事業をグロースさせるUX ―顧客体験価値を生み出す、UX戦略立案のチェックポイント―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/10/27回では、UX戦略をテーマに開催。UI/UXの事業を0から立ち上げた経験を持つニジボックス執行役員の丸山氏にお越しいただき、顧客体験価値を生み出すためのUX戦略立案の手法やポイントについて語っていただきました。
どうすればUXを通して事業をグロースさせられるのか、当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
※無料のホワイトペーパーダウンロードはこちらからできます。
丸山 潤氏
株式会社ニジボックス 執行役員 サービスプロデュース事業 本部長 / 株式会社リクルート デザインマネジメントユニット デザインマネジメント部
2011年、デザイン・フロントエンド技術者としての経験を経てリクルートに入社。インキュベーション部門Media Technology Lab.(現 新規事業開発部)に参画し、UX開発組織のGMに就任。在籍中、国内の事業開発人材へのUXデザインカルチャーの浸透を目的として4000人規模のオープンコミュニティー「UX SKETCH」を運営。現在、執行役員を務めるニジボックスではUXリサーチに基づいたビジネスグロースに注力。株式会社リクルート デザインマネジメントユニット デザインマネジメント部に兼務。
佐々木 博明
プロシェアリング本部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
ディー・エヌ・エー、リクルート、ビズリーチにてWebマーケティングや新規事業立ち上げなど幅広く担当。その後、PERSOL INNOVATION FUND合同会社でHRTech企業への投資案件やM&A業務に従事。サーキュレーション入社後は大手企業様へのDXや新規事業の支援に従事。製造業・流通業・通信など幅広い業界に対して、DX推進に必要なマーケティング・セールス・ECの戦略立案、業務・システム改革、組織改革などのコンサルティング実績を持つ。
酒井 あすか
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/10/27時点のものになります。
Contents
そもそもUXとは?CX、UIとの違い
UXとは、ユーザーがサービスやプロダクトを通して得られる体験を指す言葉だ。似ている概念にはCXやUIなどがあるが、これらを概念図として示すと以下のような関係性になる。
最も上段にあるのがユーザーとしてのあらゆる体験を示すCXで、近年はGAFAをはじめとするグローバル企業が注目している領域だ。ビジネスモデルそのものという理解もできる。一方UIは、CXやUXを実現するためのデザイン部分を指す。
UI/UXの事業を0から立ち上げたプロから学ぶ成功のポイント
現在、多くの企業が顧客ニーズの理解を重視してUXリサーチを実施しているものの、リサーチを基にUXを改善してもなかなか実績が出ない、ビジネスインパクトを生み出せないといった課題を抱えている。
UXの成果を出すには目先の数字よりも顧客課題の解決に注力すべきだが、どのような視点を持てば良いのか、具体的に伺った。
5段階モデルの中から自社の正確な課題を見つけて改善
本当にプロダクトが解決すべき課題を見つけ、そこにフォーカスしたUX改善を行うためには、まず課題抽出のための観点を持つ必要がある。ここで知っておくべきは、ユーザー体験に関わるデザインの5段階モデルだ。
丸山:5段階モデルの「骨格」「表層」の部分がUXだと思っている方々が多いのですが、実際には「戦略」から「表層」までの全てがUXだと言われています。これらの要素をつなげて、顧客体験を改善する必要があるということです。戦略がまとまっていない状態で表層だけを改善するというのが、よくある失敗事例ですね。
すでにリリースしているプロダクトがあるなら、この5段階の中のどこに問題があるのかを探ることが大事です。
アイデア形成の段階でユーザーの課題解決ができるかを確立
具体的に顧客課題をどのように解決していくのかを考える上では、商品のライフサイクルの全体像を把握した上で、UX戦略への適切なアプローチが求められる。
丸山:発見&理解、定義、アイデア形成が、主にUX戦略と言われる部分です。本当に顧客が必要としているものが何なのか、競合優位性も見ながら自分たちが提供するプロダクトの価値を定義し、アイディエーションを行うのが基本的なプロセスです。
佐々木:「とりあえず作ってみる」も間違いではないと思いますが、先にどんな機能が大切なのかを決めておかないと、開発費が膨大になってしまいますしね。
間接的な競合企業の価値ポイントを明確化
実際に丸山氏が手掛けた成功事例の場合、ロードマップはUXの見直しから機能戦略まで、6つのステップに分けられる。このときの大きなポイントは、直接的競合ばかりではなく、間接的競合を見ることによる自社の価値ポイントの明確化だったという。
丸山:戦略で一番大事なことって、ビジネスモデルキャンバスとかリーンキャンバスでいう価値提案と言われる部分です。
自分たちが提供しているカスタマーへの価値は何なんだといったところをちゃんとまず土台を作りましょうといったところですね。今の日本企業の問題は直接的競合ばかり見て間接的競合を見ずに自分たちでサービスを作っていることが多いです。
直接的競合と間接的競合を見て自分たちが他のサービスにない価値は何なんだといったところを出していったという感じですね。
間接的競合にある価値をネットに持ってくるだけでも全然直接的競合にはない価値が出して、サービスのニーズというのを新たに見つけていった経験もあります。
ステップ別に見る、UX戦略を描くためのフレームワーク
UX戦略を描く上では、大きく状態分析、競合調査、ユーザー・ニーズ調査、調査分析の4ステップを踏むことになる。これらをどう進めていくべきなのか、4つのフレームワークをベースにご紹介していただいた。
[Step.1状態分析]現在のビジネスモデルがどうなっているかを正しく整理する
最初に行うのが、ビジネスモデルキャンバスを用いた状態分析だ。パートナーや主要活動、リソース、価値提案、顧客との関係、チャネルなどの要素からビジネスモデルを整理することで、事業のケイパビリティを抽出し、ビジネス戦略の勝ち筋を見出していく。
[Step.2競合分析]インタビュー+競合調査で価値を確信する
次に必要なのが、競合分析だ。すでに言及したように直接的競合以外にも間接的競合を調査することで、自社の本質的な価値を見出すのが目的となる。
丸山:UX観点で競合調査を行う場合は、例えばSNS戦略やマーケティング、SEOなども含めた多角的な角度から30項目ほどの調査を行い、長所・短所を分類します。また、ヒューリスティック分析と呼ばれる調査も有効です。自分たちが競合サービスに触れて、良い点・悪い点を列挙していく方法ですね。
この競合調査で最も重要なのは、他社の「価値提案」を分解することです。
佐々木:他社のビジネスモデルキャンバスを作成すればいいんですね。その中でも、一番コアな部分を見ていくと。
丸山:コアな部分が自社と被っていないかを見るイメージですね。
[Step.3ユーザー・ニーズ調査]仮説立て→調査を何度も繰り返し価値の確信を高めていく
自社の価値となる部分が見えてきたら、次にユーザー・ニーズの調査を進める。バリュープロポジションを用いて仮説を立てさらなる調査を繰り返すことで、本当に自社の価値に需要があるのか、確信を深めていくフェーズだ。ユーザーの状況は日を追うごとに変化していくため、調査は繰り返し行うのがポイントとなる。
[Step.4調査分析]カスタマージャーニーを洗い出し分析を行う
佐々木:次に行うのが調査分析で、カスタマージャーニーやペルソナの策定といったフレームワークがあります。この粒度は細かく作るのでしょうか?
丸山:細かく、さまざまなパターンで作ります。ありがちなのは、「お金を払ってくれる人」に対してだけカスタマージャーニーを作るケースですが、関わるステークホルダー全員に対して作りましょう。それをもっと複雑化したのがユーザーエクスペリエンスマップです。
最終的には、作成したカスタマージャーニーで自分たちのゴールを達成できるのかどうかを検証します。
UX戦略を推進する上での4つのチェックポイント
さらに、UX戦略を推進する上でいくつか押さえておくべきポイントについて、「よくある間違いケース」とともに解説していただいた。
[Check point.1]データだけで判断せず、気になる箇所はさらにUXリサーチを行う
佐々木:1つ目のポイントでよくある間違いは、アンケートなどのリサーチを基にさまざまな判断をして、ユーザーに必要ではない機能を作ってしまうことだと伺っています。ここではどういう考え方で、どんな判断をすれば良いのでしょうか?
丸山:定量的なデータだけを見てなんとなく仮説を立てると、本質的ではない機能になるケースがあります。ですから、仮説がありそうだと思ったら、実際にそれを簡単なプロトタイプやワイヤーフレームとして作成し、UXリサーチやユーザビリティテストで触ってもらいましょう。もちろん、事前にヒアリングするのも有効です。ここで莫大な資金を投じて機能開発をしてしまうと、大きな失敗につながります。
[Check point.2]自分の思い込みで判断しない
データで判断をしてしまうのは、自分自身の主観が交じるからでもある。そういう意味では自分の思い込みで判断しないのも大きなポイントで、正しい答えを導き出すには定性・定量調査を組み合わせて実施するのが有効だという。
丸山:例えば定量調査ならABテストやアクセス分析がありますし、ほかにもアンケートやユーザーインタビュー、デスクリサーチといった探索的リサーチを活用する方法を採れます。
抜けがちなのが定性調査ですね。ユーザビリティテストやヒューリスティック分析のほか、エスノグラフィー調査などがあります。例えばダイソンの開発者は実際に美容室で働いてみて、自社のドライヤーの悪いところを洗い出したそうです。
そのときのニーズや自分たちの課題にはどんな調査がマッチするのかを考え、試していきましょう。
[Check point.3]プロダクトを使うステークホルダー全体を見る
次のポイントは、直接的なユーザーだけではなく、ステークホルダー全体を見ることだ。全てのステークホルダーの満足度を高めるために、自社のプロダクトに関わるステークホルダーを洗い出し、全体を俯瞰する必要がある。
佐々木:ここまでのポイントを実現し最適なUX戦略を描くためには、組織も並列に育てていく必要があると思います。組織の観点で、丸山さんからアドバイスはありますか?
丸山:専門家であるプロダクトチームだけがまとまってUXリサーチの結果を提案しても、決裁者や他部署から反対されるケースは多々あります。組織全体としてUX戦略の理解が必要ですね。
[Check point.4]UXはチームで取り組むことが重要なため、経営者を巻き込む
佐々木:ここまではどちらかというとプロダクトを作る上での考え方でしたが、同時に意思決定のプロセスも発生するということで、ポイントをいただいています。
よくあるのが、トップダウンで機能追加のオーダーが入るケースですが、こういう場合はどんな説明をしていくと良いのでしょうか。
丸山:ここで厄介なのが、人間が無自覚のうちに持っている思い込みや価値観――いわゆる「メンタルモデル」と呼ばれるものです。自分が思い込みで判断している状態を、組織全体で理解していかなければいけません。
トップダウンで機能追加を要求されるというのは、ほぼほぼメンタルモデルです。私はよく、「それはどのファクトで判断をしているのですか?」と聞きますね。
あらかじめ見ておくべき企業の成熟度
UX戦略を実施する上でもう一つ見るべきなのが、企業の成熟度だ。特に以下のスライドにある1の「拒否」の段階では、そもそもUXの重要性を理解してもらえず、推進が滞る可能性が高い。
丸山:1~6までのフェーズをどのように引き上げていくのか、方法論は実は論文にまとまっています。例えば1に関してはUXに興味がある人を社内で探し、ミッションを持たせることからスタートしましょう。
事業をグロースさせるUXまとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。事業をグロースさせるUXにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。