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【イベントレポート】Z世代×トライブマーケティング―デジタルネイティブ向け事業開発のプロが語る、Z世代に選ばれる事業創りの4つの実践Tips―

マーケティング戦略

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/11/29回では、Z世代に向けたサービス/ブランドを立ち上げようと奮闘されている新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、デジタルネイティブ向け事業開発のプロ 佐々木氏に、Z世代を捉える新規事業開発に必要な4つの実践tipsをご紹介いただきました。
「デジタルネイティブをターゲットに事業/ブランドを起こしたいが、彼らに選ばれるポイントが理解できていない」
「Z世代の消費特性の実践的な情報は得られておらず、今後の具体アクションや戦術まで落とせない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

佐々木 駿氏

佐々木 駿氏

株式会社manage4 デジタルネイティブ事業部事業部長/DXコンサルタント
電通入社後マーケティング部署を経て、電通デジタル設立メンバーとして出向。DX部門にて事業戦略策定、新規事業開発、アプリ開発等のPM/PMOとして活躍。また、デジタルネイティブ専門の特化型チーム「YNGpot.」、運営部署として「デジタルネイティブルーム」を設立し、リーダーを務める。同チームにてZ世代向け施策や大学生向けアプリ開発等を経験後、manage4に参画。

松井 優作氏

松井 優作

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/11/29時点のものになります。

なぜ「Z世代」はここまで注目されるのか?

企業のDXに向けた動きが加速する現在、新規事業開発やマーケティング面でZ世代への理解は欠かせないものとなっている。なぜ、「Z世代」はここまで注目されるのか。ウェビナーの冒頭では、その理由について簡単に解説した。

将来的なメイン消費者層となるZ世代とは?

グローバル基準によると、Z世代は1997年~2012年生まれの世代と定められている。Z世代は世界人口の3分の1の割合を占め、2019年には1981年~1996年生まれ――いわゆるミレニアル世代の総数を追い抜いた。

少子高齢化が進む日本においても、Z世代は将来的に消費者層のコアとなる存在であり、多くの企業でZ世代を考慮した事業展開が求められる可能性が高い。
また、Z世代は生まれたときからスマートフォンをはじめとしたデジタル技術に触れ続けているデジタルネイティブ世代でもあるため、DXの文脈と相まって重要性が増しているのだと言える。

Z世代特有の「推し活」をはじめとした消費特性

Z世代の特徴に目を向けてみると、従来の価値観とは大きな転換が求められるのも着目すべきポイントだ。インターネットを通じて膨大な情報量に触れてきたZ世代は、自分たちなりの合理的な判断軸で物事を決断するため、従来の「当たり前」や「慣習」にとらわれない。
消費行動もZを世代特有の価値観が反映されており、いわゆる「推し活」をはじめとした自分の好きな物事に対しては、消費を惜しまない傾向が顕著だ。

事例で学ぶ、「推し・好き」に寄り添うトライブマーケティング/スモールマス戦略

限られた自由な時間を自分の「推し・好き」に費やすZ世代。彼らの心を捉えるには、従来のようなマスマーケティングのみでは通用しない。そこで今回講師の佐々木氏に教えていただいたのが、トライブマーケティング/スモールマス戦略の重要性だ。

トライブマーケティング/スモールマス戦略とは?

トライブマーケティング

「トライブ」とは特定の種族や部族のことで、「トライブマーケティング」は共通の興味や関心、属性、嗜好を持った人たちのコミュニティに対するアプローチ手法を指す。「分散的に商品・サービスの魅力を発信するのがトライブマーケティングの大きな考え方」であると佐々木氏。

松井:企業として一つのストーリーを持ちつつも、トライブごとに打ち出し方を変えるのは難しそうです。やはり難易度は上がるのでしょうか?

佐々木:そうですね。ただ、数パターンのバナー広告を出してABテストをするといった施策は、一般的にも実行されています。また、トライブに近しい特徴を持っているインフルエンサーやタレントを起用することで、情報を効率的に分散化させる手法もあります。

スモールマスマーケティング

スモールマスマーケティングは花王が提唱した概念で、トライブと同様、セグメントを細かく区切りながら市場全体へとアプローチを図るマーケティング手法だ。

佐々木:例えばこれまでは「10代女性」など、ざっくりとしたパイが取れるセグメンテーションが一般的でした。ここに「ニキビに悩んでいる10代の思春期女性」という変数を加えることで、一定量のボリュームが取れるセグメントを作っていくのが、スモールマスマーケティングの考え方です。

トライブマーケティング/スモールマス戦略を実装した企業事例

トライブマーケティング/スモールマス戦略は、すでに多くの企業で実装されはじめている。例えば、大塚製薬が自社の「イオンウォーター」を、「サウナ好きのミレニアル/Z世代」と掛け合わせて打ち出したのも好事例だ。

佐々木:イオンウォーターは、ポカリスエットとどう差別化するのかが議論されていたようです。CMでは「甘すぎず、大人でも飲みやすい」という打ち出し方をしていましたが、サウナブームの到来に伴って早いタイミングから銭湯に置かれるようになっていました。
サウナのパイオニア的なメディアである「サウナイキタイ」とコラボし、「サウナにはイオンウォーターが一番良い」という内容を訴求。サウナブームを牽引してきたミレニアル世代を中心とした男性に、どんどん入り込んでいきました。

松井:昔は銭湯といえばコーヒー牛乳でしたが、それを完全に置き換えるぐらいのポジションになった事例かと思います。

Z世代にトライブマーケティング/スモールマス戦略が有効な理由

成功事例にあるように、Z世代は「自分自身の強い興味」に関わる情報にリーチした瞬間、一気に購入フェーズへと移る。佐々木氏曰く、「興味と認知がほぼ同時に起きる」のだという。
このような観点から、Z世代にトライブマーケティング/スモールマス戦略が有効な理由をまとめたのが以下のスライドだ。

佐々木:トライブマーケティング、スモールマスマーケティングというフレーム自体が重要なのではありません。コンテンツや情報があふれている中で興味の入り口を作る一つのきっかけとして、トライブ的なアプローチを活用すると、情報が浸透しやすくなるのです。

Z世代に向けた事業開発に必要な4つの実践Tips

では実際に、トライブマーケティング/スモールマス戦略を活用しながらZ世代に向けた新規事業開発を行うには、どんなポイントを考慮すれば良いのだろうか。今回は4つの実践Tipsとして教えていただいた。

[Tips.1]チーム:若手(当事者)と上世代で本気の後見人が揃う

松井:最初のTipsはチームですね。チームの本来あるべき望ましい姿とは、どのようなものなのでしょうか?

佐々木:よくあるのが、受容性評価による定量的な評価があっても上申過程でうやむやになってしまう、現場の担当者が変わってプロジェクト自体が立ち消えになってしまうといった失敗です。
例えば味の素さんは「Z世代事業創造部」を立ち上げて、1年ほどで新商品をリリースしました。若い人の熱量を活かしてプロジェクトを運用するのはもちろん重要ですが、それを束ねるマネージャークラスの存在が大きいようです。マネージャーが、役員や経営層とどんなコミュニケーションを取るのかにも左右されますね。いかに上の世代が新しいチャレンジにコミットしていくのかによって、事業開発の成否が決まるのです。

[Tips.2]アプローチ:新商品・新サービスの開発は必ずアセットありきで考える

松井:2つ目のTipsがアプローチで、新商品・サービスの開発は必ずアセットありきで考えるというコメントをいただいています。非常に原理原則に則っていると思いますが、現場ではどんな失敗があるのでしょうか?

佐々木:「自社のアセットを無視していいから、Z世代のニーズから着想を得て商品・サービスを作りたい」と言われたことが実際に何度かあるのですが、基本的に上手くいきません。どこかのタイミングで「どうしてうちがやるんだ」と問われ、頓挫するリスクになります。やはり自分たちが持っているアセットや技術を使って商品を作りましょう。
スライドの右側にアンゾフのマトリクスがありますが、既存製品を若者向けのおしゃれなパッケージにする、そこに体験を乗せて違った見せ方をするといったやり方が、一番ハードルは低いでしょう。

[Tips.3]プロセス:共創=全プロセスにターゲット世代の声を取り込む

松井:3つ目のTipsでは、全プロセスにターゲットの声を取り込むことが重要だと伺っています。こちらはどういう内容でしょうか?

佐々木:これは共創と呼ばれるクリエーションですね。キーワード自体はマーケティング活動の中でかなり使われていると思いますが、限定的に解釈をせず、本当に一緒に作っていくつもりで取り組むのが大事です。今の若い世代が何を楽しんでいるのか、トレンドをリサーチするところからきちんと若者の声を取り入れましょう。そこから得られた示唆に対してもディスカッションの機会を設け、アイディエーション時にも今、求められているものを若者に直接語ってもらうのが重要です。

[Tips.4]社内突破:上申時には、数字とZ世代の生の声と、見て・触れるものを

松井:最後が社内突破ですね。ここでも「あるべき姿」を挙げていただいています。

佐々木:社内に投資会議用のフォーマットがある場合は、それを用いた起案資料のドラフトをプロジェクト開始のタイミングでインストールするのが大事です。その中で絶対に必要なのが、事業数字上のシミュレーションや定量ファクトです。プライシングの幅や必要なユーザー数、運用保守のコスト、販促管理費などは、仮説ベースで証明しておきましょう。

松井:さらに、定性ファクトとなるのがターゲットの声ですね。

佐々木:基本的にはインタビュー結果でいいのですが、より生々しさを演出するなら動画を撮影して見せるのもいいでしょう。私は昔、大学生を現場に連れてきて役員と話してもらったことがあります。

松井:スライドの最後にある「誰が見てもわかるモノ」というのは、プロトタイプですね。

佐々木:特に、ビジュアルは絶対に作ったほうがいいですね。言葉やドキュメントだけだと、伝えられる世界観に限界があります。

Z世代×トライブマーケティングまとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。Z世代×トライブマーケティングにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
Z世代×トライブマーケティング―デジタルネイティブ向け事業開発のプロが語る、Z世代に選ばれる事業創りの4つの実践Tips―
本ホワイトペーパーは、2022年11月29日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。Z世代に向けたサービス/ブランドを立ち上げようと奮闘されている新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、Z世代を捉える新規事業開発に必要な4つの実践tipsをご紹介しています。