【第一想起されるブランド戦略】強みを活かして新たな市場を創る
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
独自性のある商品・サービスを作っても、消費者へのアプローチでお悩みの企業は多いのではないでしょうか。特に成熟期以降からシェアNo.1を獲得するには、消費者インサイトに働きかけるブランド戦略がポイントになります。
そこで今回のウェビナーでは、経営とマーケティングのプロである堀氏をお招きし、シェアNo.1を実現するための「第一想起されるブランド戦略」について伺いました。資生堂unoやGameWithをはじめ、複数の業界でシェアNo.1を実現したノウハウや秘訣をお伝えしました。
マーケットシェアを拡大したいとお考えの経営企画室長、新規事業責任者、マーケティング責任者の皆様は、ぜひ参考にしてください。
※本ウェビナーのホワイトペーパー無料ダウンロードはこちらからできます。
堀 一臣
ディップ株式会社 マーケティング統括部 統括部長
資生堂では当時最年少ブランドマネージャーとしてunoを未成熟市場のメンズスキンケアへ戦略転換しシェア1位へ。その後GameWithではマーケティング戦略部を新設し、国内No.1ゲームメディアのポジションを確立。dipでは時給アッププロモーションによる価値づくりをリードしシェアNo.1(※dipALL)を実現。現在は、dipマーケティング統括部長としてフィロソフィーを中心に置いた経営とマーケティングの実践に取り組んでいる。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
山中 かれん
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、IT・コンサル業界の中途採用における課題解決に従事。ベンチャー中小企業から大手外資系企業まで幅広い採用支援を経験後、社内組織営業力向上に向けた研修立案、商品企画に携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2023/8/3時点のものになります。
Contents
飽和した市場で求められる「新たな市場を創るブランド」の重要性
様々な業界において、現代の市場は飽和状態にある。目新しい商品やサービスを開発しても、成熟期(※)を迎える頃には類似商品が出回るため、多くの企業は激しい価格競争にさらされている。
(※)製品が普及し、市場自体の成長が鈍くなる時期のこと。シェア獲得のために低価格化が起こるため、各社の売上や利益は頭打ちになりやすい。
参考:
新規事業の戦略にも役立つ「プロダクトライフサイクル(PLC)」とは?
プロダクトライフサイクル(PLC)がこの段階に入ると、製品の機能やデザイン、価格での差別化は難しくなる。つまり、市場シェアの逆転が起きにくい状態であるため、シェア下位企業が生き残るには独自の強みを活かす「ブランド戦略」がポイントになる。
数々のブランドでシェアNo.1を実現した堀氏の実践事例
経営やマーケティングのプロは、どのような視点で成熟期におけるブランド戦略を考えるのだろうか。今回は、数々のブランドでシェアNo.1を実現した堀氏をお招きし、第一想起を目指すためのブランド戦略について伺った。
新カテゴリの創出で第一想起される存在となりシェアNo.1を獲得
堀氏は各企業の状況に合わせた”新カテゴリ”の創出によって、商材の属する業界でシェアNo.1を獲得してきた。その具体例として、今回は「資生堂uno」「GameWith」「dip バイトル」の3つを挙げて頂いた。
堀:資生堂unoでは、これまでスキンケアをしていなかった層にアプローチしました。当時はスキンケアカテゴリの中で5番手から6番手でしたが、最終的にはNo.1にすることができました。
GameWithについては、私が入ったときにはすでに”攻略サイト”としてのポジションを確立していました。そこからさらに成長するために、「ゲーム探しではGameWithを見よう」という新たな価値・市場を創り、No.1ポジションを確立しました。
事例:「時給が上がるバイトアプリ」というブランド価値を創出
堀氏によると、サービスの併用が当たり前になっている業界では、新しい市場を創ることが必要になるようだ。分かりやすい事例として、ここでは「dip バイトル」での実績を詳しく伺った。
堀:バイトルはブランドのロイヤリティ(愛着)が低く、差別化もできていない状態でした。有期雇用の求人メディアは併用されることが多いので、サービスが同質化していました。さらに新型コロナが業界を直撃して、業績が落ち込んでいました。
そこで考えた施策が、「時給が上がる」という価値創りです。「求人はどこでも一緒だから変わらない」というユーザーの気持ちに対して、「時給を上げるならバイトルが良いですよ」というブランド戦略に取り組みました。
樋口:売上高や利益額の推移を見ますと、綺麗な右肩上がりでいらっしゃいますよね。
堀:独自の価値をしっかりと提供することで、過去最大の応募数・集客を果たし、最終的には営業利益が約2倍になりました。
堀氏のシェアNo.1を実現するポイント
シェア上位企業がポジション強化を狙っている中で、同じような施策を取ってもシェアの逆転は難しい。激しい競争を勝ち抜くには、”新しい基準を持ちこむこと”が必要になると堀氏は語る。
具体的な戦略の考え方として、ここでは2つのポイントを提示して頂いた。
堀:資源が限られる中で同じ土俵で戦っても、なかなかシェアの逆転は起きづらいのが市場の実態だと思います。ですので、「もっと新しい提案がありますよ」という新たな基準によって”逆転が初めて叶う”と考えることが大切です。
樋口:このような思考を持つようになったきっかけはあるのでしょうか。
堀:この考え方は、顧客理解が起点になっています。
定性調査やインタビューをしてみると、現代のユーザーは色々なモノ・コトを比較していらっしゃるんですね。デジタルで情報を得られる分、以前よりも消費者の選択肢がものすごく広がっています。
そのため、我々が「このカテゴリ、この市場だろう」と定義をするのではなく、ユーザーの実態に合わせることを心がけました。
樋口:続いてのポイントについても、解説をお願いできますでしょうか。
堀:2つ目は、新市場を創るために「商品の新たな価値」を定義することです。生活者のベネフィットや、叶えたいことを実現するための基準を提案することが、新市場の創出に繋がります。
堀:例えば、洗濯用洗剤と言えば昔は粉でしたが、今では液体やジェルボールが出てきています。機能としても単に汚れを落とすだけではなく、抗菌や除菌なども見られますよね。つまり、「もっと良い選択肢」や「洗剤の定義」が各社の提案によって変わっています。
このときに初めて、成熟期におけるシェアの逆転が起こります。
市場シェアの逆転については、他の業界やカテゴリの事例も参考になるようだ。各社が「どのように新しい価値を提供しているか?」に着目すると、シェア獲得のヒントを得られるかもしれない。
第一想起されるブランド戦略、シェアNo.1を獲得するフレームとは?
市場に新しい基準を持ちこんでも、消費者から支持されなければ大きなシェアは獲得できない。巨大なシェアと第一想起を両立するには、市場分析から提供方法までのプロセスを、一つずつ組み立てる必要がある。
戦略の組み立て方として、今回は堀氏に以下のフレームを提示して頂いた。
【Frame1】:MARKET(市場/競合を正しく捉える)
一つ目の「MARKET」では、カテゴリの枠を超えた市場分析・競合分析が必要になるようだ。
堀:商品やサービスの競合(比較対象)は、企業ではなくユーザーが決めています。そのため、ユーザーが求めているベネフィットと比較対象を正しく捉えないと、良い施策は打ち出せません。
例えば、同じカテゴリでワインの競合を考えると、ビールや日本酒などのアルコール類が思い浮かぶだろう。しかし、「投資をしてリターンを得たい」というベネフィットを基準にすると、高級車や絵画なども競合に含まれてくる。
樋口:ベネフィット起点で考えると、「競合は必ずいる」と考えたほうが良いのでしょうか。
堀:仰る通りです。既存市場で機能軸で比較するのではなく、「ユーザーがどんなベネフィットで比較しているか」を正しく認識することが第一歩ですね。
【Frame2】:WHO(正しいターゲットとインサイトの設定)
堀氏によると、ターゲット設定のフレームである「WHO」では、”消費者インサイトの考え方”がポイントになる。インサイトとは、購買意欲に繋がる深層心理や行動のことだ。
言い換えるとユーザーの隠れている本音であり、例えば「いわれてみればその通り」のように、消費者本人が購入の動機を自覚していないケースは多く見られる。このインサイトを正しく設定できれば、潜在的なニーズに的確なアプローチができるため、有効なブランド戦略を立てやすくなる。
参考:
インサイトとは
堀:大事なポイントは、モチベーションとバリアをセットで考えることです。ユーザーの「こうしたい」「こうなりたい」というモチベーションと、「○○が課題となってできない」というバリアを同時に考えます。この差が大きければ大きいほど、良いインサイトと言えます。
商品の比較対象とは違い、ターゲットやそのインサイトは企業が考えるものだ。しかし、ユーザーは本音を言わないケースが多いため、堀氏は表情や声色、テンションなどの様々な要素をじっくりと洞察し、消費者インサイトを見極めている。
【Frame3】:WHAT(提供価値の設定)
ターゲット層のインサイトが見つかったら、次は「WHAT」にあたる提供価値を設定する。以下のスライドは、堀氏による提供価値の定義をまとめたものだ。
堀:提供価値とは、ユーザーに起こる良い変化です。この提供価値と機能を棲み分けないと、消費者インサイトにアプローチできる施策は決まりません。
例えば、ノコギリの「木を切る」という点はあくまで機能です。一方で、父親の「子どもから尊敬されたい」「家事を助けたい」といったベネフィットを満たす点が、本来の提供価値にあたります。
堀氏曰く、提供価値の設定は外部に任せるのではなく、製品を作った会社自身で考えることがポイントになる。自社だけで「どうやれば提供価値を感じてもらえるのか」を考えると、事業に対する責任感が芽生えるようだ。
【Frame4】:HOW(提供方法の設定)
ここまでの過程で見つけた提供価値は、うまくアプローチをしてこそシェアに繋がる。「HOW」にあたる提供方法については、”価値を一貫させること”が重要になると堀氏は語っている。
堀:例えば、「認知・理解・利用」のようにシンプルなファネルで、設計図みたいなものを書くことが有効です。ユーザーの行動やインサイト、それに対する提供価値、RTB(信じられる理由)、変化後の気持ちなどをまとめた「Pass to Purchase」を作ると、明確なイメージを持ちやすくなります。
堀:各状態のときの行動とインサイトに対して、提供価値と変化後の気持ちをまとめます。そうすると「行動」と「気持ち」で繋がるため、一貫したプロモーションを設定しやすくなります。
第一想起されるブランド戦略まとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。
※今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含めこちらからDLできます。
第一想起されるブランド戦略にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。