【イベントレポート】稼ぐ営業DX ―デジタルセールスのプロに学ぶ、デジタルで売上を創出する営業プロセスと実践事例とは?―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2021年6月9日は、営業DXに課題を感じている営業責任者の皆様に向けて、デジタルセールスの成果創出プロセスと具体的な実践事例をご紹介いたしました。
今回ご登壇いただいたのは、営業DXを手がけるニューノーマルな営業組織デザインのプロ 越ヶ谷氏。
「営業ツールを導入し、オンライン営業を実践しているがうまくいかない」
「インサイドセールスの運用はしているものの良質なリード獲得に苦戦している」
このようなお悩みをお持ちの方は必見です。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
越ヶ谷 泰行氏
多くの営業DXを手がけるニューノーマルな営業組織デザインのプロ
電通ワンダーマンの営業、Chatworkのマーケティングを経て独立。事業会社時代、開発・マーケティング・営業が連携した全体最適の組織設計、インサイドセールスの立ち上げ等を経験。独立後も多くの企業の営業DXを支援中。
鈴木 貴大氏
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材紹介会社にてトップセールスとして活躍後、創業期のサーキュレーションへ入社。支社長として東海支社を立ち上げた後に独立。 フリーランスとして複数社で事業開発、営業統括、役員等を務めた後、再びサーキュレーションに参画。現在は首都圏のメガベンチャー・急成長IT企業を担当するセクションの責任者。最先端テクノロジーを駆使した新規事業開発、DX推進に向けた経営戦略策定~組織編成支援など変革プロジェクトの実績豊富。
花園 絵理香
イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2021/6/9時点のものになります。
Contents
なぜ営業DXは進まないのか?
多くの企業が成果を実感できていないデジタルセールスの現状とは
今回のウェビナーでは、冒頭に視聴者アンケートを実施。コロナ禍によって対面での営業ができなくなり、オンライン営業が台頭しつつある中で、視聴者が感じている課題について伺った。その中で大きいのが、「受付不在が多く、テレアポだけではリードが取れない」ということだった。次いで、「マーケが取ってくるリードの質が悪い」が続く。
今回の講師である越ヶ谷氏自身も「今は受付サービスがあるため、電話をしてもそもそも会社の人につながらないことがある」と語る。
これまでフィールドセールスを実施していた企業がデジタルツールなども導入して営業をオンライン化しても、なかなか成功には至らない。実際、オンライン営業を実施した企業の約8割が“生産性が上がったとは言えない”と回答した調査もある。
デジタルセールスの成功を阻害する「旧式の営業プロセス」
ツールの導入コストだけがかかり、成果が出ない。数多の企業が直面しているデジタルセールス推進の壁となっているのは、主に以下の3点だと仮定できる。
総括すると、オンライン営業ツールを導入しても、肝心の営業プロセスが最適化されていないというのが最も大きな原因だと言える。旧式のやり方で推進した結果、ツール活用が形骸化してしまうのだ。
ホットリードを創出し、売上につなげるデジタルセールスの成功事例
越ヶ谷氏は営業組織デザインのプロとして、数多くの営業DXを手掛けている。
以下のスライドは、越ヶ谷氏が手掛けたデジタルセールスの成功事例の一つだ。
従来は問い合わせ対応型だったマーケ・営業組織が、提案型へと転じた本事例。「クライアントはIT企業様で、営業とマーケのつながりが弱い部分を改善していきました」と越ヶ谷氏は語る。
定量面でも大きな成果を上げるデジタルセールス成功の秘訣は、大きく「リード不足による営業活動停止の回避」と「顧客理解によるコンテンツ発信の充実化」の2つだそう。
越ヶ谷:リードが足りずに営業活動ができていない企業も多い一方、マーケに任せて待っているだけではどうしようもありません。営業自らきちんとリードを取ってこられるようにする事例が最近は多いです。
多くの企業で営業がデジタルツールを上手く活用できていないのは冒頭で述べた通りだ。ここをどう乗り越えていくべきなのか、詳しく伺った。
デジタルセールスで成果を創出する3つのプロセス
まず、デジタルセールスへと変革し、成果を出すステップは「デジタル適用」「コンテンツ開発」「発信・顧客対応」の3つに分けられる。この3項目について、順に解説いただいた。
【STEP.1】デジタル対応
これまで得た知識や価値観を捨て去る「アンラーニング」がキーワード
「デジタル対応」と聞くとDXを即座に思い浮かべる方も多いかもしれないが、実際のところDXにまで至るには3段階あるという。まずはアナログで対応できない営業の工程をデジタルに対応させる「デジタル適用」、次にデジタルとアナログを組み合わせて最適な営業活動を設計する「デジタル最適化」、そしてデジタルを用いた販売方法やサービスの変容をもたらすのが「DX」だ。
DXは企業の商品・サービスそのもののあり方が変わるため、営業活動自体が不要になる可能性すらあり、その分難易度も高い。今回はDXへの足がかりとして、「デジタル適用」と「デジタル最適化」の部分をメインで話しいただいた。
鈴木:デジタル対応時の注意点として、「アンラーニング」というキーワードをいただいております。これは具体的にどういうことなのでしょうか。
越ヶ谷:いろいろなお客様を見ていて思うのが、アナログからデジタルへの変化を一番阻害するのは、既存の知識や慣習だということです。まずはそれらを捨てること。そういう意味で「アンラーニング」をやってみることが重要です。
実際、「対面でなければ気持ちが伝わらない」とおっしゃる方は非常に多いですし、それ自体は素晴らしいことです。ですが、変化をするときは一旦捨てましょう。変化をした後で「やっぱり対面も大事」ということになれば、戻せばいいのです。
鈴木:既存のやり方だけではどうしても上手くいかないのは、我々も営業活動をしていて感じるところです。柔軟に対応するということなんですね。
顧客視点でデジタルを用いた営業活動全体の流れを最適化
「デジタル適用」の段階では、まず営業活動の中で現状生じている「穴」をデジタルで埋めることになる。
例えば、アポ獲得活動にSNSやブログ、ウェビナーを用いる、商談獲得活動には日程調整ツールを用いるといった展開が考えられるが、その上で越ヶ谷氏は営業プロセスにおいて「顧客の体験を見直してほしい」と述べる。
越ヶ谷:例えば顧客の体験として、「この会社ちょっと良さそうだな」と思って話を聞こうとした際、デジタルならすぐにアポ調整ができます。アポが取れたらすぐに日程調整の連絡をして、商談までに見てほしい資料や情報を自動的に送付。商談自体もWeb画面を最適化して、自動で議事録を取る。そこから受注へとつながったときに、「ありがとうございます」とビデオレターを送る企業もあります。こうした全体の流れを整えて最適化していくことが、デジタル対応では必要なサイクルです。
ツールを闇雲に導入するのではなく、顧客視点で見たときにどこが重要なのか、そしてどのように感動を作れるのかを判断する。そういう意味では、「デジタルではなくあえてアナログで手紙を送る手法も面白い」と越ヶ谷氏。「デジタルセールス」という言葉にとらわれず、より効果的な方法を探るのがここでのポイントと言えそうだ。
【STEP.2】コンテンツ開発
営業はコンテンツ開発で最も重要な「顧客の決定要因」を握る立場
次のステップはコンテンツ開発だ。デジタルツールによってデータを蓄積・分析し、顧客のニーズやサービス決定要因を基にコンテンツを作成していくのが大まかな流れとなる。
鈴木:「マーケティング部がやるような仕事を今は営業がやるのか」というご意見が聞こえてきそうですが、これは「やる」が答えなんでしょうか?
越ヶ谷:やります。これもまずはアンラーニングです。
そうは言っても、コンテンツ開発は営業にとってはデジタルツールの活用以上に門外漢だと思われる方も多いはず。そこでまずは、営業が現状どのように顧客に訴求できるのかを示したのが以下の図だ。
越ヶ谷:コンテンツにおいて一番重要なのは「顧客の決定要因」なのですが、この部分に関する情報を持っているのはセールスです。セールスの持っているデータ、つまり商談内容を基にコンテンツを作るのが大事なのです。
越ヶ谷氏はマーケティング側が作るコンテンツも重要性も認めた上で、それでもその度合いは近年低下しつつあるとしている。これはマーケティング側からアプローチできる対象は広い一方で、伝えられる情報が一般的な内容になってしまうために、競合差別化が難しいという弱点を持っているからだ。ここを克服できるのが、営業だからこそ作れる「自社の独自コンテンツ」なのだ。
営業が持つ情報をマーケティングと連携してコンテンツに昇華
「自社の独自コンテンツ」と言われても、想像が難しい。ここを理解するために、仮に「リモートワーク」というテーマでコンテンツを作る場合の、顧客の状態別の対応方法について教えていただいた。
越ヶ谷:顧客を潜在・顕在・比較検討層で分けたときに、潜在層顧客は「上手くいかない」と思っていることが何かあります。顕在層はそれに対する具体的な解消方法まで特定できており、実際にサービスを選んでいるのが比較検討層です。
マーケティングの方々が対象とするのは、大体の場合潜在・顕在層ですが、この層に届けるコンテンツは差別化がかなり難しくなっています。セールスの方々は比較検討層、つまりすでに商談を進めている方に対して回答をしていくことになるわけですが、ここで営業が顧客に話しているコンテンツの素晴らしさに気付くべきです。
鈴木:営業が話している情報を拾い集めて、マーケティング部署と連携しながらコンテンツを作っていくのが重要だということですね。
普段、営業が顧客をクロージングする際に使っているキラートークや他社事例。ここが、宝の山だという。
ただ、営業の仕事はあくまで営業。コンテンツ開発にかけられる工数が無いケースもあるだろう。その対策として、越ヶ谷氏は営業自身が手を使ってナレッジを書き出すのではなく社内インタビューをしてもらうこと、そしてその内容は音声議事録システムを用いて即座にテキスト化する手法を提案する。
越ヶ谷:喋っている営業の写真を載せればホワイトペーパーになりますし、文字だけでも記事になる。一部を切り出せばTwitterの投稿になる。こういう形で、コンテンツは量産できます。
【STEP.3】発信・顧客対応
よりリッチなコンテンツを作るなら自社の関係者を巻き込む形がおすすめ
独自コンテンツができれば、あとは発信だ。SNSやウェビナー、ホワイトペーパー、Webコンテンツなど展開の幅は広い。
鈴木:弊社もウェビナーはかなり実施していますが、最初は苦戦しました。ウェビナーのテーマがそもそも浮かばない場合はどうすれば良いのでしょうか?
越ヶ谷:コンテンツ開発でコンテンツ化した内容を、ウェビナーのタイトルにしてしまえば大丈夫です。もう一つは、今まさにサーキュレーションさんが実施しているように、自社の関係者を招いたウェビナーの実施が非常に重要だと思います。簡単な形なら自社で考えたコンテンツぐらいがちょうどいいのですが、少しリッチにするなら関係者を巻き込んだほうがより強いコンテンツになります。
何もしなくても営業担当に問い合わせが来る状態を目指す
コンテンツを発信するときのポイントは、「誰の役に立つ情報なのかをきちんと認識すること」と越ヶ谷氏。本来営業がリーチできるのは比較検討層顧客という狭い範囲だが、ターゲットを絞った上でWeb上にコンテンツを発信すると、数多くの人に刺さるものになるそうだ。
こういった形でデジタル上での存在感を高めると、どのような結果が得られるのかについても説明いただいた。
越ヶ谷:例えばサーキュレーションさんで言うと、「ウェビナーが素敵だから登壇させてほしい」というお誘いが来るかもしれませんし、名指しでコラボの声が掛かる可能性もあります。
鈴木:確かに最近はお声掛けいただくことが増えましたし、「ウェビナーを教えてほしい」と言われることもあります。続けていくと確実に成果につながっているというのは、私自身も感じるところです。
越ヶ谷:日々の商談をネタにして発信していくコンテンツなら絶対に続けられますし、やり続けることが非常に重要です。
3つの成功ポイントを押さえて新たな顧客体験創出へ
以上の事例やプロセスを踏まえ、越ヶ谷氏が考える「デジタルセールスを成功させる3つのポイント」を伺った。
鈴木:以上の3つの内容を実行することで、稼ぐDX、すなわちデジタルを活用した新たな顧客体験創出が完成します。こうなれば、「受付が電話に出てくれない」といった悩みは、あまり関係なくなりそうですね。
越ヶ谷:「どうやって受付を突破するか」に注力するとそのほかの部分が盲点になってしまいます。自分たちで受付に電話をするのではなく、Web上での存在感を高めることでお声掛けいただく形を作るのが、デジタル的には良いやり方なのかなと思います。
稼ぐ営業DXまとめ
今回のウェビナーのポイントを、「今すぐ皆さんに取り組んでほしいこと」として以下の3点にまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。稼ぐ営業DXにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。