プロシェアリングコンサルティング > マガジン > D2C・EC強化 > D2Cブランドの創り方 ―D2Cのプロに学ぶ、ローンチ1年で累計会員数2万人突破のD2Cサブスク“GREEN SPOON”立ち上げの裏側とは?―

D2Cブランドの創り方 ―D2Cのプロに学ぶ、ローンチ1年で累計会員数2万人突破のD2Cサブスク“GREEN SPOON”立ち上げの裏側とは?―

D2C・EC強化

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2021年6月23日は、EC事業強化やOMO/D2Cの推進を検討されているBtoC企業の経営者、経営企画責任者の皆様に向けて、D2Cを成功させる秘訣についてお伝えいたしました。
今回ご登壇いただいたのは、リリース半年で10万個以上の販売実績を誇るD2Cブランド「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」を立ち上げ、1年で累計2万人の会員を獲得した田邊氏。
実践から田邊氏が学んだD2Cビジネス成功のポイントとはどのようなものだったのかは必見です。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

※本ウェビナーのホワイトペーパー無料ダウンロードはこちらからできます。

20210623_D2CのWPDL用

田邊 友則氏

田邊 友則氏

ローンチ1年で累計会員数2万人のD2Cサブスクを手がけるD2C世界観創りのプロ
サイバーエージェントにて、CyberZ、Ameba広告事業本部、AbemaTVスポーツ局を立ち上げた後、独立。2019年にD2CブランドGREEN SPOONを創業し「自分を好きでい続けられる人生を。」をコンセプトに野菜を軸にしたプロダクトを展開。サービスローンチからわずか1年で累計会員数2万人を達成し、現在も続々とファンを獲得中。

樋口 達也氏

樋口 達也

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。

花園 絵理香

花園 絵理香

イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2021/6/23時点のものになります。

スタートアップの急進に対し、大手企業がD2Cに苦戦する理由

D2Cとは

D2Cは、Direct to Consumer(または Direct 2 Consumer)の略で、「ディーツーシー」と読みます。D2Cとは、メーカーやブランドが自ら企画・製造した商品を、従来のように中間流通を介さずに、自社のECサイトを使って直接消費者に販売するビジネスのことです。
ただ商品を販売するのではなく、オンラインなどを通じて商品や創業の想いに関する世界観などを消費者に直接訴えることで自社のファン作りも一緒に行います。

参考:
NRI(用語集)/D2Cとは

コロナ禍にあっても成長率200%を狙えるD2C事業

現在、国内のEC市場規模は2021年時点で22.2兆円。2026年には29兆4000億円にまで成長する見込みだ。新型コロナウイルスの影響も相まって各社がEC事業の強化・または進出を図るだろうと予想される中、実際にコロナ禍にあって売上が大幅に成長している国内事例も存在する。
その一例が、メンズコスメブランドのBULKHOMMEだ。メンズコスメは一般的に収益化が難しいとされているが、同ブランドはおしゃれで統一感のあるパッケージによる商品展開や、Instagramを中心としたSNSマーケティングなどを通し、D2C事業を成功させている。売上はコロナ禍の中で約200%成長し、2020年3月からは国内のみならず、フランス・イギリスでも商品販売を開始した。

大手企業の弱点はブランディングとSNSマーケティング

BULKHOMMEは設立2017年のスタートアップ企業だ。いわゆるD2C領域においては大手企業よりもスタートアップ企業の活躍が顕著であり、この点から大企業がD2C事業を展開する上ではいくつかの課題があると推測できる。それを簡単に分析したのが、以下の比較だ。

大手企業の弱点は、すでに企業、商品に歴史があるがゆえのブランディング――世界観創りの難しさ、そして組織規模が大きいために小回りの利くSNSマーケティングの強みを活かしきれないということだ。
そこで今回は、株式会社GREEN SPOONの代表である田邊氏に、これら2つの要素にまつわるD2C成功ポイントを重点的にお伺いした。

D2Cブランド“GREEN SPOON”立ち上げの裏側とは?

野菜を毎月届ける食品のサブスクサービスで累計会員数2万人を突破

GREEN SPOONもBULKHOMMEと同じく創業2019年のスタートアップ企業で、定額制パーソナルフード「GREEN SPOON」の企画・製造・販売までを手掛けている。同サービスは、利用者ごとに最適な野菜を毎月自宅に届けるサブスクリプション型で、食材はスムージーやスープなどの形で楽しめる。
サービスがローンチされたのは2020年3月。約1年で累計会員数は2万人を突破し、販売個数は約50万個。メディアからも注目されている。

田邊:もともとSNSから火を付けたいという狙いがあり、そこから雑誌、メディア、テレビなど多くの媒体に取り上げていただきました。

当時はPR担当者などはおらず、プル型営業を通したメディア展開が9割だったという。

GREEN SPOONがD2Cブランドで重視するSNS活用とCRM

創業から数年足らずでオンリーワンの世界観を築き上げ、堅調に事業を成長させているGREEN SPOON。田邊氏は、D2Cを成功させる上でSNS活用とCRM(Customer Relationship Management)、いわゆる「顧客関係管理」を重視している。

田邊:D2Cの本質となっているのが、SNSでの集客が可能になったことと、CRMに革命が起きている点だと思います。一方、ブランドにとって大切なのはやはり「オンリーワン」になることだという認識です。

樋口:オンリーワンになるというのは、どちらかというとマーケティング領域の事柄でしょうか?

田邊:そんなイメージですね。

大企業の課題であり、なおかつD2C成功の鍵でもあるブランディングとSNS、そしてCRM活用。ここからは、田邊氏が実際にどのようにGREEN SPOONのブランド立ち上げを行ったのか、時系列で見ていく。

オンリーワンのD2Cブランド立ち上げストーリー

今回は、ブランド立ち上げのストーリーを以下の4つのステップに分けて定義していただいた。最初に世界観創りがあり、商品創り、コミュニケーション戦略策定、そしてCRM設計と続く。

STEP.1 世界観づくり

機能的価値の時代は終わりを告げ、情緒的価値が重要となる

田邊氏は、まずはブランドの提供価値をしっかりと決定することが肝要だとしている。

樋口:ブランドが無いプロダクト、企業もあると思いますが、その場合サービス立ち上げの初速は良くても、長続きしない感覚があります。そういった視点で、田邊さんはブランドの必要性をどのように考えていらっしゃいますか?

田邊:今の世の中はとにかく情報とモノにあふれていて、その中でどう継続的に利用いただけるかと考えると、「機能的価値」の時代はもう終わっていると言えます。情緒的、エモーショナルに惹かれる部分がないとなかなか長続きしないというのが、ブランドを重視する発端なのです。GREEN SPOONも、初期設定の部分は非常に大事にして創ってきました。

自社のブランドにはどのような提供価値、情緒価値があるのか。田邊氏は、ブランドの構成要素として特に「利用シーンや特定モーメントの規定」が非常に大切だと考え、唯一無二のブランドを築いているさまざまな企業の利用シーンを分析した上でGREEN SPOONのブランディングを検討していった。それが、「簡単にいつでも野菜を摂れる」ということだった。

ブランドのベースとなるのは担当者自身が考える「自分にとっての幸せ」

ブランド構築におけるもうひとつのポイントとして田邊氏が挙げるのが、「プロダクトと企業のビジョン・ミッションが一貫している」という点だ。
GREEN SPOONが企業として掲げるビジョンは「自分を好きでい続けられる人生を」。一見ヘルスケアの領域とは無関係にも思えるが、田邊氏はプロダクトのあらゆる要素――例えばデザインなども含めて、全てビジョンに落とし込むようにしているという。そして田邊氏がこのビジョンを掲げるに至った経緯には、自身の人生経験が深く関わっている。

田邊:私は起業する前に多忙なIT企業に務めていたのですが、そのときに「健康に気遣いたいけれど気遣えない、忙しいから気遣うにしても簡単であってほしい」という課題がありました。でも、そういう商品は本当になかったんですよ。添加物が入っているのも嫌でした。
簡単に健康に気遣えるサービスを作りたいと思っていた中で、たまたま2~3年ほど欧米に住んでいたのですが、そこで国民の健康意識の差というものを感じました。欧米は予防医学や未病の世界です。日本は医療、保険体制が整っているので、治療医学の世界ですよね。その文化の違いに驚きましたし、何より彼らの生活を見ていて「体を気遣えば心も豊かになっていく」と気付きました。こういう世界を簡単に実現するにはどうしようかと考えて、GREEN SPOONを起業したんです。

樋口:簡単でヘルシー、それで自己肯定感も得られるというところにつながっていったんですね。
ちなみに田邊さんは現役の経営者ですが、外部からアドバイスを求められることも多いかと思います。そのときには、やはり自社のブランドやプロダクトでどういうポジションを取っていきたいかを考えることから話を進めるケースが多いのでしょうか?

田邊:担当者ベースで何を作りたいのかが非常に大事です。エモーショナルなベネフィットを提供するには、自分がエモーショナルな熱を持っていないと伝えるのが難しいと思うんですよ。まずは何を作りたいのか、何が欲しいのかから入るケースが多いのですが、根本的にはそれよりも「そもそもあなたにとっての幸せとは何ですか」という問いから始まります。そこがプロダクトやサービスのビジョンにつながるんです。大きすぎるいかもしれませんが、社運や人生を賭けた挑戦をするときは、まずその人の幸せが何なのかを探り、自分の信じる世界を実現することがブランドを形作ると思います。

ビジョンさえ定まれば、あとは「自分が信じる世界にアプローチするための手段を考えるだけ」と田邊氏は語る。

自分ごとを社会にまでつなげて一貫した世界観を構築せよ

田邊氏が世界観創りのためにもう一点定めたのが、テーブル・ライフ・ワールドという3つのウェルネスの実現を目指すということだ。

田邊:身体の健康だけではなく、心の健康、ひいては社会や地球環境の健康という視点まで持たないと、やはり共感されるブランドにはなっていかないと思います。そこで我々は、テーブルからワールドに至るまで、ウェルネスの実現をサービスとして実現していこうということにしました。

STEP.2 高品質な商品創り

商品設計の段階から「カメラを向けたくなる」を意識すること

どんなブランドを創り上げたいのかを策定した後は、実際に商品開発に取り掛かる。その中で重要なのは、GREEN SPOONのミッションである「たのしい食のセルフケア文化」という世界観を体現するためのおしゃれさや、テンションが上がるようなパッケージデザイン。あるいは、競合他社の商品に埋もれないような独自性の獲得だ。GREEN SPOONの場合は「パーソナルスムージー」と呼べるほど多種多様なスムージーのラインアップを用意したり、パッケージにイラストを用いるといった形で独自性を打ち出している。
「パーソナルスムージー」というネーミングも重要で、GREEN SPOONが勝ち取ったメディア実績の功績について田邊氏は、「ネーミングを開発した時点で勝っていました。それだけで50社は問い合わせが取れていたと思います」と述べる。

もう一つ欠かせないのが、どのような消費者体験(CX)を設計するのかという点だ。田邊氏はGREEN SPOONにおいては、「スマホのカメラを向けたくなる体験」を設計したという。

樋口:これは、実際にスマホカメラを向ける回数をカウントしていたりするんですか?

田邊:カウントしていましたね。現代は5G、動画時代に突入しました。そういうタイミングで起業しましたから、「人にシェアしたくなる写真を撮りたくなる瞬間を何回作れるかがKPIだ」とまで言い切りました。GREEN SPOONを利用するどのタイミングでカメラを向けてもらい、どうシェアされるのかは、最初のタイミングでかなり意識して作り込みましたね。

STEP.3 コミュニケーション戦略策定

リソース不足でもSNSを徹底活用すると爆発的な力を発揮できる

SNSで注目される商品設計を前提として、次は実際にどのように顧客とコミュニケーションを取るのか、戦略策定のステップに入る。とはいえ、この点に関して立ち上げ1年目の段階では「KPI設定はほとんどしていなかった」と田邊氏。

田邊:スタートアップは本当にリソースがないんですよね。最初の1年は社員3名で運営していたので、当初はコミュニケーション戦略についてあまり細かくは取り組んでいませんでした。

樋口:ただ、InstagramやTwitterを見ているとGREEN SPOONについて発信している方はすごく多いですよね。この理由を田邊さんはどう見ていますか?

田邊:先ほど申し上げたように、スマホのカメラを向けたくなる瞬間をきちんと設計していることなどに加えて、公式SNSを通じて写真の撮り方も提示したからですね。あとは、単純に著名人やタレントのお客様が非常に多いからだと思います。そういう方々がSNSに写真をアップしたのを見て、「自分も真似したい」と思ってくれる。全く意図せず突然流入がすごいことになっていると思ったら、「あの有名人がSNSにアップしていた」ということは1年目で非常に多かったです。

樋口:インスタグラマーの方たちがアップしたいと思うような商品やブランドができているからこそですよね。

田邊:そうですね。インフルエンサーにしろインスタグラマーにしろ、大事なのはやはり独自性で、新しくて見たことがないものだからアップするんです。そういう人たちは例えば化粧水なんかは過去何度もギフトされたことがあると思うのですが、そうなるとアップしづらいし、何が新しいのかもわかりませんよね。この点GREEN SPOONは見た目からして新しく、GREEN SPOON以外にこういったプロダクトがない、つまり独自性があったのだと思います。

その結果として、GREEN SPOONは認知のために必要なPR費用は全くかけずに済んだという。

STEP.4 CRM設計

パーソナライズされたCRMによって継続率やLTVを向上

最小限の体制の中ではCRM設計や実行も難易度が高いように感じられるが、この点について田邊氏は「ミニマムな体制だからこそ意思決定が早く、例えば利用者の声を受けた商品改善のための工場連携もスムーズに行っている」と述べる。
また、CRMのポイントについては「パーソナライズされたCRMをどこまでやりきれるか」が重要だという。

田邊:我々にはお客様の生のデータがあるので、例えばスムージーやスープを頼んだ方には、回数に応じてメッセージの出し分けをしています。ほかにも特定のメニューを頼んだ人にはアレンジレシピをお教えするなど、かなり細かい部分までCRMは可能だと考えています。
その結果が継続率やLTVの向上につながることは実際に数値として見えてきていますし、D2Cならではの取り組みだと思っています。

樋口:やればやるほど効果が上がり、消費者もうれしい。まさに三方良しの状況が作れているイメージですね。

D2Cブランドを成功に導く3つのポイント

ディスカッションの最後に、ここまでのストーリーを踏まえた田邊氏の考えるD2Cブランド立ち上げにおける成功の3つのポイントについてご紹介した。

樋口:1つめが、伝わるブランド意義。2つめが世界観を体現したデザインと品質。3つめがSNSのフル活用。コミュニケーションやCRMの部分ですね。
ちなみに視聴者の方から質問が来ているのですが、立ち上げ時のメンバー3名の役割はどのようなものだったのでしょうか?

田邊:ざっくりですが、私がブランディングやマーケティング、ファイナンス、そしてプロダクトの企画を担っていました。もう1名は仕入れも含めたサプライチェーンの構築。もう1名がいわゆるメディアやCRMなどサービスの設計部分を担当していました。

D2Cブランドの創り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでほしいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。D2Cブランドの創り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
D2Cブランドの創り方 ―D2Cのプロに学ぶ、ローンチ1年で累計会員数2万人突破のD2Cサブスク“GREEN SPOON”立ち上げの裏側とは?―
本ホワイトペーパーは、2021年6月23日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。D2Cサブスク“GREEN SPOON”の創業者である田邊氏の事業立ち上げ経験をもとに、D2Cビジネス成功の秘訣をご紹介しています。