【イベントレポート】ヤフー株式会社執行役員が語る ―ESG投資を呼び込む、企業版ふるさと納税を活用した脱炭素起点の企業成長の取り組み事例―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/07/19回では、時代に合わせた社会価値を提供するべく企業変革に挑戦されている皆様に向けて、サステナビリティの取り組みへ注力するヤフー株式会社の執行役員 西田氏と鹿児島県大崎町にて官民連携によるSDGs推進事業に携わる 西塔氏に、脱炭素社会実現へ挑戦するために企業版ふるさと納税を活用した企業成長/サステナビリティ/地方創生を結びつけるポイントをお伝えします。
「外部と積極的に連携し、SDGsへの貢献や脱炭素への取り組みを進めている具体的な事例が知りたい」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
西田 修一氏
ヤフー株式会社 執行役員 コーポレートグループ SR推進統括本部長
2004年、ヤフーに入社。2006年から「Yahoo! JAPAN」トップページの責任者を務める。2013年に検索部門へ異動。東日本大震災の復興支援キャンペーン「Search for 3.11 検索は応援になる。」や検索で一年を振り返るイベント「Yahoo!検索大賞」を立ち上げる。2015年4月に検索事業本部長およびユニットマネージャーに就任。2017年4月から現職。
西塔 大海氏
合作株式会社取締役、慶応義塾大学SFC研究所上席所員、大崎町SDGs推進協議会事務局
地方創生分野での人材活用制度設計の専門家として、内閣府企業版ふるさと納税(人材派遣型)や総務省地域プロジェクトマネージャーの制度づくりに携わる。地域活性化事業の企画立案を北海道から鹿児島まで全国で20自治体で行い、現在は鹿児島県大崎町にて官民連携連携によるSDGs推進事業を3ヵ年10億円規模で展開予定。企業と地方自治体の双方の立場に立ち、社会課題解決の方法を模索し続けている。
信澤 みなみ氏
株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進プロジェクト 代表
2014年サーキュレーションの創業に参画。成長ベンチャー企業に特化した経営基盤構築、採用人事・広報体制の構築、新規事業創出を担うコンサルタントとして活躍後、人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者として従事。「プロシェアリングで社会課題を解決する」ために、企業のサスティナビリティ推進支援・ NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクター とのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画〜運営の実績多数。
板垣 和水
イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/07/19時点のものになります。
Contents
ヤフー株式会社執行役員が語る、脱炭素起点で考える地域連携の意義
現在、気候変動対策への動きは世界的に加速している。例えば2022年度のダボス会議ではグローバルリスクの上位を環境関連が占め、COP26ではネットゼロのためのグラスゴー金融同盟が1京円を超える資金の拠出を公表した。企業には情報開示も含め、ESG投資を呼び込むための積極的な動きが求められている。
特に一丁目一番地である「脱炭素」を起点として、企業は今後どのように成長を図っていくべきなのか。今回はその視点から、「企業版ふるさと納税」を活用したヤフーの取り組み事例について詳しく伺った。
ヤフーが挑戦する社会課題解決の取り組み
大前提として、ヤフーのサステナビリティに対する軸は、「情報技術社会の発展」「災害・社会課題への支援」「誰もが活躍できる社会の実現」「持続可能な社会への挑戦」の4つだ。
西田:この4つのアップデートとサステナビリティの融合については、大きく2つの方向があります。一つはリスクの低減。ステークホルダーに対して、リスクを負わせながら事業はしないということです。もう一つは、人材やプラットフォーム、技術、資金といった我々の資産を世の中に還元し、共創することです。
取り組みの一環として、ヤフーは2023年度までに「100%再エネチャレンジ」を宣言。約3年という短期間での目標達成とともに、国際イニシアチブ「RE100」への早期加盟を目指している。この動きを受け、ヤフーの親会社であるZホールディングス自体も、「2030年までにカーボンニュートラル達成」を掲げた。
一見するとIT企業にとって脱炭素は重要課題ではないと捉えられがちだが、この点については「実際はサーバーの運用に大量の電気が必要であり、我々は化石燃料を使って事業をしていることになる」と西田氏。気候変動の責任の一端を担う存在として、課題解決に向けた積極姿勢を見せているのだ。
企業が地方自治体に寄付できる「企業版ふるさと納税」とは?
カーボンニュートラル達成に向けたプロジェクトとして、ヤフーは「地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」を発足。今回のウェビナーのテーマである企業版ふるさと納税を活用し、地方自治体との連携を計画した。
企業版ふるさと納税は、個人が利用できる「ふるさと納税」と類似の制度で、企業が地方公共団体に寄付を行うと、最大9割の税額控除を受けられるものだ。例えば1000万円の寄付をすれば900万円の控除が受けられ、実質負担は100万円で済む。
ヤフーはこの仕組みを活用して、寄付先を募集。厳正な審査の結果、10の地方公共団体への寄付を決定した。
寄付先として選ばれた「リサイクルの町」大崎町
企業版ふるさと納税によるヤフーからの寄付を受けた自治体の一つが、鹿児島県大崎町だ。大崎町はリサイクル率全国1位を誇り、多数のメディアにも取り沙汰されているため知名度は高い。
20年以上かけて実践してきた焼却炉に頼らない廃棄処理システムによって、大崎町のリサイクル率は83.1%に。現在は「大崎リサイクルシステム」としてリサイクル手法の海外展開も図っている。
信澤:大崎町さんはごみのリサイクル、あるいは有機化を実現する手段をお持ちですが、ここからさらに大きな構想として「サーキュラーヴィレッジ」を描かれているそうですね。
西塔:住民の皆さんの地道な取り組みで大崎町はリサイクルの町として全国1位になりましたが、我々はもっと大きな可能性を見出しています。特に資源循環の文脈においては、モデルタウンのようなものができるのではないかと。
その中には脱炭素の取り組みも入ってくるだろうということで、企業版ふるさと納税などを通した投資をいただきながら、アップデートプロジェクトをやらせていただいています。
企業版ふるさと納税による地域連携のメリット
企業が環境問題に取り組む地方自治体と連携をするメリットは、いくつかある。例えば自社のみでは限界のあるGHG排出削減への寄与はもちろん、メディア露出や現地への視察による広報、報告会やプロジェクトを通した行政機関、リーディングカンパニーとの情報交換などがその一例だ。
さらにもう一つのメリットは、地方自治体や他企業との共同プロジェクトが容易になる点にある。
西塔:例えばリサイクルが得意な町民の方々と一緒に、環境負荷低減商品の開発などを行っております。具体的にはユニチャームさんや近隣の自治体、リサイクルセンターさんと協働しながら、リサイクルできる紙おむつの実証実験に取り組んでいるところです。
信澤:1社だけでは難しい環境負荷低減の商品開発を、共同プロジェクトという形で行っているんですね。
経営視点で今すぐ企業版ふるさと納税を取り入れるべき3つの理由
企業が地域と連携することによって、大きなシナジー効果が得られるとわかった。以上を踏まえ、改めて経営視点で企業版ふるさと納税を取り入れるべき理由について解説していただいた。
[Reason.1]カーボンニュートラルの手段を地域連携のもと増やせる
第一の理由は、カーボンニュートラルの手段を増やせる点だ。西田氏曰く、基本的にカーボンニュートラルの方法はカーボン・クレジットの購入――つまり、証書によって自社が排出するGHGをオフセットする手法が最も現実的だという。
一方西田氏は、「クレジットのみでカーボンニュートラルの実現を目指すのはニーズや在庫の問題でリスクが高く、いくつもの手段を組み合わせてポートフォリオを組み、リスク分散をする必要がある」とも語る。
西田:また、証書でカーボンニュートラルを行うことに加えて、しっかりと実質的に炭素を減らせるような内容をポートフォリオの中に組み込むかどうかで、企業のスタンスが表れると思います。
[Reason.2]企業として税金をどう社会価値に変えるべきか意思表示ができる
「企業のスタンス」という意味でもう一つポイントになるのが、税金の使い道だ。企業版ふるさと納税はここまでに解説した通り、寄附金額の最大9割が法人関係税から控除される。この点について、「本来税金として納めるべき資金を、自分たちの意思に基づいて社会に還元できる」というのが西田氏の考えだ。
西田:例えば寄付金1000万円の9割は900万円ですが、これを税金として納めても、どのように使われるのか全くわかりません。その資金を、自分たちのビジョンや信念に沿う取り組みをしている自治体への支援に変えられるのは、非常に有意義です。
もちろん1割は自己負担ですが、負担以上の効果が出るなら、会社としてはメリットしかないとジャッジをします。端的に言えば、メディアへの露出や自治体との関係性の構築によって、明らかに我々が実費で負担するよりも多くの効果を得られると考えています。
ただ、単純に「企業版ふるさと納税を活用して寄付をした」というだけではさほど盛り上がりはしないでしょう。寄付をする際にクリエイティビティや新規性を織り交ぜることによって、1割負担を超える大きなメリットが生まれるはずです。
[Reason.3]機関投資家をはじめ外部へのPRにもなり得る
最後の理由は、西田氏が前述したようなメディア露出も含めて外部へのPRになる得る点だ。例えば企業版ふるさと納税の施策を決算報告書に記載すれば機関投資家へのアピールになり、新たなビジネスチャンスのきっかけとなる可能性がある。
信澤:実際に取り組みを進めていく中で、機関投資家や他企業からの見え方は変わってきているのでしょうか?
西田:マスコミを含めメディアに取り扱っていただく機会を多く得られ、特に企業の方からは面談の依頼などがありました。どうすれば企業版ふるさと納税を活用できるのか、自分たちにもできるのかといったインタビューを受けたので、企業側からは注目されていると感じます。
企業版ふるさと納税を活用した脱炭素起点の企業成長まとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると以下のようになる。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。企業版ふるさと納税を活用した脱炭素起点の企業成長にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。
またサーキュレーションのプロシェアリングを通してさまざまな情報提供、ご支援が可能となっていますので、上記のようなテーマから、SDGs/ESG経営の実装、サステナビリティの理解浸透などに至るまで、自社に不足している知見があれば、ぜひご相談ください。