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【イベントレポート】成功するBI ―ビッグデータ分析のプロが語る、データドリブンを実現するBIツール導入と社内推進体制とは?―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2021年6月10日は、BIツールの導入に悩まれているDX推進室・経営企画室・システム開発担当部門の皆様に向けて、ウェビナーを開催いたしました。
今回ご登壇いただいたのは、ビッグデータ分析を活用した製造現場の業務改革、BIツールやAI技術を駆使した生産性向上やサービス開発の実績を多く持つ木村氏。木村氏自身のこれまでの成功・失敗経験をもとに、自社の業務規模にあったBIツール導入のステップについて詳しくお話しいただきました。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

木村 隆介氏

木村 隆介氏

データ分析・AI技術を用いた生産性向上・サービス開発に強みを持つデータサイエンティスト
日立製作所在籍時は自社&他社工場向けに、ビッグデータ分析による生産管理や歩留まりに貢献。現在は大手サービス業のデータ組織でマネージャーを務めながら、自身もプレーヤーとしてBIツール構築による営業生産性向上や、AI技術を用いた宿泊施設向けサービスの開発に従事。データサイエンティストとして特許取得や学会発表、大学での非常勤講師、講演など実績多数。

松井 優作氏

松井 優作

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2021/6/10時点のものになります。

BIツールの定義とは?活用シーンは多種多様

データ分析をデータドリブンに進化させるのがBIツール

BIツールとはBusiness Intelligenceの略称。企業が持つさまざまなデータを分析・可視化して、経営をはじめとした多様な業務に役立てるソフトウェア・ツールを指す。
例えば製造業なら工場の設備稼働データや製造データが蓄積されるように、各企業はなんらかの形で構造化されたデータを持つのが通常だ。VUCAの時代において企業が競争優位性を持って戦っていくには、社内外の持つデータをいかに分析し、意思決定に反映するかが問われる。そこで役立つのがBIツールだ。
また、データ分析をデータドリブン――データ駆動な経営へとつなげるためにも、BIツールは欠かせない存在だと言える。

安価な費用で導入し、経営の意思決定にまで利用できる

現在BIツールはさまざまな企業からリリースされており、その機能も活用方法も多種多様だが、主に以下の4つのシーンで活用イメージを分けられる。特に売上情報などを用いた経営分析は、会社の方向性を決める上で役に立つイメージも湧きやすい。

BIツールを活用する上でのメリット・デメリットについても以下にまとめた。

松井:木村さんがBIツールを使っていて大きなメリットだと思うのはどんなところですか

木村:私は社会人になってからずっとデータ分析をしていますが、データ分析にはやり直しというものが多いんです。何かの分析をしたときに「違う角度から見たらどうなのか」と言われたら、また集計し直さなければいけません。BIツールなら、そういうときでもパパッとやり直せるのが魅力ですね。

松井:分析と効果検証のフィードバックを高速で回せるのは大きいですね。

木村:また、ここに書かれているデメリットは必ずしも全てのBIツールに当てはまるわけではありません。無料で使えるものもありますし、基本的に安価なのでまずは初めてみればいいのではと個人的には思っています。

事例で見る、自社に最適なBIツール選定方法

データサイエンティストとして、これまで数々の企業においてBIツール構築による生産性向上などを成功させてきた木村氏。今回はまず、業種の異なる大手企業における成功事例を3つご紹介いただいた。

【事例1:大手不動産業A社】データ活用実績ゼロの状況から生産性向上

支援概要:現場の数字を全く可視化できていなかった

最初の事例で行ったのは、BIツールの導入ではなくエクセル活用だ。本事例では、そもそも誰がどのようにエクセルデータを保存しているのかも不透明な状態だった。木村氏は企業の状況がAI活用にほど遠いと判断した場合、エクセルで地道に分析していくことを一番に提案するという。

木村:今回の事例の構成メンバーは、課長1名と分析メンバー1名という、非常に少ない体制でした。この状態で「データ分析を始めよう」と言っても何をすればいいのかわからないので、現場や役員にヒアリングするところから始めています。コストを下げ、売上を上げられそうなところを特定するわけです。
すると、物件に空室の期間があると収益が落ちることがわかりました。空室期間を構成する要素を分解すると、新たな入居者が入るまでの工事や清掃、原状復帰だったので、工事期間を短縮できそうだという分析を行いました。
そして実際に業務改善前後で各工程にかかった時間を比較し、売上換算するといったことを、エクセルで愚直に計算していった事例です。

結果:エクセルだけで業務可視化に成功し、ボトルネックの工事期間を短縮

細かな数値は非公開だが、工事期間日数可視化のために用いられたエクセルイメージは以下の通りだ。

木村:例えば1行目なら「解約受付日」から「退去立会日」までにかかった日数をきちんと集計して、業務改善によって短縮できた日数を比較。それぞれの工程で何日ずつ短縮できたのかを算出しています。その結果、工事期間は22日から20日に減り、稼働率を上手く上げられました。

【事例2:大手メーカーB社】BIツールを導入してコスト削減

支援概要:エクセルデータで手集計をしていて効率が悪かった

続いては大手メーカーの生産性向上の事例だ。本事例の場合はすでにエクセルやVBAなどを用いてデータ集計やグラフ作成を行っていたため、データ分析の基盤があった。そこで、Tableauを導入し、データ集計を自動化したという。

木村:社内に「分析オタク」のような人がいてデータ分析の依頼が数多く舞い込んでいましたが、その人が分析できるのは1日に3~4件程度だったので、ボトルネックになってしまっていたんです。そこで、その人が1日10~20件分析できるように、BIツールを導入しました。
現場のリーダーと一緒に現場を見に行って「ここをデータで可視化したい」といったことをヒアリングもしています。

結果:歩留まり率5%アップ、コストは年間3000万円削減

以下が、実際にBIツールで作成したダッシュボードだ。

木村:今回は結論から言うと工場のコスト削減をして、年間3000万円の効果が出ました。歩留まり率の引き上げにも成功しています。
その中で一番見ていただきたいのがスライドの右下の散布図です。工場の生産ラインでは検査員が流れてきた商品を一つひとつ確認しており、散布図の右上にプロットされているのが「作業時間が長く、不良を多く出している人」です。
これは本当に不良が出ているのかどうかわからないのでその人にヒアリングしてみたところ、非常に慎重な性格で、「不良品を工場の外に出してはいけない」という強すぎる使命感を持っている方だったんです。ですから「もう少し時間を掛けないように。一定レベルの製品なら外に出しても大丈夫だ」と指導をしました。たったこれだけでメンバーの意識が変わり、無駄に廃棄していた製品を減らせたのです。

【事例3:大手ウェブサービス業C社】データドリブンによって業務改革

支援概要:データ利活用が可能な組織に変わりたい

3つめにご紹介するのが、大手ウェブサービス業における業務改革の事例だ。本事例ではデータ利活用をビジネス成長の鍵にするため、多額の資金を投入。BIツールの導入だけではなく、データドリブン組織への変革を行っている。

木村:この事例はヒト・モノ・カネをどんどん投入していくようなプロジェクトだったので、チームの立ち上げも非常にやりやすかったです。データサイエンティストやエンジニア、デザイナーを連れてきて、営業生産性を上げるための取り組みをさせていただきました。

結果:全社で使える大規模なデータ分析基盤を構築

本事例においては、「重厚長大なシステムを作った」という木村氏。以下は、データ基盤の簡単な構成を示している。

木村:社内のデータとしては営業行動や営業履歴、予算の計画目標、受注の実績データなどを集めてきました。あとは社外から営業マンのアタックリストを買ったりWeb上でデータを収集したりして、データレイクにとにかくコピーをしていきましたね。営業履歴なんかは下手をするとエクセルなどで管理されていましたから。
その基盤の中でデータを分析しやすい形に直し、例えば営業履歴と実績を紐付けて見られるようなデータマートの形に変換しました。分析しやすい状態になったものは、Tableauなどで使います。プログラミングのできる人なら、PythonやRを使って分析をする感じです。分析結果は、ダッシュボードとして営業マンやマネージャーに提供するという形で動きました。

BIツール導入プロジェクトを実施するにあたっての注意点

自社が持つヒト・モノ・カネに合わせてスモールステップで開始せよ

エクセル活用、BIツール導入、そしてデータドリブン組織への変革という3つの異なる手法を取った3事例を踏まえ、BIツールを導入する前にどのような心得が必要なのか、共通項を伺った。

木村:自社にデータ分析できる人がいないのであれば、まずはエクセルで地道に始めるのが大事です。ヒト・モノ・カネに合わせてどうデータを活用するのかを考えるということですね。
あとは、意外と社内にデータを見るのが好きな人がいたりします。例えば趣味で競馬をやっている人なんかはデータが大好きだったりするので、そういう人材を連れてくるのも一つの手だと考えています。

失敗の大きな原因は一部の人材に負荷がかかりすぎること

また、実際に導入ステップに入った際によくある落とし穴についてもやはり3つ伺った。下記のいずれのポイントも重要ではあるが、総括すると「極端に誰かの負担がかかる形」あるいは「上下関係が発生する」形でデータ分析を行うと、失敗しやすい。

松井:スライドを見ていても耳が痛い部分があります。特に2つ目の「現場の負担を無視してデータを入力させようとする」ですね。サーキュレーション社内でもSFAツールを導入して、営業マンの方に入力してほしいデータを定義していますが、果たしてそれが現場にとって役立っているのかは常に自問しています。

木村:2つ目の壁を乗り越えるために私が意識しているのは、完成形を見せることです。現場の方がデータ入力をしたくないというのは忙しいからでもありますが、データ入力をした結果自分に何か返ってくるのか、イメージが湧かないのが一番の理由だと思います。
「こんなデータが取れたらこんなグラフが見られて、あなたの営業行動がこういう風に楽になる」ときちんとコミュニケーションして伝えると、意外と現場が協力してくれることは多いのではないでしょうか。

BIツール導入プロジェクトを成功に導く4ステップ

ここからは、BI導入プロジェクトを成長に導くため、分析戦略策定から現場定着までの4つのステップにおけるポイントを伺った。

【推進体制確立】自社の特徴に応じて取るべき体制を選択する

最初に行うのが、プロジェクトを推進するための体制確立だ。木村氏はここで、プロジェクトの体制を大きく「エクセル完結型」「BIツール導入型」「データドリブン組織型」と、今回ご紹介した3つの事例にも対応する内容で分けている。

松井:簡単に、どういった組織がそれぞれの型に合うのかご説明いただけますか?

木村:スライドでは3つにはっきり分かれていますが、実は結構グラデーションだと思います。BIツール導入から説明すると、例えば先ほどの工場の生産性・歩留まり改善の事例のように、すでにエクセルやVBMを使える、ある程度プログラムも書ける人材がいるなら、基本的に最初のステップとしてBIツールを導入するのがいいと思います。もしエクセルや関数の使い方も怪しいのなら、まずはエクセルから始めるのが大切だというのが「エクセル完結型」です。
データ自体が競争力の源泉になっているような企業であれば、データドリブン組織型まで目指していきたいところですが、まずは「エクセル完結型」あるいは「BIツール導入型」からスタートする感じになるでしょう。データ量によってはそもそもエクセルで開けないこともあるので、そのときは「データドリブン組織型」で使うようなデータベースを最低限入れる必要もあります。

【データ基盤構築】推進体制ごとにデータ活用できる状態を作る

どんな推進体制を選ぶかによって、データ基盤構築のステップで実施する内容は異なる。「エクセル完結型」の場合は、まずメンバーがエクセルの関数やピボットテーブルを使いこなせるようになるのが重要だ。「BIツール導入型」であれば、エクセルマスターにBIツールを導入し、分析生産性を向上させることになる。

そして「データドリブン組織型」なら、データ基盤構築としてはかなり大規模な取り組みが必要だ。手順としては、事例3でご紹介したように社内外のデータを自社で構築した基盤に集め、扱いやすい形に整えていく。

木村:データ分析の結果を綺麗にまとめておき、それをいかに効率的に社内に共有するかが大事だったりします。例えば毎日Slackに前日の営業実績が自動で通知されるようにするなど、SlackやGitHubを用いながらデータの共有基盤も用意しておくことです。

【分析の習熟】社内にいる「データ分析が好きそうな人」を見つけるべし

松井:いざデータ分析をしても、それを社内に定着化させるのがまた一つ大きなハードルだと思います。ここでは具体的にどんなことをすべきなのでしょうか。

木村:先ほども申し上げたように、データ分析が好きそうな人がいたら「こんな面白いことができるんですけど、一緒にやりませんか?」と誘って、オンラインで画面共有をしながらデータ分析について手取り足取り教えることがあります。慣れてきたら毎週宿題を出したりもしますね。難しくてできなければ私がサポートをして、一人のスペシャリストを作っていきます。
また、データ分析を実施する上でデータ探しに時間がかかるともったいないので、データについてまとめたWikiを作っておくことも大事です。

【組織の自走化】継続的にデータ人材が増えていく環境を整える

松井:最終的には組織の自走化という形で、木村さんがいなくても回っていくような状態を目指していくんですね。

木村:私がハンズオンで教えた人が、次はほかの人に教えるような環境が作れると非常に良いですね。習熟した人に対して私から月1回、何曜日の何時からTableau勉強会を開催してくださいと依頼したりもします。すると興味のある人が受講するので、自分の部署に持ち帰って内容を発表してくださいと言って、ネズミ講的にデータ分析できる人材を増やしていきます。

【まとめ】分析戦略策定から現場定着までにプロ人材の支援が必要な部分

最後にそれぞれの体制はどんな組織が向いているのか、規模や構成要因などを改めてまとめると以下のようになる。

内容についてはここまで解説いただいた通りだが、やはりデータ分析の知見が無い中だと、自社だけでBI導入を推進するのは難易度が高い。外部のプロ人材に入ってもらう場合はどんなポイントで、どんな支援が必要なのだろか。

木村:「エクセル完結型」については、データ分析が好きそうな人材を探し、育てる部分でサポートさせていただければと思っています。
また、私自身はコンサルとしていろいろな現場を見てきているので、例えば工場なら不良の原因を分析する型があったりしますし、グラフを見たときにどんな打ち手をすべきかというご提案までサポートさせていただけます。ほかにも「BIツール導入型」については、例えばG Suite(現Google Workspace)を利用している状態であれば、データポータルでできるところまでやってみるといったことを提案しますね。
全ての組織に対して共通しているのが、経営層と現場間の翻訳です。現場の大変さを経営層に伝える、あるいは経営層が求めているものを現場でどう実現するのか、こういった部分で私が間に入って進めることが非常に多いです。

成功するBIまとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでほしいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナー資料のダイジェスト版を以下のボタンからDLできます。成功するBIツール導入にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
成功するBI ―ビッグデータ分析のプロが語る、データドリブンを実現するBIツール導入と社内推進体制とは?―
本ホワイトペーパーは、2021年6月10日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。BIツール導入やAI技術を駆使した生産性向上やサービス開発の実績を持つ木村氏の経験をもとに、自社の業務規模にあったBIツール導入のステップをまとめております。