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【イベントレポート】ブランディングで創る新市場 ―IKEA日本ローンチ成功を支えたプロが語る、市場拡大のためのブランディング戦略―

ブランディング

19,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

情報大爆発時代を迎えた現在、企業が持続的に生き残っていくためにはユーザーをはじめとしたステークホルダーに対して、企業価値を正しく伝えていく必要があります。

そこで2022/3/9回のウェビナーは、「売上拡大を目指して新たな顧客層にアプローチしていきたいが進め方がわからない」「自社のサービスの認知を拡大したいが上手くいっていない」という経営者及び広報責任者の方々に向けて開催。講師にはIKEAの日本第1号店オープン日から約3.5万人の来店客獲得を実現させた、元IKEAのPRをマネージャーである草間氏にお越しいただきました。
IKEAが未開拓市場を切り開いたブランディング手法と市場拡大のためのブランディング戦略を、ぜひ参考にしてみてください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

草間 由紀氏

草間 由紀氏

元IKEA PRマネージャー、現ファビュコム合同会社 代表社員/CEO
日本市場の独自性からIKEA上陸時のブランディング/PR戦略を0→1構築し、知名度がない状態から新聞/雑誌/TVでのPR活動を通じて店舗オープン日より1日約3.5万人の来店客を獲得。現在は、国内外ブランドの新市場進出・スタートアップにおけるブランディング/PR/マーケテイングに従事し、従来の市場以外の市場開拓につなげるブランディング・コミュニケーション戦略提案、BtoB企業のBtoC戦略、ブランディングに基づいた商品開発提案から広報活動までのワンストップサービスを提供している。

鈴木 貴大氏

鈴木 貴大氏

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材紹介会社にてトップセールスとして活躍後、創業期のサーキュレーションへ入社。支社長として東海支社を立ち上げた後に独立。 フリーランスとして複数社で事業開発、営業統括、役員等を務めた後、再びサーキュレーションに参画。現在は首都圏のメガベンチャー・急成長IT企業を担当するセクションの責任者。最先端テクノロジーを駆使した新規事業開発、DX推進に向けた経営戦略策定~組織編成支援など変革プロジェクトの実績豊富。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/03/17時点のものになります。

情報大爆発時代における企業のブランディング戦略の必要性

現在世の中には膨大なデジタルデータが蓄積されており、情報過多の時代を迎えた。従来のようにテレビやラジオ、新聞などのマスメディアに露出するだけでは、企業の届けたい情報は個人にまでリーチしない。ことWebにおいて、広告はユーザーに忌避される傾向まで伺える。
さらに消費者の価値観の変化も著しく、機能的価値よりも情緒的価値、そして自己表現価値が重視されるようになってきた。
こうした変遷を受けて、企業はどのような戦略を採るべきなのか――。このポイントを握るのが、ブランディングだ。

IKEAの事例に学ぶ、未開拓市場を切り開いたブランディング手法とは?

ウェビナーではIKEAの事例を基に、現在多くの企業にとって必要なブランディング手法のヒントを探っていった。
IKEAが日本に上陸したのは2006年のことで、当時国内の知名度は皆無に等しかった。そんな状況の中でIKEAはどのようにブランドイメージを構築し、市場開拓を成功させたのだろうか。

IKEA日本上陸・1号店オープンまでの軌跡

IKEAが日本に第1号店をオープンする以前には、知名度の低さのほかにも数多くのネガティブ要因が存在した。海外の家具はサイズ感が日本の家屋に合わない、品質も「安かろう悪かろう」だというイメージが先行していたのだ。

草間:事前リサーチによってネガティブ要因があるのは明らかでしたから、ブランディングや広報活動による払拭を図りました。マスコミへのPR活動の結果、オープン前後で、ターゲットとするTV、雑誌、新聞などの媒体で適切な記事や露出が獲得でき、初日の来店者は3万5000人にまでのぼりました。

出口調査によると1号店の立地は都心から1時間以上かかる距離であるにもかかわらず、来場者の90%以上が東京都からで、彼らの多くは雑誌やテレビを通じてIKEAを知ったという。

IKEA日本進出時のブランディング戦略[3]ステップ

とはいえ、ただ単に露出を増やせば市場のネガティブなイメージを払拭できるわけではない。ここからはIKEAが具体的にどのような施策を用いてブランディングを行っていったのか、3ステップで教えていただいた。

[Step.1]日本市場に向けて企業理念をローカライズ

最初のステップとして行われたのが、企業理念のローカライズだ。IKEAの企業理念は「より快適な毎日を、より多くの方々に」というものだが、この伝え方について議論を行ったという。

草間:当時のIKEAにとって日本の家具・インテリア市場は未知の領域だったため、海外のIKEAでのキャリアの長いベテラン社員や私も含めて一緒にワークショップを行いました。各々のバックグラウンドに基づいて、企業理念をどう日本市場に落とし込むかを意見交換したのです。
ブランディングというとマーケティング部門が担当するケースも多いと思いますが、ブランディングは根本的に企業全体をどのように市場に認知してもらうかの話ですから、企業活動を担う各部門からの意見を吸い上げ話し合うことが大切です。

[Step.2]ネガティブ要因の払拭

鈴木:企業理念のローカライズと、2つ目のステップである「ネガティブ要因の払拭」は密接につながりそうですね。

草間:そうですね。意見交換は社内の取り組みでしたが、もう一つIKEAにはローカリゼーション手法があります。これは、部門のトップのみならずインテリアデザイナーなどが、各店舗の商圏である直径5km圏内にある団地や一軒家、マンションを実際に訪問し、家に関するお困りごとなどをヒアリングするものです。

草間:例えばキッチンに収納場所が少ない、子供が2人いるのに部屋が1つしかなく上の子が受験期を控えて困っているなど、日常的に起こる問題を吸い上げていきました。それらの内容を基に、IKEAの店舗の中のショールームで解決方法を提示していくわけです。地域ごとのローカリゼーションなので、1号店の南船橋と2号店の横浜の港北では、ショールームの内容が違います。
実際にショールームで見てもらうことによって「安かろう悪かろう」、欧州家具はサイズが合わない、組み立て家具は日本に浸透しないといったネガティブイメージの払拭を図りました。店舗の立地が都心から遠いため、興味を持って来店いただくため、マスコミを中心に記事掲載を獲得するPR施策も行っています。

[Step.3]コンセプトをコミュニケーション戦略に落とし込みブランディング強化

最後のステップとして行われたのが、実際のブランディング強化だ。つまり、IKEAが日本の住環境における問題や悩みをどう変えられるのか、PR活動を通して伝えていく段階に入る。

草間:施策の一つとして、プレスツアーを行いました。あらかじめ何ページの特集を組んでいただくか交渉をした上で全4媒体に取材していただき、オープン直前に発売される号に記事を掲載いただけました。そのほかにもIKEAのデザイナー3名をゲストスピーカーとしてスウェーデン大使館でプレス発表し、IKEAが低価格でありながらデザイン性・機能性に優れていることをマスコミの方々に理解いただきました。店舗のオープン直前には、青山で「4畳半ギャラリー」という屋外イベントも実施しました。

4畳半ギャラリーでは、日本家屋の狭いスペースでIKEAがどのようなコーディネートをできるのか、全10ブースを並木通りに並べてPR。「サイズ感が合わない」というイメージを直感的に払拭しただけでなく、実際の家具の価格を掲載することで、お手頃感も同時に伝えた。

市場拡大ブランディング戦略の顧客層別アプローチ設計6ステップ

ここからはIKEAが行った市場拡大ブランディング戦略についてより細かく、他企業も参考にできるような形で解説していただいた。

[Step.1]企業理念を再認識

IKEAは日本進出において企業理念をローカライズしたと説明いただいたが、ブランディングを行う際にはそもそも企業理念に立ち返ることから始めるべきだという。

草間:すでに企業(ブランド)理念を明文化されている企業が多いと思いますが、例えば「笑顔を提供する」といった抽象的な表現を使っているケースが多々見受けられます。企業(ブランド)理念は企業独自の哲学やユニークさを反映すべきものですから、自社のビジネスによって社会にどんな影響を与えられるのかが、具体的に見えてくるようなものを作るとよいのではないでしょうか。
実際に私がご支援している食品会社様も「笑顔を提供する」を謳っており、それはなぜなのかをヒアリングをしてみました。すると、「アレルゲンフリーのケーキを作れたことで、アレルギーを持った男の子が初めてクリスマスケーキを食べて笑顔になった」というエピソードから生まれたブランドだったことがわかって。「笑顔を提供する」をベースに企業のユニークさを加味し差別化を図れる企業(ブランド)理念に作り込みました。

鈴木:打ち出し方や再認識がまだ上手くできていない企業もあるということですね。

[Step.2]理念と事業の接続

鈴木:企業理念の再認識に続いて次は「理念と事業の接続」というステップですが、こちらはどういうことなのでしょうか。

草間:企業(ブランド)理念で提示している内容と実際に提供している商品・サービスがきちんと呼応しているかです。そして「このような企業理念を持っているから、このような商品やサービスを提供している」ことを消費者に正確に理解してもらっているかということですね。抽象的な企業理念だと提供している商品やサービスとの関連性がみえずらく、消費者のブランド認識も弱くなりますので、理念の具体化が必要です。
その結果として既存商品を違うメッセージで打ち出す、あるいは新商品を開発したほうがよい場合もあったりします。

[Step.3]ターゲット層の詳細設定

鈴木:ステップ3は、ターゲット層については、詳細に設定する必要があるということですね。

草間:IKEAはSPA(製造小売)なのでエンドユーザーに直結した戦略を自然に考えられるのですが、メーカーだとプライマリーターゲットは卸先になると思います。ですが、最終的には小売店やECに消費者が買いに来なければ商品は売れません。ですので、卸先へのセールス戦略とともに、エンドユーザーを見据え、消費者のヒキを作るようなPR戦略も立てるべきだと思います。

[Step.4]ブランドステートメント

ブランドステートメントについては、「設定したエンドユーザーの認知、理解、共感をどのように得るかを検討するのが大事」と草間氏。

草間:適切なブランドコンセプトがあっても、それだけでターゲットにリーチし購買につなげるのは難しいので、ターゲットとしているユーザーが何を求めているのかを考えて、いくつかのステートメントを作っていく必要があります。要は、ターゲットが「これは自分に必要なものだ」と自分ごと化をするためのサポートのようなものです。

[Step.5]コミュニケーション戦略設計

鈴木:コミュニケーション戦略設計については、前の章でも少し触れていただきました。こちらは改めて具体的に説明していただけますか?

草間:IKEAが日本進出した2006年当時と違い、今はSNSが非常に大きな力を持つ媒体になっています。露出獲得が難しいためテレビや雑誌、新聞などのマスコミには働きかけず、SNSだけに偏って情報発信をしている企業も増えてきました。それで売上が上がっているのであれば全く問題はありません。
ただし、媒体ごとに適した情報やコンテンツというものがあるので、SNSにはこういう内容、新聞にはこういう内容といったように、詳細を考えながら媒体を活用するPR設計が大切になると思います。

[Step.6]販促活動

最後のステップとなるのが販促活動だ。こと実店舗販売においては多くの企業が上手く取り組みを行っているが、ECサイトはその限りでないという。

草間:新しくブランドを立ち上げ実店舗がない場合は、ECサイトがターゲットとの唯一の接点になります。ECサイトにきちんとブランディングを反映させないと単に「商品が並んでいるだけ」のサイトになってしまいます。実店舗では商品ディスプレイ、店内ポップ、リーフレット、ショップスタッフの対応などで、消費者にブランディングが伝わり、ブランドや商品に興味を持ってもらい購入に繋げていきます。実店舗と同様の体験をECサイトの訪問者にしてもらえる仕組みを考えたサイト構築が必要になると思います。

鈴木:ステップ1から作り上げてきたものに消費者が触れるのはここだと考えると、ECサイトまで一貫性を持つことが重要ですね。

ブランディングで創る新市場まとめ

今回のウェビナーで教えていただいた内容をまとめると、以下のようになる。最も重要なのは企業の根本である企業理念の設定であり、理念を基にターゲットに最適化したブランドステートメントを提示し共感を得られれば、新市場を創り、拡大に向けて動き出せるようだ。

また総括として、今回のウェビナーを受けて企業の担当者の方にすぐに自社で見直していただきたいことを、以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。ブランディングで創る新市場にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
ブランディングで創る新市場 ―IKEA日本ローンチ成功を支えたプロが語る、市場拡大のためのブランディング戦略―
本ホワイトペーパーは、2022年3月17日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。自社サービスの認知を拡大したいが上手くいっていないという方々に向けて、IKEAの日本市場開拓事例をもとに、市場拡大のためのブランディング戦略をご紹介します。