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【イベントレポート】失敗事例から学ぶ新規事業開発 ―新規事業を推進するフレームワークを学ぶ独自メソッド―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/07/27回では、新規事業推進におけるフレームワークの構築に課題を感じられている新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、多くの新規事業立ち上げを経験された新規事業開発のプロ 田平氏に、新規事業を推進した際の失敗事例から学ぶ新事業成功のポイントを独自メソッドを交えてご紹介いただきました。
「新規事業を検討しているが進め方の手順が不明確」
「新規事業を立案しているが成功するイメージが湧かない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

田平 誠人氏

田平 誠人氏

JOMYAKU株式会社 代表取締役 CEO ポート株式会社の創業期、株式会社フリークアウト・ホールディングス上場期の社長カバン持ちを経て、 スマホ訪問修理事業で起業し売却。その後個人間カーシェアリングサービスで起業し、トヨタ自動車株式会社との協業を経て、その後某社に事業売却。複数の事業立ち上げに従事し、現職。

松井 優作氏

松井 優作

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー 早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集 慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/07/27時点のものになります。

企業における新規事業推進の課題

現在、多くの企業は新規事業の立ち上げに苦戦している。これは、69.5%もの企業が新規事業開発の成功度について「成功とは言えない」と回答している点でも明らかだ。 上手く新規事業推進をできない理由はいくつかあり、第一に挙げられるのが新規事業開発の知識・ノウハウの不足だ。そしてもう一点は、予算の不足。こと予算に関しては、30%超の割合の企業が100万円未満の低予算で新規事業を立ち上げているというデータもある。

新規事業に挑む企業は、限られた人的・資金的リソースの中、スピード感をもって推進をしなければならない状況にあるといえる。

失敗する新規事業によくある思考と行動

とはいえ、新規事業が失敗してしまうのはリソースだけの問題ではない。これまでさまざまな事業の立ち上げに携わり、失敗も多く経験してきた新規事業開発のプロである田平氏によると、3つの思考と行動が影響しているという。

事業への想いが強すぎる

第一の要因は、「事業への想いが強すぎる」ことだ。新規事業を成功させるために事業への想いは不可欠であるという見方もできるが、田平氏はこの点について、「想いが強すぎるがゆえに発生する弊害」を語った。

田平:想いが強すぎて「どういうサービス・プロダクトであるべきか」に直進してしまい、結果的にお客様に求められていないものを作ってしまうという失敗が実際にありました。 新規事業を任せられるような人は少なからずこれまでの仕事で成果を残し、会社からの期待を背負っていると思います。そういう成功体験があるがゆえに、自分たちが考えていること、やりたいことに猪突猛進してしまうのです。 しかし、ビジネスはお客様の課題解決のために「価値あるもの」を作るのが大前提です。お客様に貢献できているかどうかが最重要であり、お客様目線への切り替えが必要になるでしょう。

松井:「顧客不在の想い」はよくないのですね。

2次データで判断している

2つ目の失敗要素となるのは、「2次データで判断している」ケースだ。田平氏曰く、定量的な数字のみを参考にして新規事業をスタートしても、顧客の反応が芳しくないことは多々あるという。

松井:「お客様の声を聞きましょう」という話はよくあると思いますが、具体的にはどのように収集するのがベストなのでしょうか。

田平:我々の一番のモットーでもありますが、現場に行くことです。お客様に会い、お客様が何を考えていてどういう行動をして、何をしたいのかを事細かに観察しましょう。 また、お客様は必ずしも要望を口に出すわけではないので、言葉にはならない行間を読むのも非常に大事です。

Unit Economicsの意識が弱い

最後のポイントは、Unit Economicsへの意識についてだ。Unit Economicsとは、顧客一人あたりのサービスの採算性を指す。事業に採算性があるのかどうかに対する意識が弱いと、新規事業は失敗につながるという。

田平:私は以前、新規事業を進める上で売上や利用者数のほうに重きを置いていました。しかし、そもそも「100円で仕入れて90円で売る」という状態を続けるのは厳しいものがあります。100円で仕入れたら、120円で売るような状態を作らなければいけません。だからこそ、1ユーザーあたりで採算が取れているかどうかは、注意深くウォッチすべきです。 どんな数字を目指すべきで、現状とはどれぐらい乖離があり、どうすれば改善していけるのかを模索して動いていく必要があるでしょう。

松井:逆に、理想とするUnit Economicsに対して現状とのギャップがあまりにも大きい、何を改善しても成り立たなそうな状況であるといった見極めは、早めにしなければいけないですね。

田平:おっしゃる通りですね。「誰の、どんな課題を、どう解決するのか」――Who、What、Howの組み合わせがどれほどハマっていても、Unit Economicsが合わなければ事業としては厳しいでしょう。早期に考え直さなければいけません。

新規事業立ち上げを成功に導く、田平式新規事業フレームワーク

田平氏はここまでに紹介したような失敗を乗り越え、現在はJOMYAKU株式会社で産業廃棄物処理領域の業務効率化ソリューション「JOMYAKU」の開発・提供を行っている。 その成功を踏まえて、田平氏が新規事業を生み出していくプロセスをどのように推進したのか、3つのフェーズに分けたフレームワークとしてご紹介いただいた。

PHASE.1 企画検討/ブレスト

企画検討及びブレストのフェーズで必要なのは、「ゼロから生み出そうと考えないこと」であるという。新規事業はこれまでになかった新しいアイデアを生み出すイメージが強いが、これはどういうことなのか。

田平:大前提として、新規事業を作るにあたってゼロから何かを生み出すのは不可能だと考えています。人口1億2000万人いる日本の中で、大体の事柄は解決されていて、その中で自分が考えているのと近しい事業をやっている人は多いからです。その先人の知恵を借りましょう。日本のみならず海外からの事例も参考にして、業界選びやサービス開発のヒントを得るのが、私が持ち続けているスタンスです。

そんな市場のトレンドを網羅的に調査するために田平氏が利用しているのが、ベンチャー企業の情報データベース「crunchbase」というツールだ。企業概要や経営メンバー、資金調達、投資家、商品などを含む50万件以上の情報が登録されている。 こうしたツールなども用いながら、田平氏は成長過程にある企業がどんなドメインでどんなプロダクトを提供しているのかなどを洗い出し、企画検討のためのアタリを付けていくという。

PHASE.2 企画立案/推進

次の企画立案及び推進フェーズでは、「否定され続けてもヘコまない」マインドの持ち方が重要になる。

田平:ゼロから事業を作るのは本当に難しいですし、9割以上は成功しないまま終わります。最初に考えていた仮説がそのまま上手くいくこともほぼありません。お客様から「それは求めていない」と否定され続けます。そのときに「あの人はわかっていない」「自分はこっちがいいと思う」と考えを歪めずに、立ち上がり続けなければいけません。

松井:スライドには「プロダクトは作り込まない」というポイントも書いていただいていますが、これはどういうことですか?

田平:Who、What、Howの組み合わせの確度が高まってきた段階でサービスを提供し、実際に課題解決ができるかを確認しますよね。これはすごく難しくて、Howを提供して初めてWho、Whatが本当に存在するのかどうかがわかることもあれば、Who、Whatは存在してもHowがハマらないケースなどもあるため、Who、What、Howが正しいかどうかを測る検証は、できるだけ短いサイクルで回す必要があります。 例えば半年もの時間をかけて作ったHowが全くハマらなかったら、どうしようもありません。まずは既存サービスをテコ入れするなど、限りなく工数を減らして検証するのが理想です。

PHASE.3 市場投下

最後の市場投下フェーズに関しては、やはりUnit Economicsを意識するのと同時に、ユーザーのファン化がポイントになる。

田平:最初はプロダクトも稚拙なものができてしまうので、お客様が100%満足できないケースが多々発生します。それを補うのが自分たちの熱量であり、お客様からの「この人たちなら何かやってくれそう」という想いです。人の持つ可能性を根底に置いた上で、お客様の意見を聞き、協力してもらいながら事業を進めていくのが特に大事です。

松井:一方で、スライドには「お客さんの意見を鵜呑みにする実装はNG」とあります。顧客の声を聞く姿勢とどう使い分けるのでしょうか。

田平:お客様の表層的な意見ではなく、本質的に何がしたいのかをどんどん深掘っていく必要があります。お客様が「右」と言っていても実際は「左」だったというのはよくある話ですから、そういう意味で鵜呑みにしないようにしましょう。

失敗事例から学ぶ新規事業開発まとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると以下のようになる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。失敗事例から学ぶ新規事業開発にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
失敗事例から学ぶ新規事業開発 ―新規事業を推進するフレームワークを学ぶ独自メソッド―
本ホワイトペーパーは、2022年7月27日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。新規事業推進におけるフレームワークの構築に課題を感じられている新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、新事業成功のポイントを新規事業開発のプロ 田平氏の独自メソッドを交えてご紹介しております。