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OEMメーカーの自社ブランド戦略。ファッションtechのプロと立ち上げた自社ブランドの成功ポイントとは?

新規事業開発
OEMメーカーの自社ブランド戦略。ファッションtechのプロと立ち上げた自社ブランドの成功ポイントとは?

OEM受託メーカーのユニファースト株式会社。高いデザイン力と生産管理能力を持つ自社をさらに飛躍させるため、代表取締役社長の橋本敦氏(以下:橋本社長)は新たな市場を取りにいくためのプロジェクトをスタートしました。紆余曲折を経て、最終的に新規事業として自社ブランドを立ち上げることになった同社。その背景にはファッションテックに明るい深谷玲人氏(以下:深谷)の存在がありました。

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受託事業だけでは社会に注目されない危機感。強みの活かし方で苦悩する3代目社長の想い

ユニファースト株式会社 橋本敦代表取締役社長ユニファースト株式会社 橋本敦代表取締役社長

40年間OEMを手掛けてきたユニファーストに息づく、大きな裁量を持ってのびのびと働ける社風

橋本社長:当社は1981年の創業以来、約40年もの間アパレルやバッグ、インテリア・雑貨などのOEMの企画、デザイン、生産まで手掛けてきました。従業員数は約50名。このうち半分は営業で、あとはデザイナーや生産管理、総務、経理です。

当社の営業は担当領域が幅広いのが特徴で、営業先の選定をはじめ、見積もり、工場への発注、納期設定、コストやクオリティの調整に至るまでプロジェクト全体を統括します。このように大きな役割を一担当者に任せるというカルチャーがあるので、なるべくのびのびと、自由に働いてもらえるような社風を目指していますね。

一度社外にでた経験を持つ社長は、OEM事業だけでは自社の潜在的な強みが発揮できず宝の持ち腐れになると感じていた

橋本社長:当社は父が創業したのですが、私は新卒で入社してから一度退職し、3、4年ほど広告代理店に務めてから2014年に戻ってきました。その後父が急逝したため会社自体は叔父が引き継ぎ、私は2019年に三代目として社長に就任した形です。

ユニファーストに戻ってきてから、私は会社に対していろいろな課題を感じていました。その一つが、うちは今後どう強みを打ち出していくべきなのか、その戦略をどう策定すべきなのかということでした。

私は一度会社の外に出たからこそ、当社の営業、デザイン、生産管理が非常に素晴らしいリソースをたくさん持っているとわかっていました。自社には自分たちで付加価値を作り、自分たちでその値決めをできるレベルの潜在能力がある。そう確信していたからこそ、OEM以外の方法でどうにか力を発揮し、社会からスポットライトを浴びる存在にしていきたいと考えていたんです。

何をゴールに、何から着手したら良いのかわからないところからスタート。本当の課題を発見してくれたのがプロシェアリングサービスだった

橋本社長:ただ、手法として選ぶべきなのが果たしてマーケティングなのかPRなのか商品戦略なのかはわかりませんでした。そんなときに縁あってご相談したのがプロシェアリング会社のサーキュレーションさんだったんです。

私が持っている課題感に対して、サーキュレーションの担当さんはすぐに「こんな人はどうですか」と提案してくれました。雑談も交えた相談でしたが、その中からニーズを的確に汲み取ってくれたのだと感じました。

深谷さんはマーケティングのプロということでご紹介いただいたのですが、アパレルの経験が豊富でしたし、さらに最初の面談のときにうちのサンプル商品を見て「これは売り出すべきだ」と提案してくれるなど、非常に反応が良かったんです。ディスカッションもかなり盛り上がりました。深谷さんとの面談の中で、自社ブランドを立ち上げるという決心が固まりました。

深谷:ディスカッションの中で橋本社長が「いつか自社ブランドを持ちたい」というビジョンをお持ちだということがわかったことから話が進み、後日事業計画書も作成してご提案しました。

ファッション事業を主軸に、ブランド立ち上げ/テクノロジーとの融合/業務改善、様々な支援実績を持つ深谷さんのモットーは「一人称で話せる程入り込むこと」

プロ人材 深谷玲人氏プロ人材 深谷玲人氏

深谷:私は10年以上アパレル企業に務めてきました。ブランディングや販売、バイイング、MD、戦略立案、計画策定まで経験しているので、ファッションに関わることには一通り知見があります。

現在は起業しており、ファッション×テクノロジーの領域でイノベーションを起こそうとしています。支援させていただく際もブランディングやテクノロジーを利用した業務効率化に関わることが多いですね。

企業を支援する際に大切にしているのは「一人称で話せるようにする」ということです。企業のことを話すときは間違えて「うちの会社は…」と言うくらい入り込んで取り組まないと相手に失礼ですし、自分も気持ちが乗りません。社内のメンバーと同じ目線に立ってプロジェクトに取り組めるように、支援する会社を好きになること、そして会社をよく知ることを心がけています。

ブランドのコンセプトを言語化するためにデザイナーをコーチング

独自の世界観を持つ社内のデザイナーが、デザイン力を発揮できるような方向へプロジェクトを舵取り

深谷:もともと橋本社長の大目的は「OEMとは別の切り口で事業を立ち上げること」にありましたから、今ある技術を活かせるかどうか、そしてビジネスとして成功する可能性の有無を基準に新規事業の方向性のアイディアを出し、数ヶ月かけてディスカッションしました。

最終的に、世界観を持っているデザイナーをアサインして、そのデザイン力をクライアントではなく自分たちのために使ってみよう、ということになりました。私もそこを伸ばすことを意識してプロジェクトを進めていきました。

橋本社長:ディスカッションを経て、デザイナー1名と20年選手のデザイナー兼営業1名をメイン担当者に据えてチームを再編成しました。デザイナーはデザインへのこだわりが強く独自の世界観も持っていたので、彼が中心になればブランドを良い方向に進められるのではと思ったんです。20年選手は経験豊富ですから、社内調整や予算管理、またはプロジェクトを円滑に進めるための相談役ということでアサインしました。チームを組んだ段階で私は抜け、担当者2名と深谷さん、サーキュレーションさんにプロジェクトの推進をお任せしました。

顧客ゼロの状態から自社ブランドを立ち上げるという状況を鑑み、クラウドファンディングを提案

深谷:プロジェクトを進めるにあたって私が提案したのは、クラウドファンディングの活用です。元々ものづくりのスキルがあり、大量生産も可能ですが、ブランドを立ち上げるとなると製造した在庫を保有し、販売し、お客様とリレーションシップを構築していかなければなりません。OEMでは生産したものをクライアントに納品したらそこで製造は終わりですが、自社ブランドにはその先があるのです。

在庫を抱える可能性など、BtoB事業との違いによって発生するリスクを回避する方法として、クラウドファンディングはかなり有効です。今後ブランドを事業化できるのかどうかの判断基準になるのはもちろん、事前にユーザー向けのコミュニティを形成した上で売上を検証できるので在庫を抱えるリスクを低減できますし、先行投資の負担も少なく済みます。ユニファーストさんはもともと個人の顧客がゼロの状態でのスタートでしたから、適正な方法だったと思いました。

デザイナーと2ヶ月もの間ディスカッションを繰り返し、「こんなことをしたい」という思考を言語化。コンセプトにまで落とし込んだ

深谷:クラウドファンディングの活用を前提として、次に行ったのがコンセプトの落とし込みやターゲットの決定です。このとき、ひたすらメイン担当者であるデザイナーへのヒアリングを行ないました。デザイナー自身が何をしたいのか、どんな人なのか、あるいはどんな人が好きなのかといったことです。

デザインドリブンではなくユニファーストのデザイナーとして誰かのために良いものを作ろうとするなら、コンセプトにしっかり軸足を置く必要があるのでここは大切なステップです。それに一度コンセプトをしっかり作り込めば、私が抜けた後も会社の資産として残ります。ですから2ヶ月ほど費やしてしっかりヒアリングとディスカッションを繰り返しました。

これは、なんとなく「こんなものがいいな」と考えていることを言語化する作業でもあります。言語化すればブランドについてインタビューされてもしっかり答えられますし、ブランドをアピールする手段についても、コンセプトを基準に選定できます。それがブランドの哲学というものです。営業マンのトークスクリプトや口コミでブランドが広がる要素にもなります。ティーチングというよりコーチングに近いですね。

ここで決められたコンセプトがあれば、クラウドファンディングの実施は難しくありません、どんな文言が良いのか?どんな写真を掲載するべきなのか?またSNSでどのように発信すべきなのか?など、簡単な打ち合わせと実現方法の確認、稟議の作業だけで進めることができました。ターゲットの設定なども細かにできていたので、クラウドファンディングの結果も予想を超え100万円以上の支援獲得を実現できました。

ブランドの立ち上げをきっかけにデザイン力が認知され、他社とのコラボ企画がスタート

橋本社長:今回のプロジェクトがきっかけで、OEMで携わってきた既存のお客様から、新たにコラボグッズを作りたいとお声がけをいただけました。全て自社ブランドの担当デザイナーが監修予定です。

それから、このプロジェクトをきっかけに新たな人脈が構築できています。その中には、国内の素材にこだわったバッグや雑貨のブランドの立ち上げを一緒にやりたいと言ってくれた方もいらっしゃいます。

会社として新しいことにチャレンジした結果、既存・新規顧客を問わず「ユニファーストはこういうことができる会社なのだ」と新しい価値を感じていただけた結果なのだと思います。

今回新規事業として自社ブランドの立ち上げを行ったことで、デザイナーにビジネススキルが新たに加わったことも成果です。デザイナーとしてのこだわりをプロダクトを打ち出すことによって会社全体が変わるのではないかというが増えて、プロジェクトのスタート時からかなり視座が上がり頼もしくなったと感じています。

また、「自分たちもこんなプロジェクトをやってみたい」と思ってくれる社員も少なからずいたのではないでしょうか。今後も「会社は新しいことにチャレンジするチャンスを作ってくれる、投資してくれる」と思ってもらえるようなモデルケースをいろいろと作っていくつもりです。今回立ち上げたブランドに関しても小さくまとまる必要はありませんから、今後独立した子会社になる可能性があるかもしれません。どんどんチャレンジしていくことが正しいのだと、行動で伝えていきたいですね。

経営判断が常に変化する中で、専門家を柔軟にアサインできるメリットは非常に大きかった

会社の未来を見据えた上で新しいプロジェクトに果敢に挑戦できるのは、プロ目線で見ても稀有なこと

深谷:私はユニファーストさんのようにOEMを行っている企業とは何度か仕事をしたことがありますし、今まではOEMをやっていたけれど自社ブランドを立ち上げたい、という話も特に珍しくはありません。ですが、ユニファーストさんの場合は新しいことにチャレンジしようとしたきっかけが外的要因ではなく、会社の5年、10年先の未来を見据えてのことだという点が素晴らしいです。

売上が落ちる可能性もゼロではありませんから、会社が好調なうちは新規事業には挑戦しない、という企業も多くあります。一方で橋本社長はあえてそういった判断はせず、外部から専門家を呼び、専属のメンバーをアサインしてプロジェクトを立ち上げた。40年もの間OEMだけで頑張ってきた会社の歴史がある中で、これはすごいことです。橋本社長の決意を感じましたし、その中でご支援できたのは非常に有意義でした。

橋本社長:深谷さんは私よりかなり年下なのですが、プロジェクトをリードする様子を見ていて見習うべきところが多くありました。言葉づかいや表現の仕方、場のリードが非常に上手なんです。私も40代、50代ばかりの役員の中ではほぼ最年少ですから、プロジェクトを進めるにあたってはこういう振る舞いが大事なんだな、と実感しました。

状況判断が変われば1年後に会社にとって必要な要素も変わる。実現したいことに合わせて臨機応変に選手交代できるのは有り難かった

橋本社長:プロシェアリングにおける「選手交代できる」という部分は、私は非常に好ましいと思っています。経営というのは生き物のようなもので、数ヶ月もすると状況によって判断軸が変わります。今日は黄色でも明日は青かもしれない。そうなると、3ヶ月後、1年後に必要な要素も全て連動して変わっていきます。そんな状況に応じて適した人材を柔軟にアサインしてもらえるというのは、とても有り難かったです。特にサーキュレーションさんは的確にニーズを察知してくれて、ピンポイントで人材を紹介してくれたのが良かったですね。

深谷:ユニファーストさんは、私の人脈だけではなかなか出会えない企業だったので、プロシェアリングというサービスを通して新しい仕事の機会を得られるのは有り難いです。私自身にとっても非常に勉強になることが多いです。

それに、プロシェアリングサービスのエージェントという第三者が存在することで、ビジネスとしてもメリハリが出ますね。私一人ではなく、二社で一緒に支援をしていたような感覚でした。サーキュレーションさんからはプロジェクトマネージャー的に第三者目線の意見をもらうこともあり、個人的に非常に助かりました。また、企業対プロ人材の一対一でやり取りをするとどうしてもヒートアップしてしまう場面も出てくるのですが、横にサーキュレーションさんいることで摩擦係数を下げたコミュニケーションが取りやすく、建設的なプロジェクト進行ができた気がします。

プロ人材の存在によって、OEM以外の切り口で企業をステップアップさせたいという橋本社長の目標が見事に果たされた今回のプロジェクト。企業の持つ潜在能力が引き出され、事業もさらに広がりを見せそうです。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!

自社ブランド立ち上げ案件におけるまとめ

プロ人材 深谷玲人氏,ユニファースト株式会社 橋本敦代表取締役社長,サーキュレーションコンサルタント 青木 俊樹左:プロ人材 深谷玲人氏
中央:ユニファースト株式会社 橋本敦代表取締役社長
右:サーキュレーションコンサルタント 青木 俊樹

課題・概要

OEMメーカーとしては成功していたが、40年の歴史の中で築かれた自社の潜在的な強みを活かせずにいた。サーキュレーションとの課題定義を行う中で、自社ブランドを立ち上げるという強みの活かし方と決めた。そして、「ニーズに応えるデザイン力」にスポットライトを当てるために、アパレル業界出身のプロ人材深谷さんと自社ブランドを立ち上げることに。プロジェクトを通してコーチングした結果、デザイナーの力の開花に成功し、結果クラウドファンディングでも100万円以上の支援の獲得に成功

支援内容

  • 既存事業との親和性やビジネス成功の可能性を考慮した新規事業のアイディア出しからスタート
  • デザイナーのデザイン力を生かす方向でブランド立ち上げプロジェクトを始動
  • 徹底的なヒアリングによってデザイナー自身がブランドコンセプトを言語化できるようにコーチング
  • ブランド立ち上げに際し、リスクの少ない手法としてクラウドファンディングを提案

成果

  • クラウドファンディングで100万円以上の支援の獲得に成功
  • 自社ブランドを立ち上げ、新規事業部化に成功
  • デザイナーは自分のデザインを表現するという視点から、プロダクトで会社全体に変革を起こすという視点にまで視座が上がった
  • 新しいことに挑戦できる社風であることを社内に示すことができた
  • 新規、既存顧客を問わず新たに企業からコラボ企画の依頼が来るようになった

支援のポイント

  • 経営の方向性が変わることはつきもの。採用では残るリスクも、プロシェアリングであれば社長の想いを汲み取り臨機応変に状況変化に対応できる
  • 個人的な知り合いに手伝ってもらうと当事者同士の狭い議論に陥る危険があるが、サーキュレーションが第三者目線で入ることで冷静に着実に話が進められる

企画編集:新井みゆ

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:ユニファースト株式会社

※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。

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