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ティール組織とホラクラシーの違い〜2020年代も成長し続ける企業が探求すべき組織モデル〜

人事制度設計
ティール組織とホラクラシーの違い〜2020年代も成長し続ける企業が探求すべき組織モデル〜

IT、AI、IoTなど日進月歩のデジタル革命に加え、労働人口の減少が加速している日本社会。規模の大小を問わず、企業は働き方や組織の在り方に変革が求められています。

政府の旗振りのもと、働き方改革も徐々に進んできており、テレワークやフリーアドレス、サテライトオフィスなど働く場所の多様化や最先端ツールを駆使した生産性向上の施策は多岐にわたりますが、

企業・組織の構造をどう改革するのか?

という点においては、新たな取り組みがまだまだ不足しています。

そんななか、海外企業が中心に導入している「ティール組織」や「ホラクラシー」という組織体型が注目を集めています。

「ティール組織」と「ホラクラシー」は、社長や役職者などの管理者が存在する従来の階層構造を撤廃し、従業員それぞれが裁量権を持ちながら、企業の目的のために自主的に動くフラットな組織です。しかし、両組織には明確な違いがあります。「ティール組織」が明確なビジネスモデルではなく、企業が生き残るために変化を繰り返す進化形の組織体であるとしたら、「ホラクラシー」は厳密なルールのもとに運営される実践的な経営手法です。

今回は、組織改革を検討している方に向けて、「ティール組織」と「ホラクラシー組織」の概念や違いについて解説します。

1.人類の歴史に学ぶティール組織入門

<「実務でつかむ! ティール組織 “成果も人も大切にする”次世代型組織へのアプローチ」(著:吉原史郎/大和出版)をもとに作成>

「ティール組織」については様々な概念的要素がからみあっていますが、あえて一言で説明すると、「階層構造によらず、組織目的の達成のために全メンバーが個別に意思決定を行う自律型組織」といえます。この「ティール組織」に至るプロセスに、4つの組織モデルが存在します。

「ティール組織」という概念が生まれた背景には、人類の歴史とも関係性があります。狩猟社会から農耕社会へ、封建制度から産業革命以降の近代化へと時代が進む中で、組織はどのように変化してきたのか? 「ティール組織」はその最終形態なのか? 歴史の流れと重ねて見ていきましょう。

1-1. レッド(衝動型)組織は、“個の力による支配”

レッド組織は、最も原始的でシンプルな組織です。「オオカミの群れ」と比喩されているように、その特徴は圧倒的な力を持った特定の個による支配です。狩りが上手いもの、腕力の強いもの、知識が豊富なものなどがリーダーとなり、組織を支配していました。レッド組織において、トップに従う理由は、忠誠心と恐怖心であり、明確なルールや制度はトップの意志に左右されます。

ボスが代わると主従も変わり、組織の状況は一変するので、弱肉強食の摂理が色濃く、個人に依存した再現性のない組織形態と言えるでしょう。企業であれば、オーナー社長によるワンマン経営のような場合、レッド組織の要素があるのではないでしょうか。

1-2. コハク(順応型)組織は“役割が明確な階層構造”

人類が狩猟中心の社会から農耕を営むようになるにつれ、組織としての役割や階層が形成されました。組織運営に共通の価値観や普遍的なルールが必要となったため、秩序や統制といった概念を取り込んだのがコハク組織です。その典型的な例として挙げられるのが、「軍隊」です。また封建社会においても、社会全体が似たような構造であったと言えるでしょう。

コハク組織は、はっきりとしたランク付けがされたピラミッド型組織です。各階層のメンバーには、トップダウンで決められた明確な役割をあてられ、その役割を全うすることが求められます。そのため個人には依存せず、ルールを守りながら安定的に仕事をこなします。農耕社会のように、毎年同じ時期に、同じ手法で、同じ作業をするような安定感がありますが、その一方で、変化の適応には弱く、競争よりも組織階層のヒエラルキーが重視されます。

旧来型の企業や組織には、今でも残る形態ですが、環境変化への対応が難しいという点で、時代にそぐわなくなっていると言えるでしょう。

1-3. オレンジ(達成型)組織は、出世が可能な機械的組織

組織がさらに成熟していくなかで、環境変化へ適応するために発展したのがオレンジ組織です。社長や従業員等の階層構造でありながら、より柔軟な組織体制を持ち、成果を上げた者が昇進できるという実力主義を取り入れています。

厳格に固定された階層では難しかった変化への対応が可能になったり、能力発揮の限界が取り払われたりすることで、イノベーションが生まれやすくなりました。人類の歴史上でいえば、産業革命やフランス革命による封建制度の終了などと重なるところがあります。

目的を掲げ、スムーズで効率的な組織運営のため、数値管理も重視されるようになります。こういった一連の機能的な組織は、「機械」と比喩がされています。

オレンジ組織は企業組織の雛形となっているため、現在の企業の多くはこのオレンジ組織だと言われています。変化対応と生存競争が求められる「機械」と比喩されるような働き方は、過度な競争、過重労働といった昨今の課題につながっていると指摘されます。

1-4. グリーン(多元型)組織は、社員第一の格差がない社会!?

オレンジ組織が様々なメリットをもたらす一方で、成功が報酬や出世、名誉といった物質的な成果に偏るという負の側面も生み出しました。人々は、ヒエラルキー構造内での競争に疲れ、生産性や目標達成を最優先する価値観に疑問を抱きはじめます。

グリーン組織は、「家族」と比喩されます。トップダウンによる意思決定ではなく、現場の人々にも裁量があるボトムアップの意思決定プロセスが採られているため、個人の主体性や多様性を尊重しようとする特徴があります。

リーダーは、働きやすい環境作りや業務の最大化をサポートする役割を持ち、全員に共有された企業の文化や価値観をもとに合意形成を行い、意思決定をしていきます。

シンプルに言うと「社員第一主義」。社員の満足度や幸福度の高さが顧客満足や業績向上につながることは、多くの企業が証明しています。

“協働”に重点を置いているため、それぞれの人々が持つ感情や、協調的なつながりを重視します。物質的な成功よりも幸福感や安心感を求める社員感情、ダイバーシティ(多様性)が重視される社会背景など、グリーン組織は昨今の環境に合致した組織形態だと言えるでしょう。

 

2. 理想の組織? ティール(進化型)組織とは?

しかし、グリーン組織にも矛盾があります。それは関係者全員が意思決定に参加するとはいっても、合意に至るまでの時間的な問題や、合意できない場合の意思決定のために、ピラミッド型の階層構造を維持している点です。理想として平等主義を掲げながらも、最終的な意思決定権は依然としてマネジメント側にあり、現実として階層構造を維持しなくては組織として機能しません。しかし、このような制約があったとしても、グリーン組織は企業によって最適解になり得ますし、最終的にティール組織に至るプロセスでもあります。

ティール組織は「生命体」とも比喩されていますが、一体どのような組織なのでしょうか?

2-1.ティール組織には明確なビジネスモデルが存在しない

<「[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル」(著:フレデリック・ラルー、イラスト:エティエンヌ・アペール、訳:中埜 博・遠藤政樹、監訳:羽生田栄一/技術評論社)をもとに作成>

これまで4つの組織モデルについて説明をしてきました。モデルが変遷するごとに組織は進化を遂げてきましたが、まだティール組織には明確なビジネスモデルが存在しません。それは人類の歴史とともに振り返った理由でもありますが、様々な組織変遷をして辿り着く最新のモデルがティール組織という考え方だからです。

現在、すでにティール組織と言われる企業は存在します。しかし、それはティール組織という言葉・概念が生まれる前から、組織発展のために変化を繰り返してきた結果です。上記は「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(英治出版)の著者であるフレデリック・ラルー氏が著書内で事例として紹介している企業・組織をまとめた画像です。

しかし、彼らも決してティール組織を目指したわけではなく、最善の組織・経営手法を模索した結果、ティール組織と呼ばれる組織となったのです。それゆえ、一口にティール組織と言っても、そのビジネスモデルは様々です。

2-2. ティール組織3つの要点

ティール組織を説いたフレデリック・ラルー氏は、多くの企業を調査した結果、ティール組織(に該当する企業)には、共通項があることを発見しました。ティール組織には明確な定義やビジネスモデルはありませんが、この3つの要素が根幹となると言われています。

●進化する目的(エボリューショナリーパーパス)

ティール組織では、「組織の目的=進化する目的」としています。

組織自体を1つの「生命体」ととらえており、組織が生き残るために目的も常に変化をしていくという考え方をとっています。「生命体」である組織において、「この組織はなんのために存在するのか?」という存在目的を常に問いかけ、変化に合わせて各細胞にあたるメンバー全員が、目的を進化することが求められます。

●自主経営が可能となる工夫や仕組みを有していること(セルフマネジメント)

ティール組織には、社長や管理職による指示系統や階層構造は存在しません。そのため、メンバー全員が独自のルールや仕組みを工夫しながら、組織運営をする形態をとります。この組織を実現するために、結果指標をはじめとした組織内のすべての情報を透明化。その情報に基づいた個人の意思決定を尊重しつつ組織的なフィードバックも行い、一方的な権力行使や介入がしにくい仕組みを作っています。

●個人としての全体性の発揮(ホールネス)

「自主経営が可能になる工夫や仕組み」を最大限に発揮するには、「各メンバーの能力が存分に発揮されていること」「チーム〜メンバー間で不安や疑問を共有し、解消し合える関係であること」が必要です。そのために、メンバーの多様性を尊重し、不安を感じないように心理的安全性を高めることが求められます。

「生命体」の各細胞のように、スムーズかつ密なコミュニケーションが不可欠になります。

この3つがティール組織を構成する要素となります。しかし、ティール組織は決して過去の4つの組織モデルを否定するものではありません。業界や企業規模、カルチャー、理念などによって合う合わないが存在しますし、複数の組織モデルが混在する企業も存在します。

2-3.ヒエラルキー型組織のデメリットティール組織のメリットとは?

では、ティール組織にはどういうメリットがあるのでしょうか?

ヒエラルキー型組織では、経営トップ層の指揮のもと徐々に企業の意義や事業目的、経営戦略が策定されます。その目的を達するために、各部署に売上目標や役割が与えられ、さらに分解されながら下に降ろされていきます。

ヒエラルキー型組織だと、マネジメント・管理が必ず存在するため、部下が役割をまっとうするためにマネジメントが管理しますし、部下は上司に評価されるために職務に臨みます。

上記の図のように、ヒエラルキー型組織では管理があり、ときには自分に適正ではない職務もこなす必要がありますし、職務を全うしなくては「昇進できない」「評価されない」などの恐れが生じます。

ヒエラルキー型組織では、その恐れがある種、原動力となっているとも言えます。その他にもヒエラルキー型組織では、様々な弊害や副作用が存在し、顧客や社会に対して100%向かうことができません。

ティール組織では、階層や序列、管理業務がなく、売上目標も存在しません。メンバー一人ひとりが意思決定権を持つため、組織の目的達成のために従業員の主体性が自然と発揮されるようになります。

ティール組織は「組織の存在目的」を常に問いかけ、その目的を果たすための役割や業務、目標など重要な判断はメンバー同士のコミュニケーションで決めていきます。情報もすべてオープンになっていることが前提ですので、各メンバーの当事者意識も非常に強くなり、セルフマネジメントを可能にします。

2-4. ティール組織の人事制度はどうなるか?

企業の事業目的や経営戦略を実行するにあたって、根幹となるのが人事制度。人事制度の軸となるのが、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つです。

一般的な従来型の組織の等級制度では、能力によって職務と役割が序列化され、組織内での責任・権限の範囲も決められます。責任と権限の大きさによって報酬も比例し、評価の軸も変化するのがほとんどでしょう。従来型の組織では、人事制度がメンバーの行動指針の多くを占め、その制限のなかで価値を提供しようと行動します。

一方でティール組織は、等級制度は存在せず、チームで動いていきます。そのチーム内でファシリテーターなどの役割は存在しますが、上下関係ではなく、あくまで横のつながりになります。

メンバー間の合意をもとにルールを策定していくのが前提になっているため、メンバーの報酬や評価も例外ではありません。基本給や福利厚生など各組織によってベースは変化しますが、360度評価など全員が納得する評価方式を採用しています。

昨今は人事評価制度にノーレイティングを採用したり、自分を磨くための休職制度、選択型人事制度、ワーケーションなどメンバーのモチベーションを高める目的やセルフマネジメントを重視したユニークな人事評価制度や福利厚生を取り入れたりする企業が増加しています。

3.ティール組織とホラクラシーの違いとは?

では、ティール組織と同様に注目を集めているホラクラシーはどういった組織なのでしょうか?

ホラクラシーとは、2007年に米ソフトウエア開発会社の創業者ブライアン・ロバートソン氏が提唱した、階層や上司・部下の関係が一切存在しない組織体制のことです。ホラクラシーを実現するためのメソッド・ルールも存在し、運用はこのルールに則って進めていきます。

ホラクラシーはピラミッド型のヒエラルキーと対称的に扱われることが多く、メンバー全員で意思決定をしていくなど、ティール組織と共通する点が多く存在します。しかし、「ティール組織=ホラクラシー」ではありません。

ティール組織が、レッド〜グリーンという組織形態を経て辿り着いた、メンバー一人ひとりの自律的判断で機能する組織概念であることと比較して、ホラクラシーは、厳密なルールのもとに運営される実践的な経営手法であることです。

例えば、ティール組織が明確なビジネスモデルがなく、一部だけ取り入れることが可能であったり、組織内にオレンジ組織やレッド組織が存在しても機能するなど非常に有機的です。一方、先述の通りホラクラシーは、上下関係がなく自主経営が可能な組織を構築するための体系化された細かいルールが決められています。つまりホラクラシーは自由でフラットな組織”を構築する再現性があると言えます。

では、ホラクラシーは、どのようなルールのもとに運営されているのでしょうか?次項から詳しく解説します。

3-1.ルールがないのではなく管理がない組織

上記の図は、一般的な階層構造のヒエラルキー型組織とホラクラシー型組織を比較したものです。ホラクラシー型は大きなサークルのなかにそれぞれの役割(ロール)があり、階層や上下関係がありません。個々の裁量と意思決定によって役割は分担され、協働で仕事をやり遂げていきます。

しかし、従業員が100%自由に働くわけではありません。ホラクラシー型組織の特徴は、権限を個々の従業員に分散することで、自律的・自主的に仕事をすることを目指したものです。誤解されやすいですが、ホラクラシーにはルールが存在せず、メンバーが完全に自由ということではありません。あえて一言で言うと「管理はないがルールはある」組織です。

ホラクラシー組織の初期は、組織全体を表現する「ゼネラルサークル」と3つの役割(ロール)が設定されます。初期の役割(ロール)は、「リードリンク」「ファシリテーター」「セクレタリー」の3つです。

「リードリンク」とは組織の目的実現、戦略や重要指標を示したり、メンバーの役割(ロール)への配置などの主要な役割を担います。「ファシリテーター」はミーティングでの進行役、「セクレタリー」はミーティングの開催案内や記録をする役割です。

ホラクラシーでは、組織の目的実現のために「ガバナンスミーティング」を行います。その都度、組織に必要な役割(ロール)が創設や見直しを、従業員と意見交換をしながら進めていきます。

組織目的の実現方法や課題などの提案内容を「テンション」という形で募集し、この提案に寄り添って反対ラウンドや統合ラウンドといったプロセスを通じて磨いていくことが特徴です。

3-2. 組織の進化する目的のためにメンバーが自発的に動く

ホラクラシーの目的は、従業員に楽をさせるためでも、管理を放棄することでもありません。従業員それぞれが自発的に考え、動き、工夫する組織を実現して、組織の目的を達成しやすくすることです。既存の構造から自主経営に移行するには、まずは土台作りから着手する必要がありますが、運営を継続していく過程で組織の目的やカルチャーに応じて、様々なスタイルが生まれていきます。

3-3.ホラクラシーのメリット

では、ホラクラシーのメリットについて見ていきましょう。

スピーディな意思決定と生産性・業務効率の向上

人を管理・監督する業務が存在しないため、メンバー全員が役割(ロール)に集中することができます。それぞれが主体的に業務に取り組めることで、生産性向上につながります。

ストレスの軽減

階層構造の組織では、上司への過剰な気づかいなどがありますが、ホラクラシーでは役職がないフラットな組織なので、理不尽な命令や上下関係から解放されます。働き方への自由度の高さや情報の透明性などからも、ストレスが軽減されます。

従業員の主体性、責任感、モチベーションの向上

従業員は、それぞれが意思決定を求められることで、必然的に主体的に考えながら、行動をします。また自身の判断にも責任が伴います。それゆえ、仕事に対する熱意やモチベーションにつながります。

3-4.ホラクラシーのデメリット

ホラクラシーにももちろんデメリットが存在します。考えられるデメリットには以下のようなものがあります。

従業員の行動が把握できない

管理職がおらず、従業員に裁量が任されているため、各従業員の行動を把握することは難しくなります。情報の共有はありますが、管理することができないため、信頼関係の構築が必要不可欠です。

機密情報の漏洩のリスクが高くなる

従業員間に情報格差をなくし、オープンにすることがホラクラシーの要であるため、その分機密情報などが漏洩するリスクが高まってしまいます。この点については、オープンにする情報の制限や情報管理のルールを設けるケースもあります。

企業カルチャーの定着に時間がかかる

まだまだ新しい組織体系のため、文化として定着するまでにはどうしても時間がかかり、従来型の組織に慣れている人にとっては逆に生産性が低下することも考えられます。「マネジメントの放棄」という批判もあるように、管理がないゆえに導入できる組織は限られ、導入した場合でも時間をかけて浸透させる必要があります。

3-5. ホラクラシーの企業事例

ホラクラシーの導入事例としてもっとも知られているのが、アパレル関連の通販サイトを運営する米国のザッポス社です。いち早くホラクラシーを導入して成果を上げたことで、既成概念を破壊するユニークな組織体として注目されました。しかし、その一方でホラクラシーを導入しようとして失敗している事例も多く存在することも忘れてはいけません。

また日本企業では、2007年の創業時からホラクラシー経営をつづけている不動産テック企業・ダイヤモンドメディア株式会社やマッチングサービス「Green」「yenta」などを展開する株式会社アトラエなどが知られています。ブライアン・ロバートソンが提唱しているメソッドを基本としながらも、人事評価・報酬といった自社にフィットしない部分は柔軟に変更しながら運営しています。

4.時代の変化に適応する組織を運営するために

これまで見てきた通り、ティール組織は従来の組織モデルの発展型であり、ホラクラシーは実践的な経営手法と言えます。しかし、ゴールは共に自主経営が可能なフラットな組織体制です。

「この組織の存在目的はなにか? メンバー全員が理解し、行動しているか?」

「人事評価制度が評価する目的だけの制度になってないか?」

「メンバー全員が納得しているか?」

など経営課題は常にあります。日本の高度経済成長期を例にすると、ほとんどの企業が「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」がベースにあり、組織の所属していることが美徳とされ、40年勤続して、退職金をもらったあとは年金で過ごすというルートを多くの人が辿りました。

しかし、時代は変化し、社会環境は変わり、市場の価値観も多様化しています。企業寿命より個人の労働期間が長くなり、転職も当たり前となっています。旧態依然の組織では立ち行かなくなっているのは事実でしょう。それは、冒頭でレッド組織からの流れを見てきたとおりです。

現在、次世代型と言われる組織モデルで成功を収めているのは、スタートアップ、NPOなどの団体が顕著です。それはティール組織で述べたように「エボリューショナリーパーパス(進化する目的)」「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性)」の3つが明確であることと、組織自体が小規模である場合、変化を起こしやすいという点を挙げることができます。

まだ新しい概念・手法のため、ティール組織やホラクラシーの事例は少ないですが、企業の存在目的・価値を見出しながら、部分的にセルフマネジメントやフラットな制度を採用している企業は増えています。そのような企業は、先進的な取組という企業ブランディングや従業員満足度、個人の働きがい・成長という視点で一定の効果をあげており、労働生産性の向上にも寄与していると言われています。

様々な環境の変化により従来型の制度ではフィットしなくなっています。大規模な組織ではより中長期の視点で組織の改革に挑戦する覚悟が必要となりますが、組織の存在目的を見つめ直し、改革をする際に、ティール組織やホラクラシーのような次世代型の組織の在り方は大きなヒントとなるかもしれません。

監修者:小笠原 隆夫

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経営コンサルタント・人事労務コンサルタント・組織コンサルタント・採用コンサルタント

IT企業でエンジニア職、人事部門長として関連業務に携わる。
2007年より「ユニティ・サポート」代表として人事・組織コンサルティングに従事。
著書に「リーダーは空気を作れ!」(アルファポリス)。
ほかウェブのコラム執筆多数。

https://profile.ne.jp/pf/unity-support-ogasawara/

<参考文献>

●「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(著:フレデリック・ラルー、解説:嘉村賢州、翻訳:鈴木立哉/英治出版)

●「実務でつかむ! ティール組織 “成果も人も大切にする”次世代型組織へのアプローチ」(著:吉原史郎/大和出版)

●「[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル」(著:フレデリック・ラルー、イラスト:エティエンヌ・アペール、訳:中埜 博・遠藤政樹、監訳:羽生田栄一/技術評論社)

 

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