【イベントレポート】「ほしい」を引き出す言葉のつくりかた ―たった1時間で「売れる言葉」を身につける! ビジネスを成功に導くコピーライティングの原理原則と事例とは―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/11/22回では、製品やサービスの魅力的な打ち出し方に悩むマーケティング責任者の皆様に向けて、電通にて国内外の企業のマーケティングやブランディングを支援。制作した広告は国語の教科書に掲載、他多数の賞を受賞した堤氏に、たった1時間で「売れる言葉」を身につける! ビジネスを成功に導くコピーライティングの原理原則をお話いただきました。
「他社と差別化するための打ち出し方を模索しているがイマイチしっくりこない」
などのお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
堤 藤成氏
コピーライター、クリエイティブディレクター
新卒で電通に入社し、クリエイティブ、デジタル、プロモーションを統合し、国内外の企業のマーケティングやブランディングを支援。制作した広告は国語の教科書に掲載、カンヌライオン・ゴールド、新聞広告クリエイティブコンテスト・グランプリ、日本広告業協会(JAAA)論文銀賞、宣伝会議アドバタイムズの第1回コラムニストグランプリなどを受賞。現在はスタートアップにてクリエイティブ・ディレクターとして活動。大型の年間プロジェクトをリードし、「言葉」を起点に、企業のセールスリフト×ブランドリフトを支援。2022年に『ほしいを引き出す、言葉の信号機の法則』(ぱる出版)を出版。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
酒井 あすか
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/11/22時点のものになります。
Contents
コピーライティングの原理原則とは?
「コピーライティング」と聞くと、広報やマーケティングのイメージを強く持つ人も多いだろう。しかし堤氏曰く、ホワイトカラーの3分の1は、日々「言葉」を使って仕事をしている。パワーポイントでの資料作成やメール文書の送信、メンバーとのコミュニケーション……。これらの中にコピーライティングで用いられる「売れる言葉」の考え方を取り入れれば、幅広い職種で活用できるという。
今回はそんな、「売れる言葉」の定義をするところからスタートした。
何らかのアクションで相手の行動や意識変容を促す
「言葉」という当たり前の概念を分解すると、音や文字など、なんらかのアクションで自分の意志を伝えるものであると捉えられる。例えば信号機は文字こそ使わないが、色、音、光、形などの一定の符号によって意志を伝えている。
堤:信号機を例に考えてみると、言葉には「横断歩道を渡りきれるようにする言葉」と、「動かない、何も変わらない言葉」の2種類があるとわかります。今回ご紹介する「売れる言葉」というのは、信号をきちんと渡らせるものですね。
自分の意志を提示し、相手の意識や行動を変化させる――これがすなわち、「売れる言葉」なのだ。
「言葉の信号機の法則」から見る、「売れる言葉」を作り出すヒント
信号機にはご存知の通り赤、青、黄の3色が使われており、それぞれ持つ役割が異なる。実はこれらが、人を動かす「売れる言葉」を作りだすための、最初のヒントになるという。
堤:それぞれの色を言葉に置き換えると、赤は「目をとめさせる」ものです。青は「ベネフィットを伝える」、あるいは「商品を買った後の未来」を示すようなものになります。それでもなかなか信号を渡りきらない人には、黄色の点滅で「限定する言葉」を投げかけ、行動を促します。
樋口:目的に合わせて適切な順番で言葉を投げかけると、効果的だということですね。
「ほしい」を引き出すコトバで成功した事例4選
では、堤氏は実際に赤、青、黄の特性をどのように駆使して「売れる言葉」を生み出しているのだろうか。それぞれの色にフォーカスしながら、事例を4つ紹介していただいた。
[事例1]「不」から生まれる「とどめる赤」
思わず足を止め、目を留めさせる言葉が「とどめる赤」だ。人を注目させるには、あらゆる「不」に着目する必要がある。
例えば不安、不満、不快、不意、不慮、不都合、不可解、不思議など、「不」を感じる言葉に、人はつい目を引かれてしまう。この「不」を利用したのが、堤氏が手掛けた「絆」をテーマにした新聞広告だ。
堤:例えば「親子の絆を大事にしよう」とそのまま言っても、当たり前すぎて誰にも気にしてもらえません。そこで、あえて「さみしくなったら」という、不安な状態を示すワードを出しました。その上で自分のおヘソを見ると、自分が一人ではなかったと気付ける。こういったことを伝えています。
樋口:人は失う不安のほうに強く反応するからこそ、強めの「不」に関する言葉を持ってくるのが望ましいんですね。
[事例2]リフレーミングから生まれる「すすめる青」
続いては、「すすめる青」を活用したフォーエルの事例だ。堤氏は大きいサイズの洋服を取り扱うフォーエルのリブランディングにおいて、「大きいサイズの店」から「ありのままの体型の多様性を応援するブランド」という定義をした。
この背景にあるのが、「リフレーミング」だ。リフレーミングとは、ある物事に対して異なる見方や枠組みを与え、新たな意味・意義を定義することを指す。
堤:ちょうど世間的にダイバーシティが叫ばれはじめ、オランダでは「ボディ・ポジティブ」という、「ありのままの体型を大事にする」トレンドも起きていました。そういう視点で見ると、フォーエルさんの事業は非常に最先端だったんです。
そこで、実はすごく価値のあるブランドだと強く伝えるステートメントを書かせていただきました。
[事例3]行動喚起から生まれる「きになる黄」
赤、青に続いて、次は黄――Call to Actionを用いた事例だ。Call to Actionとは「行動喚起」の意味で、実際に消費者にどのような行動を取ってもらいたいのかを訴求するものだ。
堤:今は情報が溢れているので、媒体を見てどう解釈してほしいのかを相手に委ねると、コミュニケーションコストがかかってしまいます。買ってほしいのかクリックしてほしいのか直接的に書かれていれば、考えずともすぐに行動に移せるでしょう。情報爆発の時代だからこそ、きちんと伝えることが求められているのです。
[事例4]赤・青・黄を組み合わせて人を動かす
最後の事例が、ここまでにご紹介した赤、青、黄の全てを組み合わせたDJポリスの事例だ。DJポリスは2013年に日本がサッカーワールドカップ出場を決めたことで大衆が渋谷に集まった際、警視庁の機動隊員が冷静な誘導を呼びかけた逸話から生まれた愛称だ。人々を不快にさせず、効果的な交通整理を実現した。
堤:これは実際のDJポリスの演説を書き起こしたものです。最初に不安・不思議な要素で人を気にさせてから、フレームを変えて「おまわりさんもみんなのチームメイトである」という価値を出しました。最後に「道を広く空けてほしい」と、行動を適切に伝えています。赤、青、黄の順番で物事を伝えたからこそ、混乱した渋谷でも交通整理ができた事例です。
樋口:結論を先に伝えるよりも、場面によっては赤、青、黄の順番のほうが伝わりやすいんですね。
「ほしい」を引き出すコトバをつくるステップ
ウェビナーでは、実際にどのように「ほしい」を引き出す言葉を作ればいいのか、ステップ形式の簡単なワークショップを実施。「天然水」を売るケースを想定し、まずは販売の目的について考察した。
ポイントとなるのは、「ほしい変化」を明確にすることだ。例えばブランドに興味を持つ、好きになるといった内容はパーセプションチェンジ(知覚変化)に該当し、出かける、購入するといった内容はビヘイビアチェンジ(行動変化)に該当する。
こうした「ほしい変化」が明確になったら、次に「とどめる赤」を探る。顧客のニーズを捉えてキャッチコピーを作るために、とにかく顧客や自分が感じる「不」を観察し、書き出すステップだ。
堤氏が実際に考え出したのは、「この先に給水所はありません」といった不安のほか、「人工VS天然」という不思議を提示するような言葉だ。また、自分で言葉を考えつかない場合、データを用いるのも効果的だという。
堤:これは「不都合」を考えた例ですね。例えばジュースではなく水を飲ませようと考えて、「甘いジュースを毎日1杯以上飲む人は脳卒中のリスクも21%上昇する、らしい」と書いてみました。
さまざまな事例やデータを調べていくと。世の中にある不都合な真実に気付けると思います。これは情報をそのまま出しただけですが、はっとする人には届くのではないでしょうか。
樋口:コピーライティングというと言葉を紡ぎ出す作業が9割のイメージですが、実際はどのように動くことが多いのでしょうか?
堤:リサーチや観察の時間が9割ですね。天然水なら、街で水がどのように飲まれているのかといった原点に立ち返ってみますし、本を読むこともあります。実際に書くのは1割ぐらいの感覚です。
「とどめる赤」で課題を特定したら、その解決策や求める行動を、「すすめる青」「きになる黄」に当てはめて考えていく。「課題発見」×「価値創造」×「行動喚起」の組み合わせを柔軟に考え、実験し続けることが大切だ。
「ほしい」を引き出す言葉のつくりかたまとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。「ほしい」を引き出す言葉のつくりかたにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。