新規事業を成功に導くビジネスフレームワーク6選 を紹介
ビジネスのなかでも新規事業を立ち上げて成功させていくことは非常に難易度が高く、その成功率は約10%とも言われています。しかし、しっかりとしたリサーチを行い、それをもとに計画を立てていくことができればその成功確率は飛躍的に向上します。本記事では、数多くのフレームワークのなかから新規事業を成功させるために、経営者が抑えておきたいフレームワークを厳選して紹介していきます。
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Contents
フレームワークとは?
新規事業を企画・運営していくにあたって、市場環境の調査やリサーチ、自社の優位性などさまざまな分析を行う必要があります。その際には指標となる一定の基準による分析が不可欠で、その枠組みをパターン化したものがビジネスフレームワークです。
ビジネスフレームワークは、現在に至るまでに著名な研究者やコンサルタントなどさまざまな有識者が試行錯誤を繰り返して確立させてきた分析手法です。そのため、数多くの実績による裏付けがあり、効率よく精度の高い分析が可能になっています。
なぜ新規事業でフレームワークが必要なのか
新規事業では事業の計画が、その事業の成功における非常に重要なポジションを占めており、計画の良し悪しによって、新規事業の成否が決まってしまうといっても過言ではありません。事業計画に時間をかけてじっくりと計画できればよいのですが、企業にとって時間は非常に貴重な資源です。特に新規事業では非常にスピードが求められるために、計画にあまり時間をかけることができません。
新規事業の計画に時間をかけると、競合に先を越されたり、環境の変化によって機会損失が発生したりするなどのリスクが発生します。このようにスピードと分析の正確性が求められる状況ではフレームワークが非常に有効なツールとなります。フレームワークはある程度の枠組みが決まっているので、そこに要素を当てはめていくだけで分析結果を導き出すことができます。余計なことを考える時間を省けるため、計画にかける時間と労力を抑えることが可能です。
また、分析段階では客観的な視点で分析をすることが重要です。しかし新規事業という「夢」を背負ってしまうと、視野が狭くなってしまい、その結果、客観的な判断を行うことができなくなってしまうということがあります。
しかしフレームワークでは、ある程度の枠組みが決まっており、冷静かつ客観的な判断を行うのに役立ちます。これらのことから、新規事業の計画ではフレームワークの活用が必須となるのです。
1. 時代の潮流を捉えるPEST分析
PEST分析とは
PEST分析は、アメリカ合衆国の経営学者で、現代マーケティングの第一人者として知られている、フィリップ・コトラー氏が提唱した分析手法です。Politics(政治)、 Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの視点によって分析することから、そのそれぞれの頭文字を取ってPEST分析という名前が付けられています。
PEST分析は、主に景気や政治情勢、法律の改正などといった企業にとっての外部環境(マクロ環境)を分析することに特化したフレームワークです。PEST分析によってマクロ環境を分析すると、現在または将来的にその外部要因が事業にどのような影響を与えるのかの予測が可能です。
PEST分析の目的
PEST分析が外部環境を分析するツールであることを説明しましたが、なぜ、新規事業でPEST分析を行う必要があるのでしょうか。それは新規事業が既存の事業と比べてより外部環境に影響されやすいためです。
新規事業では、まだ事業基盤や流通経路などがしっかりと確立していないことが多いです。ちょっとした外部環境の変化によって大きな損失を被るリスクがあり、最悪の場合、事業が破綻してしまうことにもなりかねません。そのため、事前にしっかりとした事業分析が必要です。
なお、PEST分析の結果は、3C分析やファイブフォース分析といった、ミクロ環境分析のフレームワークのベースとして活用できます。その結果、新規事業のブランデングやマーケティングにおいて、より多角的で精度の高い分析が可能となるため、質の高い戦略策定において重要な役割を果たします。
マクロ環境とミクロ環境
マクロ環境とは
外部環境には大別して、マクロ環境とミクロ環境という2つの外部環境が存在します。PEST分析において分析を行うマクロ環境とは、事業に間接的に影響を与える外部環境のことで、企業自身ではコントロールできません。
具体的には、景気動向や金利、為替といった経済情勢や、政権交代、法律の改正といった政治情勢、さらには紛争や経済制裁といった国際情勢などがそれにあたります。また、AIやIoT、5Gといった技術革新もマクロ環境です。
ミクロ環境とは
ミクロ環境とは、事業に直接的な影響を与える外部環境で、ある程度自身でコントロールできる要因を指します。具体的には、市場や顧客、競合といったものです。また、進出しようとしている市場の規模や将来的な成長性、顧客のニーズの変化やライフスタイルなどもミクロ要因です。
なお、競合は既存の競合他社に限らず、今後市場に参入してくると思われる他社の動向や製品の情報といった要素も含まれます。
ミクロ環境の分析ではPEST分析ではなく、SWOT分析や3C分析、ファイブフォース分析といったフレームワークによって分析を行います。
PEST分析の事例
近年、自動車業界は大きな変革を迎えようとしています。将来的に欧州を中心とした環境規制によってディーゼル車など従来の車の多くが規制の対象となり、電気自動車に置き換わると予測されます。また、経済産業省が次世代自動車の戦略会議で電気自動車を重視すると発表するなど、日本国内でも電気自動車への流れが強まるとも予測できます。昨今の社会全体での環境意識の高まりや、カーシェアリングなどのシェアリングエコノミーサービスの普及も、従来の車から電気自動車への移行を後押しする社会的要因といえます。
そして、AIやIoT、5Gといった技術革新によって車の自動運転化が急速に進んでおり、数年後にはGoogleなどが手がける海外の自動運転車が日本国内に進出してくるでしょう。そのため、トヨタなど日本国内の大手自動車メーカーはソフトバンクやウーバーといった企業と提携を行い、オープンイノベーションを起こすことで対抗しようとしています。
これは、まさにPEST分析で定義された、Politics(政治)やSocial(社会)、Economy(経済)、Technology(技術)といった外部環境を分析したといえるでしょう。
2. 戦略計画の要 SWOT分析
SWOT分析とは
SWOT分析は、ハーバードビジネススクールのビジネスポリシーコースの一部として開発されてきたフレームワークです。内部環境のStrength(強み)、Weakness(弱み)と外部環境のOpportunity(機会)、Threat(脅威)という4つの要因から、経営資源の最適化や計画の改善策を策定するためのツールです。
SWOT分析の目的
SWOT分析は、ある目標に対して、その目標が実現可能かどうかを判断するために有効です。新規事業においては、その事業の目指している目標に対して、それぞれ
- 強み(目標達成に貢献する自社の長所や競合への優位性などの能力)
- 弱み(目標を達成するにあたり障害となる自社の弱点や競合に劣る能力など)
- 機会(自社にとってプラスに働きビジネスチャンスとなるような外部環境の変化など)
- 脅威(自社にとってマイナスとなる規制強化や法改正、競合の動きなど)
を洗い出すことで、自社が現在置かれている状況や将来起こりえる変化を分析することができます。
その結果、経営資源の最適化や計画の改善案を策定することが可能となるだけではなく、同時に事業目標の設定や今後の行動指針の策定といった方向性を決定するための手段としても役立ちます。そのため新規事業の企画・立案やマーケティング戦略の策定時には非常に強力な分析手法のひとつです。
クロスSWOT分析で分析結果を導き出す
SWOTの各要素が決まったら、それに基づいて分析を行う必要があります。しかし、SWOTの各要素を列記しただけでは、ただの現状把握にすぎず、事業戦略やマーケティング戦略の策定に使うことのできる情報の形になっていません。
そこで、SWOTの各要素を掛け合わせて分析を行うクロスSWOT分析を用います。例えばStrength(強み)とOpportunity(機会)を掛け合わせて、自社の事業の強みを機会に活かすためにはどのような行動を取ればよいかといった方向性の決定や、Weakness(弱み)とThreat(脅威)を掛け合わせて、自社の弱い部分に対して脅威となる要因を把握することで、リスクに備えるための対策を考えることができます。
このようにさまざまなSWOTの要因を掛け合わせることで、単体で分析するよりもはるかに多くの戦略を導き出すことが可能です。そしてクロスSWOT分析によって導き出された分析結果を戦略や計画に落とし込むことで、それまで見えてこなかった問題点や課題、さらには自社の強みなどを洗い出すことができます。
SWOT分析の事例
ではSWOT分析を実際の企業に当てはめてみていきましょう。ここでは、PEST分析の際にも登場したトヨタ自動車についてSWOT分析を行っていきます。
強み
- 世界トップクラスの知名度とシェアを誇るブランド力
- 強固な財務基盤
- 生産台数が世界トップ
- 製品の品質の高さ
弱み
- 海外販売比率が高いため為替の変動による影響を受けやすい
- AIやIoTなどの技術開発に遅れをとっている
機会
- 新興国の成長
- TPPなどの経済協定による関税の撤廃
- 環境意識の向上やガソリン価格の高騰によるハイブリッド車などの需要増
脅威
- 若い世代の車離れの加速
- GoogleなどのIT企業の自動車業界への参入
- 欧州をはじめとした国々での電気自動車の台頭
この分析結果の、「AIやIoTといった技術開発に遅れをとっている」弱みと「GoogleなどのIT企業の参入」という驚異を掛け合わせることで、現状の課題点や将来的な脅威が浮き彫りになり、ソフトバンクやウーバーといった企業との提携という対策を立てることが可能となります。
3. マーケティングの基本 3C分析
3C分析とは
3C分析は、元マッキンゼーのコンサルタントで、現在ではビジネスブレイクスルー大学の学長である大前研一氏が提唱したビジネスフレームワークで、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3つの要素によって分析を行います。この3C分析はマーケティングの基本ともなる分析手法で、PEST分析がマクロ環境の分析に用いられるのに対して、この3C分析はミクロ環境を分析するために用いる分析手法です。
3C分析の目的
3C分析の目的は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)というマーケティングにとってもっとも重要とされる3つの要素を分析することによって、事業やマーケティングの成功要因を導き出すことにあります。
Customer(市場・顧客)
市場の規模や将来的な成長性、顧客の購買意思や行動といったものを挙げられます。3C分析を行う際には、まず、この市場・顧客の分析を行います。なぜ最初に市場・顧客の分析を行うかというと、市場を把握していない段階では競合の分析を行えないためです。
市場と顧客の定義を明確にすることで同一の市場において顧客層とニーズが重複する相手である競合もはっきり定められます。もし本来は競合相手ではない企業を競合として捉えてしまえば、無駄な戦略を策定してしまうばかりか、実際の競合を把握することができません。
有効な施策が行えなければ、気が付いたときには競合に市場シェアを奪われてしまうということにもなりかねません。
Competitor(競合)
先述したように競合とは同一の市場において顧客層とニーズが重複する相手でのことです。その競合相手の動向や企業規模、広告などの施策といったものから、市場に対する寡占状況や、競合の強み、弱みなどを分析できます。また、現在の競合状況以外にも、今後市場に参入してくると予想される企業や、自社への対抗手段といった要素についても同様の分析を行います。
競合には、直接自社の製品やサービスと比較される直接競合と、直接的には比較の対象にならないが、結果として顧客に同じ価値をもたらす競合であるの間接競合とに分けられます。直接競合は、比較的明確であることが多いため、分析から漏れることは少ないですが、間接競合は、市場や顧客の定義が曖昧になっていると分析対象として抽出されず漏れてしまうことが多いので注意が必要です。
Company(自社)
3C分析におけるCompany(自社)は、先述した市場・顧客と競合の分析結果をもとに行います。自社の製品やサービスが顧客にどのような価値を提供できるのかといった提供価値といったものから、競合と比較した際の強み、弱みや市場での認知度、人材などの経営資源といった要素を分析します。
その結果、現在自社が行うべき施策や、将来的な経営戦略といった方向性を導き出すことが可能です。ただし市場・顧客や競合、自社の強み、弱みといった情報は、日々変化をしていきます。そのため、一度3C分析を行って終わりではなく、常に新しい情報を当てはめて分析をし続けることが、マーケティング戦略を成功させるために重要です。
3C分析の事例
3C分析について解説を行ってきましたが、実際の企業に当てはめて3C分析を見ていきます。ここでは、よく3C分析などで例に挙げられるコーヒーチェーンのスターバックスについて分析をしていきます。
Customer(市場・顧客)
- おいしいコーヒーを飲みたい顧客
- 雰囲気の良い店でリラックスしたい顧客
- 多少高くても本物のコーヒーを飲みたい顧客
Competitor(競合)
- タリーズコーヒー
- ドトールコーヒー
- ベローチェ
- コンビニエンスストアのドリップコーヒー
- ブルーボトルコーヒーなどの新興コーヒーショップ
上記は「コーヒーを提供する」という点で直接競合にあたりますが、スターバックスの理念のひとつでもあり、強みでもある「リラックスできる場所を提供するサードプレース(第3の場所)」という観点で見ると下記のような間接競合も存在します。
- 図書館
- コワーキングスペースやレンタルオフィス
- ファミリーレストランなど
Company(自社)
- ソファ席などのくつろげる空間の演出
- 落ち着いた雰囲気
- 駅周辺などの利便性のよい立地
- 豊富なメニュー
- バリスタによる高品質なコーヒーが提供可能
このように、それぞれの項目を整理していくと、競合が非常に多いということ、ソファー席などのくつろげる空間や豊富なメニュー、バリスタによる高品質でおいしいコーヒーが提供できるという、競合にはないスターバックスの強みが見えてきます。
そして少し高くてもおいしいコーヒーが飲みたいという層やカジュアル過ぎず落ち着いた高級感のある空間でゆっくりとコーヒーを楽しみたい層に顧客と市場を絞ることで、競合が真似できない「スターバックスらしさ」で差別化を図ることで成功をしていると分析できます。
4. ブルーオーシャンへの道標 ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは
マーケティングにおいて、どのような顧客をターゲットにするのかというターゲッティングや、どのように市場を細分化していくのかといったセグメンテーションは、マーケティング戦略を成功に導くためには絶対的に必要な要素です。
そして、その2つの要素において自社がどのポジションに位置し、どう差別化を図っていくのかというポジショニング戦略は、その事業やサービスに対する将来的なマーケティング戦略の成功を左右するといっても過言ではありません。
そのポジショニングを明確にするためのフレームワークがポジショニングマップです。ポジショニングマップは、2つの軸を用いて自社の位置を視覚化することで、競合優位性のあるポジショニングを導き出すことができます。特定の製品やサービスといった規模の小さい範囲でマッピングをしたり、業界など市場全体といった大きな範囲でマッピングをしたりすることで、まだ開拓されていない新たな市場の発見や、自社にとって有利なポジションを見つけ出すことが可能です。
また、2つの軸にどのような要素を当てはめていくかによって、自社のポジショニングに対するさまざまな分析を行うことができます。しかし、軸によっては差別化とならなかったり、差別化ができていても、需要のない位置へのポジショニングを行ってしまったりすることがあります。そこで、軸を決める際には、顧客が購買を決める要素や独立性の高さなどを十分に考慮する必要があります。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略とは、競合のいない未開拓な市場において事業を行う戦略のことで、逆に競合がひしめき合い競争が激化している市場をレッドオーシャンと呼びます。新規事業においては、ブルーオーシャン戦略は非常に有効な戦略であり、この市場の開拓に成功をすれば、戦略次第では、その市場でのシェアを長期的に独占することも可能です。
ただし、参入障壁の低い市場の場合には、すぐに多くの競合が参入してきて、いずれはレッドオーシャンとなってしまう可能性が高いです。そこでブルーオーシャンを見つける際には、なるべく競合が参入しにくい場所を選ぶことも重要になります。その点においても、ポジショニングマップはブルーオーシャンを見つけ出すのに非常に有効な分析ツールとして活躍します。
5. PDCAサイクル
PDCAサイクルとは
PDCAサイクルはビジネスに携わっている人なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つの要素の頭文字をとっており、この4つの段階を繰り返すことによって、問題点や課題を洗い出し改善をしていくビジネスフレームワークです。
Plan(計画)
まず、PDCAの最初の段階でもあるPlan(計画)は、目標を設定し計画を立てる段階です。新規事業においては、どのような事業を行うのかをはじめターゲットとする顧客はどのような層なのか、事業の方向性など将来的な目標に対する計画を策定します。その際さまざまなフレームワークを駆使し、情報を分析することによって計画をしていきます。
Do(実行)
Do(実行)は、計画段階で立案した計画を実際に行動に移す段階です。実際の店舗の出店や製品の販売、サービスの開発・提供などが挙げられます。実行する際には、ただやみくもに実行するのではなく、この後のCheck(評価)を行えるように、しっかりと記録として情報を残しておくことが重要です。
Check(評価)
Check(評価)は、実行段階において、計画に沿って実行ができているか、当初の目標が達成できているかといったことを評価する段階です。この評価は、Do(実行)が完了した段階だけではなく、実行中にも評価を行うことで、問題があった場合には、より早く問題改善を行うことができ軌道修正も容易になります。
Action(改善)
PDCAの最後のAction(改善)は、Checkで評価した結果を検証し、改善を行っていく段階です。検証していくなかで、良い点は継続し、悪い点については改善策を検討します。検討していくなかで、事業を継続していくか、撤退するのかを判断するのもこの段階です。そして改善策が決定をしたら、それを次の計画に落とし込んでいき、またPDCAのサイクルを回していきます。
最速で成功にたどり着くPDCAの手法
企業が事業を行っていくうえで、スピードは非常に重要なリソースです。無駄に時間をかけてしまうと機会損失が発生するばかりか、貴重な人材、資金が流出していってしまうというリスクが発生します。
昨今、「PDCAはもう時代遅れ」とか「PDCAは役に立たない」といった意見もありますが、PDCAは今でも事業を行っていくうえで非常に有効なフレームワークです。確かに、現在はAIなどの技術革新によって、ビジネスサイクルが早まっており、普通にPDCAを回していたのでは、時代の潮流に乗り遅れてしまうといった懸念もあるでしょう。多くの人は、1つのPDCAを回して、1周したらまたPDCAを回すといった手法をとることが多いのですが、PDCAは複数を同時に回すことでその真価を発揮します。
特に新規事業においては、結果が出るまでに時間がかかることが多く、ひとつの結果が出るのを待ってから次の計画を立てたのでは、何年もかかってしまいます。事業がうまくいっていればよいのですが、何年もかけた挙句に結果が出ずに失敗してしまっては、その数年間に費やした時間が無駄になってしまいます。一方、事業を継続するのか、中止して撤退するのかという結果の判断までに、あまりに時間をかけてしまうと、「何年も時間をかけたのだからもう少しやってみよう」という心理になりやすく、撤退のタイミングを見誤ることもあります。
ひとつの計画を実行するにあたって、通常、そのやり方は一通りではありません。PDCAを並行して実施する際には、図に示したように、ひとつの計画から、実行可能な複数の手段を並行して実行・評価を行い、そのなかからうまくいくものを選択し改善を行っていきます。逆を言うとそれ以外の実行・評価は早めに中止の判断を行い、うまくいく手法にリソースを集中していきます。こうすることで、同時に多くの手法を試すことができ、結果として成功までの時間を短縮することが可能です。
また、仮にすべての手法が失敗して撤退することになっても、そこに至るまでの判断を迅速に行うことができます。時間という貴重なリソースの浪費を抑えつつすぐに次の計画に移れるというメリットもあります。
6. ビジネスモデルの全体像を把握するツール ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスとは
ビジネスモデルキャンバスとは、9つに分類されるビジネスモデルの重要な要素がお互いにどのように関わっているかという相関性を視覚的に把握することができるフレームワークです。それぞれの影響を客観的に確認することで現状把握や新規事業の構想などの分析に役立ちます。
顧客セグメント(Customer Segment)
顧客セグメントは、年齢、性別、地域、国といったものや、どのようなニーズを持った人を顧客ターゲットにするのかといった要素です。また、法人や個人といった属性に大別することもできます。
顧客との関係(Customer Relationships)
顧客との関係とは、顧客との接点の深さや長さといった顧客とどのような関係性を持つのかという要素です。自社のサービスがサブスクリプションなどの継続的なサービスなのか、または1度のみの売り切りのサービスなのかといったことを記載します。
チャネル(Channels)
チャネルは、販売経路や販促といった認知の経路、アフターサービスの経路といった要素です。実店舗で販売するのか、オンラインサイトなどのネットショップで販売するのかといったことを記載します。
収入の流れ(Revenue Streams)
収入の流れは、その事業の収益方法のことです。実際に物を売って収益を得るのか、利用料やライセンス料といった手数料で収益を得るのかといったことを記載します。また、利益率や利益の継続性といった情報のほか、主要な収益以外の収入などの情報も記載します。
提供価値(Value Propositions)
提供価値は、その商品やサービスといった自社の事業が顧客に対してどのような価値を与えるのかといった要素です。価値を提供できる顧客層が複数にわたる場合には、それぞれの提供価値を記載します。
キーアクティビティ(Key Activities)
キーアクティビティは、そのビジネスモデルの実現のために自社が取り組まなければならない活動内容を記載します。モノを作るのか、売るのかといったものから、どのように営業をしていくのかといった事業に関する内容が含まれます。
キーリソース(Key Resources)
キーリソースは、事業の価値を生み出す経営資源で、人材や、店舗、工場などの不動産や設備、資金、特許技術といったヒト、モノ、カネ、ノウハウなどが挙げられます。
キーパートナー(Key Partners)
キーパートナーとは、自社が活動を行っていくうえで必要なリソースを提供してくれる、仕入先や協力会社、提携先、代理店といった情報を記載します。
コスト構造(Cost Structure)
コスト構造は、事業を行っていくうえで発生する人件費や仕入れ、製造費、広告宣伝費、研究開発費などの主要なコストを洗い出し記載します。
さまざまなフレームワークを組み合わせて成功に近づけよう
フレームワークを使った分析は新規事業だけではなく、既存の事業においても機能する優秀な分析ツールです。常にフレームワークを使って分析をし、PDCAを回していくことによって、時代の変化、顧客ニーズの変化といった市場の変化をいち早く察知することが可能です。
今回紹介したフレームワークのどれもが、新規事業を企画・運営していくにあたって非常に有効かつ重要なフレームワークです。複数のフレームワークを組み合わせてることでさらに分析の精度が増し、より深みのある情報が得られます。ぜひフレームワークを活用して、新規事業の成功に役立ててください。
参考:
新規事業に必携!悩みがなくなる爆速フレームワーク14選,事業・経営の戦略や企業分析を円滑にするビジネスフレームワーク20選,PEST分析のやり方とコツを事例で学ぶ,3C分析のやり方-マーケティング環境分析,SWOT分析のやり方とコツ:環境分析から戦略目標を引き出す方法