プロシェアリングコンサルティング > マガジン > 働き方改革・テレワーク > 【イベントレポート】未来予想×事業構想 ―バックキャスティング型による中期経営計画の作り方3つのStep―

【イベントレポート】未来予想×事業構想 ―バックキャスティング型による中期経営計画の作り方3つのStep―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/06/14回では、自社のサービス・商品がなくなる危機感を持っているものの未来への打ち手に悩む皆様に向けて
戦略策定・実践のプロ 河瀬氏に、各業界の未来予想とバックキャスティング型で創る中期経営計画3つのStepをご紹介いただきました。
「10年後の未来の事業構想を描かなければならないと理解しているものの、何から手をつけていいかわからない」
「長期視点を持った中長期計画を策定したいが、地道な改善活動のみにとどまり、ここ数年は未達を繰り返している」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

河瀬 誠氏

河瀬 誠氏

MK&Associates 代表、立命館大学客員教授東京大学工学部卒、ボストン大学にて理学修士・経営学修士取得。素材メーカー、A.T. カーニー、ソフトバンク、ICMGを経て、現職。主に大手企業の幹部役職者向けに事業戦略策定・新規事業創造をワークアウトにて支援する、戦略策定・実践のプロフェッショナル。最近は未来予測・未来創造の仕事も多数。

松井 優作氏

松井 優作

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。

酒井 あすか

酒井 あすか

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/06/14時点のものになります。

長期視点でデジタルビジョンや中期経営計画を策定する目的と必要性

デジタル化によって、既存業界の破壊と新たな巨大ビジネスの登場が繰り返されて久しい。1990年代、世界最大の時価総額を誇っていたのはNTTだったが、現在はGoogleがその地位を占めている。動画配信や通信販売の勃興により、メディアや小売の在り方も大きく変わった。
これらの変化は、どの業界においても決して他人事ではない。今後はあらゆる業界において指数関数的なデジタル化の波が押し寄せ、大きな変革が起きるだろう。

そんな中、企業は目の前の改善を続けるばかりでは10年先の変化に対応できない。未来を見据えた戦略転換を図る意味で、中期経営計画は経営の重要な立ち位置になると考えられる。

各業界の未来予測とバックキャスティングによる中期経営計画とは?

未来を起点にした中期経営計画は、いわゆるバックキャスティング型での策定が必要になる。「間違いなくやってくる未来」――例えば超高齢化社会の到来や技術革新を基に未来を描き、そこから逆算して現在までのロードマップを描くということだ。
では、今後各業界では具体的にどのような変化が起こり得るのか。一つずつ河瀬氏に解説していただいた。

金融・保険業界

最初にご紹介するのは金融・保険業界の変化について。まず、現状対面で行われているような手続きは、ほとんどデジタル化されると考えられる。

河瀬:例えばアフリカやインドではすでにネットのみで完結する銀行のほうが多くの割合を占めています。銀行の支店で大勢の人が働くというのは21世紀的ではなく、存在意義がなくなっていくでしょう。リテール業務も変化します。よほど特殊な融資を除く99%の判断は、AIに任せられます。
保険に目を向けると、将来的に車が全て自動運転になれば自動車保険自体が不要になります。新事業領域としては、金融業界のほうからNFTを仕掛けてほしいくらいです。

製造業界

松井:次が製造業ですね。日本が一番外貨を稼いでいる業界には、どんな変化が起きるのでしょうか?

河瀬:製造業は「人」だと言われますが、これは「ノウハウ」のことです。製造業の職人が暗黙知として培ってきた知識が、日本は何より強かったわけです。しかし、そもそも今は人よりもロボットのほうが安く労働させられます。そこまでのノウハウが必要ない場合は、ロボットに置き換わっていくでしょう。
ノウハウそのものについても、例えばテスラはデジタルツインで何百万回もの「カイゼン」――試行錯誤を行っています。ものづくり自体も3Dプリンターで誰でも何でも作れるようになるとすれば、肝心なのはデザインやマーケティング、すなわち「何を作るか」になります。
素材系にしても今はAIを用いて化合物実験を行えますから、ゲームチェンジが起きるでしょう。

ヘルスケア業界

ヘルスケア業界にも著しい変化が起きる。要素として大きいのは、ビッグデータの存在と健康寿命の延伸だ。

河瀬:今まで医療データといえば年1回の健康診断や病院に診察に来たときのデータ程度でしたが、今はウェアラブル端末を付けているだけで運動センサー関係のビッグデータをどんどん取得できます。DNAも半日あれば解析できるようになりました。そうなると、「全ての病気が治る」世界がリアルに訪れ、患者数が減少します。
また、医師よりも機械のほうが精度の高い診断ができるようになり、医者と機械のコラボが生まれるはずです。

自動車業界

松井:ニュースなどで一番見かけるのが、自動車業界の話題かもしれません。MaaSやCASEなどのキーワードがあると思いますが、いかがですか?

河瀬:自動車はこれまでハードウェアでしたが、今後はソフトウェア、サービス化していきます。私はよく航空会社にたとえます。飛行機に乗るときにJALかANAかは気にしても、飛行機そのものがボーイングかエアバスかは覚えていませんよね。同様に、トヨタか日産かというのは関係がなくなるわけです。業界の競争は、エンターテインメント性やマイレージなどの観点へ移っていくでしょう。

バックキャスティング成功事例

実際に10年、20年、30年先の未来を予測してバックキャスティングを行い、経営を成功させた事例についても伺った。ここで取り上げるのは、あまりにも著名なAppleの例だ。

松井:Appleは「30年後に全員がコンピューターを手に持つようになる」というビジョンを掲げていました。必要な技術は必ずしもAppleだけが持っていたわけではなく、製品に関連した業界を巻き込みながらユーザーに製品を浸透させています。

河瀬:まさにバックキャストですね。予想される世界の中で自分たちがやるべきビジョンを作り、そこに向けて動いています。
日本に限らず、自分たちの手持ちの技術だけでどうにか頑張って進んでいこうとする「自前主義」のきらいは多くの企業にありますが、どうしてもできないことはあります。目指す世界を作るためには、誰かと協働したほうがいいでしょう。

中期経営計画の作り方3つの推進ステップ

ここからは河瀬氏が企業を支援する際、どのようにバックキャスティングで事業構想を作り上げていくのか、具体的な内容について教えていただいた。

[Phase.1未来予想]すでにある未来予測を活用して集中的にインプットする

第一に必要なのが、今ある「常識」と「成功体験」を捨て、変化を前提とした未来予想をすることだ。この点において河瀬氏は、決して自ら未来を予測する必要はなく、すでにあらゆる専門家が予想している未来の知識をインプットするのが肝要だとしている。

松井:実際に河瀬さんもさまざまなテーマで講師をされていらっしゃいますね。

河瀬:スライドでは日経のセミナーについてご紹介しました。上記のビジネススクールでは400ページ以上の動画資料をご用意していますので、よければぜひご覧ください。

[Phase.2未来構想]中長期で「スター」を育て続ける

次に行うべきは未来構想で、河瀬氏は特にポートフォリオマネジメントが必要だとしている。現状の事業が10年後に存在しない可能性があるならポートフォリオを変えて、次なる「スター」事業を作っていくべきなのだ。

松井:スライドにある「問題児」の事業を、いかに2030年までにスター事業にしていくのか、ということですね。新規事業は子供にも例えられると思いますが、子供が成長するために今から必要なことをしていくと。

河瀬:子供は大抵稼ぎませんから赤字ですし、アイデアが育つとは限りません。アイデアを100個は出してスクリーニングをかけ、1~2個のプロジェクトを半年~1年ほどかけて推進していくことになるでしょう。その中で上手くいくのは、せいぜい10個に1~2個です。しつこく粘り強く、5年、10年がかりで育てるイメージですね。

[Phase.3未来実装]ビジネスモデルキャンバス(BMC)とビジョンロードマップを描く

松井:実際に未来予測・構想を立てた次のプロセスとしては、BMCを描き、ビジョンロードマップを策定するとお伺いしました。

河瀬:このあたりはいわゆる新規事業をスタートするときの作法のようなものですね。多くの方は一度で完璧なBMCを作ろうとするのですが、感覚としては100枚以上書き直して、ある程度良いものに仕上げていく必要があります。

ビジョンロードマップの策定においては、具体的なビジョンの実現に向けて必要なリソースやビジネスモデルの検討が必要だ。その上で財務、顧客、仕事、人材などさまざまな観点から「提供価値」というゴールに向けたロードマップを作成することになる。
ここではさらに、トヨタの事例を挙げていただいた。

松井:トヨタはCASE、MaaS、車のデジタル化などの予測を基に、「WOVEN CITY」という実証実験をかなりの予算を投じて行っていますね。ビジョンに向けて実際の事業に落とし込む重要性を感じる事例です。

河瀬:これはあくまでわかりやすい事例ですね。トヨタのような大きな事業はやらないにしても、自分たちの業界が今後変化していくのは間違いありません。それに対して自分たちも少し手を付けてみる、やってみようと決断するところから始まります。
ビジョンだけを描いて終わりでは価値が生まれませんから、ロードマップを逆算して、足元で何をすべきかを決めるのが大事です。

未来予想×事業構想まとめ

今回のウェビナーのポイントを以下のようにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。未来予想×事業構想にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
未来予想×事業構想 ―バックキャスティング型による中期経営計画の作り方3つのStep―
本ホワイトペーパーは、2022年6月14日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。自社のサービス・商品がなくなる危機感を持っているものの未来への打ち手に悩む皆様に向けて、各業界の未来予想とバックキャスティング型で創る中期経営計画3つのStepをご紹介しております。