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【イベントレポート】ソフトバンクのESG徹底解剖 ―スピード推進を続けるソフトバンクに学ぶ、ESG経営全体像と成功の3つのポイント―

SDGs

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/08/23回では、サステナビリティ推進に向けた組織の巻き込みや外部への発信に奮闘されている皆様に向けて、
ソフトバンクのSDGs推進室にてESG経営展開を牽引されている 日下部氏に、ソフトバンクのスピードESG推進の裏側を徹底解剖しながら、成功のためのポイントについてご紹介いただきました。
「成果と評価を結びつけて、サステナビリティ推進を加速させたい」
「担当だけが頑張っていて、他人事の社員が多く推進が思うように進まない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

日下部 奈々氏

日下部 奈々氏

日本を代表するテクノロジー企業、ソフトバンクのSDGs推進担当者
2004年ソフトバンク入社。新卒・中途採用、ソフトバンクグループ人材育成機関「ソフトバンクユニバーシティ」立ち上げ、「ソフトバンクアカデミア」をはじめとしたグループ次世代リーダーの発掘・育成、タレントマネジメントやダイバーシティ推進を担う。現在はSDGs推進室へ着任し、SDGs戦略策定や対外コミュニケーション、社内浸透施策などの取り組みを推進中。

信澤 みなみ氏

信澤 みなみ氏

株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進プロジェクト 代表
2014年サーキュレーションの創業に参画。成長ベンチャー企業に特化した経営基盤構築、採用人事・広報体制の構築、新規事業創出を担うコンサルタントとして活躍後、人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者として従事。「プロシェアリングで社会課題を解決する」ために、企業のサスティナビリティ推進支援・ NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクター とのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画〜運営の実績多数。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/08/23時点のものになります。

ソフトバンクのESG経営戦略とこれまでの実績とは

ESG投資が全世界で3880兆円規模にまで拡大している現在、気候変動の問題はもちろんのこと、SDGsに含まれるサステナビリティ議題の重要性は高まっている。
すでに数多くの企業がESG経営に乗り出しており、メディア露出などのPRも盛んに行われている。その中でも存在感を示している企業の一つが、ソフトバンクだ。同社は2020年を境にSDGs/ESG経営への取り組みを本格化し、2年経過した現在までにさまざまな実績を打ち立てている。

例えば1.5ヶ月という超短期間で全社戦略と推進体制の策定を行ったほか、社内ではグローバル基準の組織体制を構築。さらに1年半の間に数々の取り組みを推進し、Dow Jones Sustainability IndicesやNIKKEI SDGsをはじめ、実に10以上のESG評価を得た。

【事例】ソフトバンクのスピードESG推進の裏側を徹底解剖

なぜ、ソフトバンクはここまで高いESG評価を得るに至ったのか。まずは評価につながるポイントも含めて、3つの要素をピックアップしていただいた。
それは、「カーボンニュートラル」「ビジネスと人権」「社会的インパクト」。これらはすでにESG経営が進んでいる企業とこれから取り組む企業で、最もギャップが多いカテゴリでもあるという。

[Category.1]カーボンニュートラル

最初のカテゴリは、カーボンニュートラルだ。広く知られている通り、気候変動への取り組みとしては一丁目一番地であり、多くの企業がビジネスモデルそのものの変革が求められている。

日下部:ソフトバンクの場合は通信がコアビジネスで、多くの電力を使います。そこをサステナブルにするために我々が変えるべきは、最も電力を消費している基地局でした。そこで基地局も含めた全社的な使用電力を、2030年までにカーボンニュートラル化すると策定。2020年までに30%、2021年までに50%、そして今年度は70%という形で、段階的に削減を推進しています。

もう一つソフトバンクが取り組んでいるのが、自社だけにとどまらない、社会全体のCO2削減に向けた取り組みだ。例えば電気アプリを通じて、家庭向け節電サービスの普及・拡大を狙っている。

日下部:このアプリは、テクノロジーを通じて一般ユーザー様の環境意識向上や行動変容を促すためのサービスで、売電事業を行っている当社グループ会社のSBパワーが提供しています。ユーザーが省エネ活動をすると、節電量に応じてPayPayポイントをゲットできます。これまではイメージが湧きづらかった「節電効果」がポイントとして換算され、ゲーム感覚で意識を変えられるものです。
これはグループ会社の若手社員がリードして実現し、環境省から表彰もいただきました。社員の取り組みを後押しするような存在ですね。

信澤:会社のKPI達成のためというだけではなく、社会のCO2削減を促すポジティブな取り組みであり、さらに自社グループで取り扱うPayPayの活用によって、財務的な観点でもメリットがあるんですね。

[Category.2]ビジネスと人権

続いてのカテゴリは、ビジネスと人権だ。この部分は環境問題とは異なり、まだまだ具体的な取り組みイメージがついていない企業も多いと推測される。

信澤:現方針を出してはいても、そこから進んでいない企業が日本には多いかと思います。ソフトバンクさんとしては、ビジネスと人権についてどのように捉えているのでしょうか。

日下部:非常に重いテーマですね。企業が責任を持つべき人権というと「社員」や「お客様」に対するイメージが強いですが、調達先も含め間接的に関わる人全てが責任範囲なのだと、意識のパラダイムシフトを起こすべきです。当社も人権に対する考え方の勉強会を経営層も含めて実施して理解を深め、その上で責任を果たせるような体制をどう組むのか、どんな問題が起こり得るのかなど、情報収集を繰り返しました。

実際にソフトバンクにおける人権DD(デューデリジェンス)がどのようなプロセスで実施されたのかを示したのが、以下のスライドだ。

日下部:日本の人権問題は特殊性があるため、さまざまなガイドラインを参考にしながらアセスメントを実施しています。その上でリスク防止や低減のための取り組み・報告をする形でデューデリジェンスの立て付けを行っています。

[Category.3]社会的インパクト

最後のカテゴリが社会的インパクトの拡大で、必要なのは中長期的なビジネスチャンスを狙う取り組みだ。ソフトバンクの場合はHAPS(High Altitude Platform Station)と呼ばれる、成層圏から広域エリアに安定した通信ネットワークを提供する飛行機型のプラットフォームの実用化に向けて、サステナビリティボンドの発行を行ったという。サステナビリティボンドとは、社会課題解決にのみ投資される債券のことだ。

日下部:HAPSはソーラーパネルによって動き、過疎地や離島などへインターネット環境を届けることが可能です。こうした次世代テクノロジーの実用化にはかなりの先行投資が必要なので、ここに対して債券を発行しました。

スピードESG経営を実現した3つの成功ポイント

ソフトバンクはなぜ、ここまでの内容を2年という短期間でスピーディに実施できたのか。成功のエッセンスについても同様に3つ伺った。

[Point.1]できることを着実に

信澤:最初のポイントは「できることを着実に」。本当に地道な取り組みをされてきたのだろうということが、ワードからも伝わります。

日下部:サステナビリティやESGはテーマが幅広くやることも多いですし、先進企業はすでに眩しいほどの取り組みをされています。すると自社では何からすべきなのかと混乱してしまうのですが、やはりまずは方向性として間違いない内容を、自信をもってやっていくしかありません。
先ほどご紹介したHAPSのような社会へプラスの影響を与える施策と、着実に人権対応をしてマイナスの影響を与えない土台づくりは両輪の存在です。どちらかだけでは不完全ですし、基盤がしっかりしていないとプラスの取り組みは本当に実現できるのか怪しくなります。だからこそ、「着実」が大事ですね。
具体的にはまずしっかりとデータをグループ全体から集め、たとえ数値が低くても開示しましょう。「もう少し数字が整ってから出したい」という気持ちがあるとしても、「数字を出さない=管理すらしていない」と受け取られてしまうのがESGです。着実に毎年開示をして、その数値が恥ずかしいのなら次年度から高めていくことです。

[Point.2]クリティカルポイントの見える化

信澤:着実にデータを集めて開示し、そこから事業成長につながる改善点を見出すのが2つ目のポイントである「クリティカルポイントの見える化」だと思います。ソフトバンクさんは、どういうところをどのように活かしたのでしょうか?

日下部:自社にとって最も大きい問題は何かを考えたときに、当社の場合はまず「カーボンニュートラルへのアクション」が確実に求められていること、そして「まだインターネットにアクセスできない37億人の人々に対して、どうビジネスを拡大していくのか」が重要だと考えました。その上で当社がクリティカルポイントとして挙げたのがHAPSです。企業成長のキーファクターかどうかが、実施の鍵になったと思います。

信澤:まさに外部変化がどういう風に自社事業に影響するのかを捉えながら、戦略に活かしていくということですね。

[Point.3]外部から積極的に学ぶ

信澤:ソフトバンクさんの事例は事業部と積極的に連携しているからこそ推進できているのだと思いますが、これを自社内だけで取り組むのは難しいものがあります。この点について、ソフトバンクさんは外部から積極的に学ばれているそうですね。

日下部:やはり推進室だけでは手が足りませんから、今現在までたくさんの知恵を外部からいただいています。特に社内浸透や啓発については課題に感じている企業が多いと思いますが、当社はESGやサステナビリティ全体の動向のキャッチアップと、人権や環境、ダイバーシティなどテーマに特化したインプットを両軸で進めてきました。
特にESG動向のキャッチアップでは、グローバルの動向や日本の政策動向に詳しい人に、金融や経済成長観点でしっかり語ってもらうことがポイントだと考えています。

ソフトバンクのESG徹底解剖まとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると以下のようになる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。ソフトバンクのESG徹底解剖にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。
また今回ご登壇いただいた日下部さんは、有識者として企業の支援も行っています。ESG経営に関連した以下のような取り組みに興味がある方は、ぜひご相談ください。

【無料ホワイトペーパー】
ソフトバンクのESG徹底解剖 ―スピード推進を続けるソフトバンクに学ぶ、ESG経営全体像と成功の3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2022年8月23日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。サステナビリティ推進に向けた組織の巻き込みや外部への発信に奮闘されている皆様に向けて、ソフトバンクのスピードESG推進の裏側を徹底解剖しながら、成功のためのポイントについてご紹介しております。