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トヨタ式「カイゼン」の製造業以外への応用方法とは?具体例で解説

生産管理
トヨタ式「カイゼン」の製造業以外への応用方法とは?具体例で解説

世界の製造業の在り方を変えたとすら言われるトヨタ生産方式。「カイゼン」の語とともに世界に知れ渡るトヨタ式ノウハウは製造現場だけでなく、ビジネスに限らない幅広い世界で応用されています。近年急増している社外のプロ人材活用の活用について、トヨタ式を応用することで、より有効活用する道を探ります。

世界の製造業を変えた?トヨタ式とは

まず、前提となる「トヨタ式」とは何かについて、解説していきます。トヨタ式は生産工程から生まれ、ビジネス全体はもちろんビジネス以外の分野にも応用されている考え方です。

世界に知れ渡るトヨタ生産方式

7つのムダの削減

前提となる製造業での生産工程をもとに、解説していきます。トヨタ生産方式においては、作業工程における「7つのムダ」を排除することを基本とし、「ジャストインタイム」と「自働化」を2つの柱として生産性の向上を目指します。

7つのムダ

「7つのムダ」とは、製造過程において効率化の阻害となる要素を、7つに分類したものです。

具体的には

  1. 加工のムダ
  2. 在庫のムダ
  3. 造りすぎのムダ
  4. 手待ちのムダ
  5. 動作のムダ
  6. 運搬のムダ
  7. 不良・手直しのムダ

の7つです。製造現場から生まれた言葉なので、製造業に関連する言葉が使われています。しかし、後に例を上げるように、それぞれを当てはめて考えると、あらゆる分野に応用することが出来ます。

ジャストインタイム

「ジャストインタイム」とは「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ流れるように停滞なく」造り、運搬することを指します。

過剰な在庫を抱えず、供給不足にもならず、必要な分だけを生産し、提供していくことが求められます。

自働化

「自働化」とは人の働きを機械に置き換えることを指します。単に、動きを置き換える「自『動』化」ではなく、機械が判断まで行うレベルで人の代わりを担うという意味で「自『働』化」という字が用いられます。

具体的には、製造においては製造機械や、製品の品質、ライン・工程といった各種の異常を察知し、自動で生産を止めることが求められます。

機械自体が異常がないかを監視し、検知し、それに対応するために設備を止めるといった工程から人を開放することで、人はより価値の高い業務に集中することができます。

また、異常を検知し、自動で停止することにより問題点が明確になりやすいため、解決が図りやすい点もメリットとして挙げられます。

トヨタ生産式が生み出された背景

現在でこそ世界のあらゆる分野に応用されているトヨタ式の考え方ですが、考案された20世紀初頭には理解を得られないものであったと言います。

トヨタ生産式が生み出された背景には、当時アメリカで主流であった大量生産方式に対抗する必要性に迫られていたことがあります。まだ自動車の市場が小さく、大量生産が難しい中で原価を抑え、高品質な製品を生産するかを当時のトヨタ経営陣が考えました。

結果、ムダを省き効率的な生産を追い求める形として考え出されたのが、トヨタ製造式の背景です。

製造以外の分野において、トヨタ式はどのように応用されたか

製造現場から生まれた「トヨタ式」の考え方ですが、その基本的な考え方は現場のオペレーションから、ビジネスの他分野へ、そして、ビジネス以外の分野にまで派生しています。

その事例や考え方について、いくつか見ていきます。

ビジネスへの応用

まず、製造以外のプロセスでビジネスに応用されていった例を見ていきます。さまざまな分野に応用可能ですが、ここでは具体例として「人材教育」「営業」を例に挙げてみます。

人材教育~OJTソリューションズ

人材教育の面で、トヨタ式を応用しているのが、トヨタの子会社である「OJTソリューションズ」です。具体的には、トヨタ式のノウハウを、製造業はもちろんのこと、非製造業の分野にも応用して現場改善のための人材育成のソリューションを提供しています。

たとえば、サービス業などの現場においても、それぞれの業態に即した品質・コスト・納期を策定し、その向上を求めるような課題発見能力を養う教育を行います。

ここでも、余計な動きが必要となることで作業効率が落ちる「動作のムダ」がないかなど、トヨタ式を当てはめることにより、常にカイゼンが行えるポイントを抽出します。

営業

製造とはかけ離れた営業など形のない現場においても、トヨタ式のカイゼンの論理を用いることができます。

たとえば、「時間をかけすぎた営業資料」や、「惰性で書いている日報」は「加工のムダ」と分類することができます。

営業において多くの方が重要と位置付ける商談すら、本来不要な訪問は「動作のムダ」と位置付けられますし、企業の目標の達成度の指標であるKPI(主要業績評価指標)として設定されることのある、「アポイント件数」「訪問件数」ですら、成果に結びつかないのであれば「つくりすぎのムダ」と考えられてしまいます。

営業のように、正解がないとされる世界においても、一見必要に見えるようなアクションが「ムダ」に分類できるケースもあります。

ビジネス以外への応用

ビジネスにおいて「トヨタ式」が応用できるのは、比較的イメージがつきやすかったのではないでしょうか。

しかし、トヨタ式の考え方はビジネスにとどまらず、日常生活の中にも応用することが出来ます。

その例として「片付け」「貯金」のおけるトヨタ式の応用を考察していきます。

片づけにおけるトヨタ式

ビジネス以外の分野への応用として、しばしば取り上げられるのが、「片付け」におけるトヨタ式の導入です。

片付けも、単に物をしまう、不要な物を捨てるといったアクションを行うだけでなく、片づけ後のゴールを考えながら、対象となる7つのムダを抽出し、カイゼンしていきます。

必要なものを決めて、「在庫のムダ」を抱えない。ものを置く場所を工夫し、「運搬のムダ」を出さないようにしていきます。一見綺麗に片付いていても必要なものがどこにあるかわからなければ、探すための「動作のムダ」が生じる恐れがあります。

職場の片づけはもちろんのこと、日常生活で使う部屋においても、目的を持ち、そこに向けてムダを省いていくことによって、生活の質を上げていくことが可能となります。

貯金におけるトヨタ式

「貯金」という作業工程の存在しない行為にもトヨタ式を用いることができます。

まず、最初のステップとして必要になるのが「納期」にあたる期限と、「生産数」にあたる金額を設定することです。いつまでに、いくら貯めるのかという目標の可視化を行います。

貯金できる金額は簡略化すれば収入と支出の差と言えるので、それぞれについて考える必要があります。

支出の面で言えば、普段の支出をまとめてみて「ムダ」がないかをチェックすることが大切です。余計なものにお金を払っていないか、もっと削ることができる点はないかなどを精査することで、いかに支出を減らせるかを考えます。

一方で、収入の面では求められるのは効率化です。本業での収入増、空き時間での副業といった形で収入を増やすことができれば、支出額が同じであっても貯蓄に回せる額はあがります。

本業、副業、いずれの収入増を目指す場合も、現在の業務の「ムダ」を無くすという視点が必要です。

こういった、収入や支出の可視化を行い、定期的に見直し、カイゼンを行うことで、生産性の高い貯蓄が行えます。

社外のプロ人材活用においてトヨタ式は応用できるか

現在、社内のプロ人材活用で目覚ましく成果を上げているのが、Webマーケティングの分野です。

様々なシーンで用いられるトヨタ式の「カイゼン」ですが、働き方改革が謳われる近年、いかに社外のプロ人材を活用したカイゼン活動が行えるのかを考察していきます。

ある飲食店のWebマーケティングにおける社外のプロ人材活用事例

全国に20店舗以上を展開するある飲食店では、社内に得意とする人材がいないインターネット領域においてのマーケティング活用を、社外のプロ人材に一任しています。

具体的には、企業の想定顧客の検索ニーズに応じた、メディアの立ち上げから、コンテンツの方向性の策定、コンテンツの大量作成までをワンストップで1社に委託する形を取っています。

プロジェクトごとに、マネジメントを専門的に行うマネージャーがつき、コンテンツの作成は経験豊富なライターが分担することで大量の高品質コンテンツがコンスタントに納品されます。

プロモーションの施策が功を奏し、現在その会社は業界での地位を確固たるものにしています。

社外のプロ人材登用により「7つのムダ」は解消できるか

この構造でのWebマーケティング委託を行うことにより、7つのムダは以下のような形で省くことができます。

  1. 加工のムダ→必要十分な品質をコンテンツ作成者で担保
  2. 造りすぎのムダ→必要な量の都度発注により抑えられる
  3. 手待ちのムダ→コンテンツごとの発注となるため、手持ちが発生しない
  4. 動作のムダ→徹底的に効率を重視したプロジェクト運用体制
  5. 不良・手直しのムダ→受託のスキームの中で編集が加わるため、発注者側には発生しない

インターネット上のビジネスにまで製造から離れた領域になると、全てが全てを当てはめられるわけではありませんが、依然として多くの部分を、トヨタ式になぞらえた説明が可能です。

社外のプロ人材活用による仕組みの「自働化」の作用

この仕組みにおいて、ある種「自働化」と言えるプロセスが存在します。作成されたコンテンツへの検索流入や、コンテンツを確認したユーザーの行動などの結果はその後細かく後追いされます。

結果が一定の水準を下回った場合アラートがかかり、コンテンツの公開の停止や、見直しが入るようになっています。コンテンツの質そのものが見直されると同時に、結果の出ないコンテンツを作成した人物はプロジェクトから外れ、新たな人物をアサインする、といった形でコンテンツの作成者の入れ替えも行われます。

仕組みの中でも、数値を明確化し、競争の原理を持ち込むことによって不良品と解釈できるコンテンツを検知し、すぐにカイゼンを加えられるようにしています。

社外のプロ人材を使った「カイゼン」に重要な要素は?

ひとつの成功事例について取り上げ、解説しましたが、実際のところ同様の施策を社外のプロ人材に委託し、失敗するケースは枚挙に暇がありません。

企画立案から実際のコンテンツ作成まで、一貫して高い質が保たれ、常にカイゼンを行えるだけの仕組みが保たれているかが、社外のプロ人材にWebマーケティングを委託する上では重要な要素になります。

Webコンサルタントの施策が誤っているという可能性もありますが、それよりも原因として起こりやすいのが現場にあたるコンテンツ制作の工程においてカイゼンが機能せず、質の低いコンテンツが並んでしまうケースです。

プロジェクトのマネジメントに問題があるケース、コンテンツの制作者の質を担保できないケースなど原因は想定されますが、大きなプロジェクトになればなるほど、プロジェクト単位で組織として機能し、その中でカイゼンが図れることが重要な要素となってきます。

まとめ

製造業の在り方を変えたトヨタ式の効率を徹底化し、常にカイゼンを行っていく考え方、プロセスはビジネスの他分野だけでなく、日常生活にまで幅広く応用することができます。

そんな改善のプロセスにおいて、社外のプロ人材を使うことも、今後の市場では有効な施策となってきます。

ただし、社外においても、プロジェクトの規模が大きくなればなるだけ、その内部でのカイゼンのプロセスが整っているか否かが、その活用の成否を握っていると言えるでしょう。

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