デジタルツールの発展や顧客タッチポイントの多角化などにより、顧客一人ひとりに合わせてコミュニケーションを行うことがますます重要になってきています。しかし、顧客データは獲得できたものの、リピートや売り上げにつながる施策が打てていないという悩みを最近よく聞きます。

顧客データを集めても、それらを活用できなければ宝の持ち腐れです。また、顧客の顔が見えないままターゲティングをしても、リピートや売り上げにはつながりません。大切なのは、データを活用して顧客インサイトを理解することです。

本記事ではサーキュレーションで行われた、BtoCマーケティングのプロによるセミナーの内容をもとに、顧客インサイトを理解してリピートや売り上げにつなげる手法を解説します。

金井 路子氏

セミナー登壇者様:金井 路子(カナイ ミチコ)氏

大妻女子大学卒業後、コピーライター・編集者を経て、1999年株式会社インデックスに入社。 携帯公式サイトを全36本企画からサービス設計・運営。2002年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2004年モバオク立ち上げ、2009年ビッダーズ事業MD統括部長、2011年モバオクマーケティング部長を担当。以来、Eコマースを中心に、約20年間webサービスの企画開発や運営、マーケティングを経験する。創業後はコミュニケーション・アーキテクトとして、事業拡大はもちろん、組織構造・機能役割にも着目し、円滑な情報伝達の仕組み化や組織・コミュニティ形成を基軸とした売り上げ貢献をミッションとしている。

顧客インサイトを理解するための顧客管理3つのポイント

顧客インサイトとは、顧客の深層心理などから導かれる洞察です。したがって、顧客インサイトには顧客自身も意識していないようなことも含まれます。それでは、顧客インサイトを理解するためにはどうすればいいのでしょうか。

まず、基本になるのが顧客管理です。顧客データは購買行動のプロセスから多種多様に獲得することができますが、データを獲得するだけでは不十分です。重要なのは、獲得したデータをどう活用するかです。

それでは、顧客管理の3つのポイントを見ていきましょう。

1. データを知る

購買行動のプロセスから獲得したデータを把握しましょう。

とはいえデータを知ろうと思うあまり、データの海におぼれてしまうことがよくあります。そうならないためには、アウトプットイメージを意識してデータを集めることが重要です。下記に主な分析手法をまとめたので参考にしてください。

顧客インサイトを理解するための顧客管理ポイント1〜データを知る〜

2. データを集める

データを適切に集めることも顧客インサイトの理解に欠かせません。

購買に至るプロセスを事業者側から見ると下記のように3段階に分かれます。それぞれの段階において、やるべきマーケティング活動も異なります。様々なツールがありますので、データを集めるプロセスはできるだけ自動化することが望ましいでしょう。

顧客インサイトを理解するための顧客管理ポイント2〜データを集める〜

3. データを使う

最後のポイントは、データを使うことです。データを活用して、顧客との関係性を強化するCRM施策を行っていきます。

CRMと言えば、購買履歴やキャンペーンを活用している企業は多いかと思います。もちろんそれらも重要ですが、顧客との信頼関係をより強固なものにするために、Eメールへの反応や問い合わせ履歴などもきちんと把握し、活用することをお薦めします。

顧客インサイトを理解するための顧客管理ポイント3〜データを使う〜

顧客インサイトの理解がリピート率向上につながる

顧客との信頼関係が重要だとお話しましたが、顧客インサイトを理解し、一人ひとりにあったコミュニケーションを強化していくことはリピート購入につながります。リピート購入とは、関係強化した顧客から、再度購入してもらうことで利益を生む施策です。リピート購入定義を決めることで施策の成果をはかりやすくなります。設定時に考える流れは以下の通りです。

  1. 計測期間を決める(横軸)
  2. 1の期間内、購買回数or 購買金額のどちらを指標とするか(縦軸)
  3. 休眠、離反の定義を決める

ここからもわかるように、新規顧客の獲得にはプロモーションなどの多額のコストがかかります。利益への貢献という面からも、一度接点を持った顧客との関係性を強化して、リピート購入につなげることは非常に重要なのです。

新規売上と比べたリピート売上の考え方〜リピート購入とは〜

LTVを意識したone to oneマーケティング

リピート顧客は中長期的に商品を購入してくれる優良顧客になる可能性を秘めています。もちろん全員が優良顧客にはなりませんので、離反顧客を限りなく少なくする必要があります。

最近、顧客LTVを意識したone to oneマーケティングをやりたいという相談もよく受けます。LTVとは、Life Time Value(顧客生涯価値)の略で、一人の顧客が取引を始めてから終わりまでの期間内にどれだけの利益をもたらすかを表したものです。下記がLTVを引き上げるパターンになります。顧客インサイトを理解し、顧客をロイヤルカスタマー化することは企業にとって有益と言えます。

LTVを意識したone to oneマーケティング

顧客インサイトを理解するための方法

それでは、実際に自社の顧客インサイトを分析してみましょう。顧客は日常生活の中で、常に意思決定をしています。自社の顧客ターゲットを定義、共有することで、効果的な施策立案につながります。

顧客インサイトを分析する手法を2つご紹介します。

ペルソナ設定

ひとつめの手法はペルソナ設定です。ペルソナ設定の目的は、主に下記の3つです。

  1. 担当組織で共通した人物像を認識できること
  2. 顧客視点を持って、施策を立案・検討できること
  3. 時間・費用の節約につながること

ペルソナ設定をするメリットは、関係者全員が共通のイメージを持ちやすくなることです。ペルソナ設定をする際には、下記のように性別や居住地などの基本属性だけではなく、休日の過ごし方や検索ワードまで考えることがポイントです。顔写真のイメージもあるといいでしょう。ペルソナ設定は一度したら終わりではなく、環境変化に応じて定期的に見直すことも重要です。

顧客インサイトを理解するためのペルソナ設定方法

共感マップ

次にご紹介するのが、共感マップです。共感マップとは、顧客の属性などを定義するものではなく、顧客を取り巻く環境や行動、関心、願望にフォーカスしたものです。

下記のような共感マップキャンパスに、顧客が普段どんなサイトを見て、誰とどんな話をしているかなど、できるだけリアリティーを持って書き出していきます。

共感マップを書くことで、自社の商品がターゲットのどの課題を解消できそうか、どの願望をかなえられそうかなどをイメージすることができます。

顧客インサイトを理解するための共感マップの使い方

まとめ:顧客インサイトを理解して売り上げに貢献するために

顧客インサイトを理解することは売り上げを上げるために非常に重要です。そのためには、本記事でご紹介したペルソナ設定や共感マップといった手法が役立ちます。ペルソナ設定や共感マップは、関係者間で共通した人物像を認識することができるので、社内間のコミュニケーションも円滑にしてくれます。ぜひ本記事の例を参考に、自社の顧客に置き換えて作成してみてください。そして、作成したペルソナや共感マップをもとに、関係者間で顧客インサイトの理解を深めていくことをお薦めします。

なお、本記事はセミナーでお話しいただいた内容から一部を抜粋したものです。セミナーでは、ほかにもリピート購入を成功させた他社事例などたくさんのトピックスについてお話しいただきました。もっと詳しく聞きたい方は、次回の開催をご期待ください。