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【イベントレポート】先端技術 × 新規事業 ―複数のブロックチェーン事業創業者が語る、実現するデジタル事業の創り方―

新規事業開発

17,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021年1月21日は、先端技術を実際のマーケットニーズと結びつけて事業にまで落とし込む作業に困難を感じている新規事業責任者・経営企画室長の皆様に向けて、ウェビナーを開催いたしました。
今回ご登壇いただいたのは、ブロックチェーンを利用した仮想通貨交換取引所「c0ban」をはじめ、幅広い業界でデジタルサービスの立ち上げを手掛けてきた小林氏。小林氏が時代の三歩先を読んで事業を立ち上げたからこそ体験した成功と失敗について、実際の事例を基にお話しいただきました。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

小林 篤氏

小林 慎和氏

戦略コンサル出身、ブロックチェーンなど最先端技術を活用したサービス立ち上げのプロ経営者
野村総合研究所上級コンサルタント、グリーの海外責任者を経てアジアにて複数社起業。帰国後、金融庁認可日本発の暗号資産「c0ban」を立ち上げバイアウト。現在は株式会社bajjiファウンダー兼CEOとしてブロックチェーンを活用したセルフケアアプリ”Feelyou”を開発しリリースから3ヶ月でGoogle Play ベストオブ 2020「隠れた名作部門」大賞を受賞。国内外で5社連続起業、創業支援10社の実績を持つシリアルアントレプレナー。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

最新技術を活用したデジタルサービスの現在

仮想通貨で一世を風靡したブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは最新技術として注目されて久しく、主に仮想通貨の暗号基盤として認識している人も多いだろう。
ブロックチェーンに関する特徴を簡単におさらいすると、前述の通り基盤技術のひとつであり、取引履歴が1本の鎖のようにつないで構成されることから「ブロックチェーン」と呼ばれる。「分散型台帳」とも表現されるように、同じ情報を並列に時系列で記録するため、情報の改ざんを防げるような仕組みになっている。セキュリティが高く安全な取引を実現可能で、仮想通貨のような暗号資産のコア技術となった。

ブロックチェーンの市場規模は引き続き拡大中

2020年時点でブロックチェーンの市場は約30億ドルの規模で形成されており、2025年には13倍の397億ドルにまで成長する見立てだ。日本では現在約100~200億円、2025年までには1000億円もの市場規模になるとされている。
ブロックチェーンの本来の役割は「データを分散管理する」という点にあるため、仮想通貨に限らず、「資産」と「データ」という2つの側面での利用が活発に進んでいる。今後のデータ社会にとって欠かせない技術になることは、まず間違いない。

ビジネスにおける最新技術活用に必要な3つの要素

ブロックチェーンをはじめとした最先端技術の活用による新規事業は、大手企業を中心に広がりを見せているが、最先端技術を使ったからといって必ずしも成功するとは限らない。
例えばGoogleのスマートグラスは最新技術を用いて開発されたが、機能自体はスマートフォンだけでまかなえるため、市場はスケールしなかった。

この点から考えると、最新技術活用に必要な要素は、以下の3つだ。

重要なのは技術が優れているかどうかではなく、それが顧客のペインを取り除くものとなっているかどうか。中国でペイメント市場が一気に拡大した背景にも、同国では銀行口座を持ちにくいことや、貨幣の盗難リスク、偽札問題などがあった。技術と課題が掛け合わさったときに、初めて高成長市場が創出されるのだ。

企業の成功事例で学ぶ、最新技術を活用したデジタルサービスの新規事業

今回ご登壇いただいた小林氏は、野村総研の戦略コンサルティング部に務め、新規事業立ち上げや海外展開、M&Aに従事。グリー時代に拠点をシンガポールに移して会社を複数立ち上げ、4年前に日本に帰国してからもブロックチェーン企業を2社起業している。
先端技術の中でもことブロックチェーンにおいては、黎明期からのスペシャリストとも言える小林氏。なぜ彼はブロックチェーンで事業をスタートしたのか、そして最新技術を利用した事例にはどのようなものがあるのかをお伺いした。

「技術」ではなく「事業方針」としてブロックチェーンの活用を選択

小林氏がブロックチェーンに目を付けたのは2016年のことだ。当時の市場の状況について小林氏は以下のように語る。

小林:私はいわゆるスタートアップの経営者なので、会社をスケールアウトして世の中にインパクトを起こす必要がありました。その点で言うと、VC(ベンチャーキャピタル)から投資を得やすいような「旬のフィールド」というものが毎年存在します。2016年にブロックチェーンをやろうと決めたのも旬のフィールドだったからです。AI、IoT、そしてブロックチェーンが当時ホットなフィールドでした。

技術先行でスタートした事業は立ち行かなくなる――。これはどんな分野においても定説だと言える。この点は村田からも質問が出た。

村田:技術から選択するのは珍しいケースだと思うのですが、小林さんにとってブロックチェーン技術の活用とは、「技術」というより「事業方針」だと事前にお伺いしています。これはどういう意味なのでしょうか?

小林:ブロックチェーンを使うというのは、非常に人間的な要素が大きいんです。例えば最近は個人情報保護の流れがあり、プライバシールールシステムやプライバシーマーク制度ができましたよね。すると、ルールに対して会社やシステムを変えなければいけません。ブロックチェーンは、そういう人間的な事情からスタートしています。
ブロックチェーンに刻まれたデータと従来のデータの根本的な違いは、「中央管理者の有無」です。ブロックチェーンは中央管理者不在で、なおかつセキュリティが担保できます。トランプ前大統領のSNSアカウントが閉鎖された例がありますが、あれは個人の権利の侵害であると同時に政治的判断でもあるわけで、まさしく中央管理者が個人情報を扱うことの良し悪しが出ています。
つまり「利害が対立するような関係であっても、お互いに中立的なデータが必要である」という事業方針があるなら、「それはブロックチェーンだ」ということになるんです。

ブロックチェーンはデータの取り扱い方そのものを規定する技術である以上、事業方針に当て込むような活用となる。その前提で小林氏が立ち上げたビジネスのひとつが、仮想通貨「c0ban」の取引所だった。

事例1: 日本発の暗号資産「c0ban」取引所

従来の仮想通貨の取引に「広告視聴」を取り入れ付加価値を生み出した

ブロックチェーン活用の鉄板とも言える仮想通貨事業だが、c0banの最大の特徴は「FinTech」と「広告」という2つの異なる領域を組み合わせている点にある。

小林:私は「AdFinTech」なんて呼んでいました。仕組みとしては、まず当社のメディアで配信する30秒の動画広告を見ると、c0banがもらえます。c0banは広告の出稿元のお店や、取引所で利用可能です。
従来ネット広告というのは、何回見られたのかということが、出稿者は確認できませんでした。FacebookやGoogleなどのプラットフォームが出す閲覧数の言いなりでした。でもこの仕組みでは、見た人だけにブロックチェーンを通じてc0banを配る。広告の出稿者がブロックチェーンを直接確認することで、広告の閲覧数を把握できる。この透明性を創れたところが、革新的だと考えています。

c0banのリリース後、2年目の売上は10億円を超え、動画は月間500万回の視聴を記録。

未成熟な市場ゆえに発生した、外部要因による大きな打撃

クラウドファンディング(ICO)を利用して資金調達を行い、わずか9ヶ月でリリースにまでこぎ着けたc0banだったが、全てが順風満帆ではなかった。動画とブロックチェーンを連動させるための技術的な問題や、仮想通貨の制度面の変化、会計上の取り扱いの難しさ……数々の障壁の中でも特に大きなインパクトとなったのが、業界内での個人情報流出事件の発生だ。当時のことを小林氏は「暗黒時代」と形容する。

小林:2018年の個人情報流出事件以来、仮想通貨の規制ルールがガラリと変わりました。内容はそこから数度にわたり変わっていって……。当時の仮想通貨のセミライセンス企業18社のうち、15社が撤退及び倒産。私の会社が残り3社のうちの1社でした。ライセンスを取得するまでには、結局26ヶ月もかかっています。

法的設備がまだまだ整っていなかった仮想通貨の黎明期。「ブロックチェーンで事業を始める」という最先端の響きと成功の裏には、大きな苦難があったのだ。

事例2:ウェルビーイングを高める感情日記アプリ「Feelyou」

コロナによって全世界が抱えた課題解決のためにプロジェクトをスタート

今回もうひとつの事例としてご紹介いただいたのが、感情日記アプリ「Feelyou」。これはコロナ禍において開発されたSNSアプリであり、c0banのような仮想通貨とは全く領域が異なる。

小林:Feelyouは最近の流行り言葉で言うとウェルビーイングやマインドフルネス、メンタルケアといったカテゴリのアプリです。プロジェクトをスタートしたのは2020年4月1日。コロナによる緊急事態宣言が出る直前で、世界中が不安やストレスを抱え、人に会えない孤独感を感じていました。そこで三密にならないように、アプリで何かアプローチできないかと考えたのです。

自身もFacebookやTwitter、Instagramを利用しているという小林氏だが、どこか取り繕った投稿をしてしまったり、安易な発言による炎上を恐れたりと「リラックスできないと感じる」と述べる。
その点、Feelyouは自分のありのままの感情をシェアし、共感し合うことで「居心地の良さ」を作っているSNSだ。肩肘を張らずに気持ちを吐き出せる在り方が、世界中に響いている。

村田:Feelyouはリリースから半年で登録人数は5万にまで伸び、Google Playベストオプ2020「ユーザー投票部門 アプリカテゴリ」にもノミネートされています。さらに、世界168カ国にまで展開されていらっしゃるそうですね。

小林:人に会えない寂しさがこんなにも世界共通の課題になったということですね。ここまでわかりやすく課題が見えるタイミングは、人生で初めてのことでした。

だからこそ、アプリは英語から開発を進めたという小林氏。そのとき世の中から求められていたニーズを読み取って開発を進めた点は、c0banと共通する。

課題は一貫していたものの伝え方は数十回にわたり試行錯誤を重ねた

Feelyouの開発はプロジェクト開始から急ピッチで進められ、リリースまではわずか4ヶ月という期間だった。
プロダクトが解決すべき課題がしっかり定まっていたからこそ、このスピード感で動けたのだろう――そんな想像ができるが、「実は課題は変わる」と小林氏は述べる。

小林:新規事業はイシューから始めよと言われますし、課題は何だと聞かれもします。うちはスタートアップ企業なので、ユーザーや顧客、VCにピッチをして課題を説明もします。
ただ、矛盾するようですが課題は変わります。もちろん課題の本質は変わりません。解決したいのは先ほど申し上げたような、人に会えない寂しさや孤独、ストレスや不安なのですが、その伝え方はこれでもかというくらい変わるんです。

当初、小林氏がFeelyouを説明するために使っていた資料の1P目に書かれていたキャッチコピーは、「感情をシェアすることでイノベーションを加速するムードトラッキングサービス」だった。課題の詳細に関しては14項目にも分けて説明していたという。
これでは確かに、何を解決したサービスなのか不透明だ。

小林:4月から7月までの間にピッチ資料の1ページ目は20回くらい変わりました。最終的に落ち着いたのが「ワンタップでできるセルフケア」です。

そして最終的なイシューは、「約1億人の日米欧のデジタルネイティブが、生活の中でほとんど毎日孤独、ストレス、不安を感じている」と定めた。
エレベーターピッチで事業内容を説明できるようになっているかどうか。ここが、新規事業を進める上では重要なポイントになるようだ。

新規事業成功のタイミングは「技術」「ビジネス」「マーケット」から探る

世の中の時流を読みながら、ときには驚くべきスピードで数々の新規事業を手掛けてきた小林氏。新規事業を成功させるためには小林氏のようにタイミングを見定めるのが肝要であり、ここについて小林氏は以下の3つの要素を挙げた。

村田:これら3点がしっかり接合点を持てるということが、新規事業においては重要だと思うのですが、まず技術トレンドはどう見極めれば良いのでしょうか?

小林:ハイプカーブ※と呼ばれる有名なグラフがあり、「次に来る技術は何だ」というところから入りがちなのですが、実は技術そのものがすぐにイノベーションを生むわけではありません。技術ドリブンだと、人も社会もついていかないので、なかなか難しいんです。
例えば今なら、「AIやブロックチェーンは未来の技術です」と言われたら、確かにそういう気がしますよね。でも普通の人に「次は量子コンピューティングが来るんですよ」と言っても「え?」ですよね。技術に対する期待値があるかどうかも重要かなと思います。

※ガートナー社による、先進テクノロジーのトレンドをまとめたグラフ

村田:その次のビジネスモデルのこだわりで言うと、やはり顧客価値を創出できるかが一番重要ですよね。

小林:商人の「三方良し」というものがありますが、私やあなたが得をすると別のところも得をする、それがまたこちらに返ってくる……といったスムーズな流れがあるかどうかですね。新規サービスを作るときは自社とお客さんの1対1で考えがちですが、周りにはエコシステムやバリューチェーンがあります。これらの点と点が川のように流れていく要素が必要だと思います。

最後のマーケットについて、小林氏は「外部要因で変わる可能性があるもの」と「違和感や不便」の間に発生する「隙間」を見るべきとした。少々難しい考え方だが、小林氏は以下のように説明する。

小林:例えばブロックチェーンの外部要因で言うと、やはりトランプ元大統領のSNSアカウント削除が重要です。中央管理者にデータを預けてしまうと、ああいうリスクが発生する。ブロックチェーンで分散保存すれば、1社の力だけでは削除できなくなります。
そこで「個人情報保護のためにブロックチェーンを使いませんか、セキュリティが高くなりますよ」という営業ができます。常に、今自分がやっていることと世の中の出来事を上手く結びつけるのが大切ですね。

先端技術×新規事業のまとめ

今回のウェビナーの内容を踏まえ、村田が視聴者に伝えた「DX推進室責任者が今すぐ取り組むべきToDoリスト」が、以下の3点だ。

今回ご紹介したウェビナー資料のダイジェスト版を以下のボタンからDLできます。先端技術×新規事業にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

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