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【イベントレポート】大手企業事例で学ぶ新規事業 ―ステージゲート法を活用した「先端技術×新規事業」立ち上げ3つのポイント―

新規事業開発

19,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021/12/21回では、デジタル技術を活用した新規事業立ち上げに苦戦する新規事業責任者・経営企画責任者様に向けて
AIを始めデータを活用した事業開発に多く携わってきた新規事業開発のプロ 吉江氏に、技術・活用データ・パートナーの選択から事業化までのポイントをご紹介いただきました。
「データを活用した新規事業を立ち上げたいが何から着手したら良いかわからない」
「新規事業のアイディアはあるが、事業化するためにクリアすべき課題の優先順位がつけられない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

吉江 彰洋氏

吉江 彰洋氏

株式会社 Ridge-i 執行役員 DX・パートナー戦略責任者 兼 CPO
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、アクセンチュア株式会社、JVの経営、VC、フリーランスを経て現在に至る。通信業、小売、Web企業、メガベンチャーを中心に様々な企業の新規事業立上、事業戦略立案・実行支援、技術戦略立案・実行支援、組織・業務改革、ITプロジェクト管理、ITシステム開発・運営、コンサルティング、ITプロジェクトなど幅広く従事。特定のインダストリーに閉じない多岐にわたる業務知識と技術知識が強みで、AIを始めとした先端技術戦略・ロードマップの策定支援や、実運用サポートをメインに企業のCVC運営や経営アドバイスを実施。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2021/12/21時点のものになります。

日本のIT化の遅れと対比して最新技術の市場規模は拡大傾向

ブロックチェーン、5G、AI……先端技術として広く認識されているこれらの市場はそれぞれ拡大傾向にあり、例えば5G市場は2026年までに現在の61億円から2106億円規模にまで成長すると見込まれている。成長率に換算すると80.3%という驚異的な勢いだ。
一方でITに対する各国の研究開発費に目を移すと、アメリカ・中国は群を抜いた巨額を投じており、日本は米国比26.3%と、出遅れ感は否めない。IT投資額を見ても、日本は世界対比でわずか3%程度というのが実態だ。

これらマクロ環境をまとめると、上記のようになる。
未だ低水準にくすぶっている研究開発やIT投資の実情がある一方で、今後市場が拡大していくのは間違いない。いち早く先端技術を活用した新規事業に取り掛かることが、競合他社に対して優位性を保つ鍵になると捉えられる。

大手企業の事例で学ぶ最新のデータ活用ビジネス

今回登壇いただいたRidge-iの執行役員兼CPOである吉江氏は、画像認識やディープラーニング、機械学習などを中心に、製造・建設・インフラ、物流・政府関係、サービス業全般の支援に関わっている人物だ。支援範囲はR&Dから戦略コンサル、システムの計画・運用フェーズまで幅広い。
今回は吉江氏のご経験の中から2つの事例をピックアップし、最新技術を活用した新規事業の概要について教えていただいた。

【事例1】物流施設の平面自動設計

従来必要だった半年の設計期間をAIによりわずか7秒に短縮

最初にご紹介するのは、日鉄エンジニアリング株式会社のインフラ関連事業における物流施設の平面自設計だ。従来であれば長くて半年の設計期間が必要だったが、AI活用によりわずか7秒で最適な平面プランを自動作成できるようになった。

開発にあたりボトルネックとなったのは、施設を設計する際の膨大な組み合わせパターンの存在だ。1施設に対して職人は敷地形状や区画種類、評価軸など諸条件値を組み合わせてレイアウトをアウトプットするが、パターンは約10数万通りにも及び、吟味に非常に時間がかかっていた。

吉江:今回は過去の知見を基に膨大なパターンの中から10パターンほど抽出し、理想のものを選ぶという出し方をさせていただきました。

業務プロセスの観察・ヒアリングを行い、アジャイルで開発を推進

村田:ベテランの方は条件の組み合わせを感覚で決めているため、閾値も定性的になるかと思います。ここをどう定量化していったか、コツはあるのでしょうか?

吉江:コツというよりも、がむしゃらにやった感じです。我々が素人なりにお客様の業務を学び、実際に業務の現場も見学させていただきました。その工程の中で、「なぜこの敷地図だとこの条件を選ぶのか」といったことを、逐一聞かせていただいています。AI活用といっても、泥臭く言語化していくことが重要です。

村田:地道に聞いていくしかないんですね。

吉江:また当社には少ない学習データからAIを仕立て上げる手法があるので、プロトタイプ版は早めにぶつけます。アジャイル的にプロトタイプ開発を行っているのも効いているかと思います。

【事例2】倉庫の自動化による生産性改善

ピッキングの全自動化に向けてまずは人とAGVの動きを最適化

もう一つの事例が、大手事務機器・光学機器製造メーカーの支援で行ったピッキング、いわゆる出荷の自動化だ。完全なピッキング自動化は将来的な目標であり、まずはAGV(無人搬送車)と共存した業務効率化を行ったという。

吉江:本事例に限らず、多くの倉庫では以下のスライドの左側にあるように、ピッキングのスタート地点とゴール地点までの導線が通っていると思います。しかし、AGVと人の棚割りが最適化できている企業はあまりありません。

吉江:例えばAGVが4台あった場合、時間帯によっては稼働率150%になっているものもあれば、全く動いていないものも出てきます。そこでこの事例ではできるだけAGVがずっと働く状態に変えられるように、ピッキングリストの出し方や棚割りを変えました。
その結果、スタッフの作業時間を半減させられることがわかったので横展開を図り、将来的にはピッキングロボットによる完全自動化を目指しています。

アルゴリズムの構築よりも現場からの協力を得るのに苦労

村田:いわゆる荷詰めのスペースデータをアルゴリズムに読ませることで自動化していったということですが、難しいポイントなどはあったのでしょうか?

吉江:最初にご紹介した事例と同じ最適化エンジンを使っているのですが、アルゴリズム自体は特に難しくはありません。我々は通称テトリスと呼んでいますが、どうしたら隙間なく荷詰めできるか、人が考えている部分を代替しました。大変だったのは、やはり現場の方々を口説き落としてノウハウを出してもらうところですね。

押さえておくべき、データ活用における発生しがちな「勘違い」

事例を踏まえて押さえておきたいのが、先端技術を活用する上で欠かせない「データ活用」に関するよくある勘違いだ。
簡単に言えば、「とにかくデータを集めればよい」という発想に偏った結果、コストや時間ばかりを浪費してしまうケースが多いという。課題や目的のないデータ活用、必要なデータが不明なままのデータ収集をしても、成果には結び付かない。

吉江:この事例を例に取っても、「完全に自動化する」のか「機械と共存して工数削減をする」のかによって、使うデータは全く異なります。初期ステップと最終ステップでどこに向かうのかを含めたデータの集め方が必要です。実際に支援に入らせていただくと、企業が捉えているポイントと実態として使えるデータが違うケースは非常に多いです。

ステージゲート法を活用した新規事業立ち上げロードマップと3つのポイント

吉江氏が新規事業立ち上げで用いているのは、「ステージゲート法」だ。これは、新規事業が実際に事業化に至るまでの開発プロセスを「ステージ」として切り分け、それぞれのステージに進むごとにゲートを設け検証項目をレビューする手法だ。
具体的な流れをロードマップにすると、以下のようになる。アイデア創出、テーマ設定、技術アセスメント、事業アセスメントという4つのゲートにより、確度の高い新規事業の立ち上げが可能となる。

今回は特にゲート2と3の段階において、注意すべきポイントを教えていただいた。

ポイント1:技術的な実現可能性の有無

まずゲート2の「技術アセスメント」の検証で求められるのは、文字通り技術的な実現可能性があるかどうかだ。大まかには、必要データの定義や技術調査、パートナーの選定、技術モデル設計・検証が必要になる。
この中で吉江氏は、「人間ができないことはAIにもできない」という判断基準を提示している。

村田:これは、現時点では技術的に無理があるという判断ですか?

吉江:ビジネスに落とすとなると、費用対効果的に非常に厳しいかと思います。予算があればできなくもない部分はありますが、「正しい元データ」がなければAIは作れません。

村田:「ヒューマンインザループ」というキーワードもありますが、基本的には人の機能を拡張するなど、人が中心になったほうが効果は出やすく、ビジネスにもなりやすいというところですね。

ポイント2:DX新規事業に必要なケイパビリティの確保

パートナー選定――ケイパビリティ確保の段階でも、押さえておくべきポイントがあるという。
前提として、一言でパートナーと言ってもDX新規事業の立ち上げには以下のように多種多様なケイパビリティが必要になり、1社の協力で完結することはほぼない。複数社と連携し、フェーズごとにタスクの優先順位を付けるなど、綿密なマネジメントが求められる。

吉江:AIのすごい会社を見つけたとしても、AIは車で例えるならエンジンなので、最終的に車を作るならそのほかにも外装やパーツを作る――つまり、販売代理やアフターサポートをしてくれる企業がいないと、事業として成り立ちません。そのほかにもAIというエンジンができたらそれをインフラやアプリケーションにし、拡拡張開発・個別カスタマイズをしてくれる会社が必要になってきます。さらにサービスのメンテナンスやインフルーエンスしてくれるパートナーがいないと、拡販が上手くいかないケースもあります。
1社目のAIエンジンを作れる会社を見つけたとして、そのほかの補完を内製でできるのかどうかを俯瞰的に判断できる方は少ないです。そういうときは、当社のような会社に頼っていただき、どんな総合力で戦うのかを考えたほうが良いでしょう。

ポイント3:ROIを出すための外販検討

村田:事業アセスメントでよくある落とし穴は、業務効率化に留まりどうしても投資対効果が小さくなりがちだということです。その点で、外販を検討するのが良い案だとお伺いしています。

吉江:日本のマーケットはAIがまだ広がっていません。その中で自社と同じような業務をグループ会社も行っているとしたら、横展開をしたり同業他社同士でコンソーシアムを作って開発を行ったりすると、意外とROIを出しやすくなります。

このとき注意すべきは、競合にダイレクトに販売しようとするなど、突拍子もない販路を構築してしまうことだ。カスタマイズかパッケージかといった提供方法も含め、どんな販路で横展開をするのか、戦略設計が重要となる。

吉江:同じ製品をただ売ったのでは、「A社が作ったものはB社では使えない」といったことが起こり得ます。特に自社に販売機能を持っていない場合は、セールスパートナーの有無がポイントになります。パートナーを確立する予算まで見るなど、バランスを考えてアセスメントをしないと躓いてしまいますね。当たり前のようですが、実際に外販をしようとすると陥りがちです。

大手企業の事例で学ぶ新規事業まとめ

今回のウェビナーのポイントを、以下の3つのポイントにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。大手企業の事例で学ぶ新規事業にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
大手企業事例で学ぶ新規事業 ―ステージゲート法を活用した「先端技術×新規事業」立ち上げ3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2021年12月21日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。デジタル技術を活用した新規事業の立ち上げを検討しているが、活用すべきデータやパートナーの見極めで苦戦している方に向けて、RICOHなどの最新の新規事業を例に、技術・活用データ・パートナーの選択から事業化までのポイントをご紹介しています。