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【ブルーボトルコーヒージャパン元代表が語る】ファンに永く愛されるブランド戦略3つの秘訣

ブランディング

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

一時的なPR戦略によるブームは、長く続かないケースが多々あります。ファンとなる顧客を作り、長年にわたって愛される企業・店舗を目指すには、マーケティングではなく「ブランド戦略」に目を向けることが重要です。
今回のウェビナーでは、外資系企業のブランディング経験がある井川氏(元ブルーボトルコーヒージャパン代表)をお招きし、「定着するブランド創り」について語って頂きます。ファンから永く愛される秘訣がどこにあるのか、ブルーボトルコーヒーの事例とともにお伝えします。

※本ウェビナーのホワイトペーパー無料ダウンロードはこちらからできます。

20230905_井川様

井川 沙紀氏

インフロレッセンス株式会社代表
新規事業開発や、ブランドビジネスのマーケット展開に従事し、ブランディング・広報・PR領域を担当。直近では米ブルーボトルコーヒーの日本上陸を担当後、日本代表、アジア代表を経て、米・本社の経営メンバー(Chief Brand Officer) としてブランド全体の統括責任者として勤務。現在は独立し、インフロレッセンス株式会社代表として、国内外大手企業のブランディング・コミュニケーション戦略のコンサルタントや、大学の特任教授(客員)や社外取締役として活動。

樋口 達也氏

樋口 達也

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。

山中 かれん

山中 かれん

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、IT・コンサル業界の中途採用における課題解決に従事。ベンチャー中小企業から大手外資系企業まで幅広い採用支援を経験後、社内組織営業力向上に向けた研修立案、商品企画に携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2023/9/5時点のものになります。

海外ブランド日本参入と定着の難しさ

アジア有数のマーケットとも言える日本には、以前から多くの海外ブランドが参入してきた。一方で「そのまま定着できるか」は別の話であり、戦略面で失敗する外資系企業は後を絶たない。
経済産業省の調査によると、2017年~2018年に日本を撤退した外資系企業は年間80社ほどだったが、2023年にはすでに約170社が撤退している。

新たな競合の出現や商慣習の違いなど、撤退のきっかけは企業によって異なる。大まかに分けると、次のような撤退理由が考えられるだろう。
1. ブランド認知度の低さ
2. 日本人に合わないマーケティング戦略
3. 他ブランドとの差別化の失敗
外資系企業にとっては厳しい状況になっている中、日本で多くのファンを獲得した海外ブランドも存在する。今回はブランド戦略の成功事例として、米ブルーボトルコーヒーの日本進出を担当した井川氏に話を伺った。

ブルーボトルが根強いファンを獲得した裏側とは

ブルーボトルコーヒーは、コーヒーを”最もおいしいピーク期間”に提供することにこだわり、世界中の農家と直接契約を結んでいる海外ブランドだ。井川氏によると、同ブランドは「コーヒー体験」に重きを置く独自のブランド戦略で、日本を含む世界中のファンを獲得してきた。
ここで注意したいのは、商品・サービスを売る仕組みを作るマーケティング戦略と、ブランド戦略は異なる点である。ブランド戦略とは、消費者などのステークホルダーに共通の認識を持たせて、企業や商品、サービスを差別化することを指す。
ブランド戦略には様々な方法があり、分かりやすい例としてはそのブランドだとすぐにわかる個性的な社名やロゴがある。また、商品や店舗などに独自のコンセプトを持たせて、顧客の価値観を変えていく方法も1つの手だ。
日本でのブランド定着を順調に進めている井川氏は、どのような視点でブランド戦略に取り組んできたのだろうか。

ブルーボトルコーヒーとは

井川:ブルーボトルコーヒーは米国オークランドが発祥で、2002年にジェームス・フリーマンが誕生させました。彼は40歳までミュージシャンをしていましたが、コーヒー好きが高じて2000年からファーマーズマーケット(※)でコーヒーを淹れ始め、次第に店舗展開を進めました。

(※)地域の生産者が農産物などを持ち寄り、消費者に対して直接販売するマーケット。

参考:
ファーマーズマーケットとは

樋口:現在のブルーボトルコーヒーには、どのような理念があるのでしょうか。

井川:当然カップの中身にもこだわっていますが、特に「コーヒー体験」に重きを置いています。コーヒーがどういう環境で、どういう状態で飲まれることが「おいしいコーヒー体験に繋がるのか」を重視しています。
例えば店舗のデザインとか、色々なことに気を配っているブランドです。

ブルーボトルコーヒーは創業から約20年で、世界中へのブランド展開を成功させてきた。世界の店舗数は100を超えており、近年では日本や中国といったアジア進出にも力を入れている。

井川氏がブランド創りで大切にしてきた3つのこと

当初、ブルーボトルコーヒーは”サステナブルなコーヒーブランド”として日本参入を目指していた。しかし、米国の消費トレンドや商慣習を軸にしたままでは、日本でのブランド定着は難しかったようだ。

井川:当時(約7年半前)の日本には、サステナビリティという考え方があまり浸透しておらず、お客様からお叱り頂くこともありました。例えば、プラスチック製以外のストローを使っていたので、噛んでしまうと割れやすかったり。

日本でのブランド展開を成功させるにあたって、井川氏は3つのポイントを意識してきたと語る。

井川:おいしさの定義は人によって変わりますが、私たちは3つの要素に分解して、独自の定義を作っています。

井川氏に挙げて頂いたポイントを、以下で一つずつ紹介する。

【Point.1】信じていることを変えない

井川:コーヒー自体については、”フルーツであること”を活かした手法でお客様に届ける。最初は苦労する可能性もありましたが、味に繋がる焙煎度合いなどは変えずに、「日本にマーケットを作ろう」と考えました。
デザインやコミュニティの部分では、やはり地元に愛されるコーヒーショップであること。街の歴史を汚さずに、その地元の方や街自体が盛り上がるような取り組みを重ねてきました。

【Point.2】コミュニティファースト

樋口:2つ目のポイントはカスタマーファーストではなく、「コミュニティファースト」なんですね。

井川:当然ながらお客様も大事ですが、私たちはコーヒーショップとして「その街にどう溶け込むか」を意識してきました。例えば、メディア露出の前に地元の方を呼んだり、ファマーズマーケットのようなイベントを開いたりですね。
また、1人1人の顧客だけではなく、同じ価値観を持った”サポーター”を増やすことにも力を入れています。

【Point.3】Local Touchでブランドに進化を

井川氏によると、ブルーボトルコーヒーは世界中に展開している武器を活かして、各国の情報やノウハウなどを有効活用してきた。進出先の資源を無駄なく使うことで、スピード感のあるブランド展開を進めてきた形だ。

井川:モノづくりや新商品が出るときのオペレーション構築は、やはり日本の得意分野でして。そういうところを我々が担って、他国の得意分野は他のところが先に始めて、それをプレイブックにしながら各国に展開してきました。

ブームから文化へ、ファンを創り永く愛される3つの秘訣

上記のポイントを踏まえて、ブルーボトルコーヒーはどのような取り組みをしてきたのだろうか。井川氏曰く、ブランド創りやPR、ブランド展開のそれぞれの工程に、ファンから永く愛される秘訣があるようだ。

【秘訣.1】ブランド創り

樋口:売上が増えない場合に、「手を変え品を変え」という失敗はよくあると思います。井川さんが外部から入られるときも、このような事例は多く見られたのでしょうか。

井川:参入して初めて気づくポイントは、ブルーボトルコーヒーにもありました。例えば、カリフォルニアは年中同じような気候ですが、日本には寒い時期や暑い時期、雨が多い時期もありますよね。
ですので、時期によって何を売るかや店舗形状(室内・店内など)も意識しないといけない。新しいバリエーションをローカルルールとして作ることは、すごく大事だったと思います。

ブランド創りの面では、ローカルマーケットに合わせながら「顧客の価値観」に照準を合わせてきたようだ。一方で、消費行動に合わせて商品や店舗を展開すると、本来のコンセプトから外れてしまう恐れがある。

【秘訣.2】PRの工夫

井川氏もかつては、”行列”をゴールとしてKPIを設定していたと語っている。しかし、膨大なPRで一時的に注目されたとしても、そのまま顧客が定着するとは限らない。

井川:当時はメディアへの露出をKPIにしたことで、「撤退させてしまった」「消耗させてしまった」という思いがありまして。ブルーボトルコーヒーではこれを避けるために、量ではなく質をしっかりと考えたPRで、そこにKPIを設定しました。

井川氏は「ブランドのこだわり」や「日本に進出した理由」を伝えたい思いから、あえて話題作りはしなかった。14ページにも及ぶ雑誌特集などを見ると、明確な方向性を持ってPRに取り組んできたことが伺える。

【秘訣.3】ブランド展開

樋口:他地域での成功をそのまま取り入れると、ブランド展開は失敗しやすいと思います。ブルーボトルコーヒーではどのような点を意識してきたのでしょうか。

井川:そのままの商品で展開すると、やっぱり口に合うかどうかは難しいですよね。なので、私たちは各地域のKPIを持ちながら、”体験を合わせること”を重視していました。

井川:例えば、韓国は甘い飲み物が多いんですよね。「ホイップクリームが乗った甘いものを作る」という議論は当然ありましたが、やはり伝えたいものはピュアなブラックのコーヒー。
そのコンセプトはどこに行っても変わらないので、どうやってお客様をエデュケーション(教育)して、価値観をシフトして頂くかという部分をKPIにしていました。

地域に合わせてコンセプトを変えるのではなく、独自のコンセプトを受け入れてもらうためのブランド戦略を考える。ブルーボトルコーヒーはこの点を軸にして、”体験”をゴールとする顧客教育に力を入れてきた。
顧客へのアプローチ方法をうまく工夫すれば、どのようなブランドにも浸透させるチャンスはあるはずだ。

■定着するブランド戦略まとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。

※今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】ブルーボトルコーヒージャパン元代表が語る、ファンに永く愛されるブランド戦略3つの秘訣
本資料は2023/9/5に実施したウェビナー資料のダイジェスト版です。本回では、元ブルーボトルコーヒージャパン代表井川氏に、ブルーボトルが根強いファンを獲得した裏側とファンを創り永く愛される秘訣について語っていただきました。一時的なPR戦略によるブームではなく顧客にファンになってもらいたいとお考えの皆様はぜひご覧ください。