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【イベントレポート】前進する新規事業 ―事業化に繋がるバリュープロポジションを作る3つのポイント―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

新規事業のアイデアはあっても、実現性や競合優位性を高める過程でつまずいてしまうケースは数多くあります。千三つとも言われるほど難易度の高い新規事業の創出。成功確率を高めるためには、バリュープロポジションが欠かせません。

そこで2022/4/6に開催したウェビナーでは新規事業をテーマにして、講師に元ソニーの善積氏をお招きしました。同氏はソニーで自身も新規事業を複数立ち上げ、Sony Startup Acceleration Programのプロデューサーとして100チーム以上の企業や団体へ新規事業立ち上げも支援しました。現在は独立し、多くの企業の新規事業創出を支援しています。

善積氏は、どのようにして新規事業の第一歩を踏み出し、事業化を行ってきたのか。バリュープロポジションを作るポイントとともにご紹介します。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

善積 真吾氏

善積 真吾氏

株式会社カマン FOUNDER & CEO2005年ソニー株式会社入社後、全自動カメラロボット「Party-shot」の発案者として事業化。その後ソニーの新規事業創出プログラムのオーディション立ち上げに参画し多数事業の事業開発、海外展開、設計開発リーダーを経験。Sony Startup Acceleration Programのプロデューサーとして、100チーム以上の大企業・ベンチャー・大学・NPOの新規事業立ち上げ支援。2020年より株式会社カマン創業し、起業家や新規事業創出プログラム立ち上げ支援を行う。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

酒井 あすか

酒井 あすか

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/04/06時点のものになります。

新規事業の事業化までに立ちはだかる壁とは

新規事業の成功確率はわずか10%以下――。そんな通説を耳にしたことがある方も多いだろう。実際に某企業で35年以上行われている新規事業開発プログラムにおいては、応募が630件に対して事業化したのは12件、このうち黒字化したのはわずか2件という数字が出ている。
ただでさえハードルが高い新規事業の難易度をさらに高めているのが、マクロ環境の変化スピードの加速だ。例えば2018年に施行されたGDPR(個人情報保護法)、ITPによるCookie規制の問題、物価の急上昇など、例を挙げれば枚挙にいとまがない。

現在は、こうした外部環境による急速なビジネスモデルの変化を想定した上で、新規事業を開発しなければならない状況なのだ。

成功事例で学ぶ、社内新規事業立ち上げの動き方

ここからは善積氏が実際に手掛けた新規事業の事例やアクセラレーションプログラムの立ち上げ経緯を伺いながら、成功のヒントを探っていった。

ソニー時代の新規事業立ち上げ経験

社長にアイデアを直談判し、ボトムアップで商品化を実現

前提として、ソニーには最初から新規事業立ち上げの仕組みがあったわけではない。その上で善積氏はソニーに入社後、カメラの自動撮影をテーマとしたプロダクトアイデアを創出。事業化に向けた動きを進めていったという。

善積:今でいうAIのようなものをカメラに搭載し、自動で構図を考えて撮影するというテーマでプロトタイプを作成しました。なんとか商品化するため社長に直接メールをしたり、事業本部長の勧めでコンテストに応募して表彰をいただいたりして、珍しくボトムアップで商品化できたラッキーな事例でした。今で言うリーンスタートアップを実践していたような形ですね。

新規事業アイデアを活かす仕組みの必要性を痛切に感じた

実際にボトムアップでの新規事業立ち上げに成功した善積氏は、仕組みがないことで「アイデアの尖りが失われる」という実態を実感した。

善積:なんとか商品化までいけたとしても、ステークホルダー全員がOKを出すような案に変えていくと、だんだんと丸みを帯びた商品になってしまいます。最終的にどういう価値提案をしたかったのかよくわからなくなり、結果として売れない、ということもあったんです。

村田:こういった問題を克服し、現場の声を経営に伝えていくための取り組みが、アクセラレーションプログラムの立ち上げにつながっていったのですね。

アクセラレーションプログラム下で「Must have」の事業を創出

ソニーの社内新規事業創出プログラムのオーディション立ち上げに参画した善積氏。実際にプログラムを立ち上げた後、仕組みの中で成功する事業を創出するため、善積氏はノーコードのIoT開発ツールの開発に着手した。

善積:プロトタイプ作るのはエンジニアでも難しいものです。そこでより直感的に、タブレット上でプロトタイピングを実現できるツールの開発を進めました。

当初は高額を理由に、商品は売れなかった。しかし方針を転換し、市場を教育現場に絞り込んだことによって商品はユーザーにとって「Nice to have(あったほうがよい)」から「Must have(必要である)」なものへと変化し、黒字化に成功した。

独立後の事業オーディションの立ち上げ経験

善積氏はソニーから独立した後、事業オーディション立ち上げに数多く携わっている。これは新規事業立ち上げのフェーズでいうと、仮説構築検証段階の支援だ。ここで起きがちな障壁をまとめると、以下のようになる。

例えば最初の「新規事業の進め方がわからない」については、共通概念を研修で共有する方法が有効であるという。また事業案の良し悪しを判断するために重要なのが、審査基準の明確化だ。

善積:これは事務局側の問題なのですが、審査項目の8割はどんな会社にも共通しています。私がご支援する際は残りの2割の中でその会社がオリジナルで重視すべき点を考え、重み付けを変えるといったことをサポートしています。

村田:いわゆるステージゲートのような形で、ある程度基準を作ることが重要なんですね。

事業化につながるバリュープロポジションを作るには?

前項のスライドにも挙げられている事業オーディション立ち上げの課題の一つが「事業の提供価値が不明確である」という点だ。
そこでここからは、いわゆるバリュープロポジションにフォーカスを当てて、よくある落とし穴やバリュープロポジションを作るポイントについて教えていただいた。

新規事業立ち上げでよくある落とし穴

最初に押さえておきたいのが、以下の3つの落とし穴だ。

誰のどんな課題を解決するサービスなのか、代替手段に対する優位性は何なのか、そして実現性はあるのかどうか。これらをクリアしてはじめて、マーケットから必要される事業が実現できるのだといえる。

バリュープロポジションの作り方3つのポイント

市場から必要とされるものを作るのは、当たり前のようで最も難しい。「新規事業が失敗する理由として一番多いのが、『市場から求められていなかったから』というデータもある」と善積氏。
ここを克服するためのポイントは3つだ。

[Point.1]スケールさせる段階的なストーリーを描く

まず留意すべき点は、プロダクトがスケールしていくための段階的なストーリーを描くべきということだ。善積氏はプロダクトを開発するにあたって、「狭いところから広く持っていくプロセスが必要」と語る。

善積:新規事業立ち上げる際にターゲットをアーリーアダプターに絞ると、ニッチになりすぎてしまいます。結果として、大企業の場合は「3億円程度の利益ではやる意味がない」ということで、提案が落ちるのもよくある話です。
しかし、最初に3億円を取ったらその先には30億円、さらに300億円の市場を狙うなど、最終的には広い市場へと向かっていく必要があります。最初の一歩として目指すべきものと、ロードマップは違うのです。

村田:最初はニッチ市場を見つけるとしても、その隣にまた異なるニッチ市場が隣接しているかどうかを最初から見ておくということですね。

[Point.2]バイアスを持たない顧客ヒアリング

もう一つのポイントが、顧客ヒアリングだ。極力バイアスを排除すれば、ヒアリングは非常に有効な要素となる。

善積:スライドに書いてある通り、まずは相手がどういう課題を抱えていて代替手段として何を実践しているのかを具体的に聞きましょう。スクリプトと違う方向に逸れるのも大歓迎で、そこからインサイトを得ることで顧客のセグメンテーションもできるようになっていきます。

[Point.3]仮説検証のループを素早く繰り返す

最後のポイントは仮説検証だ。極力素早く改善サイクルを回す――具体的には、3ヶ月100万円以内で開発とインタビューを繰り返すことを善積氏は提案している。

善積:段階があり、私は1万円程度からできることを3日かけて始めたりしています。それである程度良いフィードバックをもらったら3ヶ月で100万円、それも上手くいけば1年で数千万円かけて商品化するといいでしょう。いきなり最終成果物として1年で数千万円かけてしまうと、ニーズがなかったときにピボットもしづらくなってしまいます。

村田:いわゆるサンクコストのようなものになってしまうんですね。

前進する新規事業まとめ

今回のウェビナーのポイントを以下の3つのポイントとしてまとめた。

また今回の内容を踏まえ、経営者や新規事業責任者の方にすぐに取り組んでいただきたい内容は以下の通りだ。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。前進する新規事業にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
前進する新規事業 ―事業化に繋がるバリュープロポジションを作る3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2022年4月6日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。新規事業に関するアイデアの実現性や競合優位性を高める過程でつまずいてしまうという方に向けて、sonyの新規事業立ち上げ事例を交えながら、新規事業の第一歩を踏み出す事業化するためのポイントをご紹介しております。