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【イベントレポート】CVCの創り方 ―ポーラ・オルビスHDが実践するCVC成功事例の裏側と成功する3つのポイント―

オープンイノベーション

18,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021/10/26回では、CVC立ち上げを検討される新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて
国内でいちはやくCVC事業に挑戦したポーラHDのCVC『POLA ORBIS CAPITAL』の立ち上げ担当者の岸氏に
CVC運営の実践から学んだ成功する3つのポイントをご紹介いただきました。
「サービス開発コストを抑えて新規事業の開発を進めたい」
「スピード感のある最先端企業とオープンイノベーションを実施したい」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

岸 裕一郎氏

岸 裕一郎氏

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 総合企画室 コーポレートベンチャーキャピタル担当 / トリコ株式会社 取締役
同志社大学卒業後、株式会社ポーラ入社。化粧品の販売促進及び販売員の採用支援等を経て、社内新規事業を起案。2017年株式会社ポーラ・オルビスホールディングスに転籍し、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)起案及び準備を担当。2018年から総合企画室にてCVC運用及び新規事業の企画を行う。運用後の累計投資数は22社。2021年投資先であったトリコ株式会社のM&Aを実施し取締役に就任。

樋口 達也氏

樋口 達也

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2021/10/26時点のものになります。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)とは?

さまざまなイノベーション方法とCVCの位置付け

CVCとはコーポレートベンチャーキャピタルの略称で、事業会社によって行われるベンチャー投資のことを指す。一般的なVCが狙うのはキャピタルゲインによる利益だが、CVCは投資そのものが事業会社にとってオープンイノベーションの文脈を持つ点で、出資の目的が異なるケースが多い。
CVCをイノベーション手法という観点でマッピングすると、以下のような位置付けだ。

新規事業やM&Aに近しい位置にあることが示す通り、CVCは投資先のベンチャー企業と自社との事業シナジーの発揮が求められる。M&Aを行う場合は膨大な資金が必要かつ、自社事業への影響力も大きくなるが、CVCは比較的金額・影響力ともにM&Aよりは少なく行えるのが特徴だ。

新規事業創出の観点でCVCが企業に与えるメリット・デメリット

CVCのメリットは、サービス開発コストや新規分野参入リスクの低減、そして前述のように自社事業のオープンイノベーションにつながる点だ。一方でデメリットとしては、有望な投資先へのCVCは割高になってしまう点に加えて、そもそも自社にとっての「有益なCVC」の定義が困難であること、そして運用ノウハウが不足していると十分な成果を得られない点にある。
何をもってCVCの成功とするか、ゴール設定の難易度が高いというのも、CVCを実施する上ではハードルとなるだろう。

今回のウェビナーではこれらも踏まえた上で、ポーラ・オルビスHDにおけるCVC立ち上げの内容と運用のポイントを伺っていった。

【CVC成功事例】ポーラ・オルビスHDのCVCを通じたブランド拡張戦略の裏側

ポーラ・オルビスHDにおけるブランド戦略の特徴

ポーラ・オルビスHDは数多くの化粧品ブランドを有する、言わずと知れた大企業だ。ミドル~ハイプレステージ領域までを中心に、スキンケアを基本としたマルチブランド戦略を展開。特に基幹ブランドであるポーラ、オルビスは独自のダイレクトセリングによって高いリピート率を誇り、確固たる地位を築いている。
近年は顧客ニーズの多様化を受け、「小さくても個性的でユニークなブランドを保有する方針」を採っていると、岸氏は語る。

スタートアップ22社への出資を行ったPOLA ORBIS CAPITAL

ポーラ・オルビスHDがCVCをスタートしたのは、2017年頃。今回ご登壇いただいた岸氏が新規事業制度を用いてCVCを提案したことから企画が立ち上がり、約3年間で累計22社への出資が実現している。

樋口:ポーラ・オルビスHDがCVCでフォーカスしているのが、D2C、ビューティーテック、そしてリテールテックの3領域だということですが、この理由はなんですか?

岸:理由は大きく2つあります。1つ目はCVCを進めるにあたり、中長期でシナジーを作るという点で自社と相性の良い領域であるということ。2つ目は、CVC自体のポジショニング戦略や競合優位性の観点で、D2Cやビューティーの領域なら、我々の知見が活かせるということです。
上記3つの分野であれば、ほかの投資家の方々と比較しても起業家の方にしっかりとした支援ができるだろうということで、特に初期はフォーカスしていました。

CVCを進めた結果、現在は幅広い領域でスタートアップとの協業を実施。投資先の1社であるトリコ株式会社とはM&Aも実施し、岸氏は取締役に就任している。

『POLA ORBIS CAPITAL』運営の実践から学んだ、成功するCVCの3つのポイント

ベンチャー投資を通じて、自社の企業価値創出の模索を続けているポーラ・オルビスHD。同社は具体的にどのようにCVCの基盤を創り、投資を実践してきたのだろうか。2017年の立ち上げ期から現在までを振り返りながら、成功のポイントを大きく3つに絞ってご紹介いただいた。

Point.1:社内にCVC運営の土台を創る

まずCVC立ち上げ時に立ちはだかる大きな壁の一つが、スタートアップのスピードに沿って投資を実施できるような仕組み創りだという。

岸:これは当社だけではなく、一般的なCVCの課題となるポイントです。VC自体も意思決定のスピードがどんどん速くなっていますから、仕組みについては初期に整備を行いました。

樋口:それが投資承認会の設立ですか?

岸:そうですね。大企業の場合は取締役会決議になっているケースが多いと思いますが、一定ガバナンスを効かせた上でスピードを出すために、投資承認会を設立しました。一定の金額以下であれば、投資承認会で決議できるような設計にしています。

投資承認会のルールは、社外でCVCを実施している方へのヒアリングを基に策定したという。他社のCVCと共同出資を行う例もあるため、CVC同士のネットワークやコミュニティによる情報交換は、頻繁に行われているそうだ。

Point.2:小さくはじめて大きくする―領域特化―

ポーラ・オルビスHDがCVCで注目している領域についてはすでに解説したが、得意領域や注力領域を絞るというのも、CVC推進においては重要になる。これは、CVCとしてのポジショニングを明確化するということだ。

岸:営業的に自らアプローチする方法もありますが、仕組みとしてきちんと投資先をご紹介いただける体制を作っていくことが大切です。それを踏まえた上で、起業家の方々に「この領域ならポーラさんが一番得意そう、強そう」と感じていただくことですね。そういう意味で当社の場合は初期段階で、投資の半分をD2Cに振り切りました。
領域を絞ったことによるプラスの効果は、D2Cだけではなくサプライチェーン上にある物流やECの基幹システム、マーケティング、研究開発に特化した企業とのネットワークが広がり、投資につながっていったことですね。

また投資規模に関して、初年度は1000~2000万円規模の出資を複数社に対して実施したと岸氏。

岸:1億円の投資を1社に行うのと、1000万円の投資を10社に行うのとでは、使う金額は同じでもナレッジは圧倒的に後者のほうが蓄積できます。初期ほど少額でも件数をこなすことが重要なのではないでしょうか。

樋口:経験を積むことでノウハウが溜まり、再現性も高くなっていくということですね。

Point.3:投資先と信頼関係を構築する

ここまでにも解説している通り、基本的にCVCにはオープンイノベーションの文脈で自社事業とのシナジーを狙うという大目的があるが、「全社とシナジーを目指す必要はない」というのが岸氏の考えだ。その上で、成功のための最後のポイントは、投資先との長期的な信頼関係を構築することにあるという。これはどういうことなのか。

岸:私も立ち上げ当初は全社とシナジーを創ろうと思っていたのですが、これはそもそも非常に難しいことです。10社に投資して10社とシナジーを創るとなると、現実的に無理な側面が出てきます。また、私自身はそうならないように気をつけていますが、担当者の目的がシナジーそのものになってしまうこともあるでしょう。
本来は自社の企業価値を上げることが目的であるはずが、何かを一緒にやることが目的になってしまうと、インパクトの大きなことができず本末転倒です。最終的に「投資をする意味があるのか」と問われることになりかねません。
そこで当社は方針を変え、シナジーを描くのは10社中数社で良いということにしました。その代わり、その数社とはきちんと大きなシナジーを目指します。

さらに岸氏は、「残りの会社に関しては、しっかりと企業を支援することで財務リターンの回収を目指す」と語る。

岸:とはいえ自社と全く関係のない企業への投資はしていないので、企業が成長した5年後にあり得る可能性を描きながら進めています。

実際、ポーラ・オルビスHDのCVC立ち上げ当初に投資先として選んだSHE株式会社とは、創業当初から深くコミットすることで信頼関係を築き、現在はシナジーを描けているという。

樋口:とはいえ、全社に深くコミットをするのは難しいと思います。その場合はどのように信頼関係を築くのが良いのでしょうか?

岸:定性的ですが、やはり起業家の方をきちんと信頼して良いところを伝え、課題に関しては真摯に議論する姿勢を貫くことです。
スタートアップには良い時期も厳しい時期もあるので、厳しい時期に信頼を損なうと関係が悪くなりがちです。綺麗事かもしれませんが、苦しいときにも相手を信頼して、「一緒になんとかしよう」というスタンスを持つことが大切なのではないでしょうか。

CVCの創り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。CVCの創り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
CVCの創り方 ―ポーラ・オルビスHDが実践するCVC成功事例の裏側と成功する3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2021年10月26日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。国内でいちはやくCVC事業に挑戦したポーラHDのCVC『POLA ORBIS CAPITAL』の立ち上げ担当者の実践事例をもとに、成功するCVC運営の3つのポイントをご紹介しています。