【イベントレポート】戦略的SNSマーケティング ―ブランド戦略から逆算した企業がSNSマーケティングを実践する5つのポイント―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/05/18回では、SNSを運用しているが効果が見えず、改善すべき点を模索しているという皆様に向けて
SNSマーケティングに強みを持ち、D2C事業/企業のマーケティング支援/コーポレートブランディング等をマルチに手がけるプロ 南氏に、ブランド戦略から逆算したSNSマーケティングを実践するポイントをご紹介いただきました。
「SNSマーケティングに取り組んでも、ファンやエンゲージメントがどう増えているのかよくわからない」
「担当者が企業SNSを運用しているが、ブランド訴求に繋がる戦略が描けておらずフィードバックができない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
南 大樹氏
株式会社レゴファ 代表取締役/UNITY株式会社 社外取締役
2007年新卒で㈱USENに入社。新規開拓営業に従事し翌年2008年に退職。その後大手芸能事務所を経て、2011年に株式会社CCPR(サイバーエージェントグループ)に入社。企業のPRやSNSマーケティング、動画マーケティングに従事し、化粧品メーカーや商材メーカー等の幅広いジャンルのクライアントを担当。2018年~執行役員に就任し戦略の立案、経営マネジメントを経験。2020年4月〜独立し、D2C事業、企業のマーケティング支援、コーポレートブランディングを行う株式会社レゴファを設立。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
板垣 和水
イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/05/18時点のものになります。
Contents
企業が若手世代にアプローチするにはSNSマーケティングが必須
SNSはもはや、社会的インフラといっても過言ではない。LINEの利用率は2020年時点で90.3%を突破しており、Instagramも急速に成長を続けている。ソーシャルメディアマーケティング市場は2025年までに1兆1000億円規模にものぼると予想され、やはり拡大は著しい。
さらに40代以下のSNS利用時間は、テレビの利用時間を上回っている。この現状を鑑みると、多くの企業はSNSを押さえておかなければ、若手世代へのアプローチが難しくなる。あらゆる視点から見て、SNSマーケティングは企業の必須項目と言えるだろう。
SNSマーケティングを実施する前に押さえておくべき基本情報
多かれ少なかれSNSマーケティングに取り組み始めている企業が多い一方、実際にSNS効果的に展開するには戦略が必要だ。まずはSNSマーケティングの効用や手法、プラットフォーム別の特徴から押さえていきたい。
SNSマーケティングの効用と手法とは
まずSNSマーケティングの効用として期待できるのは、認知度拡大、情報伝達のスピード向上、ブランディング効果、ロイヤリティ醸成、顧客獲得単価・費用対効果の改善の5つだ。手法も以下の通り5つほど想定される。
南:私に来るご相談内容は単純に商品を売るための施策を練ってほしいというケースもありますし、ブランディングの一環として認知を広げたいケースもあります。企業のポジションによって相談内容は変わる印象です。
樋口:目的に合わせて効用や手法を選んでいくということですね。
SNSプラットフォーム別の特徴とは
実際に運用するSNSプラットフォームはおおよそ5つに大別される。Twitter、Facebook、Instagramが文字の投稿、YouTubeとTikTokが動画投稿という切り分けで考えるとわかりやすい。
南:例えばTwitterはニュース性を重視したメディアなので、フィードの流れが速いです。ある程度自社の商品のブランディングを行いたい場合は、InstagramやYouTubeで施策を打つケースが多いですね。
大手化粧品ブランドの戦略的SNSマーケティング実践ステップ
続いては実際に南氏が手掛けた大手化粧品ブランドのSNS施策実践事例について、簡単にステップ形式でご紹介する。
同ブランドはもともと少し高めの年齢層に向けて、女優を起用したマスマーケティングをメインに実施していた。しかし今後は若い世代も獲得するため、SNSマーケティングを推進。インフルエンサーの起用により、1年間で9000万リーチ獲得した。
大枠としては認知獲得、顧客体験、ブランド訴求の3ステップで進んだという。
[Step.1]認知獲得
樋口:ステップ1ではいきなり商品を訴求するのではなく、ファンを獲得するための土台づくりをしたとお伺いしています。
南:最初はシンプルに、ある程度マスメディアで活躍しているタレントやインフルエンサーをアサインしました。具体的には、若年層が見ているバラエティや恋愛リアリティ番組に出演している方々ですね。「この人知ってる」と思えるような人を、わかりやすくアサインした形です。
[Step.2]顧客体験
樋口:続いてのステップではポップアップイベントを開催し、若者が好むテイストで顧客体験を届ける施策を行ったそうですね。デジタルだけではなく、リアルイベントまで開催するものなんですか?
南:イベント自体はクライアントマターで進めていただきましたが、イベントの場で訴求を行うインフルエンサーのアサインは担当させていただきました。
樋口:インフルエンサーはどのような基準で選ぶのでしょうか。
南:顧客体験のフェーズにおいては、各世代別に訴求できる方を選びました。20代と40代では、同じ女性でも価値観や考え方が違いますからね。
20代は「このスペースにいる自分っておしゃれだな」「そんな自分をみんなに見せたいな」という欲求を持つ方が多いと感じます。一方40代の場合は「この商品の使用感はどうなんだろう」「どんな効果があるのだろう」という本物志向を持つ方が増えてきます。ですから40代向けには美容専門家の方をアサインし、20代向けにはモデル系、あるいはママ系のインフルエンサーを活用しました。
[Step.3]ブランド訴求
樋口:土台を固めた後、SNSを通じてブランドのメッセージを発信するわけですね。ブランド訴求の段階ではどのようなことを行ったのでしょうか?
南:ブランド側にコアとなる強いメッセージがあったので、そこに共感してくれるようなインフルエンサーの方をメインにアサインさせていただきました。それまではモデルやタレントがメインでしたが、スポーツ選手や芸人などに切り替えています。
その上で「自分自身が輝きたい日」――例えばドラマや雑誌の撮影、父親に会いに行く日などを設定し、その日に向けて化粧品を使って綺麗になっていく、という過程をSNSで発信してもらいました。
ブランド戦略から逆算したSNSマーケティングを実践する5つのポイント
SNSマーケティングの流れの大枠がわかったところで、ブランド戦略から逆算したSNSマーケティング実施のポイントについても5つご紹介いただいた。
[point.1]目的に合わせたSNSプラットフォームを選定
最初のポイントは、マーケティングを行うSNSプラットフォームの選定についてだ。よくある落とし穴としては、単純に「おしゃれだから」という理由でInstagramを運用し、ターゲット層にリーチできないケースがある。
南:SNSの運用をスタートする前に、目的を明確にするのが非常に重要です。ある程度一つのプラットフォームが育てば別の媒体での運用を進められるので、まずは一つ自社に合ったプラットフォームを設定しましょう。
[point.2]自社の戦略/プロダクトフェーズとSNSの使い方がマッチしている
2つ目のポイントは、自社の戦略やプロダクトのフェーズに対して、正しいSNSの使い方をしているかどうかだ。この点について南氏は、「新しくできたブランドがいきなりブランド訴求を行っても、ユーザーに響く可能性は低い」と述べる。
南:まずは自社のポジショニングをある程度明確にすることです。最近はファンとのコミュニケーションを重視した運用を行うD2Cブランドも多いですね。必ずしもそれが正解ではありませんが、こういった手法を頭に入れて運用を開始したほうが成功率は高くなるでしょう。
[point.3]自社SNSのインサイト分析を行っている
樋口:3つ目のポイントがインサイト分析。SNSに投稿して終わりになるのが、ありがちな落とし穴なんですね。
南:非常に多いですね。どのプラットフォームもビジネスアカウントがあればインサイトは見られるので、リーチ数やインプレッション、エンゲージメント、コメント数、いいね数、保存数などをしっかり分析すべきです。例えばどの曜日のどの時間に一番リーチが取れているのかも、インサイトを見れば全てわかります。その上でPDCAを回すのが何より大事ですね。
[point.4]商品に合ったインフルエンサーをアサインできている
樋口:ポイント4のありがちな落とし穴は、フォロワー数が多いインフルエンサーをアサインしても効果が出ず、費用対効果が悪くなってしまうケースです。私自身、過去にお客様から「広告代理店から勧められたインフルエンサーを活用したら、フォロワーの内訳が全部業者だった」という相談をいただいたことがあります。
南:フォロワー数だけを見て落とし穴にハマるケースはありますね。基本的にはそれよりもエンゲージ数が大事なんです。いいね数やコメント数、保存数はインフルエンサーをフォローしている熱量ですから。
例えば15万フォロワーと5万フォロワーの方をそれぞれ起用した場合、5万フォロワーに3倍のエンゲージメントがあるのなら、リーチ数は両者であまり変わりません。一方で費用はフォロワー単価で算出されるケースが多い。5万フォロワーのほうが、単純に3分の1の費用で効果的な訴求ができるということになります。
エンゲージメントの高さに加えて大切なのが、自社が訴求したいものとインフルエンサーのジャンル自体がマッチしているかどうかだ。双方が合致すれば、さらなる相乗効果を狙えるだろう。
[point.5]タレント/インフルエンサーのクリエイティブを使い倒す
樋口:最後のポイントは「タレントやインフルエンサーのクリエイティブを使い倒す」ですが、「使い倒す」というのはなかなか強い言葉ですね。
南:ほとんどのインフルエンサー案件は、投稿をして終わりというケースが多いです。ですが一部の通販コスメ系のクライアントさんなんかは、自社のWebバナーに積極的にインフルエンサーの肖像を起用し、バナーのABテストを細かに実施しています。それである程度クリック率が変わるので、二次利用の調整は最初の段階できっちり設定しておくのがおすすめです。
戦略的SNSマーケティングまとめ
今回のウェビナーのポイントを「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下のようにまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。戦略的SNSマーケティングにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。