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【イベントレポート】複業研究家 西村創一朗に学ぶ、企業を強くする複業解禁 ―副業制度導入のロードマップと大手企業の実践事例に学ぶメリットとは?―

働き方改革・テレワーク

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2021年6月16日は、副業制度導入をお考えの経営企画責任者、人事責任者の皆様に向けて多数の大手企業を複(副)業解禁に導いた実績を持つ、複業研究家の西村氏から副業解禁のメリットや導入成功の秘訣についてお伺いしました。
「副業解禁に踏み出したい気持ちはあるが不安が大きく実行できない」
「優秀な新卒やデジタル人材を確保したいがなかなか採用がうまくいっていない」
このようなお悩みをお持ちの方は必見です。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

西村 創一朗氏

西村 創一朗氏

複業研究家・カタリスト
2011年に新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、2017年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。

鈴木 貴大氏

鈴木 貴大氏

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材紹介会社にてトップセールスとして活躍後、創業期のサーキュレーションへ入社。支社長として東海支社を立ち上げた後に独立。 フリーランスとして複数社で事業開発、営業統括、役員等を務めた後、再びサーキュレーションに参画。現在は首都圏のメガベンチャー・急成長IT企業を担当するセクションの責任者。最先端テクノロジーを駆使した新規事業開発、DX推進に向けた経営戦略策定~組織編成支援など変革プロジェクトの実績豊富。

花園 絵理香

花園 絵理香

イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2021/6/16時点のものになります。

今、副業制度の導入が全ての企業に求められる理由とは

市場においては約50%の企業が副業を認めている状態

2020年時点で副業を解禁している企業は約半数にのぼり、こうした現状はニュースや雑誌などのメディアでも大きく取り上げられている。また、将来的に認める予定としている企業は15.2%で、いずれ60~70%の企業が副業を認めるようになる日もそう遠くないだろうと考えられる。
今回ご登壇いただいた西村氏は、こうした市場の動向について「ここ5年で一気に変わった」と述べる。

西村:私が複業研究家という活動をスタートした2014年時点では96%の企業が副業禁止でしたから、10倍以上になっています。

働き方改革などの動きを受け大手企業が続々と副業解禁にシフト

特に大手企業の副業解禁の先駆けとなったのがロート製薬だ。当時の報道については、鈴木も「インパクトがあった」と感じている。ロート製薬に続いて金融や不動産、メーカーなどあらゆる業界で副業解禁が加速していくこととなった。2018年に成立した働き方改革も、この動きを後押ししている。

ここ5年間の大きな動きの背景にあるのが、ビジネスパーソンの価値観の変化だ。ある調査では約9割のビジネスパーソンが「副業禁止の会社には入社・所属したくない」と考えているという結果がある。つまり、企業は自ら副業を歓迎しているというよりは、優秀な人材を自社に惹きつけるために、副業を解禁せざるを得なかったのだ。

一方で、いまだ多くの企業が導入までには踏み切れていない現実もある。その理由として挙げられるのが、例えば長時間労働を助長してしまうのではないかという懸念や情報漏えいや利益相反のリスク、そして人材流出の可能性だ。

今回のウェビナーでは、こうしたリスクを最小限に抑え、メリットのある形で副業を解禁するポイントについて伺った。

複業研究家西村氏が支援した複業制度導入の裏側

新しい働き方の専門家として複業の啓蒙や企業へのコンサルを実施する西村氏

講師の西村氏は株式会社HEARESの代表であり、複業研究家としても活動している。もとはリクルートキャリアに新卒で入社し、3年目に副業を始めたことがきっかけでその後のキャリアが花開く。こうした経験から「自分自身を成長させるための副業という選択肢」に注目するようになり知人にも勧めたが、当時は国内の企業の96%が副業禁止の状態だった。そこで、2014年からは副業を広めるための活動をスタートしたという。

鈴木:西村さんご自身はなぜ副業を始めたのでしょうか?

西村:副業をやろうと思ったわけではないんです。まず、学生時代から新規事業を0-1で作る仕事をしたいと思ってリクルートキャリアに入社したのですが、最初に配属されたのは営業部門でした。そこから新規事業部門に異動するのは簡単ではなく、どうしたら営業である自分と新規事業という仕事のギャップを埋められるのかと考えた結果、プライベートの時間を使って事業づくりにチャレンジしようとひらめきました。そのほうがただ「新規事業をやりたい」と言っているだけよりも説得力がありますしね。そこでブログメディアを立ち上げるという形で小さな事業をスタートしたのですが、あとから振り返ってみるととそれが副業だったんです。

現在はメディア出演や経産省委員としての活動、企業に対する副業解禁のコンサルティング、書籍の執筆など多岐にわたって活躍の場を広げながら、副業解禁のメリットを啓蒙している。

【事例】大手化粧品メーカーの複業制度導入支援

西村氏はこれまで数多くの企業に対して副業導入支援を行ってきたが、具体的に支援を通して企業はどのような変化を遂げるのだろうか。今回は、ある大手化粧品メーカーでの事例をご紹介いただいた。

まず企業が直面していたのは、専門性の高いスキルを持ったクリエイティブ、あるいはデジタル人材が採用できないという課題だ。

西村:副業禁止以外にも新卒・中途採用に苦戦していた要因はあったのですが、「副業禁止だと今までやってきたことが活かせない」という理由で採用を辞退されるケースが連発したそうです。これはもう制度を変えなければいけないという危機感があって、人事部長の方から直接ご相談いただきました。

鈴木:今回社名は出せませんが、私が名前を伺った限りではネームバリューもあり、しっかりブランディングもできている企業だという印象でした。それでも採用が難しいんですね。

西村:だからこそなんです。化粧品メーカーとしてC向けに先進的なブランディングをしていたからこそ、「ブランドは先進的なのに、働き方は遅れている」というネガティブなギャップになっていました。

「優秀な人材の確保には、複業解禁が必須である」というトップの理解を得て、適切な制度を導入。その結果、特に大きな課題だったデジタル人材の内定承諾率が見事アップした。

上手く導入すれば副業のデメリットはメリットへと転じる

副業を導入した企業にはどのようなポジティブな影響が出るのかをもう少し詳しく見てみると、一つの大きな事実が浮かび上がってくる。それは、副業解禁のリスクとして考えられやすい「人材の流出」は起きず、むしろ定着につながるということだ。

西村:副業禁止が当たり前だった時代の価値観だと、「副業を認めたらそっちが楽しくなって本業が疎かになり、転職者・独立する人が続出するのでは」と思ってしまうのですが、蓋を開けてみればそんなことはありません。
もちろん中には副業が成功して独立される方もいます。しかし、転職しようか迷っている方がまずは副業からチャレンジしてみた結果、「やっぱりうちの会社のほうがいいな」と思って転職活動をやめたケースも多いんです。

鈴木:本業への意識調査でモチベーションが上がっているのも、まさにそういう部分なのですね。

人材流出よりも優秀な人材の確保や定着につながる可能性のほうが高いのであれば、やはり企業にとって副業解禁に踏み切るメリットは大きい。次からは、実際に制度導入を行う際にはどんなことに考慮すべきかについて教えていただいた。

副業制度導入を推進するために押さえておくべきポイント

副業制度導入の手順としてまず思い浮かぶのは、制度設計だ。西村氏は以下のように語る。

西村:制度設計の細かなテクニックは検索しても出てきませんし、社労士も副業導入の経験があるわけではありません。情報が無いという意味で、私にご相談いただくことが多いです。

一方で、実際に副業を導入する際は以下の4ステップを着実に進めていくことが非常に重要だという。

いずれのステップも欠かせないものだが、ここでは特に「目的の言語化」について詳しくお伝えする。

「副業」か「複業」か。2つの概念を理解して目的を言語化せよ

そもそも、副業には「副業」と「複業」の2つがあり、本記事でも両者を交えて取り扱ってきた。西村氏が名乗るのは「複業研究家」だが、まずはそれぞれの違いを理解することから複・副業導入の目的を考えるべきだという。

西村:一般的に知られているのがスライドの左側にあるサブの「副業」です。つまり、副収入を稼ぐことを目的とした、サブの仕事というのが今までの副業の概念だったと思います。しかし、こういった副業は自己成長につながる場合とそうでない場合がありますし、簡単に稼げるようにもなりません。「スキルがなくても1日5分、1ヶ月やれば月10万円稼げますよ」なんていう、副業詐欺の被害に遭ってしまうことすらあります。
お金を稼ぐのはもちろん大事ですが、一番大事にしてほしいのはマルチな「複業」という捉え方です。本業だけでは得られない知識や経験、ネットワークを手に入れたり、自分のスキルを活かしたりして他者に貢献し、自己成長や自己実現をしていく。そこを目的として捉えないと、副業解禁をした結果みんながお小遣い稼ぎのアルバイトお初めてしまって、「こんなはずじゃなかったのに」ということになってしまいます。
そういう意味では、「サブの副業は禁止だけれど、マルチの複業は解禁」というメッセージングをしている企業も最近は増えていますね。

鈴木:「複業」なら社会貢献や自己実現につながり、中長期的には本人にとっても所属している企業にとってもポジティブな結果につながるということですね。

西村:ただし、アルバイトが駄目ということではないんです。例えば「将来的に会社をリタイアしたらカフェ経営をしたいから」という理由でカフェのアルバイトをするなら、お小遣いを稼いではいても、主目的はカフェ経営を学ぶことにあります。あるは、20年インフラ系の仕事をしていても「ありがとう」と言われることがなかったから、感謝されてエネルギーをもらいたいという理由でコンビニのアルバイトをする人もいます。

何のために本業以外の仕事をするのかという本質を突き詰めて考えた上で制度を導入すれば、副業は社内に好影響を与えながら広がっていく。まずは、ここを理解することが肝要だ。

目的達成の意志を強く持ち、社内一丸となった推進が肝要

そのほかのステップのポイントも含めて、副業制度導入の成功のポイントを以下のようにまとめていただいた。

鈴木:まずは自社の目的達成に副業が本当に必要なのかを見極める、あるいは言語化すること。そして、目的に合わせて制度の基準やフローを決定。さらに現場が正しく副業の可否を判断できる明確なガイドラインを作成すること。最後に、実績が出るように社内でコミュニティを作り、副業を促進すること。
これら全てのステップで意識すべきなのが、誰も置き去りにせず、軸をブラさず、意志を持って進めること。そして、ファクトや事例を生み出すことにこだわるというのがまとめです。

企業を強くする複業解禁まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。企業を強くする複業解禁にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
企業を強くする複業解禁 ―副業制度導入のロードマップと大手企業の実践事例に学ぶメリットとは?―
本ホワイトペーパーは、2021年6月16日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。多数の大手企業を複(副)業解禁に導いた実績を持つ複業研究家の西村氏が実践した、複(副)業制度導入の成功の秘訣についてご紹介しています。