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【イベントレポート】脱炭素×経営戦略 ―日本の550機関以上が実施している、次世代経営戦略の柱になるTCFDシナリオ分析とは―

SDGs

20,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2022/04/12回では、脱炭素の流れを経営成長戦略の機会に変えたいが施策への落とし込みに苦悩している皆様に向けて
世界標準でのESG対応が可能なプロ 市川氏と、脱炭素メディアGXチャンネル発行人兼統括編集長の前田氏に、次世代にむけて企業に求められる脱炭素への取り組みをご紹介いただきました。
「取引先大企業や親会社からCO2削減に向けた取り組みが求められているが、何から取り組めばい良いかわからない」
「脱炭素やサステナビリティの流れを経営の成長戦略の機会に変えたい」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

市川 隆志氏

市川 隆志氏

株式会社アスエク 代表取締役/世界標準でのESG対応が可能なプロ2007年双日株式会社入社。金属資源、エネルギー及びサステナビリティ推進に従事。
サステナビリティ推進では、世界標準に合わせた経営戦略やESGに対する戦術策定、企業の非財務情報格付けを行うESG評価機関や社内関係部署とのコミュニケーション、及び全社の評価質問表の対応を担当。現在は株式会社アスエク・代表取締役として、上場企業中心に企業のプロジェクトチームと伴走し、TCFD賛同に向けたシナリオ分析、非財務におけるマテリアリティ特定やCDP・ESG評価機関対応支援を実施。海外の取り組み事例紹介を中心としたオウンドメディア”あすてな”を運営。

前田 雄大氏

前田 雄大氏

脱炭素メディアGXチャンネル 発行人兼統括編集長2007年、東京大学経済学部卒、外務省入省。開発協力、原子力、大臣官房業務などを経て、2017年から気候変動を担当。G20大阪サミットの成功に貢献。パリ協定に基づく成長戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。2020年より脱炭素フィールドに職を転じ、2022年より現職。現在は、所属先において脱炭素事業のコンサルを中心に業務を手掛ける他、「GXチャンネル」というYouTubeチャンネルを通じて脱炭素情報を日々発信中。プレジデント・オンラインはじめ寄稿多数。書籍「60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門」も発売中。

信澤 みなみ氏

信澤 みなみ氏

株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進プロジェクト 代表
2014年サーキュレーションの創業に参画。成長ベンチャー企業に特化した経営基盤構築、採用人事・広報体制の構築、新規事業創出を担うコンサルタントとして活躍後、人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者として従事。「プロシェアリングで社会課題を解決する」ために、企業のサスティナビリティ推進支援・ NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクター とのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画〜運営の実績多数。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/04/12時点のものになります。

今知っておくべき脱炭素社会に向かう実態と未来

脱炭素が世界の重要課題であることは多くの企業が認知しているが、その動きが加速化している背景や将来的な予測について、はっきりと説明できる人は少ないのではないだろうか。
そこで今回はまず前田氏に、経営者が知っておくべき脱炭素を取り巻く潮流の実態について伺った。

カーボンニュートラル時代へ突入した経済的背景とは何か

大前提として、「脱炭素は環境やIRではなく、経済や社会のモデルチェンジの話」と前田氏は語る。

前田:カーボンニュートラルの議論の出発地点は、気候変動です。世界経済フォーラムでも、気候変動リスクとの向き合い方は一丁目一番地で議論をされています。

前田:ただしこれは、1カ国が解決できる問題ではありません。そこで1992年から国連での議論がスタートし、気候変動枠組条約を制定。さらに実行的にものごとを進めるため、2015年に採択されたのがパリ協定です。

パリ協定に到るまでに20数年も要したのは、「CO2削減が経済成長と相反しており、ゲーム理論が働いていた」と前田氏は分析している。ゲームチェンジを起こしたのは、再生可能エネルギーに対するコストの劇的な低下だ。2014~2019年にかけて世界的に大幅なコスト低下が発生したことで、脱炭素が経済性と両立できるようになったのだという。
現在の流れの中にあってはむしろ企業が脱炭素を経営戦略に含めなければ、「将来のコスト算出やリスク特定ができていない」「国際的なルール形成に無頓着である」「ESG投資の呼び込みができない」といった大きなマイナスになりかねないのだ。

脱炭素社会で成長するために企業に求められる3つのポイント

脱炭素は単なる環境問題ではなく、経済成長とも密接に絡み合っている。企業はその中でどのように成長戦略を描くべきなのか、3つのポイントについて引き続き前田氏に教えていただいた。

[point.1]脱炭素の潮流を把握し、チャンスとリスクを見極める

最初のポイントは、前項で紹介したような脱炭素の大きな潮流の本質を見極めるということだ。

前田:脱炭素を短期的なビジネスとして考えると、波に飲まれて失敗する可能性があります。脱炭素の流れは不可逆なものですから、市場は大きくなり、コストは下がっていきます。この流れは今後も加速していくため、イノベーションが起き、さらなるコストの低下が起きる……という形で歯車が回っていくでしょう。目標が上方修正される傾向もありますから、デジタルと同じくらいのスピード感だと捉えてください。

[point.2]サプライチェーンの脱炭素化

信澤:サプライチェーンについては、これから取り組まれる企業様向けにどんなポイントがあるのかを教えていただければと思います。

前田:トヨタやソニーといった大企業は、サプライチェーンまで脱炭素をやるべきだという流れになっていますね。そうしたプレッシャーは国際的に各サプライヤー、ベンダーにまでかかってくるでしょう。大企業であれ中小企業であれ、脱炭素化に取り込まれていきます。
このとき、自分たちが位置しているサプライチェーンの中ではどのくらいの速度で波がやってきているのかを見ていく必要があると思います。

[point.3]TCFDへの意欲的なコミットメント

信澤:最後がTCFDですね。目下取り組んでいる企業も増えてきていますが、こちらはいかがでしょうか。

前田:TCFDのコンセプトは、「段階的に脱炭素に取り組んで企業価値を向上させよう」です。その上で、どの企業がどの程度脱炭素のチャンスやリスクを把握できているかを測る指標になっているんですね。開示した内容を市場は評価しますから、しっかり絵姿を投影する必要があります。TCFDを通して、企業の取り組みを前進させてほしいところです。

[まとめ]脱炭素においては経済合理性がポイントとなる

ここまでの内容をまとめると、以下の通りだ。

脱炭素において大きなポイントになるのは「経済合理性」。企業は地球環境への配慮という以上に、脱炭素に取り組むことによるビジネスのリスクやチャンスを正確に捉えながら、成長戦略を進めていく必要がある。

脱炭素社会に向けた経営戦略、TCFD対応の実践事例

次のセッションではTCFDにフォーカスし、よくある課題や成功事例について市川氏に解説していただいた。

カーボンニュートラルの取り組みで重要なTCFDとは

そもそもTCFDとは「気候関連財務情報開示タスクフォース」の略称で、金融安定理事会(FSB)によって立ち上げられたものだ。署名企業は2020年9月時点で1419機関、このうち日本は303機関※が参加している。

※2022年5月現在、世界の賛同企業・機関は3319、このうち日本の賛同企業・機関は843

市川:TCFDは企業に対して気候関連情報の開示を促すもので、重要なのは投資家や金融機関に向けた情報開示であるという点です。企業はこの目的をしっかりと認識した上でTCFDを読み解いていく必要があります。
前田さんにご説明いただいたようなグローバルのメガトレンドやコーポレートガバナンス・コードにTCFDが盛り込まれるようになった背景を理解しておかないと、取り組んでもやり直しになってしまうケースが起きがちです。

【事例】メーカーが経営全体でTCFDに取り組む以前の課題と現在の進捗

市川氏はTCFDに初めて取り組む企業に対して、外部人材として数々の支援を行っている。今回はその中から、企業の状況や支援内容について事例も教えていただいた。

[成功事例.1]TCFDは手つかずの状態からシナリオに対するトランジションプランの策定まで到達

最初の事例は売上規模500億円以上のメーカーだ。「産業セクター自体、脱炭素の流れが強い企業だった」と市川氏。scope1、2はISOの対応で把握済みで、データはしっかり揃っていたという。

市川:ただし、投資家向けの情報がきちんと気候変動や経済と結び付いておらず、TCFDの文脈では「何をやったらいいのかわからない」という状態でした。財務インパクトの算定にまで至っていないのが大きな課題だったので、事業部とプロジェクトチームを組み、シナリオ分析を行いました。

信澤:現在は目標を設計し、経営計画にも組み込まれているんですね。

市川:各事業部がシナリオ分析で考えた社会像に対して戦略を適合していくには、どんなギャップを埋める必要があるのか、トランジションプランの策定に取り組んでいただいています。

[成功事例.2]TCFDに賛同し、3カ年以上の経営計画検討を経営サイクルに

もう一つの事例では、一部の経営陣が気候変動インパクトに強い懸念を持ったことから市川氏に支援の依頼が来たという。

市川:こちらもシナリオ分析を進めていったのですが、どうしてもリスク算定に視点が行きがちでした。とはいえ、リスクの反対にはチャンスがあります。ここを認識して、考えうるビジネスチャンスにまで一歩踏み込んで考えているのが現状です。

現在同社は、3カ年以上の経営企画検討を経営サイクルに盛り込んでいるという。

TCFD対応に向けた5つのステップ

ここからは具体的に、TCFD対応をどのようなステップで進めるべきなのか、5つのステップに分けてご紹介いただいた。「概要理解」「排出量を計算」「目標設定」「シナリオ分析」「シナリオ開示」という順になるが、「シナリオ開示」は一般的な内容となるため、今回は割愛する。

[step.1]概要理解

最初に必要なのがTCFDの概要理解だ。「経営者や役員の意識変革が一番重要なフェーズ」と市川氏。

市川:やはり気候変動に対する危機感を持っていただきたいですね。そしてそのテーマと自社のビジネスは関係するという意識を持っていただくことが、何よりも重要です。

[step.2]排出量の計算

信澤:危機感を持ち、自分たちの現在位置を知る意味で次に行うのが、CO2排出量の計算かと思います。Scope1、2、3まで算出するのは難しさがあると思うのですが、この点はいかがですか?

市川:まずは自社で排出している量を算定するScope1、そして間接排出の量を算定するScope2を把握しましょう。何をやるにしても、現在の自社の姿がわからないと将来を描くのは難しくなります。

[step.3]目標設定

信澤:算出した数値を踏まえて、目標設定を行うということですね。

市川:実際にアクションを起こすにしても、どの山に登るかを決めましょう。目標が高尾山なのか富士山なのかエベレストなのかによって、プロセス、スケジュール、必要な経営リソースは全く異なります。目標設定をした上で、具体的なアクションに落とし込んでいく流れになります。

信澤:つい自分の手が届きそうな目標設定をしがちだと思いますが、どの程度までコミットメントを示すといいのでしょうか?

市川:グローバル全体が追いかけている1.5度シナリオは絶対に考えておきたいところです。市場需要の変化が非常に大きい部分ですから、インパクトを考えておかないとリスクもチャンスも抽出できません。

[step.4]シナリオ分析

信澤:目標設定を踏まえてシナリオ分析を行うかと思いますが、ここに難しさを感じている企業も多そうです。

市川:実際のシナリオ分析では、気温上昇や市場の不確実性を軸にしながら、将来的な社会像をいくつかのパターンで考えていきます。そして実際に世界がその社会像に傾いた場合、自社のプロダクトやサービスには引き続き需要があるのか、成長できるのか、それとも消えてしまうのか。こういったテーマについて、事業部が考えることが重要です。

脱炭素×経営戦略まとめ

今回のウェビナーのポイントを「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下の5つにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。脱炭素×経営戦略にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
脱炭素×経営戦略 ―日本の550機関以上が実施している、次世代経営戦略の柱になるTCFDシナリオ分析とは―
本ホワイトペーパーは、2022年4月12日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。脱炭素の流れを経営成長戦略の機会に変えたいが施策への落とし込みに苦悩している皆様に向けて、次世代にむけて企業に求められる脱炭素の取り組みやTCFD対応についてご紹介しております。