクです。できれば1年、あるいは半年ごとに見直しをして、当初計画から生じたギャップや計画見直しの要因などの振り返りをすべきです。

PDCAサイクルを回し計画を仮説検証して焼き直しするには、まずアイデアの正値化――必要なマーケットデータを収集して、事業可能性を定量的に理論立てる必要がある。このとき播摩氏が実際に参照したのが、以下のようなデータだ。

村田:例えば「業界別トランザクション」とありますが、どのように攻めるべき業界の優先順位を決めていったのでしょうか。

播摩:提供するサービスのマッチ度合いが高かったとしても母数が少なすぎると事業としてスケールしないので、まずは事業所数でフィルターをかけることになります。さらにフィットする業界の中でも、実際にそのサービスが使われるかどうかを見極めなければならない。「サービスが使われるマーケット」というのが、優先順位を付ける観点でした。

成功と失敗を分ける3つの要因

2事例を通して播摩氏が感じた、新規事業立ち上げの成功・失敗の要因は以下の3つだ。

高い目標設定とビジョンを持った上で、変化の激しい環境にあってスピーディに動ける人材をプロジェクトに組み込んでいく。こうした計画が、新規事業を立ち上げる上で最低ラインとなりそうだ。

新規事業計画書で意識すべきポイント【サンプル付き】

新規事業を進める上で、事業計画の策定が大きなポイントになるのは言うまでもない。大前提として新規事業計画の構成要素は以下の6つが挙げられるが、今回は特に市場規模とポジショニング、収支計画・蓋然性、調達計画、体制・オペレーションの4点にまつわる内容について教えていただいた。

【前提】蓋然性や事業継続判断、開発・オペレーションで発生するペイン

そもそも新規事業計画策定を行う上で発生しやすいのが、以下の3つの課題だ。いずれも実現可能性の高い計画を考案する上では欠かせない要素だが、それぞれ判断が難しい。

播摩:まず事業成長の蓋然性についてですが、特にこれから市場が出来上がっていくマーケットだとそもそも市場規模のデータが世の中になかったりします。だからといってそのまま進むと見込み違いが起きてしまうので、例えば代替市場から参考となるサービスプロダクトをベンチマークとする、あるいは競合からデータを集めること。その上で、体制的に実現可能性があるか、事業として成り立つかどうかを定量的に見ていく必要があります。

2点目の継続判断については、「エグジットプランのような形で、どの時点でどうなったら撤退するのか、わるいはピボットを考えるのか、マイルストーンを置いておくべき」と播摩氏。

播摩:実際にマイルストーンを超えたら実際に投資をするといった形にするとメンバーのモチベーションにつながりますし、会社としては負債を抱えずに済みます。

最後に開発やオペレーションのフェーズでは、事前のチェックを怠るといざローンチしたときに不具合が発生し、クレームが来ても対応できないといった問題が起きる。

播摩:自社で開発やオペレーションを組むこともありますし、パートナー企業と一緒に数字を作っていくケースも最近は多いでしょう。その両方で、きちんとモニタリングをしていくことが大事です。

新規事業計画において策定すべき3つのポイント

上記のようなペインをどう解消していけばいいのかも含め、新規事業計画で意識すべき3つポイントを伺った。

Point.1評価項目と評価基準

まずは評価項目と評価基準を設けるべきということだが、これは「然るべき項目をクリアできたら事業継続を認める」ためのものだという。

播摩:例えば自社の事業規模、事業ドメインを鑑みてどの程度売上があればサービスを実行すべきか、投資回収はどうすべきか――5年以内に投資回収をしていなければならないなど、自社の経験則に基づいて評価項目と基準を持ってくるといいでしょう。

今回のウェビナーでは、播摩氏が過去に作成した評価項目と評価基準のサンプルも共有していただいた。ぜひ、上記のポイントと併せて参考にしていただきたい。

▶︎▶︎評価項目と評価基準のサンプル入り資料のDLはこちら

Point.2撤退基準

播摩:2点目の撤退基準を決める際は、最初に事業化の段階でノックアウトになってしまうような要因を排除しておくことが非常に大事だと思っています。

「ノックアウト要素」というのは、法律・規制、倫理、技術・財務、リソースの調達など諸要素を鑑みて、そもそも成り立つビジネスかどうかを問うものだ。

播摩:その上で撤退基準を設けておけば、余剰のコストを抱えずに済みます。

Point.3ケイパビリティ評価

最後のケイパビリティ評価で大事なのは、ベンダーの選定だ。新規ビジネスのパートナーとしてふさわしい相手かどうかを見極め、技術力や実績、工数・コストの優位性とともに評価していかなければならないという。

播摩:昨今の人手不足は、ベンダーにも当てはまることです。入念に調べたほうが良い項目だと考えています。

村田:なかなかベンダーの選定は経験がない方も多いかと思いますが、気を付けるべきポイントはあるのでしょうか?

播摩:ベンダーはパートナーとして一緒にビジネスを作っていくので、メンバーであり仲間であるという側面があります。そのとき、自社のカルチャーにフィットする組織や人材かというところも、見るべきポイントの一つでしょう。
ビジネスの仕方によってカルチャーが異なりますから、自社に対してベンダーさんが理解・共感を示してくれるかを見ておくと、実際に参画いただいた際もスムーズにオンボーディングできるかと思います。

【総括】ポイントを押さえてステージゲート法で評価を実施

新規事業計画において意識すべき3つのポイントを踏まえ播摩氏が提示するのが、3段階のステージゲート法を用いた評価手法だ。

村田:スライドにある「適切なタイミングで評価実施」というのはどういうことですか?

播摩:まずステージゲートは概ね3~4段階で進めていくのが良いでしょう。それを1年のビジネスサイクルのどのタイミングで実行していくのかが難しいところで、定着のためにはどの会議体や時期に審議・評価を行うのかを定め、通常業務に組み込んでいくことが大事です。組み込みが成功すればゲート運用も回っていきます。
そのときに大切な観点は3つあります。一つは中計との整合。一方でビジネスを作っていくのは社員ですので、ミッションとの整合性が取れていないとオーバーワークが起こり得ます。そこで基本的に上期・下期で評価し、新規事業を検討するにしても期の初めにリソースをアサインできるようにしましょう。最後に、例えば週次や月次でボードメンバーを集め、フランクにディスカッションや意思決定をする場を定例として押さえていくこと。社員はその場にさまざまな案件を持ち込めますし、評価をする側にとっても時間短縮になります。

いかに新規事業立ち上げのための動きを通常業務に組み込むか。ここが、一つ大きな要素になりそうだ。

数百億ビジネスを創る新規事業検討まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下のようにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。数百億ビジネスを創る新規事業検討にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
数百億ビジネスを創る新規事業検討 ―デジタル系事業立ち上げの壁を越える3つのコツ [新規事業計画書サンプル付き]―
本ホワイトペーパーは、2022年1月25日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。デジタル技術を活用した新規事業の立ち上げを検討しているが事業化に苦戦している方に向けて、事業開発を成功させるために検討すべき事項や事業計画書に盛り込むべきポイントをご紹介しています。