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【イベントレポート】横河電機の事例に学ぶBeyondSDGs ―パーパス・ドリブンでサステナブルな企業経営に必要な未来構想力と次世代リーダー育成とは―

SDGs

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/05/25回では、ESG経営の観点から人的資本の重要性は認識しているが、人材育成や環境構築に苦戦している皆様に向けて、横河電機株式会社の未来共創イニシアチブ2名に、次世代リーダー育成と未来共創の両立から長期的な企業価値を創造するポイントをご紹介いただきました。
「人的資本の重要性は認識しているが、未来構想力や共創力のある人材育成の方法が分からない」
「次世代のメンバーが活躍できる土壌と活躍しやすい雰囲気の醸成について悩みがある」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

玉木 伸之氏

玉木 伸之氏

横河電機株式会社 未来共創イニシアチブ プロジェクトリーダー
1989年横河電機に入社。FA分野の生産管理システムの設計・構築、商品企画を経て、新事業開発、中長期経営戦略策定などを経験。その後、エネルギー・化学分野の業種マーケティング戦略立案、エグゼクティブセリングや事業変革を推進するグローバル組織横断プロジェクトの企画・推進をリード。また、社外で多くのシナリオプランニングのファシリテーションを経験。2019年HR部門に移り、シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成プログラムを企画・実施。2021年4月 社長直轄の組織横断の未来共創活動を発足し、社会課題解決や次世代リーダー育成に取り組む。

大内 伸子氏

大内 伸子氏

横河電機株式会社 未来共創イニシアチブ シナリオアンバサダー
学生時代の学びと海外経験から、水問題に関心を持ち、2017年横河ソリューションサービスへ入社。その後、主に発展途上国向けの上下水道の監視制御システムの営業・提案活動、プロジェクト遂行に従事。全26名の若手メンバーと共に、シナリオプランニングを実践し、社内外の有識者との対話を通じて未来シナリオを描いた。2021年4月より、シナリオアンバサダーとして、未来シナリオをもとに社内外での未来共創活動に取り組む。

信澤 みなみ氏

信澤 みなみ氏

株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進プロジェクト 代表
2014年サーキュレーションの創業に参画。成長ベンチャー企業に特化した経営基盤構築、採用人事・広報体制の構築、新規事業創出を担うコンサルタントとして活躍後、人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者として従事。「プロシェアリングで社会課題を解決する」ために、企業のサスティナビリティ推進支援・ NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクター とのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画〜運営の実績多数。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/05/25時点のものになります。

日本におけるサステナビリティ経営動向トピックス

サステナビリティやESGにまつわる動向は、直近だけでもさまざまな変化を見せている。例えば2022年、ロシアによるウクライナ侵攻を皮切りに、エネルギー問題が世界中に波及した。再生可能エネルギーの活用によるエネルギー自給は、もはや気候変動対策のみならず、エネルギー安全保障の側面で重視されていくだろう。
また2022年4月には市場の再編が行われ、サステナビリティは本格的に経営議題の中心になった。これに伴い、国際機関からのESG情報の開示要請はますます加速化している。

【事例】次世代を担う若者が創る、横河電機の2035年シナリオとは?

単なる未来への志向ではなく、現実的な経営課題として捉えられはじめたサステナビリティ経営。その先駆者的企業である横河電機から、「2035年シナリオ」の策定を中心に取り組みの全体像を伺った。

サステナビリティ経営観点で「未来共創イニシアチブ」を発足した横河電機

横河電機は電機メーカーとして、関連会社を61カ国118社に展開。サービス提供国・地域も200を超える、日本を代表するグローバルカンパニーだ。
同社はサステナビリティ経営の観点で、「未来共創イニシアチブ」と呼ばれる取り組みを推進。未来志向の共創型リーダー育成を通して、社会にインパクトを与えようとしている。

玉木:「未来共創イニシアチブ」は、2021年4月に社長直轄のプロジェクトとして発足しました。同年5月には中長期計画とともに、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす」というパーパスを発信しています。特に「つなぐ」の部分は、本プロジェクトの重要な要素です。1社だけが奮闘しても何もできませんから、社内の組織・システム、他企業、そして業界同士をつなげ、我々が描くシナリオと活動で貢献したいと考えています。

Project Lotusが導き出した「2035年シナリオ」の概要と策定方法

「2035年シナリオ」は未来共創イニシアチブの前身である「Project Lotus」という組織横断の次世代リーダー育成研修の中で描かれた。

なぜ未来シナリオを描く際はシナリオプランニングが有効なのか?

Project Lotusには20~40代前半までの若いメンバーが、複数部署から26名選抜されてスタートした。今回彼らが用いたシナリオプランニングは、「未来から今を導き出す」ものだ。

玉木:シナリオプランニングはグローバルのメジャーカンパニーがよく使っている手法で、未来から現在を考えます。通常、日本企業が中長期計画を考える際はフォアキャスティングを用いており、過去のトレンドや市場、競争環境の延長で未来を予測します。外部環境が変わらない前提であればフォアキャスティングは有効ですが、例えばデジタル、コロナ、ウクライナ侵攻、サステナビリティといった要素は、過去の経験の延長にはないものですよね。だからこそ今後どんな未来が訪れるのかを積極的に考え、そこからバックキャストを行います。シナリオは不確実性を含めて、複数の未来を描くのがポイントです。

2つの軸を起点にして生まれた2035年の各シナリオの世界観

プロジェクトは2019年12月にキックオフし、9ヶ月かけて4つのシナリオが描かれた。それぞれ大きく「デジタル基盤」と「グリーン経済のパラダイム」という2軸を基に想定されたもので、経済重視か地球環境重視かによって、未来の方向性が異なっていく。

大内:「リジェネレーションの夜明け」が、非常にポジティブでアップサイドなシナリオです。「グリーン成長のジレンマ」は現在の延長線上にあるような未来、「日々是イノベーション」はメタバースをはじめとしたデジタルテクノロジーが非常に普及した世界です。「迷走と分断」はネガティブなケースですね。現在のウクライナ問題や地政学的なリスクの高まりを象徴しています。

2035年未来シナリオを活用した企業変革推進ステップ

信澤:シナリオプランニングを描くまでの9ヶ月は以下のようなプロセスで進んだそうですが、外部環境分析が重要だったと伺っています。これらについて特にポイントになったことはありますか?

大内:若手がシナリオプランニングをするとビジネス経験や知識が乏しくなるので、外部環境分析の視点ではマイナスポイントがあります。その点を補完するため、玉木さんが選抜した書籍70冊を読んで勉強するところから始めました。知識の底上げと思考トレーニングを行ったのは、一つの特徴ですね。

次世代リーダー育成と未来共創を両立し長期的な価値を創造するポイントとは

では、若手人材を起用し次世代リーダーの育成を図るとともに、会社として未来共創・長期的な価値創造を目指すには具体的にどのような施策を打てばいいのか。今回は未来シナリオ作成の文脈も含め、4つのポイントについて教えていただいた。

[Point.1]社長直轄プロジェクトを組成

最初のポイントは、取り組み自体を社長直轄のプロジェクトとしてスタートすることだ。この点については「非常にこだわった」と玉木氏。

玉木:会社で一番長期的な視点で物事を考えているのは社長なので、まずは社長直轄の組織にしてもらうよう依頼しました。それにどこかの部署に属してしまうと、どうしても部門長の意向に従わざるを得なくなります。ニュートラルに全組織にアクセスするポジションを取るためには社長直轄しかないということで、会社的にもすぐにアグリーされました。
社長がチームをバックアップしているのは大きな後ろ盾にもなりますので、社内外で動きやすくするためにも、このポジションを取るのは大事でしたね。

信澤:社長直轄の組織をバーチャルチーム「未来共創イニシアチブ」として名付け、活動をされたということですね。
大内さんも含むコアメンバーとサポートメンバーが、情報収集や意見交換を行う立場です。マネジメントチームにはオーナーである社長をはじめリーダーの玉木さん、アドバイザーのCHROがいらっしゃり、組織横断で取り組まれていますね。

[Point.2]未来シナリオを自前で作成

信澤:2つ目のポイントが未来シナリオを自前で作成するということですが、ここはコンサルタントを使わないんですね。

大内:私たちがシナリオを語って活用できるのは、やはり自分たちで議論して考えてきたからです。他人の価値観で選ばれたシナリオでは、なかなか自分の言葉で語れないですよね。自分たちが未来作成シナリオのプロセスを経て腹落ちするのは、大きなポイントだと思います。

[Point.3]オープンに対話をする

信澤:3つ目の「オープンに対話」というポイントでは、「競争」ではなく「共創」をすることを意識されたと伺っています。実際に若いメンバーたちは、どのように社外と対話をしていったのでしょうか。

玉木:「共創」という言葉を使う前から、自分たちが分析したり勉強したりしたことについて社外の有識者と対話をして、とにかくオープンに自分たちの考えを伝え、フィードバックをいただいてきました。それが結果として共創になっています。
今現在競争関係にあるような企業様からも何社かお声掛けをいただいているので、将来は競合ではなくなるかもしれません。社会を変えていくには業界が連携する必要がありますし、みんなで大きなパイを作っていくときには、やはり共創のアプローチが重要です。

実際に横河電機が創出しているオープンな対話の場の一つが、「Green Phoenix Project」だ。産官学連携で立ち上げたこのプロジェクトにはパーパス・ドリブンで同志を募り、1年間で30法人、経営者や部門長などを中心とした50名が集まっているという。

玉木:ここで未来に関する議論や共通の経営課題、社会課題などをオープンテーブルに載せてディスカッションしています。信澤さんにも一度ご参加いただきましたね。
この活動が短期的にどう効果を発揮するかはわかりませんが、長期的には社会や自社の変革につながると信じています。

[Point.4]“探索的”に動く

最後のポイントは探索的に動くことだ。横河電機の場合は全てを緻密に計画するのではなく、「走りながら考えてきた」と大内氏。

大内:今は正解がある時代ではなく、私たちは予測不可能で不確実性が高い世界を生きています。昔のように、緻密な計画を立てて管理する手法があまり通じなくなってきているのです。
そんな状況の中でまずは一つずついろいろなことに取り組んでみる。その結果、「やってみた」からこそ見える世界があるはずです。

信澤:誰かが全部計画を立てたプロジェクトに取り組むとなると、始めは楽しくても途中から「やらされ感」も出てきてしまいますよね。それをあえて探索的にして、面白そうなことを積極的に取り入れたり、メンバーの方が気になることをディスカッションしてみたりするイメージでしょうか。

大内:そうですね。例えばその時々で生まれる「ウェビナーにこういう人を呼んで話を聞きたい」「こんなテーマでディスカッションしてみたい」「こんな取り組みを社内でやってみたい」といった内容に、みんなで積極的に取り組んできました。

横河電機の事例に学ぶBeyondSDGsまとめ

今回のウェビナーのポイントを以下のようにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。横河電機の事例に学ぶBeyondSDGsにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
横河電機の事例に学ぶBeyondSDGs ―パーパス・ドリブンでサステナブルな企業経営に必要な未来構想力と次世代リーダー育成とは―
本ホワイトペーパーは、2022年5月25日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。ESG経営の観点から人的資本の重要性は認識しているが、人材育成や環境構築に苦戦している皆様に向けて、横河電機の取り組み事例をもとに、次世代リーダー育成と未来共創の両立から長期的な企業価値を創造するポイントをご紹介しております。