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【イベントレポート】カスタマーサクセス組織の創り方 ―理想の高LTVを実現するための4つの立ち上げステップとは?―

営業組織強化

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/04/27回では、自社サービスやプロダクトの収益基盤を強化したい、顧客フォローをしっかりやりたいとお考えの皆様に向けて、カスタマーサクセスのプロ 岡田氏に、カスタマーサクセスの重要度が高まる中で自社に最適なCS組織を創るために押さえたいポイントを事例とともにご紹介いただきました。
「SaaS事業を立ち上げており、営業フローは確立されてきたのでカスタマーサクセス組織も本腰を入れて構築したい」
「カスタマーサクセス組織を立ち上げたばかりだが、経験者がおらず成功するビジョンが見えていない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

岡田 奈津子氏

岡田 奈津子氏

colong株式会社 代表取締役一橋大学卒業後、グリー等を経て、2015年よりKaizen Platformにてカスタマーサクセス職に従事。国内では黎明期にあったカスタマーサクセスチームを立ち上げ、牽引した。フリーランス期間を経て、2020年7月にcolong株式会社を創業、代表取締役に就任。自身の経験を活かし複数の企業にてカスタマーサクセス推進をサポートする傍ら、カスタマーサクセスのエバンジェリストとして数多くのイベント・セミナーに登壇している。

樋口 達也氏

樋口 達也

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/04/27時点のものになります。

商品・サービス購入後に企業と顧客の関係を作るカスタマーサクセス

カスタマーサクセスとは、顧客がサービスを購入した後に、文字通り「顧客の成功」を目的として支援を行う顧客管理方法の一種だ。カスタマーサポートと混同されることもあるが、「サポート」とある通りカスタマーサポートは基本的に顧客からの問い合わせによって不満点を解消する傾向にあり、カスタマーサクセスは能動的に支援を行う点で相違がある。

カスタマーサクセス組織を上手く機能させれば、企業は最終的に顧客の継続利用やアップセル・クロスセルによるLTVの最大化、ひいては新規顧客の獲得――さらなる集客までが実現可能だ。

SaaSをはじめとするサブスク型のサービスが増加している現在、顧客と企業の関係は商品・サービスを購入した時点からスタートする。その視点で、より一層カスタマーサクセスの存在は重要度を増しているといえる。

4タイプ別に見るカスタマーサクセス組織立ち上げのポイント

カスタマーサクセスへの取り組みについて、岡田氏は「情報が多く、更新され続けている概念」であるとする。ただ単に担当者を置くのではなく、アップデートを重ねながら進化しなければ、カスタマーサクセスは成功しないという。

一見すると難易度が高いように思えるが、成功するカスタマーサクセス組織は「全社的にカスタマーサクセスに取り組んでいる」と岡田氏。これはどういうことなのか、まずはカスタマーサクセス組織立ち上げのポイントをタイプ別に教えていただきながら探っていく。

[Type.1]取引規模拡大型

大前提として、どんな企業のカスタマーサクセス組織も最初は「立ち上がり期」を経て、大きくは「取引規模拡大型」「SaaS+人的支援型」「利用顧客数拡大型」の3タイプのうちいずれかに変じていくという。

まず取引規模拡大型として代表的なのが、Salesforceだ。同社はカスタマーサクセスの重要性をいち早く察知し、現在までさまざまな取り組みを行ってきた。

岡田:Salesforceさんは最終的に全てのお客様が自力でプロダクトを使いこなせるようになることを前提にサービス設計をしており、なおかつ1社あたりの取引金額が大きいタイプです。

岡田:取引規模拡大型では継続率を見ていくのはもちろんですが、より多くの社員の方に使っていただくためには、キーパーソンを押さえにいかなければなりません。とにかくお客様に寄り添えるような方がハイタッチCSM(カスタマーサクセスマネージャー)として活躍するでしょう。営業経験があると強いですね。

ハイタッチというのは、「ベンダーとお客様が1対1で向き合い、1社あたりの人件費も高くなるような世界観」と岡田氏は語る。より濃密なコミュニケーションによって、顧客のエンゲージメントを高めていくのが取引規模拡大型の特徴だ。

[Type.2]利用顧客数拡大型

次の利用顧客拡大型は、freeeやマネーフォワード、Zoomなど、1社に対して深くコミットするというよりは、個人も含めた世の中のより多くのユーザーに使ってもらうようなタイプだ。

岡田:個人や中小企業には大企業のような資金力がないので、自ずと価格は下がります。商品・サービスを何百、何千万人といったユーザーに届けるには、カスタマーサクセスはデジタル的なアプローチを中心に行うことになるでしょう。

相対的な解約率が高いため、利用顧客数拡大型のカスタマーサクセスは必然的に利用率や継続率をKPIとして定めることになる。

岡田:ユーザー数が多いと、利用率などにまつわるデータの信憑性は高くなりますよね。そのデータをしっかり読み取り、施策に活かしていける方がカスタマーサクセスとしては適任です。

[Type.3]SaaS+人的支援型

SaaS+人的支援型というのは、文字通りプロダクトの利用に加えてベンダー側からの支援が加わるタイプのことだ。
例に挙げていただいたのは岡田氏の前職でもあるKaizen Platformが提供していた、同名のグロースハック領域のサービスだ。個別性が高く市場としても新しい領域だったため、人的支援なしでは顧客が成果を出しづらい状況にあった。

岡田:Kaizen Platformのカスタマーサクセスがやっていたことは大きく2つです。一つには、プロフェッショナルとしてのコンサルティング。もう一つが、いわゆるCSMが行う支援です。

樋口:難易度が高そうですね。

岡田:コンサルティングはカスタマーサクセスの本来の仕事ではないので、社内にも混乱が起きます。CSMとプロフェッショナルサービスはきちんと分けられるといいですね。

[Type.4]立ち上がり期

最後にご紹介するのが、これまでにご説明した3タイプ全てが通る「立ち上がり期」だ。特にサービス開始初期のカスタマーサクセスは立ち上がり期に「何でも屋」になりがちで、この時点でメンバーが疲弊してしまう可能性がある。

岡田:この時期はプロダクトのレポートをエクセルで手作りしたり、UI/UXが未熟なために社内で顧客の業務の代行が必要になったりと、さまざまな混乱が起きます。ここは一刻も早く抜けるべきタイミングですね。
私自身はカスタマーサクセスの立ち上がり期にご支援に入り、3タイプのうちどこを目指すのかを決めて移行するところまで伴走するケースが多いです。

混沌とした状況の中では深い事業理解を持つ社内の人材を配置し、外部人材とともに目指すべきタイプを早急に決定する必要が出てくるようだ。

カスタマーサクセス組織構築において重要な3つのポイント

カスタマーサクセス組織が目指していくべき3つのタイプと、立ち上がり期の要点ついて解説した。以上を踏まえて、カスタマーサクセス組織を構築する際に共通するポイントを以下のようにまとめた。

自社がどういう方向に向かいたいのかについては、「他部署や経営陣も含めてコンセンサスを取って進めていくことが重要」と岡田氏。カスタマーサクセスの在り方はそのまま商品・サービスの戦略に直結するという点で、全社的な動きが求められるようだ。

事例で学ぶ、カスタマーサクセス組織構築の4つのステップ

ここからは、具体的にカスタマーサクセス組織をどのように構築していくべきなのか、4つのステップで教えていただいた。基本的にはアジャイルと成功体験の積み重ねによってPDCAを回していく形になるため、スピード感が重要だ。

[Step.1]現状把握

最初のステップは現状把握。文字通り、現状の商品・サービスが抱えている課題やその緊急度、直近で改善すべきKPIなどを素早く把握する。
実際に岡田氏は売上規模4兆円の大企業において、2~3週間程度で現状把握を終えたという。

樋口:2~3週間というのはかなりスピード感がありますね。

岡田:そうですね。数字はある程度蓄積されていましたが、個社ごとのステータスがわからない状況だったので、一旦できるところまで進めました。あとは現状の情報を更新していけるような仕組みを整えて、次のステップへと進んだ事例です。

[Step.2]火消し

次のステップが火消しだ。組織の基盤や体制を整えるよりも先に、優先度の高い施策を選別し、早急に対処が必要なテーマを解決するという。

岡田:「課題を解決した」という成功体験が、チームや他部署にとってインパクトになります。ある程度の大きさの火を消すということですね。

樋口:こちらも事例をいただいています。

岡田:こちらの企業は2000~3000社顧客がいたものの毎月一定の解約があったため、解約率を何とかしたいタイミングでした。そこで顧客をエンタープライズとスモールビジネスに分け、まずはスモールビジネスから対策をする形で、火消しのステップを迎えました。

[Step.3]基盤整備

次のステップが基盤整備だ。ここでポイントになるのは、組織で一番強くすべき根幹を見極めることだという。

樋口:このあたりのフェーズから、どのカスタマーサクセスのタイプに進むかを決めていくのでしょうか?

岡田:おっしゃる通りです。火消しが応急処置なら、基盤整備は根本治療として、どこに向かっていくかを決めて足腰を強くするフェーズです。

ここで紹介する事例については、「カスタマーサクセスができているのに社内にその自覚がなかった」と岡田氏。

岡田:カスタマーサクセスの業務は、実は「商いの基本」のようなものです。そのため、カスタマーサクセス組織のメンバーは自分たちに何ができているのか、自覚がありませんでした。
そこでステップ2の火消しのタイミングでひとりの担当者ができていることを言語化し、基盤整備のフェーズにおいて事例の見える化を行いました。

いわゆるベストプラクティスを共有し、「自分たちはこのやり方を続けていい」という安心感とともに組織基盤を構築した事例だ。

[Step.4]カスタマーサクセス事例化

最後のステップがカスタマーサクセスの事例化だ。1~3までに築いた組織体制をベースとしながら、簡単にいえば「新入社員でもカスタマーサクセスができる」という状態へと持っていく。そのために、改めてカスタマーサクセスを事例に落とし込む必要があるという。

岡田:文化としてすでに再現性のある形でカスタマーサクセスが実行できているのであれば、新入社員でも「このように行動すればカスタマーサクセスができる」という状態を作るのが、最終的に目指すべきところです。

樋口:会社としても良い文化が生まれて、カスタマーサクセスをアピールできるようになりそうですね。

カスタマーサクセス組織の創り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下の3つにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。カスタマーサクセス組織の創り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
カスタマーサクセス組織の創り方 ―理想の高LTVを実現するための4つの立ち上げステップとは?―
本ホワイトペーパーは、2022年4月27日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。自社サービスやプロダクトの収益基盤を強化したい、顧客フォローをしっかりやりたいとお考えの皆様に向けて、自社に最適なCS組織を創るために押さえたいポイントを事例とともにご紹介しています。