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【イベントレポート】リーンマネジメントの教科書 ―1年間で売上100億円UPを実現したプロが語る、成功へ導くマネジメント手法とは―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/08/31回では、事業企画を書き上げるも、何層もある承認プロセスの中で苦しみ続けている皆様に向けて
事業企画のプロフェッショナル 細野氏に、「リーンマネジメント」の考え方を、事例をもとにご紹介いただきました
「新規事業/企画のチームマネジメント方法を知りたい」
「担当事業の業績向上を求められ、少々無理に感じる目標達成が言い渡されている」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

細野 真悟氏

細野 真悟氏

株式会社ローンディール 最高戦略責任者
2000年にリクルートに入社しリクナビNEXTの開発、販促、商品企画を経験した後、新規事業開発を担当。 2013年にリクルートエージェントの事業モデル変革を行い、1年で100億の売上UPを実現し、リクルートキャリア執行役員 兼 リクナビNEXT編集長に。 2017年から自身がヘビーユーザーである音楽コラボアプリ「nana」を運営するnana musicにCOOとして転職し月に8000万円の赤字だった事業を2年半で黒字化。
現在はローンディールのCSOを務めながら、フリーのビジネスデザイナーとしても複数のベンチャーの戦略顧問や大企業の新規事業部門のメンタリングを行う。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集 慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/08/31時点のものになります。

1年間で売上100億円UPを実現したチームマネジメント手法とは

新規事業が上手く推進できない理由はさまざまだ。事業創造にチャレンジする組織風土が十分でない、既存のビジネスモデルへの固執が強すぎる、事業創造を牽引する人材が十分でないなどがその一例だ。これらは総じて、「企業の組織や文化」が、新規事業推進の大きな阻害要因になっているのだと言える。
そんな状況を打ち破るリーンスタートアップを実践するための「リーンマネジメント」について、まずは概要から伺った。

リーンマネジメントとは?スコープと必要性

『リーンマネジメントの教科書』の著者である細野氏によると、リーンマネジメントとは会社や事業規模にかかわらず、リーンスタートアップを実践できるチームへの変換を実現するための方法論であるという。

村田:リーンマネジメントには活用すべきシーンがあるとお伺いしています。以下のスライドにはリーンマネジメントに対して「一神教マネジメント」という聞き慣れない言葉も登場していますが、どういうことなのでしょうか?

細野:「良い商品の正解は経営者が一番よく知っている」という前提で、経営者に稟議を挙げ、承認をもらって商品を作る方法を「一神教マネジメント」と呼んでいます。
このやり方でももちろん構わないのですが、こと破壊的イノベーションやインキュベーションを行うなど不確実性の高い場面では、リーンマネジメントが有効になります。

当時のリクルートで発生していた問題とリーンマネジメントによる打ち手

村田:細野さんは実際にリーンマネジメントを用いて、リクルート時代に100億円の売上をアップさせています。そもそも事業はどういう状況だったのでしょうか?

細野:私がリクルートエージェントに異動した当初は売上がずっと横ばいで、成長が停滞していました。課題は2つです。1つ目は、上手く集客ができていなかったこと。キャリアアドバイザーと面談をする時点で求職者が複数サービスに登録していたり、面談を組んでいたりするケースが多かったため、もっとフレッシュな求職者の集客が求められていました。2つ目は、応募率の低さ。求職者に募集を10件紹介しても、2件ほどしか応募してもらえない問題がありました。
そこで私が実際にエージェントにテストユーザーとして登録してみたところ、なんと登録からキャリアアドバイザーとの面談までに、14日もかかるという事実がわかりました。面談までにはさらに11日です。素人でも、「これが原因では」と気付きますよね。待たされるから自分で別サービスに登録するし、待っている間に応募も面談もたくさん行っているから、改めて紹介されても応募しないわけです。

細野氏は状況改善に向けて、以下のような流れでさまざまな打ち手を実行した。大きなポイントとなるのは2の施策の実験部分で、ここでは「必ずABテストを行う」と細野氏。

細野:これまでは実験をせずに30枚ほどのパワーポイントの企画書を作り、仮説に仮説を塗り重ねて施策を起案していたのですが、このときは小さな母集団でABテストをして、数字が上がるか確認してから本格稼働するようにしました。
「何をやるのか」を社内に起案するのではなく、小さな実験で上手くいった内容だけを起案する。これを徹底するのが、リーンマネジメントのポイントです。

リクルートエージェントの事例で、細野氏は例えば求職者に自動レコメンド機能の提供を検討した。その際、まずは手動で10名のユーザーにレコメンドメールを送り、実際に応募数が1.3倍になった結果を起案したところ、即座に実施が決定したという。
ミニマムサイズでも実際に効果を出せば施策実施のリスクは低減され、社内からの反対の声も抑えられる。これが、リーンマネジメントのメリットだ。

細野:実際にリーンスタートアップを実施する際は、中期経営計画に紐付いたタスクはしっかりとこなしつつ、工数の何%かをレコメンドメールのような実験に使います。上手くいった結果を起案すれば施策の優先度が上がるため、徐々に中期経営計画のタスクと入れ替えていきましょう。

リーンマネジメントで新規事業の成功率を高める3つのセオリー

ここからはさらに、新規事業の成功率を高めるために実施すべきリーンマネジメントのセオリーについて3つ伺った。

[Theory.1]リアルオプション

リアルオプションとは、事業やプロジェクトを推進する上で将来的にどのような不確実性が起こり得るのか、またその際にどのような選択肢を選べるのか検討し、事業の価値を算出する手法のことだ。

細野:やるかやらないかで成功率が50%ずつというのは、博打のようで嫌ですよね。ですから、例えば1000万円かけて2000万円の売上が出るかもしれない事業があるのなら、100万円で実験をしてみましょう。上手くいかなければ、100万円の投資だけで撤退が可能です。そういう風に、小さな実験で将来の選択肢を増やすのがリアルオプションの考え方です。

ウェビナーでは、実際にリアルオプションの考え方を理解するためのクイズも出題していただいた。

細野:「1000万円を投資したら50%の確率で1800万円の売上が上がる」と部下が言ってきたとします。皆さんはやりますか?これは、実行すべきかどうかを算出する計算式があります。

細野:成功すれば800万円儲かりますが、失敗すれば1000万円損をすることになるので、期待値はマイナス100万円です。これはやらないほうがいいという判断になります。
では、もし「100万円でプロジェクトの成否がわかる実験を思いついた」と言われたらどうでしょうか。

細野:こうなると、多くの人は「やらせます」と答えます。

細野:100万円の投資をして上手くいくとわかった場合、1000万円を追加投資すれば1800万円の売上が出るため、700万円のプラスです。100万円を投資して上手くいかなければ、そこで撤退すればいい。100万円の損切りですね。
同じプロジェクトであるにもかかわらず、後者は期待値がプラス300万円に変わるわけです。これがリアルオプションの強力なポイントです。

[Theory.2]スモールバッチ/ワンピースフロー

細野:2つ目のスモールバッチ/ワンピースフローは、簡単に言うと「実験は一人で小さくやれ」ということです。

村田:分業しないんですね。

細野:小さな実験を分業すると、工程の中で発生したエラーを発見できません。つまずいたポイントを把握するためにも、なるべく小さなサイズで、最初から最後まで一人でやりましょう。

[Theory.3]ポートフォリオ

3つ目のセオリーでも、やはり小さな可能性を模索していくことがポイントになる。何か一つの計画に注力するのではなく複数の施策を持てば、細かなピボットが可能だからだ。

細野:金融投資のように小さな可能性をポートフォリオとして持ち、分散投資をして上手くいったところに予算を寄せていくやり方を意識しましょう。

[おすすめツール]バリデーションシート

ここまで一貫して「小さな実験を繰り返す大切さ」が主張されてきたが、その中でもう一つ押さえておきたいのが撤退基準だ。実験が肥大化してコストや時間をかけすぎないよう、以下のようなバリデーションシートを活用して検証を可視化するのも重要になるため、参考にしたい。

リーンマネジメントの教科書まとめ

今回のウェビナーのポイントを「すぐに取り組んでいただきたいこと」としてまとめると以下のようになる。

起業家のアルベルト・サヴォイア著『NO FLOP!』は、今回のウェビナーで細野氏が繰り返し述べていた「小さな実験」の具体例が数多く掲載されている。「目から鱗が落ちるような実験のやり方が豊富なので、一度読んでみるとイメージが湧くと思います」と細野氏は語る。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。リーンマネジメントの教科書にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
リーンマネジメントの教科書 ―1年間で売上100億円UPを実現したプロが語る、成功へ導くマネジメント手法とは―
本ホワイトペーパーは、2022年8月31日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。事業企画を書き上げるも、何層もある承認プロセスの中で苦しみ続けている皆様に向けて、事業企画のプロフェッショナル細野氏の提唱する「リーンマネジメント」の考え方を事例をもとにご紹介しております。