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360度評価とは?メリットデメリットや評価項目、導入ステップを解説

人事制度設計
360度評価とは?メリットデメリットや評価項目、導入ステップを解説

人材確保が困難になっている昨今では企業内の人事制度設計の一つである人事評価も見直しを迫られています。そのような状況のなか、近年注目されている評価制度が360度評価制度です。
本記事では360度評価の概要から、実際に導入するための手順、評価項目例について解説していきます。

360度評価とは

360度評価_表現図①

360度評価とは、被評価者の上司や同僚、部下、他部署や他社の担当者など立場の違うさまざまな人から多角的に評価を受けながら行う制度です。立場や関係性の異なる人から評価されるため、一般的な上司からのみ評価される制度と比べてより現実に即した評価結果となり、被評価者も納得しやすい評価制度です。そのため従来の評価制度を補足する新たな制度として近年注目を集めています。

なぜ今、360度評価が注目されているのか

実際に日本ではどれくらいの企業が導入しているのでしょうか。
株式会社シーベースが実施した360度フィードバック”の企業での活用状況の実態調査によると、企業の6割近くが360度フィードバックを利用し、人材開発・制度運用面で役立てていることがわかりました。
また、従業員規模別では、従業員が多いほど導入率は高まり、5,000名以上の企業では7割弱が導入していることが明らかになりました。

また、リクルートマネジメントソリューションズが2020年3月に企業の人事担当者600名を対象に行った調査結果では、2007年は5.2%だったところが2020年には31.4%という結果となりました。
今後も継続して実施/今後実施してみたい企業は、全体の半数を占めており、増加傾向は続きそうです。

参考記事:
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 「360度評価活用における実態調査」
株式会社シーベース 「データでわかる! 360度フィードバック導入状況」

働き方の多様化によって一方的な評価が難しくなっている

働き方改革が叫ばれるようになり、企業の働き方は大きく変わってきています。残業時間の短縮など働き方の変化とともに、自宅やサテライトオフィスなどでのテレワークが推奨され、働く場所も変化しています。その結果、直属の上司が常に仕事内容や勤務態度を把握できないため、従来のように上司のみが被評価者に対して評価を行う一方的な評価がきわめて困難になってきています。

普段あまり関わることの少ない上司から評価を受けた場合、良い評価であるならあまり気にならないかもしれません。しかし悪い評価や改善点を指摘された場合、被評価者はその評価に対して納得しにくく、会社に対する不満の一因となってしまう可能性もあります。これに対し、360度評価により普段から関わりの深い同僚や、部下といったさまざまな人から評価を受けることでより納得感があり、現実に即した評価が行えると期待されています。

自律型組織が必要になってきている

近年、人工知能(AI)などの急速な技術改革によって従来よりもプロダクトライフサイクルが非常に短くなってきています。同様に組織の意思決定のスピードもこれまで以上に速いものが求められています。その結果、従来のような上意下達の組織形態が見直され、自らが主体的に考える自律型組織への変革が注目されるようになってきました。

人材育成の重要性が増している

圧倒的な人材の不足による超売り手市場と言われて久しいですが、そのような背景から現在の経営戦略において人材育成が非常に重要なポジションを占めるようになってきています。特に、組織の中核を担うマネジメント層の育成は多くの企業が頭を悩ませています。360度評価制度はマネジメント層の育成に高い効果があるとされています。また、360度評価制度はすべての社員が評価に加わるため、社員の帰属意識や当事者としての意識を高める効果も期待され、人材流出の抑止策としても注目されています。

360度評価の目的

より現実に即した評価制度や人材育成のツールとして注目されている360度評価ですが、具体的にどのような目的で何を目指した評価制度なのでしょうか。この章では、その360度評価制度の目的について、4つの視点から一つひとつを具体的に解説していきます。

評価の公平性を確保する

評価の大前提として公平性が挙げられますが、上司が部下を評価するだけの従来の単独評価の場合、どうしても上司の好き嫌いや感情といった主観的な要素が影響してしまいます。その結果、評価される側は上司からの評価を気にするあまり、上司の機嫌を伺うようになり、自分の意見を言えない閉鎖的で風通しの悪い組織になっていってしまいます。それは組織運営に悪影響を与えるばかりか、人間関係の悪化から社員の離職を招く原因になりかねません。

その点、360度評価では上司だけではなく、同僚や部下といった立場が違う人たちから評価されることで、より公平で客観的な評価が可能です。その結果、社員はより自分の仕事に専念することができ、風通しの良いフラットな組織運営に役立ちます。

社員のモチベーション維持

360度評価では、社員のひとりひとりが評価に関わることで、自分の意見が組織運営に反映されるという満足感や肯定感によって社員の組織への帰属意識が高まります。また、公正な評価による不満の軽減、組織への信頼度の向上によって社員のモチベーションの維持および改善を図ることが可能です。そして、前述のフラットな組織づくりなどの労働環境の改善によっても社員のモチベーション維持を図ることが可能なため、社員の心理面でのサポートといった面での活用も期待されています。

マネジメント層の育成

360度評価はマネジメント層の育成に高い効果があるとされています。原則匿名での評価となるため、評価者も被評価者の反応などを気にすることなく率直な意見を言うことができ、より客観的で現実に近い評価を得ることが可能です。その結果、マネジメント層である社員は、一般社員から評価されることによってマネジメントとして何を重視すべきかといった改善点や方向性を知る貴重な機会となります。

そして、この双方向の評価を繰り返していくことで、マネジメント層が育成されていき、部下と上司、同僚どうしの信頼性の向上といった効果も期待でき、円滑な組織運営を可能にします。

自己認識能力の向上

360度評価では、他者からの評価だけではなく自己評価も同時に行います。そのため自分の評価と他者からの評価の違いを明確に知ることができ、自分の強みや弱みを把握し、より自己理解が深まります。その結果、仕事への向き合い方や上司や同僚、部下との関わり方を考えるきっかけとなり意識改革へとつながっていきます。

360度評価のメリット・デメリット

360度評価のメリット

客観的かつ具体的な評価ができる

360度評価では、ひとりの被評価者に対して上司や同僚、部下、別の部署の担当者などさまざまな立場の人が評価を行います。

近年では働き方改革で労働時間の短縮や働く場所の変化によって、常に上司が部下の動向を把握して評価を行うことが難しくなってきています。そのため、上司は今までよりもきめ細かな評価を行うことが困難で、従来の評価制度である単独評価には限界が生じています。

360度評価を導入することで、より多くの視点からの評価が可能になります。それに加え評価者の負担も分散されるため、管理者であるマネジメント層の負担軽減にもつながります。また、ひとつの行動に対する捉え方は人それぞれのため、評価する人によって評価が偏ってしまうことも避けられます。

例えば、ある管理職の人が部下に対して厳しく接していた場合、ある同僚は「厳しくて嫌だ」と思い、低い評価をつける一方で、ある部下は「しっかり育ててくれる良い上司だ」と良い評価をつける可能性があります。被評価者の行動は受け取る側によって評価が大きくわかれるのです。もし、その同僚のみが評価者であった場合、その管理職は低い評価ばかり受け、昇進や昇格といったキャリアにも影響してしまうかもしれません。その結果、その管理職は会社からの評価に対して疑念を持つようになり、モチベーションの低下や最悪の場合、離職という結果を招いてしまいます。しかし、360度評価制度では、さまざまな視点での評価が行われるため、評価の公平性も高まります。例として挙げたような事態に陥ることを防ぐことができるのです。

一方向だけでは見えなかった長所や短所の発見

従来の単独評価などの評価制度では、上司が部下を評価するという一方向のみの評価であったため、評価者である上司の価値観に左右されることが多く、どうしても評価の視点が狭くなりがちでした。360度評価では、立場の違う人が評価をするため、上司だけでは見えてこなかった、その人の長所や短所といった点を見つけることができます。

例えば、縁の下の力持ちのような存在の人が被評価者だった場合、上司のみでは「消極的で目立たない人」と評価されてしまうことがあるかもしれません。しかし、同僚からは「いつも細かい部分にまで気を配ってくれて仕事がやりやすい」という意見や、部下からは「すごく面倒を見てくれてよい上司」という評価になる可能性があります。その結果、その人の面倒見の良さや、チームのために周到に準備できる気配りといった長所が見直され評価されることとなり、被評価者はその長所をより伸ばすことが可能です。また、逆に今まで見えてこなかった短所も明らかにされるため、より改善点を見つけやすくなります。

評価に関わることで当事者意識が高まる

従来の評価制度では、上司が部下を評価するのみのため、一般的にそれ以外の人の意見は評価に反映されません。自分の意見を言ってもどこにも反映されるところがないため、組織運営などに対する社員の興味が薄れていき、帰属意識の低下や自主性の低下が起こる原因となります。360度評価では、すべての人が評価に関わるため、自分の意見が組織運営に反映されているという肯定感を得ることができます。その結果、さらに組織を良くしていくにはどうしたら良いかなどを自ら考えるようになり、当事者としての意識が高まっていきます。

組織運営に自分が関わっているということを実感することで、離職防止にもつながっていきます。

360度評価のデメリット

部下や同僚に対して厳しく接することができなくなる

360度評価の最大のデメリットともいえるものが、評価を気にするあまり、上司が部下や同僚に対して厳しく接することができなくなってしまうという可能性があることです。本来組織にとっては、規律に従って部下や同僚に対してしっかりと意見できる上司は貴重な存在です。しかし、360度評価を導入したことで、部下や同僚に対して厳しく接してしまうと低い評価をされるケースを上司が恐れる場合があるかもしれません。そうすると上司は必要以上に部下や同僚に対して気を遣ってしまい、結果として規律のない組織となり、円滑な業務遂行にも支障が出てしまいます。

このデメリットを回避するためには、被評価者本人の評価をしっかりと把握し、まわりからの評価と照らし合わせることが必要です。例えば、本人の自己評価で、あえて組織のために部下や同僚に対して厳しく接しているという認識をしていれば、それは組織のコンプライアンスに反していない限りは評価をするべき内容だといえるでしょう。しかし、被評価者の本人が、そのようなことを自覚しておらず、ただ厳しく接しているだけであれば、それは何らかの改善が必要であるということを示唆しています。

社員どうしの談合などの不正が発生する可能性

360度評価では、上司と部下や同僚どうしといった社員が示し合わせて良い評価をつける取引をしたり、嫌いな人間への攻撃のために、低い評価をつけるように示し合わせたりするなどの談合といった不正行為が行われる可能性があります。その結果、社員間の相互信頼を失い、人間関係の悪化が懸念されます。そのようなことを回避するためには、相互信頼の醸成や企業文化・風土の醸成といった下地づくりが必要です。また、不正を起こさないような360度評価制度に対するルール作りも重要となります。

評価にバラツキが出る

360度評価では、被評価者に対して関わりのある人すべてが評価を行うため、普段評価に慣れていない人も評価をします。普段、部下を評価しているため評価に慣れている上司と違い、評価の目的や意味といった評価の本質を知らない人、評価の訓練を受けていない人が評価をすることで、感情に任せた主観的な評価や意味のない内容の評価など、さまざまな評価となり評価のバラツキが出てしまいます。これは、多様性を重視した評価制度である360度評価のメリットでもありデメリットでもある点で、場合によっては有効な評価を集めることができないという結果となる恐れがあります。

そのようなデメリットを避けるためにも、一定のルールの策定や評価項目の工夫が求められます。しかし自由度がなくなってしまうと今度は逆に360度評価の利点でもある多様性が失われてしまうため、適度なバランスが必要です。評価に不慣れな人がなかなか適切な評価を行えないという点については、繰り返し360度評価を実施していくなかで、少しずつ慣れていき要点をつかんでいくことで克服することが可能です。

360度評価の評価項目例

人事評価制度の評価項目には、

  • 成果の評価:処遇につなげる
  • 発揮能力の評価:人材育成に反映
  • 執務態度の評価:処遇や人材育成、異動や配置転換など応用範囲が広い項目

があり、360度評価では3つのうちどのような姿勢で仕事に取り組んでいるかを意味する「執務態度の評価」を担当するべきとされています。
机を並べて一緒に仕事をしているからこそ、具体的な事例をもとにして評価ができるのです。

さらに細かな設問を練っていきますが、管理職と一般社員では役割が異なってくるのでそれぞれに用意すると納得度も高まります。
また、事前に評価者30名程度へトライアルを実施するといいでしょう。

設問例としては以下のようなものがあります。

主に管理職向け

リーダーシップ

  • 組織のビジョン(未来像)をメンバーにとって魅力的に語っている
  • 組織で大切にする価値観や行動、考え方を自らが率先して示している
  • 組織全体の目標をメンバーに説明している

マネジメント

  • 事実や出来事を踏まえたうえで、評価をフィードバックしている
  • メンバーがお互いになんでも言えるような職場となるように工夫している
  • 特定の者に対して、業務遂行上で必要な情報やものを与えないといった行為はない

ファウンデーション

  • 問題を環境や他人のせいにせず、自分の課題として捉えている
  • 学びへの意欲が高く、周囲の人や経験、書籍などから積極的に学び続けている

主にメンバー向け

主体性

  • 上司からの指示を待つのではなく、常に自分で判断し、考えて行動しているか
  • 困難を環境や他人のせいにせず、自分に与えられた課題ととらえているか

解決力

  • 現状に満足せず、よりよい方向に向けて変革を試みているか
  • 不測の事態や困難に対し、解決するための最善の方法を考えて行動しているか

業務遂行力

  • 業務を遂行するにあたり、課題解決までのプロセスを理解し、最後まで実行しているか
  • 顧客や組織、社会に利益をもたらすことを意識して業務にあたっているか

協調性

  • 困っているメンバーに対し、率先して支援を行っているか
  • 組織の改善のために、上司や同僚と良好なコミュニケーションをとっているか

出典:
360度評価(多面評価)とは?メリットから評価項目まで解説
360度評価とは? メリット・デメリット、テンプレート、項目例
360度評価の評価項目とは?例文や作成ポイントを紹介

360度評価導入マニュアル

評価目的および評価の反映対象を明確にする

360度評価を導入するにあたって、最初に検討しなければならないことは、どのような目的でを導入するのか、集まった結果を何に反映するのかということです。360度評価によって、風通しの良い組織づくりを目指すのか、評価の透明性を確保したいのかなど、目的を明確にしなければ、その後の社員への周知で理解を得ることが難しくなってしまいます。また、360度評価の結果を昇格や昇給といった人事評価として使用するのか、組織運営においての参考程度の情報とするのかなど、利用目的も明確にしておく必要があります。

運用ルールの検討

360度評価の目的や反映内容が決まったら、次に運用ルールを検討します。運用ルールを明確に定めておくことで、前述した360度評価のデメリットの発生を最小限におさえられます。そのためには、評価基準や評価者、被評価者といった評価自体に関わるものから、実施後のフィードバックの方法、360度評価を実施するスケジュールまで幅広く検討することが必要です。

運用に合わせて評価方法を考える

次に、360度評価の評価方法を決定します。評価方法とは、紙による配布形式なのか、Webなどによるインターネット経由によるものなのかといったことから、匿名性とするのか記名性とするのかといったことなどです。インターネットを使った集計の場合には、紙媒体に比べて集計の手間がかかりませんが、慣れていない場合には、回答するフォームなどを準備するのに時間がかかってしまうという欠点もあります。最近では、360度評価制度を実施するためのツールや、アンケートに特化したGoogleフォームなどさまざまなツールがあるので、集計者のスキルや用途に合わせて選ぶと良いでしょう。

360度評価の要、評価項目の決定

評価方法が決まったら、360度評価のもっとも重要な部分ともいえる評価項目の決定を行います。この評価項目によって360度評価の成果が決まってしまうといっても過言ではないため、慎重に検討を行います。設問文はなるべく主観的にならずに客観的に回答できるように配慮したものにするように決定をしていきます。

周知および説明を徹底して広く理解を求める

ひととおりの360度評価に対する事項が決定したところで、評価者および被評価者の全員に対して周知および説明を行います。その際には必ず評価目的および評価の反映内容を検討する際に決めた内容を周知するようにします。なぜ360度評価を行うのか、今後それをどのように運営していくのかということを、参加者に明確に示すことで、360度評価制度に対する理解と今後の協力を仰ぎます。360度評価は評価者の協力が不可欠となってくるため、スムーズに協力してもらうためにも、しっかりとした説明ができるように準備をしておくことが必要です。

まずはトライアルでの実施

社員への周知が終わると、360度評価の運用段階に入りますが、いきなり本番で運用を開始した場合、思わぬ問題が発生することがあります。そこで、まずはトライアル運用として一部の部署や対象者に限定し実施することが望ましいです。トライアルで発見された問題に対し適宜改善を行っていくことで、本番運用でスムーズに実施が可能です。

本番での運用開始

無事に360度評価のトライアルでの運用が完了したところで、本番での運用へ切り替えていきます。評価者や被評価者はトライアルですでに360度評価を経験しているため、抵抗なくスムーズに本番運用へ移行できるはずです。360度評価を本番で運用する際には、評価スケジュールをしっかりと立てて、評価を回収する期限も明確にし、そのスケジュールに基づいてしっかりと運用をしていきます。

結果をフィードバック

360度評価の結果が回収されたら、最後にフィードバックを行います。フィードバックは、被評価者に対して行うことが基本ですが、場合によっては被評価者の上司に対してもフィードバックを行います。集計されたデータを元に、評価者の長所や改善点などを記載するとともに、改善にむけた具体的なアドバイスも同時に行います。

360度評価導入を成功させる4つの重要ポイント

必ずフィードバックを行う

360度評価を実施していく際の最大のポイントとなるのが、集まった360度評価の結果を必ず被評価者へフィードバックすることです。360度評価を実施するだけで、フィードバックを行わないと、参加者は何のために評価をしているのかわからなくなってしまい、次第に非協力的になったり無関心になったりしてしまう可能性があります。

そしてフィードバックの際には、長所や短所を伝える際には主観を入れずに事実だけを伝えるようにすることが大切です。また、短所や改善点を伝える際には、改善方法に関する具体的なアドバイスなども同時に伝えることで、より改善への効果が高くなります。

評価項目をできるだけ少なくする

360度評価導入のもうひとつのポイントが評価項目をできるだけ少なくすることです。評価項目が多い場合には、評価にかかる時間が長くなり評価者への負担も大きくなっていってしまいます。360度評価は、通常の業務を行いながら実施していくため、極力、評価者への負担とならないことが重要です。かといって設問数を極端に少なくしてしまうと、有効な評価データが集まりません。評価項目はおおむね10分~15分程度で回答できる設問数が理想です。

設問ではある程度の自由があるとより評価が充実する

360度評価の設問のなかに、自由に記述が可能な項目も設けると回答の自由度が増し、さまざまな評価を集めることができます。また、選択式の設問の場合でも、「良い」、「悪い」だけではなく、「どちらともいえない」というように3段階または4段階による評価項目を設けるとともに、「わからない」というような選択肢を設け無理に評価をさせないことも重要なポイントです。

被評価者はなるべくすべての人を対象とする

360度評価で評価を受ける被評価者は、なるべくすべての人を対象とすることが望ましいです。社員だけではなく、管理職や役員、代表者といったすべての人が被評価者となることで、公平感が増すほか、組織運営に自分が関わっているという実感を得ることで、組織の一員であることを再認識し、当事者としての意識向上やモチベーションの向上といった効果が期待できます。また、普段評価されない経営陣が社員の評価を知ることで、今後の組織運営に関する貴重な情報源ともなります。

360度評価を採用している企業の実例

チームワークを重視したゴールドマン・サックスの360度評価

外資系企業でも有数の知名度を誇るゴールドマン・サックスでは10年以上前から360度評価を導入しています。同社は360度評価制度をチームワークの向上のために採用しており、実際に高い成果を上げています。

ゴールドマン・サックスのような金融会社では個人に重きが置かれていると思われがちですが、チームワークを非常に重んじる社風があり、その社風が評価制度にも反映されています。同社では、毎年1回、新入社員から経営陣まですべての人を対象として360度評価を実施しています。

被評価者は自ら自分を評価してくれる人を指名するという独特のシステムを取り入れており、そこから集まった評価はレビューとしてまとめられ上司にフィードバックされます。そして、そのレビューによって上司は被評価者の評価や今後の育成方針を決定していきます。また、360度評価はチームへの貢献度を図る基準ともなっており、自分の実績のみを追い求めチームをないがしろにした場合、評価が下げられることがあります。このように、チームへの貢献度を評価項目に含めることで、みずからが進んでチームへ貢献するようになり、その結果、円滑な組織運営を可能にしています。

ディー・エヌ・エーの実名式の360度フィードバック

日本のインターネット関連企業である、ディー・エヌ・エーでは、マネジメント層向けに実名での360度評価を取り入れています。これは、360度評価がマネジメント層の育成に高い効果を持っているためで、同社でもマネジメント層であるマネージャー育成のために360度フィードバックという形で実施されています。

360度評価制度は、基本的には無記名での評価を行いますが、同社の360度フィードバックでは、各メンバーが実名でマネージャーを評価します。これは、役割に関わらず自分が思ったことを発信することが重要という方針のもと行われており、これにより、マネージャーとメンバーとの信頼関係に貢献しています。また、この360度フィードバックは評価ではなく、フィードバックを目的として行われているため、フィードバック後は、マネージャーとメンバーでのディスカッションを行い、問題点に対する改善策などを洗い出します。

このように、マネージャーがメンバーの率直な意見を知ることで、マネージャー自身の自己評価とメンバーの評価との違いを明確に把握できます。また、今後自分がどのようにマネジメントしていったらよいかという方向性も明確できるため、マネジメント層の育成で高い成果を上げています。

メルカリのピアボーナス制度

最後に、通常の360度評価制度とは少し異なるメルカリの評価制度について紹介します。メルカリでは、社員がおたがいにリアルタイムで評価を行い、インセンティブを贈り合う「ピアボーナス制度」という仕組みを導入しています。これは、社員が良い仕事をしていると思った人に対してその良い仕事をしたその瞬間にリアルタイムに評価を行うという仕組みです。これによって、一人ひとりのパフォーマンスを高めると同時に、社員間の信頼関係の醸成やコミュニケーションの向上を実現しています。さらに、定期的に行う360度評価制度と違い、リアルタイムに断続的に評価が行われるため、社員のモチベーションアップや満足度の向上にも高い成果を上げています。

360度評価で組織運営の活性化を

360度評価では、評価の公平性による社員の満足度の向上や、マネジメント層の育成に高い効果を発揮するなど、組織運営をより円滑に行っていくためのひとつの手段として有効な評価制度です。現在の深刻な人手の不足において、人材の育成、離職防止といったことは、企業が生き残っていくために最重要の課題となるでしょう。そのような経営環境のなかでも、360度評価をうまく利用してより魅力的でやりがいのある組織を作っていくことで、人材に関するさまざまな問題を解決することが可能です。ぜひ360度評価を採用し、円滑な組織運営を行っていってください。

参考URL

https://www.creia.jp/service/s-psreform/125/

https://jp.refcome.com/insight/engagement/1983

https://jinjibu.jp/keyword/detl/973/

https://okan-media.jp/2018/10/29/introducing-360-degree/#360-4

https://seleck.cc/360degree_feedback

http://www.highclass-jobchange.com/entry/17/05/11

https://www.sdi-c.co.jp/article/13639045.html

https://kigyolog.com/article.php?id=83#3-2

https://ashitanojinji.jp/category3/3434

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