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「GE」「オズビジョン」で人事責任者を経験してきたプロが語る、成長企業のための組織開発

人材開発・人材育成
「GE」「オズビジョン」で人事責任者を経験してきたプロが語る、成長企業のための組織開発

なんとなく組織に元気がない。一体感が薄れてきた。指示待ちの受け身社員が多い。etc…

VUCAの時代と言われ、企業や個人の価値観が多様化した現代では、組織にまつわる違和感やモヤモヤも以前に増して多種多様になってきており、まさに解がない時代に突入しています。

本記事では2019年6月末に行われたパネルディスカッションの内容をもとに、これからの成長企業に必要とされる「組織開発」のあり方についてご紹介します。

松田 光憲氏

松田 光憲氏

IT企業(エンジニア)→㈱博展→㈱はてな(人事・総務部長)→㈱オズビジョン(執行役員)。
新しい組織のあり方を紹介した書籍「ティール組織」に、価値観の浸透やホールネスを重視した経営の事例として、唯一紹介された日本企業オズビジョンでは、事業推進部長として組織開発全般に携わりながら、並行して2社の組織・人事支援に従事。

桜庭 理奈氏

桜庭 理奈氏

ロゼッタストーン(シニアHRマネージャー)→アリアンツ火災海上保険(アジアHQ戦略人事)→GEヘルスケアジャパン(APEC戦略人事→執行役員 人事本部長)。ベンチャー〜大手まで人材開発/組織開発をコアに、採用/人事制度見直しまで総合的に支援できるグローバルな戦略人事、ビジネスパートナー。組織の変革期とそれに伴う人事制度の見直し、組織構造改革をリードし、現職では対前年比売上+10%を達成。2018年4月以降は、スタートアップ、中小企業のクライアントを中心にパラレルでコンサル、アドバイザリーにも取り組む。

井竹 萌

井竹 萌

サーキュレーションのProSharing Community運営担当。本イベントのモデレーター。

解のない時代における組織開発とは

井竹:ディスカッションの前に言葉の定義から入りたいと思います。VUCAという概念が知れ渡って久しいですが、今は一昔前と違って解のない時代ですよね。そんな時代の「組織開発」について、お二人はそれぞれどのように捉えていますか。

「成功の方程式が無い中、あの手この手でチームを活性化させること」

松田:「そもそも何のために組織を作るのか」というと、私は事業を成長させるためだと思っています。ですから、事業環境が変われば当然組織のあるべき姿も変わります。加えて、これまで画一的な価値観を持っていた時代から、今、人は様々な価値観や好みを持ち、どんな商品やサービスが売れるのかも刻一刻と変化している解のない時代です。そんな風にスピーディで不確実性の高い中で、組織はどのようなスタイルを取るべきかを考えてみると、いわゆるティールと言われるようなものを想定できます。つまり、メンバーそれぞれが企業理念に対して自分なりの存在目的を持ち、自律した集団の中で自分らしく働く時代になっていくのではないかな、と考えています。

「組織開発」の定義でいうと、以前、立教大の教授が「組織開発はチームがバラバラなときに、あの手この手でワークさせることだ」とおっしゃっていました。個人的にはこれがしっくりきています。

組織開発にはチームビルディング、採用、人事制度変えるなど様々な手法がありますが、要はチームを活性化させる取り組みが組織開発なのではと思います。

組織開発の定義を語る松田氏組織開発の定義を語る松田氏

「目に見えないモヤモヤを取り除き、綺麗な空気づくりをすること」

桜庭:「解のない時代」においては、「これをやれば必ず利益が出る」「これをやると社員が喜ぶ」といった方程式が成り立たなくなっています。私たちもお客様の環境も変わっていく中で、どう組織を作っていけば勝ち続けられるのか。

「組織開発」について私がよく言うのは、手を変え品を変えながら、何が原因かわからないけどそこにある目に見えないモヤモヤを取り除き、綺麗な空気づくりをすることということ。そのモヤモヤはどこから来てる?なんで発生した?どこの窓開ける?などと話し合いをしながら、モヤモヤを取り除いて行くのが組織開発のイメージですね。

組織開発の定義を語る桜庭氏組織開発の定義を語る桜庭氏

「組織開発」において人事責任者が気になっているトピック

井竹:本日のイベントでお集まりいただいた人事責任者の皆様に、事前に「今日特に聞きたいテーマ」についてアンケートにお答えいただきました。

みなさんが一番気になっている自走型組織・チームビルディングについて、ディスカッションしていきたいと思います。

自走型組織〜社員のビジョンと会社のビジョンをコネクトできると組織は自走する〜

松田:自走型組織については、やはり自律して働いている社員は少ないというのがみなさんが感じているところでしょうか。どうしたら自走型組織が実現できるのでしょう?

桜庭:これは失敗談なのですが、私もやはり、自分で考えてくれる人材を育てようと一生懸命ビジョンを伝えていた時期があります。社長からトップダウンで、ビジョンやミッション、バリューを伝えてもらうようアプローチもかけました。ところが、アプローチすればするほど、自分で考える人が少なくなってしまったのです。

そこで今年は実験的に「ビジョンについて語らない全社会議」をしてみました。社長が一度も登壇しないので、ビジョンを聞こうと参加した人たちがざわざわしだすのですが、その中でまずはしょっぱなでマインドフルネスを実践したのです。ポイントは、最初に「あなたはどうありたくて、なぜここにいるのか」を考え生きること、働くことの習慣を身に着けることが大切であるという話をすること。その上で、なぜあえてこの組織にいて、この仲間と仕事をするという選択を、自らがしているのかについて考えてもらいました。

すると、今まで使われていなかった脳の筋肉がアクティブになるんです。会社のビジョン以前に、「お客さんから感謝されたいから」「チームが好きだから」「仕事ができる人に見られたかったから」といった、自分が「なぜここにいるのか」という理由を思い出すことで、頭が自走するようになりました。

松田:自分自身の中に個人のビジョンをきちんと持っている人の方が、組織におけるフィット感も強いですよね。そういう意味で言うとうちも会社の理念としてはまさに「人の幸せに貢献し、自己実現する集団である」というあり方を定義していて、「あなたにとっての自己実現は何ですか?」と、期初の目標設定の段階で聞くようにしています。

桜庭:自身のビジョンと会社のビジョンをコネクトできるのは自分自身でしかないということですよね。

松田:そうです。人から言われたビジョンにはどうしても限界が来ます。人のために貢献したいという気持ちは大事かもしれませんが、ベースとして存在するのは自分の内側から出てくるものでないと、なかなか本気でやり続けことはできないのではと思います。

チームビルディング〜メンバーの相互理解が出発点〜

桜庭:チームビルディングについて、効果的だった取り組みはありますか?

松田:新しい方が入社するたびに、ドラッカー風エクササイズをしています。シンプルなのですが、メンバーに対して自分が何のためにここにいるのか、得意なこと、苦手なこと、言われたくない地雷を聞きます。さらに、チームメンバーに期待していること、逆に自分が期待されていると思うことを付箋で貼り出して共有するというものです。

桜庭:先ほどの自走型組織の作り方とコネクトしますね。

松田:日々の仕事には現れないその人のベースとなっている価値観や経験などを知ることで、お互いに仕事上での配慮も生まれます。「こう頼めばいいかな」「これはしないほうがいいな」といったことです。チームの関係性も良くなります。

桜庭:私はチームが新しくなったときに、ライフラインチャートを各自書いてもらって、共有して、それについてみんなで考えます。生まれてから今日までの3つの山と3つの谷を描いてもらい、チームで赤裸々に共有するというものです。人生のストーリーを知ることで、その人がどんな要素で構成されているのか、感情のスイッチがどこにあるのかを知ることができます。表層的に仕事をしているときは「どうしてあの人は言ってもわからないんだ」と思っていたことも、「ああいう経験があったからなんだ」という深い理解につながり、お互いの共通項を見出すきっかけにもなり、チームビルディングとしても効果を発揮します。

失敗事例から学ぶ組織開発〜2社の失敗と回復プロセス〜

井竹:それではここでお二人の組織開発に関する失敗事例を共有いただければと思います。松田さんはどんな経験をお持ちですか?

家族主義的カルチャーから挑戦的カルチャーへの大転換

松田:当社(オズビジョン)は正社員が50名、業務委託や派遣の方を合わせて80名ほどの企業なのですが、半年で正社員が11名退職する事件がありました。何が起きたかというと、2015年に代表の鈴木がシリコンバレーで見た人たちに感化され、「こんな風にみなが自分のビジョンに向かって全力で取り組む組織を作りたい」という思いを抱いて帰国したんです。当時のオズビジョンは、理念に対する社員の共感度が非常に高い、良い組織でした。家族主義的で、ティール組織で言えばグリーン(多元型)です。100年続く和菓子屋さんのようだった組織を、代表が挑戦的なカルチャーに変えていきたいと考えたことが変革のきっかけでした。

オズビジョンのカルチャーの大転換は理念の再構築・浸透によって支えられた、と松田氏オズビジョンのカルチャーの大転換は理念の再構築・浸透によって支えられた、と松田氏

変革の手段として、2017年に採用されたのが私と営業、マーケティング責任者の3名です。これまで代表と社員はフラットな関係性だったのに、突然トップダウン的な採用で経営メンバーが増え、あの手この手で会社を変えていったわけです。WeWorkへの移転もそうですし、海外採用を強化したり、テレビCMを打ったり、これまでやったことがないような新しい挑戦を進めていきました。その結果起きたのが、正社員の相次ぐ退職です。

一番の問題は、経営と現場の意思疎通ができていないことでした。ふと立ち返ってみると組織状態が非常に悪く、モヤモヤが溜まりに溜まってしまっていたのです。

そこで、もう一度自分たちの原点である理念に立ち戻ろうと発足したのがクレド委員会です。手を挙げてくれたメンバーたちと半年ほどかけてクレドの見直しと浸透を行いました。そんなプロセスを経て、今は組織状態が回復してきました。

井竹:経営と現場の信頼関係が薄れてしまった状態から、改めて同じ方向を向けるようになるまで、どんな工夫をされましたか?

松田:まず最初に謝りました。メンバーはそこからすごく協力的になってくれたんです。その段階で残ってくれているメンバーは、やはり会社の理念に共感してくれている人です。最後はやはり理念なのだと、大失敗したからこそ確信しました。

井竹:ありがとうございます。桜庭さんもGEジャパンでの失敗事例を共有いただけますか?

株価が暴落に伴い、求めるリーダー像をガラッと変更

桜庭:GEはジャイアントな会社で、ジャック・ウェルチというカリスマ経営者が存在しました。ただ、それは随分前のことで、それからCEOは3回も変わっています。私が一度GEを退職して再び戻ってきたとき、良い意味で別の会社に入社したような印象を持ちました。

もともとGEはリーダーシップに強い会社だと言われていて、会社的にも強いリーダーが求められていました。常に課題に対する答えを持っていて、統率力があり、リスクを引き受けるようなリーダー像です。時代に求められたリーダーの先駆け像がそうだったところもあるでしょうね。

ところが、私が戻ったときは全く逆だったんです。みんなから選ばれるリーダー、メンバーが安心して建設的衝突を起こせるような信頼感のあるチームを作れるリーダー、チームの強みを引き出しながら課題解決への導くことができるリーダーが、求められていました。

変化のきっかけは、CEOがジャック・ウェルチからジェフ・イメルトに変わった時代から。GEは変革に集中しすぎて、継承すべきことをどんどん失ってしまった印象があります。例えばシックス・シグマにあるような、オペレーションの質を挙げてクオリティの高いものを作り上げるというカルチャーやマインドセットもです。

14年後、株価が暴落。これからどうするのかを問われたときに、求めるリーダー像をガラッと変えたのです。10年以上も変えていなかったバリューも社員から新たに募集して、GE Beliefsというものを作りました。

これまではGEではリーダーが答えを持っているというスタンスだったものを、これからはみんなで考えていかなければならないから、声を聞かせてほしいという姿勢に変えることができたのは、戻ってきて感動しましたね。

GEは求めるリーダー像を180度変更。新しいリーダー像の下、業績も回復傾向と桜庭氏GEは求めるリーダー像を180度変更。新しいリーダー像の下、業績も回復傾向と桜庭氏

松田:そういう状況の中でリーダーシップを取れるのはすごいですね。

桜庭:これまで強いリーダーになりなさいと言われて育てられ、評価されてきた人が、いきなり「弱みを見せなさい」と言われても、とても辛い。「これは私の知っているGEではない」と言って卒業する人もいました。逆に、進化のために共にGEと歩み続ける道を選んだ人もいるわけです。

現在業績は少しずつ上向いてきた段階で、まだ志半ばではありますが、だからこそ、失敗して学びを共有し続けることは本当に大事だと思いましたね。

組織開発はもう1社だけでやる時代ではない

桜庭:もう1つ、組織の中にシステマチックに学びを共有できる仕組みがあると面白いのかなと思っていて、最近やり始めたのが、他社の社員とピア・コーチングをして、学び合いをするというサークルです。社内だけでは利害関係があって難しいので、企業同士でコーチングし合うんです。これは学びの共有という文脈においては心理的安全性が生まれるようで、非常に活発に活動しています。

松田:外部の力を借りるということは当社も実施していていますよ。ファシリテーターとしてプロの方に入っていただいて、グラレコで話した内容を広げてもらったりしています。専門家が入ると、やはり自分たちだけでやるのとは違った視点を得られるのがいいですね。

桜庭:いろいろな企業とのコラボレーションであったり、専門家の方に入ってもらったり、組織開発は1社だけでやる時代ではなくなってきたという感覚はありますね。キーワードは「混ぜる」だと思います。混ぜると違う色が出てくる。そのために様々な人材を投入してみるという実験は、効果があるのではないでしょうか。

松田:正社員として採用するには勇気がいるような、ちょっとスパイシーな方が入ると組織は活性化しますからね(笑)。

組織開発は1社だけでやる時代ではなくなってきたと語る、桜庭氏組織開発は1社だけでやる時代ではなくなってきたと語る、桜庭氏

まとめ:組織開発には成功の方程式がない。ゆえに変革期に備えた信頼関係構築が鍵。

一昔前、企業にとっての成功、個人にとっての幸せが今よりも画一的な価値観で測れた時代においては、組織開発にも一定の解があったのかもしれません。

ただ今や、人々が多様な価値観や好みを持ち、成功の方程式が通用しなくなってきている、解のない時代。

そんな時代における組織開発は、チームや組織に蔓延しているモヤモヤや違和感を、あの手この手を使って気づかせ、取り除き、活性化させていく、終わりのない取り組みであるようです。

あらゆる取り組みを進める上での大前提が、組織・チーム内の「信頼」関係づくり。後回しにされがちですが、「信頼」関係が成立しておらず、コミュニケーションのズレや誤解が起きたまま距離が生まれることでモヤモヤや違和感は大きくなっていき、いつか本腰入れてテコ入れしないと太刀打ちできないものになってしまいます。そのことを考えると、早期の信頼関係構築は、組織づくりの鍵を握ると言えます。本記事を参考に、チーム内で簡単にできることから始めてみてはいかがでしょうか。

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