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コーポレートブランディングを成功させる3つのポイント 〜サイボウズ、モバファクほか成長ベンチャーで成功事例を持つプロ3名に学ぶ実践例〜

ブランディング
コーポレートブランディングを成功させる3つのポイント 〜サイボウズ、モバファクほか成長ベンチャーで成功事例を持つプロ3名に学ぶ実践例〜

なんとなくブランディングの必要性は感じているものの、社内にその必要性をロジカルに説明できず企画を通せない、具体的に誰がどのように実行していけば良いのかわからない等…概念的だからこそとっつきにくく、お問い合わせも多くいただくのが「コーポレートブランディング」。本記事では2019年7月末に行われたパネルディスカッションの内容をもとに、コーポレートブランディング成功のポイントを解説していきます。

大槻 幸夫氏

大槻 幸夫氏

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部長
大学卒業後、知人とともに株式会社レスキューナウを創業。プロダクト企画と営業を主に担当。 2005 年にサイボウズ株式会社に転職。以来、マーケティングに従事。 2010 年ソーシャルコミュニケーション部長就任。2012年5月、オウンドメディア『サイボウズ式』のスタートと共に編集長を務める。2015年より現職。

川田 穂高氏

川田 穂高氏

新卒入社のセプテーニHDにてベンチャーキャピタル事業での投資/育成業務、新規事業開発に従事。その後DeNAにて、グロースハックの社内コンサルティング部門を率い、兼務でMERY買収後のTV CM等のマーケティング領域の本体側責任者。3社目のChatworkでは、事業開発VPとして経営/事業企画・マーケ・営業を横断して立ち上げ。兼務で15億円の資金調達を指揮。現在は上場企業やプレIPOのスタートアップまで、ブランディング・経営/事業戦略、事業開発・ファイナンス・マーケ・営業領域等、複合的に支援中。

小泉 啓明氏

小泉 啓明氏

GUILD STUDIO株式会社 執行役員 CHRO(元 モバイルファクトリー コーポレート・コミュニケーション室長)
人事コンサルティング会社に新卒入社。2006年以降、モバイルファクトリーにて、採用や育成等の人事業務に従事。2012年、オプト(当時親会社)に出向し、採用責任者として年間100名強の採用を指揮。翌年帰任と同時に、採用/育成/広報/IR/コーポレートブランディングを管掌するコーポレート・コミュニケーション室を立ち上げ、責任者就任。その後、2015年東証マザーズ上場、2017年東証一部鞍替えを経験。並行し、複数のスタートアップで、採用や組織開発、コーポレートブランディング等の支援を行う。

井竹 萌

井竹 萌

サーキュレーションのProSharing Community運営担当。本イベントのモデレーター。

コーポレートブランディングの定義とは

課題解決の手段として会社を差別化し、対象者に伝えるもの

井竹:まずは、同じ方向を向いて議論できるように、言葉の定義からスタートしたいと思います。「コーポレートブランディング」を一言で表現すると何か。大槻さんからいかがでしょうか。

大槻:教科書どおりの定義でいくと、「ブランディング」はもともと牛の焼き印に由来したものです。そこから考えると、コーポレートブランディングは「会社独自のスタイルを取ることで差別化し、知ってもらう」という意味合いが非常に大きいのではないでしょうか。

川田:ブランドというものには必然性がありますから、「会社や事業、プロダクトなどの必然性を対象者に伝えていくこと」と定義しています。

小泉:お二人のおっしゃるとおりです。少し違う観点から見ると、コーポレートブランディングは課題解決の手段だとも言えます。

あらゆる部門がコーポレートブランディングの責任者足り得る

井竹:コーポレートブランディングが難しい理由として、誰のミッションとして誰向けに行うのか、その必然性や手段がわからないという声があります。その部分についてはいかがでしょうか?

大槻:前提として、サイボウズの場合はコーポレートブランディングをやろうと思って取り組みを開始したわけじゃないんです。当時、お客様の新規獲得が難しく成長が止まってしまっていた中、社長の「何か新しいことに取り組もう」という方針の中で動き始めたのがオウンドメディアで、マーケティング部署の担当者として着手し始めました。なので、誰向けかといえば一番はお客様向けでしたね。結果的にこの取り組みが新規顧客の認知獲得だけでなく、採用やブランディングの面でも効果があったので、2015年に全社横断型のコーポレートブランディング部として独立させ、本格的な取り組みを始めたという流れです。

サイボウズ社のコーポレートブランディングは、当初は新規顧客獲得を目的に始まったと語る、大槻氏サイボウズ社のコーポレートブランディングは、当初は新規顧客獲得を目的に始まったと語る、大槻氏

川田:誰を対象としたどんな課題があって、それをどう解決するのかによって、あらゆる部署がコーポレートブランディングの責任者になる可能性があるのではないでしょうか。

私の支援先の業種は福祉、IT、建設、メディア系、職種は経営から営業、マーケティングと多岐にわたるのですが、当然ながら、部門によって顧客として向き合う対象者は変わります。例えばバックオフィスなら社内の人を相手にするわけですから、それぞれの課題に応じたブランディングをすべきだと思っています。

小泉:まさしく、誰が誰にコーポレートブランディングをすべきなのかは課題によって変わります。採用に課題があるのなら採用候補者に対して、メディアならメディア向けの記者、IRなら投資家といったように、それぞれのステークホルダーに対して会社をどう見せて差別化を図るのかを考えることになります。

コーポレートブランディング成功させる3つのポイント

ポイント1:3~5年の長期スパンの施策であることを経営層と握る重要性

井竹:なるほど。ただコーポレートブランディングって事前に投資対効果が見えなくて経営陣に必要性をロジカルに説明しづらい面がありますよね?お三方はをどのように企画を通したんですか?

小泉:難しいですよね。まずは課題を認識してもらうところから始めて、解決手段の一つとしてコーポレートブランディングがあるのだと説得していきます。その上で必要な予算がどれくらいなのか、という順に話すのが合理的ですね。例えばIRだと、上場して時価総額をこれくらいにしたい。そのためにこういうブランディングをすると、結果的にこれくらい時価総額が上がりそうだ。だったら実施してみようということになる。採用についても、これだけの人数を採用するには予算がいくら必要で、このうち例えば10%をブランディングに使うといった話し方をすれば、理解してもらえるのではないでしょうか。

井竹:コーポレートブランディングが課題解決に繋がる手段であることを説明するロジックはあるのでしょうか?

小泉:例えば採用が課題の場合、やはりコーポレートブランディング単体では短期的な成果は見えにくいので、「採用のマーケットに自社を認知してもらうための施策である」という位置づけをした上で、長期的な取り組みとして握っておくことが重要になります。3~5年は見てほしいですね。

コーポレートブランディングは3〜5年かかる施策として握る必要がある、と小泉氏コーポレートブランディングは3〜5年かかる施策として握る必要がある、と小泉氏

ポイント2:小さなKPIの前後比の変化を見せることで、徐々に社内の納得感を醸成する

井竹:ありがとうございます。川田さんの場合はいかがですか?

川田:私は経営者と相対することが比較的多いのですが、最初の打ち合わせには会社の状況や競合を調査し、課題点を抽出した上で臨みます。その上で、複数社の中からどのプロダクト/サービスを選ぶのかを考えた時、あまり差が生まれないようであれば、解決方法の1つにブランディングがあると考えています。

ブランディングの効果については、BtoC事業ならブランド調査もできますし、BoBなら商談率の前後比で効果を検証することもできます。もちろんどこまでがブランディングの効果なのかという話もありますが、営業であれば、パッケージをまるごと変えてみて、明らかに初回訪問時の受注率が上がっているのならブランディング効果と言えると思いますし、インナーブランディングであれば、1年や半年に一度、社員の好感度やエンゲージメントを定期的に取っていく方法もあります。最適な状態を定義しておいて、足りない指標を上げていくやり方です。非常に手間がかかりますが、ある程度の規模や予算がある会社ならおすすめします。

コーポレートブランディングの効果の説明方法を伝授する川田氏コーポレートブランディングの効果の説明方法を伝授する川田氏

井竹:大槻さんはいかがでしょうか?

大槻:サイボウズは先程お話したとおり、そもそもコーポレートブランディングをやろうとは思っていませんでした。最初から僕が社長に「コーポレートブランディングをやりましょう」と提案しても、破綻していた気がします。新規顧客獲得の方法を模索する中で、「サイボウズは面白い会社で、多様な働き方をしている」と伝えれば何かが起こるかもしれない。そんな風にメンバーと一緒に考えながらトライ・アンド・エラーを繰り返したプロセスがあったから、コーポレートブランディングを続けられたのだと思います。

もちろんその過程では営業部などからリターンやKPIについての言及もありましたが、やはり3年以上の長期的な取り組みにならざるを得ないので、短期的な結果を出すことはできません。オウンドメディアの閲覧数の高さなどを成果として引き合いに出して説明していました。最初はメンバーも兼務でしたし、制作コストも極力かからないようにして実験的な取り組みであることをアピールしていましたね。

井竹:みなさんのお話を伺っていると、基本的に社内では3〜5年の長期的な取り組みとして握っておくものの、一つひとつの施策に小さなKPIを設けて変化を見せ、少しずつ社内の納得感を醸成していくのが進め方のポイントである気がしました。

ポイント3:イノベーター理論で言うアーリー・レイトマジョリティがコーポレートブランディングの主戦場

井竹:次に、コーポレートブランディングに取り組むべきフェーズについてもお問い合わせが多いのですが、どのようにお考えでしょうか?

大槻:イノベーター理論をベースに一般欄をお話しさせていただきます。

時間軸は左から流れていて、縦のグラフが人口のボリュームです。新しいモノやサービスが登場すると、まず新しいもの好きのイノベーターが飛びつきます。次に登場するのがフォロワーであるアーリーアダプターです。ここからさらに製品・サービスが普及すると、マジョリティ、いわゆる一般層にリーチします。そして、最後まで飛びつかないラガードがいるという構図です。

新しい製品・サービスが登場した段階では、製品の機能性、良さや便利さを認知してもらうことが大切です。一方で一般層に製品がリーチすると、機能性では他社との差がつきにくい市場になります。そこで大きな効果を発揮するのが、「なぜその製品を提供しているのか」というWhyを伝えるコーポレートブランディングです。こういった一般論があることは知っておくと良いでしょう。

井竹:コーポレートと会社の製品・サービスの両方をブランディングしたい場合は、どちらを優先すべきなのでしょうか。

川田:抱えている課題や扱っている商材、企業規模にもよりますが、他社とあまり差別化できない製品・サービスであれば、コーポレートブランディングの方が良いかもしれません。ただ、実績を語れるのならプロダクトブランディングです。実績もなければ、まず「イケてる会社」として見せて、そこから実績を作るという手法もあります。

小泉:まさにそのケースを経験しました。顧問として入った企業がイノベーターのフェーズだったので、プロダクトやサービスで差別化したブランディングができませんでした。最初からコーポレートブランディング一本で攻めて、プロダクトは実績が出てから出すようにしていました。

井竹:その場合、コーポレートブランディングとしては何を打ち出すのでしょうか?

小泉:よくある例としては経営陣の実績や、会社のミッション・バリューですね。

川田:夢を語ったり、スピード感がありそうだというイメージを打ち出したり、明朗会計をアピールする方法もあります。

コーポレートブランディングに取り組むべきケースとその事例

井竹:コーポレートブランディングに取り組むべきケースを5つに絞って具体的な取り組み事例を共有できればと思います。

(1)良い人が採用できない・離職率が高い・一体感がない

小泉:以前お手伝いしていたスタートアップでの事例についてお話しします。そもそもご依頼いただいたのは、創業間もない頃で案件はあるものの人材が足りず、とにかく採用を増やさなければならないといった状況があったからでした。そこでまずは、ミッション・ビジョン・バリューを定めることにしました。トータルでかかったのは60時間ほど。ボードメンバーで半年ほどかけて起業の背景やストーリーまで作り込み、ボードメンバーが全員同じメッセージを発信できるようにしました。

結果的にこれは大成功で、当時20名だったメンバーを、2年弱で50名にまで増やすことができました。しかも、新しく採用した人は誰も辞めていません。基本のミッション・ビジョン・バリューに共感してくれているメンバーが集まったことで一体感が生まれたのです。

採用ができない問題を、ミッション・ビジョン・バリューを固めインナーブランディングを強化することで解決した事例を共有する小泉氏採用ができない問題を、ミッション・ビジョン・バリューを固めインナーブランディングを強化することで解決した事例を共有する小泉氏

川田:私のクライアントである会社様の事例をご紹介します。コンテック(Con-Techの会社さまなのですが、元々は施工会社で、半数は現場担当者です。現場の一般社員の方からすると上場は少し遠い世界の話です。

そこでまず行ったのが、やはりミッション・ビジョン・バリューを再定義です。単純に時流に乗るTech系企業として見せるのではなく、これまで会社で積み上げてきたものを尊重する形で「安心・安全・高品質」、さらに「納期にきちんと間に合わせる」という強みを打ち出すことにしました。その上で、最新技術の活用を行う会社である、と社員の方を置いてきぼりにしないイメージにしました。

また、社名や所在地、社員証もイメージに合わせてスタイリッシュに変更しました。クリエイティブ領域も含めてインナーブランディングで一体感の向上を図ったケースですね。

(2)自社の認知が低い、望む認知をされていない、リブランディングしたい

大槻:サイボウズは、僕が入社した頃から売上が40億前後で横ばいになってしまっていました。ベンチャーあるあるだと思いますが、商品が一発当たって上場したものの、そこから伸び悩んだという状態です。離職率も28%で、毎週誰かの送別会をしていました。

当時、広報としては「ボウズマン」というキャラクターを打ち出して、法人向けではありえないような奇抜なプロモーションをしていました。ベンチャーなので目立たなければならないという意識があったからです。

当時のサイボウズの法人向けプロモーションの公式キャラクター「ボウズマン」当時のサイボウズの法人向けプロモーションの公式キャラクター「ボウズマン」

大槻:ボウズマン自体は、イノベーター・アーリーアダプターのお客様にはぴったりハマっていました。広告はさておき、目に留まって実際にグループウェアを触ってみて、良ければ使い続けてくれる。

ところが、市場がマジョリティに移行すると通用しない。広告の良し悪しで製品を判断する一般層に対して、僕たちはグループウェアの価値や、サイボウズがグループウェアを提供している裏側のストーリーを全く伝えていなかったのです。

そこで2012年に始めたのが、オウンドメディアの「サイボウズ式」です。製品のプロモーションではなく、一般の人が労働に対してどんな課題意識を持っているのか、サイボウズも一緒に悩みながら探求している。そんなスタンスを自然に発信できればと思っていました。

そして2014年には西田 尚美さんを起用して「働くママ」というムービーを制作しました。働き方改革という考えが登場したり、「保育園落ちた、日本死ね」という話題があったことも相まって、宣伝ゼロで160万回再生されるという反響がありました。

宣伝ゼロで拡散し、マスに繋がるきっかけの一つとなったムービー「働くママ」宣伝ゼロで拡散し、マスに繋がるきっかけの一つとなったムービー「働くママ」

さらに、20周年施策として、日経新聞の一面に「働き方改革に関するお詫び」というメッセージを出しました。「働き方改革と言われているけれど、売上目標は変わらないまま残業削減しろという現場への無茶振りになっているんじゃないか」「プレミアムフライデーとは一体何なんだ」という内容です。後日、経産省のプレミアムフライデー担当者から連絡があり、怒られるのかと思いきや、言及したことについてのお礼をいただきました。最終的に、サイボウズ式で担当者と社長の対談が実現しています。

これまでのマーケティングは、マス媒体にお金をかけて広告を出すことがすべてでした。しかし、情報が溢れている現代においては、サイボウズのファンの方に情報を伝え、コア層に盛り上がってもらう方がいい。するとランキングサイトに記事が上がり、ネットメディアが注目し、最終的にはマスメディアにまで届きます。パートナーとの関係性を重視することがコーポレートブランディングにつながるのだと考えていますし、すべてのステークホルダーに響くはずです。

実際の効果として、指名買いの新規顧客が増えたり、中途採用の応募者数が従来の3倍になったりしました。ワークスタイル変革のリーダー企業として認知されたことで、これまでは無視されがちだった大企業の社長から直接メールで相談が来るようにもなっています。その中で僕が一番うれしかったのは、競合であるGoogleやMicrosoftといった超グローバルカンパニーと差別化が図れたことです。彼らには製品をプロモーションしないやり方はできません。一方で僕たちは日本社会に根ざす日本企業として、みんなが抱えている課題に向き合っているというサイボウズにしかできないメッセージングができるのです。

しかし、これらの取り組みはやはり時間がかかります。それがわかるのがこのグラフです。

大槻:2005年に離職率が28%という話をしましたが、これは代表の青野が実施した社内の働き方改革によって比較的すぐに下りました。ただ、売上は伸びていません。もちろん、あの頃はリーマンショックなどもあったのですが、やはりコーポレートブランディングの実施が売上に結びつくには時間がかかります。

(3)やることをやっているのに成長の踊り場感がある

大槻:まさにサイボウズがそうでしたが、これはやることをやれていないということなんです。成功体験の延長線上でやるべきことをやっていただけで、そもそもそれが間違っていた。僕たちの場合はコーポレートブランディングをしておらず、会社の信用を得ていませんでした。同じような場合であれば、コーポレートブランディングは効くのではと思います。

小泉:踊り場感とは少し違うのですが、僕が以前在籍していたモバイルファクトリーという会社は、新しい事業が定期的に立ち上がっていく会社でした。僕が入社した2006年頃は着メロの会社でしたが、その約3年後にはゲーム事業に参入し、昨年(2018年)にはブロックチェーン事業にも参入しました。

一方で、ブランディング的にはころころ変わっているようには見えてはいけません。なぜそのサービスを提供しているのか、ミッションに紐づけてストーリーをきちんと作っていました。社員に対しても外に対しても、一貫性があるのだと伝えることは意識していましたね。逆に言えば、踊り場感が出てくると社長が次の事業を考え始めるので、そこに合わせてブランディングしていく感じです。

大槻:「合わせていく」というのはポイントですよね。僕はコーポレートブランディングを言い換えると「編集」だと思っているんです。自分たちがやっていることをみんなに納得してもらえるようなストーリーに仕立てていく役割だというのが正しい気がします。

(4)受注・売上を増やしたい

川田:制作会社様の新規事業案件の事例があります。もともとマーケティングのメディアを持っていて、これを1年でどう成長させるのかを考えてほしいというご依頼でした。メディアは基本的に広告費で稼ぐことになるのですが、BtoB系だったのでユーザー数は知れており、さほど儲かっていない状態だったのです。

コーポレート色をあえて隠すコーポレートブランディングもある、と川田氏コーポレート色をあえて隠すコーポレートブランディングもある、と川田氏

事業転換を図るためにまずはAI系として再度メディアを立ち上げ、先端技術・AI系メディアでは一番大きな会社になったものの、やはりマネタイズできない。そこで、どういう人がサイトに訪れているのかを調査しました。

すると、実際の来訪者は、すでに知識があるエンジニア層ではなく大企業のイノベーターでした。イノベーション推進室や事業開発室に所属している、ミッションを持った人たちです。彼らは優秀なのですが、イノベーションのために何をすべきか決まっていなかったり、どんな技術を利用すべきかわからないという悩みを抱えています。つまり、相談する先を求めてメディアを見ていたのです。こういった人たちの依頼先は基本的にアクセンチュアやIBMなのですが、実はそういった企業とは接点のない大企業も多い。そこで、もっとカジュアルに相談できるようなクリエイティブでメディアを展開することにしました。

どこまでがコーポレートブランディングなのかという話ではありますが、メディアなのでスタンスは中立であるべきと考えています。どの企業に相談したらいいのかわからない人に向けて、自社が一次請けとして、あくまで中立に、どの会社のソリューションがいいのかを考える。文体やコンテンツもカジュアルで読みやすい形にして、わからないことがあれば相談してもらうという入り口にするというビジネス構造を作り上げ、今は二本目の柱になっています。

(5)IPOに向けて企業価値を高めたい

川田:株価の算定方法の中にPER(株価収益率)という数値があるのですが、いくつかのドメインでは、PERは非常に低くさほど成長は見込めないと思われているものがあります。一方で、一般的にTech系はPERが非常に高い。ですから、一般論としてTech系の会社として見せることで、バリューを高めることができます。

それに同義だったり、近いドメインとしては、、「人員の数と売上の増加が比例関係にあるようなビジネスモデルではない」という見せ方などがあります。もちろん、もともと実態としてTech系の取り組みを行っている前提ですが、得をするブランディングをしてきちんと会社の価値を示そうというクライアント様も増えてきています。

井竹:見せ方だけではなく、事業構造も変えたりするのでしょうか?

川田:例えば、社内のシステムや体制に古い部分があったりする場合は、体制としてDXを推進する部門を作り、きちんとメンバーも揃えるなどする必要があります。

中を見られたときに「実態と違うじゃないか」と言われないよう、企業や事業としても、ブランディングとしても、実体としてしっかりと改善を行うことが重要です。

まとめ:コーポレートブランディングは目的ではなく課題解決の手段。ステークホルダー別に長期スパンで施策を検討すべし。

お三方がしきりに口にしたのは、まずは「課題を認識すべき」ということです。その上で課題解決の手段としてコーポレートブランディングが適しているのかどうか、適していた場合にはどんな施策を打つべきなのか、というプロセスで判断すべきであり、決してコーポレートブランディングそのものが目的にはなりえない、ということです。これが、コーポレートブランディングの本質として見えてきたことです。

では、課題はどう認識すべきなのか。

ディスカッションの中では、企業のあらゆる活動のタッチポイント別にステークホルダーを抽出し、自分たちの伝えたいことを逆の立場から見てみることを推薦されていました。一方で、製品・サービスに真摯に向き合っている社員は想いがあるので、なかなか自分たちの課題を無機質に判断できないというジレンマも存在します。その上で、客観的な判断を的確に行う第三者の存在の重要性についても触れられました。

自分たちの課題は果たして何なのか、外部人材の協力も得ながら模索することが、コーポレートブランディングのはじめの一歩になるようです。

終了後の記念撮影。左から小泉氏・川田氏・井竹・大槻氏終了後の記念撮影。左から小泉氏・川田氏・井竹・大槻氏
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