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【イベントレポート】事業開発責任者のためのOMO ―元メルカリOMO戦略責任者が語る、新規ユーザー層拡大に成功した新規事業開発で重要なカスタマージャーニーとは?―

新規事業開発

17,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021年4月13日は、パラダイムシフトした顧客の価値観に対応するため、EC事業強化やOMO推進などのサービス開発を目指す経営者、経営企画責任者、DX推進責任者の皆様に向けて、OMO推進の秘訣についてご紹介いたしました。
今回ご登壇いただいたのは、メルカリのOMO戦略チームの立ち上げ実績を持つ新規事業開発のプロである南坊氏。
メルカリの事例はもちろん、他社の優れたOMO事例の解説から成功する事業開発のロードマップまでたっぷり教えていただきました。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

南坊 泰司氏

南坊 泰司氏

メルカリのOMO戦略チーム立ち上げ経験も持つ、新規事業開発のプロ
新卒で電通に入社。ブランドコンサルティング、デジタルマーケティングの専門領域を経た後、電通独自のDMPおよびTVメディア PDCAツールSTADIAの開発・運用を担当、局内トップ評価を3度獲得。自身がマーケティングを通じて社会に提供できる価値を最大化することを考え急成長期のメルカリに転職。 マーケティング・マネージャーとしてマーケティングをフルファネルで担当。その後、事業企画部に移りオンラインとオフラインを統合するOMO(Online merged offline)戦略チーム立ち上げに従事。2020年に独立創業し、マーケティング/クリエイティブ領域を中心に支援を行う。

鈴木 貴大氏

鈴木 貴大氏

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
大手人材紹介会社にてトップセールスとして活躍後、創業期のサーキュレーションへ入社。支社長として東海支社を立ち上げた後に独立。 フリーランスとして複数社で事業開発、営業統括、役員等を務めた後、再びサーキュレーションに参画。現在は首都圏のメガベンチャー・急成長IT企業を担当するセクションの責任者。最先端テクノロジーを駆使した新規事業開発、DX推進に向けた経営戦略策定~組織編成支援など変革プロジェクトの実績豊富。

花園 絵理香

花園 絵理香

イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

OMOが生み出す新たなビジネスの可能性とは?

OMOは「顧客行動に合わせたUXの提供」と定義できる

今回のウェビナーでは、冒頭に視聴者アンケートを実施。「OMOをどれくらい知っていますか?」という質問に対して、「聞いたことがある」という回答が半数以上だった。
OMO(Online Merges with Offlinge)が実現するのは、オンラインとオフラインが融合した社会だ。ビジネス上では、オンラインとオフラインで顧客の行動に合わせた顧客体験を提供することだと定義付けられる。

「O2OやオムニチャネルとOMOの一番の違いは、前者が提供側、すなわち事業者側の視点である一方、後者は真逆の顧客視点になっている点です」と語るのは、今回の登壇者である南坊氏だ。

街のパン屋でもできる?OMOを推進する上での考え方

OMOを紹介した有力な書籍アフターデジタルでは、OMOの象徴的事例として平安保険が紹介されている。
1988年に創業した小さな保険会社だった平安保険だが、現在は170万人の社員を擁するメガカンパニーにまで成長した。その中で南坊氏がOMO事例として取り上げるのは、同社が提供する「グッドドクターアプリ」で、現在2億人のユーザーが利用している。
特徴的な機能としては、医師による無料問診や、医師ベースでの予約、ポイントシステムなどが挙げられる。

南坊:中国は日本のように誰でも保険に入るような国ではありません。その中で平安保険がどう顧客接点を作ろうかと考えたときに浮かび上がったのが、「医者が信用できない」という中国の社会事情です。医者は口コミを見て選びたいニーズに合わせたのがグッドドクターであり、平安保険に対するロイヤリティを高めています。医者を探しているということは当然健康不安も高まっているわけですから、保険を検討するタイミングも押さえています。
中国の課題に合わせた使いやすいアプリを提供した結果、平安保険に対するロイヤリティが形成され、保険加入の勧誘を効果的にすることが可能になる、という流れです。

鈴木:無料問診や予約システムといったアプリの仕組みではなく、そもそも顧客の持っているニーズにアプローチをかけたことで結果が出ているんですね。

本ウェビナーでは、この後も企業のOMO事例をいくつか紹介していくが、南坊氏は前提として、こういったOMO事業はどんな企業でも実現可能だとする。

南坊:平安保険のような仕上がった事例を聞くとOMOは大変そうだと感じるかもしれませんが、OMOは街のパン屋でも不可能ではない話なんです。「お客さんにとって良いUXをつくる」ためにどういう一歩を踏み出すのかは、意外といろいろなやり方があります。

「OMOには必ずしも難しいテクノロジーが必須ではない」と南坊氏は語る。本ウェビナーでは、その具体的な根拠や内容について、事例を交えながら探っていく。

メルカリのユーザー拡大を促進するOMO事業立ち上げの裏側

メルカリと聞くと、リユース事業の先駆者というイメージを持っている人も多いだろう。ウェビナー中に行ったアンケートでも、メルカリに対するイメージで多かったのは「先端ベンチャー」「リユースの先駆者」が圧倒的だった。
一方、「若者向け」やCMでおなじみの「タモリさん」のイメージを強く抱いている人は少数派という結果に。しかし、実はこの「若者向け」という部分に、これまでメルカリは課題を持っており、OMO事業の立ち上げにつながったという。

実際に出品の仕方を学べるオフライン施策「みんなのメルカリ教室」

メルカリのOMO事例として今回ご紹介いただいたのが、オフライン施策である「みんなのメルカリ教室」だ。これは、メルカリに興味はあるけれど、アプリの使い方がわからない、実際にどうやって物を売ったらいいのかわからないという人向けの教室で、実際にメルカリで出品するまでの流れを学べる内容になっている。

鈴木:これは何を目的として実施された施策なのでしょうか?

南坊:定量調査を行ったときに、メルカリは若年層の利用者が比較的多く、年齢が高くなればなるほど利用比率が減っていくというデータがあったんです。一方で高齢者の認知度や利用意向は高かったので、「メルカリのことは知っているけど使われていない」という現状があるなと。
テレビCMや様々な広告などいろいろ施策は打ちましたが効果は限定的であり、50代以上のユーザーをどうやって獲得するのかを考える中で「じゃあもう直接使い方を教えよう」ということで始まったのがみんなのメルカリ教室です。

OMOによって高齢者層を獲得するための基盤構築に成功

南坊:ユーザードリブンで考えると、テレビやWeb広告ではデジタルリテラシーを超えて高年齢層をメルカリの利用まで促すことが難しい。メルカリ教室は郵便局など、まさに高年齢層が訪れるような接点で実施しました。

一見草の根活動的で、非効率にも思われるオフラインでの教室開講。しかし、教室に足を運ぶほどのモチベーションのあるユーザーなら、使い方を学んだ後は確実にアプリを利用し続けるだろうことは想像に難くない。
施策によって数値的な結果が出たことで、OMO事業の立ち上げの効果も実証できたという。

4つのタイプ別に見るOMOの事例と成功ポイントの分析

ここからはOMOに上手く走り出している4企業の事例について、南坊氏の視点から優れているポイントについて教えていただいた。
今回取り上げたのはユニクロ・GU、ナノ・ユニバース、コメ兵、そして冒頭でもご紹介した平安保険。下のマトリクス表では、それぞれの事例を業種及びオンライン・オフラインどちらを起点としてOMOを実施したのかという分類を示している。

ユニクロ・GU/実店舗で好みのスタイリングを見つけてシームレスに購入

最初に紹介いただいたのは、ユニクロ・GUのアプリ「StyleHint」だ。アプリを通して、同ブランドのお気に入りの着こなしを投稿、検索できるほか、該当アイテムはそのままオンラインで購入もできる。
その中で南坊氏は、特にStyleHint原宿の取り組みをピックアップした。

南坊:アプリ自体は2年ほど前からありそこそこ使われているのですが、新たに原宿に旗艦店を出店する際、「StyleHint原宿」と称し、店舗の地下1階でStyleHintに投稿されたコーディネートを見られるようにしたんです。
要するに、最初はアプリで着こなし方をユーザーに楽しんでもらった上で、実際の店舗に訪れて着こなしのアイテムを購入するわけです。お店でスタイリングを発見して買うこともできますね。もちろん普通にECでアイテムを購入もできますから、シームレスに使えます。

ナノ・ユニバース/「店員」という最高のアセットをオンラインで活用

次に紹介いただいたのは、ナノ・ユニバースによる「STAFF START」の活用だ。STAFF START自体は店舗スタッフがEC上で接客可能にするStaff Techサービスで、ナノ・ユニバースに限らずさまざまなアパレル企業で利用されている。

南坊:コロナによる緊急事態宣言でなかなかアパレル店舗に行きづらい状況がありますが、やはりアパレル店舗の最高のアセットは店員なんです。109の店員にも多くのファンがいますが、接客技術が高い店員の力をどう使うのかという視点で採用されたのがSTAFF STARTです。
リアル店舗でWeb接客を行うことで、ユーザーをオンラインショップに送客する。実際に洋服がある店舗という場所を使いつつも、売るのはオンラインという、オンとオフの統合ですね。

鈴木:これは店員さんのモチベーションもかなり上がりますよね。

南坊:そうなんですよね。急にECをやると言われても店員さんは困りますし、直接売るのが好きな方もいらっしゃいます。そういった店員のモチベーションをきちんと上げることが従業員満足にもつながるので、すごく良いOMOです。

コメ兵/LINE接客でリユース業界が抱えるハードルをクリア

コメ兵で行われているのは、LINE接客だ。比較的顧客の年齢層が高いリユース領域の企業において、なぜLINEが活用され、どういう効果を上げているのだろうか。

南坊:コメ兵さんの顧客の年代や接点から考えると、STAFF STARTよりもLINEのほうが望ましいんですよね。そのときリユース系のポイントとなるのが、「自分の家にある物は質に出せるのか」という疑問です。それを判断するためにLINE接客では家の中に入り込むことになるので、接点が増え、結果として売上が伸びたそうです。

鈴木:確かに質に入れるような高級品をダンボールで郵送したり、出張サービスで家に来てもらったりするような垣根を、あっという間に超えていった感じですね。

平安保険/アプリによってオン・オフ両方の接点が大幅に拡大

平安保険の場合は、冒頭でも簡単に説明した通り、もともとオフラインで提供していたサービスとオンラインをシームレスにつなぎ、OMOを実施した。

南坊:このアプリはもともとクリニックを紹介するようなものだったのですが、現在はオンライン診療も提供しているので、結果としてオン・オフ関係なくアプリの中で接点が広がっています。接点が広がれば広がるほど、保険に入る人の歩留まり率は高くなるので、商品提供の入り口としてよく機能しています。

鈴木:簡単ではないと思いますが、日本でも狙い目な気がしますね。

南坊:オンライン診療なんかは今後解禁されていくので、どういう企業がメインになるのかは面白いポイントですね。

4社の共通点は「UXの向上」が結果としてOMOになったこと

以上の4つの成功事例を見ると、実はある共通点が見えてくる。それは、どの企業もOMOのためにOMOを実施しているのではない、ということだ。

鈴木:どの企業もそれがOMOなのかどうかは考えず、ユーザー体験を向上につなげようとしたらそれが結果的にOMOだったという感覚を抱きますね。

南坊:今のお客さんは普通にオンラインもオフラインも使っているので、本当にユーザー体験を向上していくと、結果的にどちらも活用することが最適解になるようです。そういう考えの施策が、良い事例になりやすいのでしょうね。

メルカリOMO推進から学ぶ、成功する新規事業開発のロードマップ

各社の事例によってOMOのイメージができたところで知りたいのは、具体的にOMOを推進するにはどうしたら良いのかということだ。南房氏によれば、ロードマップは「カスタマージャーニーの仮説構築」「カスタマージャーニーの検証」「PJT体制構築」「社内承認獲得」の4つのフェーズに分けられる。
中でも南坊氏が最も重視するのが、カスタマージャーニーの仮説構築だ。

カスタマージャーニーとは?ペルソナの動きを可視化する重要ツール

カスタマージャーニーとは主にマーケティング活動において用いられ、自社のサービス・商品のペルソナの行動や思考、感情などの動きを「旅」のように時系列で示したものを指す。
徹底した顧客視点でカスタマージャーニーを考えると、顧客は自社とどのようなタッチポイントを持てるのか、どのような施策をどのタイミングで打つべきなのかといった、マーケティング活動の在り方が見えてくる。

顧客の声を基にカスタマージャーニーの仮説構築を推進

では、実際にカスタマージャーニーを構築する上ではまずどのようなポイントに気を付けるべきなのだろうか。南房氏は「ピュアにお客さんの課題を理解することが重要なので、そのためのサイクルを考える必要がある」とする。
以下のスライドではそのサイクルを簡単に図示していただいている。

南坊:まず自社の注力領域では何が問題になっているのかを確認します。そのために一番やりやすいのが、ユーザーの生の声を聞くことですね。手法としては、例えばカスタマーサポートに来たクレームやご意見を見るのもそうですし、定量調査によるマーケティングリサーチも利用できるでしょう。あとはグループインタビューですね。

鈴木:スライドの下部には「外部人材活用ポイント」が書かれていますが、社内政治に関係がない、第三者の方々にフラットな意見を聞くのも重要なんですね。
カスタマージャーニーの仮説構築について、メルカリさんでは具体的にどう進めていったのでしょうか?

南坊:メルカリはフリマアプリである以上、キーファクターとなるのは品揃えです。ユーザーの方々に出品していただかなければならないということなので、「出品の流れ」というカスタマージャーニーを、一旦フラットに考えてみました。
その結果、やはり写真を撮るのが面倒だったりしますし、一番大きいのが梱包です。面倒というよりは、どんな梱包して送ったらいいのか、どこで発送をしたらいいのか、正解がわからないのです。お客様の声も伺ううち、こういった要素が仮説として出てきました。

仮説を深堀りした結果、梱包のための箱を無料配布する、あるいは販売するといった案が生まれた。そのうちの一つが、教室で直接教えるという施策だったのだ。

南坊:生まれたアイディアについては、一旦アジャイル的にPoCを実施し、ミニマルにやってみました。ロジカルに考えて「良い」と思ったことでも、お客様に提供してみたら無理があった、ということもありますからね。あるいは思いもよらないところで非常に反応が良いこともあります。社員ではなく、お客様相手に検証をしたほうがいいでしょう。
検証のプロセスはキーマンにも体験してもらって、お客さんが喜んでいるという事実を定性的に説得します。メルカリ教室で学んだ方はきちんとアプリを利用してくれますから、定量的なレポーティングを行いました。こうしたサイクルを繰り返すうちに、社内的にも「この施策は良さそうだ」という雰囲気になり、正式な部署にまで格上げしました。

ここでもやはり見えてくるのは、徹底した顧客視点を貫くことだ。最初は小さな取り組みでも、顧客視点でサイクルを回すことで、やがて全社を巻き込んだ大きなOMOの動きにまで成長させられるという点は、ぜひ押さえておきたい。

事業開発責任者のためのOMOまとめ

今回のウェビナーのポイントを以下にまとめた。

今回ご紹介したウェビナー資料のダイジェスト版を以下のボタンからDLできます。OMOにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
事業開発責任者のためのOMO ―元メルカリOMO戦略責任者が語る、新規ユーザー層拡大に成功した新規事業開発で重要なカスタマージャーニーとは?―
本ホワイトペーパーは、2021年4月13日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。メルカリのOMO戦略チームを立ち上げた実績を持つ南坊氏が関わったメルカリの事例はもちろん、他社の優れたOMO事例の解説及び、OMO推進をする上での秘訣をご紹介しています。