【イベントレポート】社員と創る企業ブランディング戦略2030 ―支援実績80社以上のブランディングのプロに学ぶ、2030年にむけた次世代ブランディングとは?―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2021年7月8日は、変化し続ける市場や時代の潮流に合わせて、リブランディングを図ろうとお考えの皆様に向けて、支援実績80社以上を誇るブランディングのプロである岡山氏からデジタル時代のブランディングの裏側をお伺いしました。
「時代に合わせたリブランディングを実施したい」
「コーポレートブランディングを強化して社員のロイヤリティを高めたい」
このようなお悩みをお持ちの方は必見です。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
岡山 史興氏
スタートアップから大企業まで80社以上の支援実績を持つ、ブランディングのプロ
戦略PRコンサルティング会社にて、町工場から生まれたテーブルウェアブランドのPRを初期から担当し、広告費ゼロの中でPR戦略を立案、実行し、大ヒットを生む。これまで新規事業立ち上げやアプリ開発など領域を横断し幅広くマーケティング活動に携わった背景から、情報発信のみに特化した支援ではなく、経営戦略から全体最適を考えたPR・広報戦略を描けることが強み。ニュースアプリスタートアップの上場に向けたコーポレートコミュニケーション支援など、スタートアップ、大企業、地域に至るまで80社以上の支援実績を誇る。
鈴木 貴大氏
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材紹介会社にてトップセールスとして活躍後、創業期のサーキュレーションへ入社。支社長として東海支社を立ち上げた後に独立。 フリーランスとして複数社で事業開発、営業統括、役員等を務めた後、再びサーキュレーションに参画。現在は首都圏のメガベンチャー・急成長IT企業を担当するセクションの責任者。最先端テクノロジーを駆使した新規事業開発、DX推進に向けた経営戦略策定~組織編成支援など変革プロジェクトの実績豊富。
花園 絵理香
イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2021/7/8時点のものになります。
Contents
改めて考える、ブランディングとマーケティングの違いと効果とは
企業ブランディングについて考えるときについ混同しがちなのが、マーケティングだ。マーケティング戦略には、販促やプロモーションが欠かせない。マーケティングとブランディングの施策にある程度重複する部分が出てくるのが、混同の原因のひとつだと考えられる。
しかし、マーケティングとブランディングは明確に役割と求める効果が異なる。それをまとめたのが以下のスライドだ。
マーケティングにおいて重要なのは、市場づくりやその中で自社がシェア拡大を目指すための施策であり、どちらかといえば「売れる仕組みや手段を展開すること」という色が強い。一方でブランディングの主眼となるのはオンリーワンのサービスや事業の創出であり、「価値を顧客に認知してもらうこと」が目的となる。
2030年を見据えたブランディング戦略の前提にあるもの
従来のブランディングはアテンション重視、つまり顧客に注目してもらうことで、企業の存在意義を拡散してもらう形が主流だったといえる。では、これから――2030年に向かうブランディングは、従来と何が違うのか。
本ウェビナーでは、レコチョクなどをはじめ大手企業のブランディング案件を数多く手掛けてきた岡山氏の描く、「これからのブランディング」について解説していただいた。
岡山氏いわく、2030ブランディングを進める前提として、まず知っておくべき2つの事柄があるという。
【前提1】ブランディングの中身は社内のメンバーが決める
まずひとつが、2030ブランディングは外部ではなく、内部の人間が判断していくべきだという点だ。従来は外部のコンサルタントや代理店プランナーがブランディング戦略を立案し、企業はそのプレゼンを受ける立場にあった。その理由について岡山氏は、「そのほうが確実性が高いと思われていたから」と述べる。
岡山:ただ、今の世の中は非常に速いスピードで動いていますし、本来会社が何をやるのか、何を語るのかは、内部の人間が決めるべき事柄です。会社やサービスに対して思いのある方が原動力になることが、長期的に見るとブランディングでは非常に重要になります。
また、そういう人がどう輝けるか、どう推進力になれるかを見越して体制を作るのが、これからのブランディングの在り方だと考えています。
鈴木:私もどちらかというと、スライドの左側にある一般的な戦略作成のほうがオーソドックスだと感じました。外部にお願いしたほうが安心感はありますが、それでは自分たちで課題感や納得感を醸成することが難しいのでしょうか?
岡山:そうですね。それに上手くいっても失敗しても、誰かのせいにできてしまうのが大きいと思います。我々プロ人材はあくまで伴走しているパートナーなので、企業の中の人が主体となることが大事です。
【前提2】自分たちでブランディングを推進した実感を得られる手法を採る
もうひとつの前提は、ブランディングを推進するサイクルそのものも「自分たちの手」でつくることを意識するべきだという点だ。岡山氏はここでもやはり、内部のメンバーが自分たちでプロジェクトを推進していくことの重要性を説く。
岡山:自分たちで考えたやり方や実現したいことに目を向けてスタートすることが大事なんです。経営者と目線を合わせ、その中で自分がどういうアクションを取っていけばいいのかを自分で考えると、ブランディングを推進した実感もより大きなものになります。
ブランディングというと外に対して見せることを考えがちですが、それ以上に社内の人が「会社のためにがんばろう」と思うことが、ひいては組織づくりにも影響する。そういう考え方を持つといいのかなと思います。
岡山氏が実際に企業の支援に入るときは、ビジョンの練り直しからスタートすることが多いという。
岡山:ビジョンを問い直す議論するというのが重要です。例えばレコチョクさんの場合は、現場のそれぞれの立場から考えた結果「今のビジョンでいい」という話になりました。そこに改めて気づくことが重要だと思っています。
成功する2030チームブランディング戦略のロードマップ
岡山氏が企業の支援に入る際に描くのが、以下のようなロードマップだ。大体3ヶ月程度かけて、メンバーのアサインから方針決め、施策立案・実行までを進めていく。また、それぞれのステップの中では5つのテーマについて検討することになるという。
ここでは、それぞれの概要について掻い摘んでご紹介する。
【3ステップ】社員の考え方やアクションそのものがブランド価値につながる
まずメンバーアサインについては、ここまでにもご紹介した通りブランディングに対してやる気のある現場のメンバーを集めることが第一となる。専門家の作ったプランの辻褄合わせやデコレーションをするためのアサインにはしないことが重要だ。
また、PR目標設定――方針決めにおいて肝要なのは、短期的に計測できるポイントをいくつか置いておくことだという。ブランディングは一朝一夕にできるものではないというイメージも強いが、これはどういうことなのか。
岡山:ブランディングをやると、「いい感じに見せていこう」というふわっとした話で終わりがちなんです。成果が測りにくく、現場からすると「あれだけ予算をかけてプロジェクト化したのに何だったんだ」ということになる。ですから長期的に見たときの認知率やブランドイメージの向上といった要素以外に、短期的に計測できるポイントを置いておくことが重要です。
また、「できないことはできない」と言うことですね。現場がやれること、やりたいことにフォーカスして、そこに向かってエネルギーを150%注力することが求められます。
そして施策立案・実行において重要なのが、ビジュアルやコピーに命をかけるのではなく、具体的アクションに落とし込むことだ。岡山氏は「ブランディングイコール『見せ方』ではない」と語る。
岡山:例えばコンビニの従業員がおでんに指を突っ込んだ動画を投稿して炎上みたいな話がありますが、どんなにビジュアルで訴求したとしても、たった一人の従業員の行いで全てが無意味になってしまいます。外面を良くするのではなく、いかに中の人たちが自分たちのブランドを作っていくアクションができるか。それに心から納得しているかどうかを踏まえて、方針を設計していく必要があります。
これまでブランディングという領域には、明確な方法論や正解があったのだと思われる。しかし2030ブランディングにおいては「正解がないこと」が前提だ。その上で自分たちが自社ブランドをどう捉えるか、そして何をやりたいか・やりたくないかを、行動の軸にしていくべきなのだろう。
【5テーマ】専門家任せではなく自分たちで概況を整理することが自信になる
さて、ロードマップに紐付いて問われるのが「何を」「なぜ」「誰に」「どのように」「どうやって」という5つのテーマだ。
例えば「何を」の部分では、専門家の客観的な視点も踏まえながら、「社員が自社の価値や強み、何が特徴だと思っているのかを出し合って分類していくのが最初のステップ」だと岡山氏。
同様にステークホルダーとの関係や、ステークホルダーをつなぐ社会時流――つまり「誰に」と「なぜ」を分析した上で、自社が対外的に「どのように」認知されていくのかを言語化する。
最終的にファンや提携企業、ステークホルダーを「どうやって」つなぎ、ブランディング戦略を進めるのかを検討することになるという。
一見すると、専門家がやったほうが手っ取り早いように思われるある意味では当然行うべきプロセスだが、この点についての岡山氏の意見はやはり一貫している。
岡山:一連の流れは専門家が分析すれば非常に短時間で終わります。しかしそれこそ大事なのが、「誰がやるのか」という話なんです。誰かに考えてもらったアクションでは、企業のブランドは成り立ちません。
そうではなく、ここまでの一連のステップを会社の中で考えられた、整理できたということ自体がポイントであり、自信にもつながるのです。
自分たちで価値を創るこれからの企業ブランディングの在り方
2030ブランディングのロードマップを俯瞰する中で見えてくるのは、「これからのブランディング」の在り方だ。ここでは従来のブランディングとの比較と、ブランディングによって生まれる好循環について解説する。
これまでと2030ブランディングの比較
本記事の冒頭でも簡単に説明した通り、これまでのブランディングはアテンション重視・拡散タイプだった。対する2030ブランディングは、「エンゲージ重視・集中タイプ」だと言える。
以下のスライドにあるような概念的な図式で理解するなら、従来型はとにかく外へ外へと情報を打ち出していくイメージであるのに対して、これからは内側にあるものを、内部からどんどんと押し出していくようなイメージになる。
岡山:これまでは、目を引いて世の中に自社のことを認知してもらえばあとはOKだという状況が前提にありましたが、それでは長続きしません。受け取り手も目が肥えてきていますし、何より社内の人が白けてしまうからです。
それよりも、自分たちの手で会社を作っていく実感を得られたほうが働く場としても人気が出ます。何より今は働き手が会社を選ぶ時代ですから、会社のブランドが本物かどうかをすごく問われているんです。
これまでのブランディングが薬を塗って肌荒れを抑えるようなものだとしたら、これからは運動や食事による体質改善が求められていく。体質改善の最たるものは「血」です。血液となる社内のメンバー自身が何を考えてどんな行動を外に対して起こすか、つまり具体的アクションが大切になるのです。
2030ブランディング3つのポイント
社員たちが自ら納得しながら会社のブランドを作っていくためにポイントとなるのが、以下のような3つのサイクルだ。具体的なアクションを通じて短期リターンを得ることで納得度を高め、そこで得たモチベーションを基にさらに社内主体で自走することが肝要となる。
そうなれば社員の振る舞いを通して社会に対して企業価値を伝えられるだけではなく、社員自身もブランドを広める意義や企業に所属する意味を見出し、活躍につながるだろう。
外部のプロ人材はそのために必要な手法を教える立場であることを理解し、第三者の視点を伝えるファシリテーターやアシスト役として活用することも、2030ブランディングを推進する上ではポイントとなるはずだ。
社員と創る企業ブランディング2030まとめ
今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下の3点にまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。社員と作る企業ブランディング2030にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。