【顧客インサイト×商品開発】“Kit Oisix”利用者数約28万人の心を動かしたマーケティングと仕組み化
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
消費ニーズの多様化や移り変わりが激しい中、商品開発の方向性で悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。厳しい市場環境を勝ち抜くには、お客様から長く愛される商品を生み出す必要があります。
そこで今回のウェビナーでは、オイシックス・ラ・大地で大ヒット商品「Kit Oisix」を生み出し、同社初の女性執行役員となった菅氏をお招きします。約28万人の利用者獲得に繋げた顧客理解のポイントと、仕組み化の方法について解説をして頂きます。
※本ウェビナーのホワイトペーパー無料ダウンロードはこちらからできます。
菅 美沙季氏
オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 サービス進化室室長
化粧品通販会社を経て2009年6月に旧オイシックスへ入社。2013年、必要量の食材とレシピがセットになったミールキット「Kit Oisix」を立ち上げ、ヒット商品へと育てる。2016年10月、同社初の女性執行役員となる。サービス進化室の室長として、アメリカ発ヴィーガンミールキットブランド「Purple Carrot」の日本展開や、「ちゃんとOisix」等の新サービス立ち上げなどに従事。また、「サステナブルリテール」を掲げるオイシックス・ラ・大地は、フードロス削減のための新ブランド「Upcycle by Oisix」を展開し、サプライチェーン全体で環境負荷に配慮した取り組みを推進。
田中 将太
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材系企業を経て、サーキュレーションへ入社。首都圏のサービス業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。大手金融機関での複数の新規事業開発や、大手不動産企業での全社DXのグランドデザイン設計支援から、設立間もないHR系スタートアップの垂直立ち上げ時の経営支援まで、幅広い業界・規模の企業の事業成長に貢献。
酒井 あすか
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2023/9/6時点のものになります。
Contents
商品のコモディティ化と戦う商品開発責任者の悩みとは?
新商品開発のプロセスには、「商品企画」と「商品開発」がある。商品企画では、市場調査などを通して顧客のニーズを掴み、商品の大まかなイメージを固めていく。
一方で商品開発とは、アイデア段階のものを具体化し、実際に商品化するまでのプロセスだ。細かく分けると、技術提案や企画書の作成、プレゼンテーション、販売までのスケジュール調整などの工程がある。
新商品のイメージを固めたとしても、商品開発の体制が整っていない企業では商品化が難しい。単なるアイデア出しの工程ではないため、世の中の企業は様々な悩みを抱えている。
参考URL:
商品開発とはどういう仕事?商品企画との違いは?,商品開発ってどんな仕事?役立つ資格や必要な能力についても解説
上図のように、商品企画から商品開発に進んだとしても、競合他社と差別化できているとは限らない。業種によっては海外企業も競合になるため、「すでに似た商品があった」「他社の方が優れている」といった例も珍しくないだろう。
今回のウェビナーでは、オイシックス・ラ・大地のサービス進化室室長を務める菅氏をお招きし、商品開発におけるマーケティングのポイントを伺った。利用者数約28万人のヒット商品を育て上げた経験をもとに、商品化に向けた仕組み作りについても語って頂く。
累計1.5億食突破する“Kit Oisix”が誕生した3つのTips
2009年に旧オイシックスに入社した菅氏は、2013年にミールキット(※)の「Kit Oisix」を立ち上げた。初めは「こんなに大きくなると思わなかった」と語っているが、同商品は累計1.5億食を突破している。
(※)食材とレシピがセットで販売されている商品。
田中:Kit Oisixが好評されている理由には、どういった点があるのでしょうか。
菅:1つ目は「安心・安全」にこだわっている点です。有機または特別栽培の食材や、添加物をできるだけ使わないようにしています。
2つ目は「お野菜たっぷり」をコンセプトにしているところです。普段の料理で複数の野菜を使うことは意外と難しいですが、Kit Oisixでは5種類以上を使っています。
3つ目は、調理を短くしつつ作った感じも残せる点です。30分や40分だと結構時間がかかる印象なので、主菜・副菜が20分で簡単に作れるキットにしています。
菅氏曰く、オイシックス・ラ・大地にはヒアリングの文化が根付いており、Kit Oisixも徹底した”顧客理解”から生まれている。ここからはヒアリングを商品開発に結び付けるヒントとして、3つのTipsについて話を伺った。
【Tips1】ヒアリング
菅:Kit Oisix自体は、グランドオープン前からOisixの定期会員のお客様へのヒアリングを始めていました。「今月から月4回のお買い物が2回に減った」「続けられないので辞めます」といったお客様が増えてきたときに、「なぜなんだろう」と詳しく聞いてみました。
すると、実はスキル面で使いこなせない人や、料理の時間を取れない人が多くいることが分かったんです。
ヒアリングと聞くと、新商品開発に向けた市場調査などをイメージしがちだが、菅氏は利用頻度や購入頻度が減った顧客に目を向けた。「どうやればOisixを使い続けてもらえるか」に焦点を当てることで、より具体的なニーズを深掘りしてきたようだ。
【Tips2】仮説だし
田中:仮説だしのプロセスでは「モックを作ってヒアリング」とありますが、具体的にどういった動きをされたのでしょうか。
菅:お客様から「いいですね」と言われた商品でも、点数を聞くと10点満点中5~6点のことが意外にあるんです。なので、実際のレシピカードとレシピに使う食材を想定しているパッケージに入れてお持ちし、「こういう主菜・副菜が作れるのですが、どうですか」といった質問を、何十人に対してヒアリングしていました。
田中:ヒアリング前の段階で、具体的なアクションを起こす点数の基準とかはあったのでしょうか。
菅:ガチガチには決めていません。10人に聞いて全員が9~10点をつける商品って、あまりエッジが立っていないと思うんです。感覚的なところもありますが、例えば3人のお客様が評価をしてくれた場合は、「他にも好きな人が5万人ぐらいはいるかも」のように派生して考えていました。
【Tips3】ラーニング
菅氏が語るエピソードの中では、顧客ごとにアプローチを変える方法も参考になる。Kit Oisixの開発にあたっては、新規顧客に対してLPの獲得実験をする一方で、既存顧客へのヒアリングでは「ラーニング」を目的にしていたようだ。
菅:既存のお客様に対してはモニターを作って、テスト販売みたいなことをしていました。お客様をイメージしながらやると、いくつかのカテゴリに分けられるんですね。そこから、新商品を出すときに「これはAさんに好かれる」「これはBさん向けに作る」のようにターゲットを明確にしていました。
菅:新商品開発はターゲットが明確になると進みやすいので、ラーニングを深く深く進めることをやってきました。
「既存・新規」だけではなく、顧客のカテゴリは様々な属性で分けられる。例えば、地域や性別などの属性に分けて、各カテゴリのニーズを深堀りしていくと、より明確なターゲットとニーズを設定できるだろう。
Oisix流、愛され続ける商品を創るための2つの秘策
上記のTipsをまとめると、新商品開発では「お客様分析」と「ナレッジ蓄積」のプロセスが重要になる。タイムリーな情報を自ら収集し、その情報を有効活用できる体制を整えてこそ、顧客満足度は上がっていく。
ここからは2つのプロセスに分けて、Oisix流の秘策について話を伺った。
Oisix流お客様分析
田中:お客様分析におけるヒアリングでは、どういった点がポイントになるのでしょうか。
菅:「解きたいイシュー」によって、適正なヒアリング対象を見極めることが重要です。
例えば、既存顧客だけにヒアリングをしても、購入した側の意見にしかなりません。商品を買ってくれたお客様と、買ってくれていないお客様の差が分からないと、コンバージョンを求めることは難しいですよね。
それだとヒアリング自体が目的になるので、事前に「何の課題を解きたいのか」を明確にする必要があります。
菅氏曰く、闇雲にヒアリング対象を選ぶだけでは、新商品開発に役立つ情報は得られない。また、データは時間経過とともに古くなるため、その時々の「解きたいイシュー(事業課題)」によってヒアリング対象や方法を考える必要がある。
Oisix流ナレッジ蓄積
Oisix流のナレッジ蓄積術としては、チーム創りをはじめとした5つのポイントを挙げて頂いた。
中でも特徴的な施策として、ここでは「ヒアリング伴走」を紹介する。
菅:例えば、新人さんがいきなり一人でお電話でヒアリングをするのではなく、慣れている人と一緒にZoomに入り、お互いの顔を見て話せる環境を用意して、もし新人さんがお客さまからの質問や受け答えにつまづいたらすぐにフォローに入れる体制を作っています。
ヒアリングも”分かる”と”できる”は全然違うと思っていまして。初めの頃は「質問をするぞ」のように意気込んで、一問一答になりがちなんです。
一問一答だと、途中で真逆の回答になっても気づけない場合がある。「なぜお客様がそう言われたのか」「お客様はどういう思考回路なのか」を理解しないといけないので、ヒアリングも伴走をしながら教えています。
他にもサービスプロデューサー制度など、菅氏は様々な角度からナレッジ蓄積の仕組みを整えている。収集した情報・データを最大限活用するために、Oisix流のナレッジ蓄積をぜひ参考にしてほしい。
顧客インサイト×商品開発まとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。
※今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。顧客インサイトを活かした商品開発にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。