プロシェアリングコンサルティング > マガジン > SDGs > 【イベントレポート】NECの2050未来シナリオの創り方 ―サステナビリティ経営の実現に向けたスペキュラティブ・デザインによる長期シナリオ策定のステップと実践事例とは?―

【イベントレポート】NECの2050未来シナリオの創り方 ―サステナビリティ経営の実現に向けたスペキュラティブ・デザインによる長期シナリオ策定のステップと実践事例とは?―

SDGs

18,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021年8月5日は、サステナビリティ推進や長期ビジョン設計を検討されている経営企画責任者、SDGs推進責任者、DX推進責任者様に向けて、独自の2050年未来シナリオが注目を集めているNEC未来創造会議の立役者である 岡本氏に、長期シナリオ策定ステップと実践事例についてご紹介いただきました。
「VUCA時代にトップから現場まで会社全体で納得感のある長期視点での目標を設計したい」
「マテリアリティ特定後の目標設計や中期経営計画策定に向けて、役員/部長の長期視点への思考転換方法を知りたい」
こうしたお悩みを持つご担当者様は必見です。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

岡本 克彦氏

岡本 克彦氏

日本電気株式会社 フューチャーマーケットインテリジェンス本部
1995年東京都立科学技術大学卒業後、NECホームエレクトロニクスに入社。2000年にNECに移籍し、携帯電話やスマートフォンの商品企画・マーケティングを担当。2013年よりコーポレートブランドの戦略を担当し、社会価値創造型企業への変革に向けたリブランディング、NEC未来創造会議を通じた長期ビジョンの策定に関与する。社外では企業間フューチャーセンターでの越境・共創活動の経験を活かし、2013年より地域デザインの活動として神奈川県川崎市で「こすぎの大学」や「川崎モラル」を企画運営。公私を融合させた「働き方」や「楽しみ方」を模索中。

信澤 みなみ氏

信澤 みなみ氏

株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進プロジェクト 代表
2014年サーキュレーションの創業に参画。成長ベンチャー企業に特化した経営基盤構築、採用人事・広報体制の構築、新規事業創出を担うコンサルタントとして活躍後、人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者として従事。「プロシェアリングで社会課題を解決する」ために、企業のサスティナビリティ推進支援・ NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクター とのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画〜運営の実績多数。

花園 絵理香

花園 絵理香

イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2021/8/5時点のものになります。

持続可能な社会を目指す上で企業に求められる長期視点

全ての人がよりよく生きられるサステナブルな社会に向けた世界の潮流

「2000年以降から続くESG投資の急拡大や、パリ協定におけるSDGsの採択といったサステナブル社会に向けた世界的な動きは、加速化を続けている。日本においてはグリーン成長戦略が掲げられ2兆円もの資金が動くなど、経済活動におけるサステナビリティの必要性は、もはや言及するまでもない。

その中で今後企業が求められるのは、「視点の切り替え」だ。従来の「短期視点、自社起点」から今後は「中長期視点、社会課題起点」への転換が求められ、事業もメガトレンドに基づいた戦略によって進める必要がある。それが、いわゆるニューノーマルに向けた潮流だといえるだろう。

サステナビリティ/SDGs経営実装の課題は「視点の切り替え」

多くの企業は現状、サステナビリティ経営に向けた目的や方針、行動計画の策定や、自社の事業に紐付いたマテリアリティの特定といったフェーズを完了しつつあると考えられる。その上で次に必要なのが、長期ビジョン、そして直近で行うべき目標も含めた、短中長期目標の設計だ。
一方、ここで生じやすいのが「既存の延長線上での目標設計しかできない」「長期視点を持った戦略検討ができない」――つまり、前述した「視点の切り替え」に関する課題だ。
どうすれば企業として長期シナリオを描きながら、サステナブル経営を実現できるのか。今回はそのヒントを、NECの「2050年シナリオ」に求めた。

NECが「NEC未来創造会議」で描いた2050年シナリオ

NECは言わずとしれた日本を代表する電機メーカーであり、ICT企業として先端テクノロジーを提供する中で、社会と産業のDXを目指している。
長期ビジョンというと「2030年」がひとつのキーワードとなることが多いが、NECは「NEC未来創造会議」というプロジェクトを立ち上げ、2030より先の2050年を見据えたシナリオを考えるに至った。
なぜNECは「2050」にこだわったのだろうか。まずはその背景や、シナリオの概要について伺った。

▶︎NEC未来創造会議について詳しくはこちら

長期シナリオ策定に取り組んだ背景にあった大いなる危機感

SDGsが採択されたのは2015年のことだったが、NECはそれよりも先に従来のビジネスモデルに限界を感じており、それが2050年シナリオの端緒になったという。

岡本:2008年のリーマンショック、東日本大震災などを受け、日本では新しい価値観が再定義されていきました。さらにICT業界においてはビッグデータやクラウド、AIなどのワードが登場しましたよね。こうした変化の中で、当社が従来の延長線上でのビジネスモデルを続けるのは、限界を迎えていたんです。
長期視点で企業の方向性を変えていかなければ、今後会社として存続できない。そう考えて、NECは2013年に社会価値創造型企業への転換を宣言しました。そして2030年頃までの中長期ビジョンをおおよそ描いた後、2017年にNEC未来創造会議を立ち上げ、2050年までを含めた長期ビジョンを考えていくという流れに至っています。

2010年代初めにおけるNECグループの売上は、リーマンショックの影響やビジネスモデルの転換期でもありC向け事業からの撤退などによる影響で5兆円から3兆円にまで落ち込んでいた。外的要因によって生じたNECグループの危機感は非常に大きなものだったのだ。

NECが2050年シナリオの先で目指すべきコンセプトは「意志共鳴型社会」

NEC未来想像会議のゴールは、2050年の未来シナリオ策定と社会実装に向けての実験。また、社内外の持続的なネットワーク構築も目的としていた。代表直轄のプロジェクトとして、社内メンバーのみならず、国内外の有識者も巻き込んで推進されている。
このプロジェクトによって導きだされたNECが目指すべき社会のコンセプトは、「意志共鳴型社会」だ。

岡本:例えば「未来に対して考えを持つ」というのはまさに「意志」ですよね。その意志に共鳴する仲間と一緒に未来を作っていく。そのときに、自分が生かされている環境に感謝をする。その気持ちが、未来に対する原動力になるような社会を作っていきたいと考えています。

信澤:意志共鳴型社会を実現する上ではNECさんのコアであるテクノロジーがひとつの基準になると思いますが、具体的にどのような活用の仕方になるのでしょうか。

岡本:今の情報社会はインターネットがベースになっていますが、それにも限界を感じています。例えば私がこのウェビナーを通じて信澤さんやいろいろな方と出会えたような、お互いに意志共鳴ができるような出会いの場――つまり、コンテキストレベルで相互理解・相互信頼ができるようなテクノロジーやネットワークが必要だと思っています。

「意志共鳴型社会」というコンセプトに向けて、NECは企業としてできることが明確になり、従来の短期目線から方向転換が可能となった。長期視点の活動を通して、「社会価値創造型企業」へのリブランディングができつつあるという。

未来を想像するスペキュラティブ・デザインとは?

NECが未来創造会議で用いた具体的手法が「スペキュラティブ・デザイン」だ。「スペキュラティブ」とは「熟考」などの意味を持つ。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のアンソニー・ダン教授によって提唱されたもので、未知の解決策を探り出すための方法論として用いられている。
まずはスペキュラティブ・デザインがどのような手法なのか、なぜNECが採用したのか、詳しく見ていく。

デザイン思考と異なるのは「相手」ではなく「自分」主体で考える点

スペキュラティブ・デザイン自体は、過去や現在ではなく、未来を起点にして議論を重ねていく手法であることから、バックキャスティングと似た部分もある。岡本氏いわく、「デザインというよりはアートに近い考え」だという。

信澤:実際にはどのような視点を持つデザインなのでしょうか?

岡本:現在から未来を考えてしまうと、自分たちが実現できそうな範囲に領域を狭めてしまうと思うのですが、スペキュラティブ・デザインはアートという視点で自ら考えて問いかけ、有り得そうにない未来まで含めて全て描きます。いろいろな未来像が出てくると思いますが、その中でも極端な未来を提示する。解決策ではなく、「こんな未来はどうですか」と投げかける。そんなアプローチです。

いわゆる「デザイン思考」との違いは、「主体が自分にあるところ」だと岡本氏。デザイン思考では相手主体で課題に共感し解決策を描いていくが、スペキュラティブ・デザインはあくまで自分たちを主体としながら、未来像を描くものだ。

2050年の世界を描くにはスペキュラティブ・デザインが最適だった

信澤:シナリオプランニングにもさまざまな種類があると思うのですが、その中でもなぜスペキュラティブ・デザインを採用されたのでしょうか?

岡本:今はSDGsという形で、2030年に向けて社会課題を解決する取り組みが世界中で行われています。ですが、当社が描きたいのは2050年なので、SDGsが達成された後の社会を考えることになります。社会課題が解決された後に自分たちがどんな社会を作っていきたいのか、自らが考えて世の中に問うために、スペキュラティブ・デザインを導入しました。

スペキュラティブ・デザインを選択するまでには、さまざまな試行錯誤や取捨選択を行い、最適な手法を探ったと岡本氏は語る。

岡本:スペキュラティブ・デザインを導入することも含めて、まずは自分たちがやりたい未来像を描き、その実現のためにはどんな課題があり、どう解決すべきなのかを考えるというのが、今回の大きな流れです。

スペキュラティブ・デザインを活用したシナリオプランニング実践事例

では、実際にスペキュラティブ・デザインを活用しながらシナリオ作成を進めるために、NECはどのような手順を踏んでいったのだろうか。大まかな全体像は以下の通りで、課題抽出・問題定義から実際のシナリオ作成までを5つのフェーズに分解できる。

ここでは、実際のシナリオ作成のフェーズにフォーカス。3つのステップに分解し、解説していく。

ステップ1.理想像の創造

シナリオ作成においては前項のフェーズ4にある外部環境分析が必要不可欠ではあるが、岡本氏は最低限のマクロ情報やメガトレンドだけをインプットして、自分たちでまずはシナリオを考えるという部分に多くの時間を割いた。その最初のステップとなるのが、「理想像の創造」だ。

岡本:極端な未来像を描くわけですから、当然ユートピアな部分もあれば、否定的なディストピア部分もありますが、あえてどちらも提示します。

その結果生まれたのが、以下の4つのシナリオだ。

岡本:ここではシナリオプランニングの手法を使って、横軸には「経済成長」と「持続可能性」を、縦軸には「自立」と「統制」を置きました。現在の価値観がこのまま続くと、この4つの視点に偏った世界になってしまうのでは、という投げかけです。

信澤:この4つに分けるまでには、どれくらいの期間がかかったのでしょうか?

岡本:プロジェクトが2017年に立ち上がり、最終的に上記のようなシートで示す形に落ち着いたのは2020年のことです。3年かかりましたね。

ステップ2.課題の抽出

自分たちで未来像を解像度高く描いたら、次にそこから発生すると想定される課題を抽出していく。例えば人、社会、自然、未来といったカテゴリの中でさまざまな社会課題を想定することができるが、NECの場合は課題の本質は「分断」にあるとした。

岡本:個人と社会、個人と環境、そして現在と未来。ここにさまざまな分断が起きているというのが、社会課題の本質だと捉えています。

信澤:自分たちが描く未来としてどんな課題があるかというのは、メンバーの主観で探るのでしょうか?

岡本:そうですね。予測できる未来と俯瞰的に考えている主観・客観を組み合わせながら考えていきました。

ステップ3.解決手段検討

課題を抽出したら、いよいよ解決手段を検討する段階に入る。先ほど言及された「分断」を克服するためにNECが考え出したのが、「意志共鳴型社会」ということになるが、具体的にはどういうことなのか。

岡本:今はインターネットという情報だけでつながっているために、未来では誹謗中傷なども含めた分断が起きているだろうと考えられます。今後は、意志共鳴をすることがこの分断を克服するとしました。相互理解・相互信頼をできるような情報に加えて、体験までネットワーク化できるような体験社会を実現すれば、お互いに意志共鳴できるのではないかと考えています。

「意志共鳴型社会」こそが、最初のシナリオ作成で登場した4つのシナリオに続く、「5つ目のシナリオ」であると岡本氏。これがどのような社会なのかを説明するムービーの公開もスタートしており、NECは着々と、自分たちの描く未来に向けた長期視点での取り組みに踏み出している。

2050年未来シナリオを活用した企業変革推進の3つのポイント

ここまでご紹介した内容の中から要点を抽出すると、以下のようになる。この中で最も大切なのは、「視座」であると岡本氏。

岡本:自分たちの意識を変えることで、今までは二者択一の選択しかできなかった部分に対して、新しい世界観の提案が可能になります。その上で2や3にあるように、従来の枠組みを外していく。そして、実際には最低限の未来予測がありつつも、まずは自分たちがどうしていきたいかという意志を示していく。自分たちを主語とした「I」や「We」で語るからこそ対話が生まれ、そこに共鳴してくれる社内外の仲間と一緒に未来を作っていけますし、実際にそういうことができるようになったと感じています。

NECの2050未来シナリオの創り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。NECの2050未来シナリオの創り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。


【無料ホワイトペーパー】
NECの2050未来シナリオの創り方 ―サステナビリティ経営の実現に向けたスペキュラティブ・デザインによる長期シナリオ策定のステップと実践事例とは?―
本ホワイトペーパーは、2021年8月5日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。VUCA時代にトップから現場まで、全社で納得感のある長期目標を検討している皆様に向けて、独自の2050年未来シナリオが注目を集めているNEC未来創造会議の実例をもとに長期シナリオ策定ステップについてご紹介しています。