【イベントレポート】成長ステージ別広報戦略 ―コロプラ社の未公開→東証一部上場までを支えたプロ広報が語る、戦略策定のフレームワークと4つのポイント―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/06/23回では、ステークホルダーに企業価値を正しく伝えていく広報戦略に尽力されるご担当社の皆様に向けて
コロプラ社の未公開→当時の東証一部上場までの急成長フェーズを広報の側面で支えた、広報・PRのプロ 斉藤氏にコロプラ社で実践した事例から企業フェーズごとの広報戦略のポイントをご紹介いただきました。
「企業の知名度を上げ、たくさんの顧客にサービス/商品を知ってもらいたい」
「広報戦略/コーポレートブランディングを強化しブランド価値を上げていきたい」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
斉藤 久良良氏
株式会社プラスカラー取締役COO
モバイルコンテンツプロバイダーへ新卒入社し広報を中心にIR、マーケティング、秘書、サイトディレクターなど幅広い業務に従事。2011年にスマートフォンゲームを開発する㈱コロプラへ入社。上場を機に広報・IRチームのマネージャーに就任し、メディアリレーションを中心とした社外広報、社内広報、企業ブランディング、CSR活動、機関・個人投資家とのコミュニケーションなどを担当。17年に同社退職後、フリーランス広報として未経験広報人材育成を中心に、主にスタートアップ・ベンチャー企業の広報活動をサポート。19年3月より㈱プラスカラーの取締役に就任。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
板垣 和水
イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/06/23時点のものになります。
Contents
今、広告宣伝よりも広報戦略の立て方が企業にとって重要な理由
現在、資金を投下して企業そのものや商品・サービスを露出する「広告宣伝」は、他社との差別化に限界が訪れている。2000年代に比べるとデジタルデータ量が1万倍にまで増加しており、単純にマスメディアへ露出するだけでは情報が埋もれ、ターゲットにリーチする可能性が低くなってきたからだ。
また、消費者の購買理由は機能的価値から情緒的価値を超え、「自己表現価値」――すなわち、自己表現や自己実現につながるかどうかがより重視される傾向にある。その商品を手にすることで、どのような自己表現ができるのか。ここを訴求するには、「広告」よりもむしろ、社会と長期的な信頼関係を構築できる「広報(PR)」が欠かせない。
大手メガベンチャー・コロプラの事例に学ぶ、成長企業の広報強化のやり方
広報戦略で最重視すべき目的は「モノ・ヒト・カネ」
広報は企業側からの情報発信の意味合いが強いものとして捉えられているが、実際には「広聴」――世の中が求めている意見や要望の情報収集も欠かせない。企業と市場、双方向のコミュニケーションが必要である点を前提としつつ、広報活動のポイントとなるのは以下の3つの目的だ。
今回斉藤氏に語っていただく広報戦略は、フェーズに応じてモノ・ヒト・カネ、どれが目的なのかを定めて実施するマインドが必須だという。
[成功事例:株式会社コロプラ]斉藤氏のジョイン~東証一部上場まで
実際に斉藤氏が実践した広報戦略について、コロプラの事例を解説していただいた。斉藤氏は2011年7月、コロプラがマザーズ上場に向けて動き出すフェーズでジョインしている。
[step.1]上場前
最初のステップとなるのは上場前。社員は100名程度の規模で、社外広報を強化していくタイミングだった。斉藤氏は上場に向けてIR体制を整えることも前提に、広報チームの組成に乗り出したという。
斉藤:まず広報チームがやるべきことは、広報の目標や評価軸の策定、そして目標達成に向けた体系的なアクションの設定です。当時のコロプラはメディアの新規開拓ができていなかったため、開拓できたメディア数を目標値として定めました。
[step.2]上場準備本格化
樋口:次の上場準備本格化のフェーズでは、IR観点も必要になると伺っています。
斉藤:上場する際にはさまざまな開示義務が発生するので、そういったルールを押さえた上で広報活動を行うことになります。
このフェーズは「守りの広報」にあたると斉藤氏。活動の仕方も異なるため、サービス広報とコーポレート広報を切り分けたのが大きな動きの一つだ。
斉藤:私が入社した当初はサービス広報を中心にマーケティングチームが担っていました。サービス広報はマーケティングと紐付けて行うので「攻めの広報」でも良いのですが、上場となるとステークホルダーが増えること、市場からの信頼・信用を意識する必要があることから「守りの広報」を意識する必要があります。そのため、会社全体の情報発信を行うコーポレート広報とIRはセットにしました。
[step.3]マザーズ~東証一部上場後
最後のステップは実際にマザーズ上場を果たし、さらに東証一部へ鞍替えするフェーズだ。
樋口:ここではインナーブランディングを強化されたそうですが、どのような背景があったのでしょうか?
斉藤:上場に伴う企業規模拡大によって従業員数が一気に増えたため、経営サイドの思いや考えが伝わりづらくなってきました。また、横のつながりも希薄になりがちで。縦横のコミュニケーションがきちんと取れるような形で、インナーブランディングを強化したのがこの時期です。
[成長ステージ別]広報戦略策定における4つのポイント
コロプラの事例も踏まえ、ここからは広報戦略策定におけるポイントについて詳しく教えていただいた。具体的には立ち上がり期・上場準備期・上場後/拡大期の3つのフェーズに対して、「GOAL」「TARGET」「MESSAGE」「ACTION」という4つのポイントを駆使して対応していくことになる。
[step.1]立ち上がり期
立ち上がり期の戦略に関してはBtoB企業の事例とともに、どのような戦略を打つべきなのか解説していただいた。
斉藤:この企業様は「認知拡大と市場からの信頼醸成」のため、盛り上がり感を出す、注目を集めるというゴールが設定されていました。最終的には会社のミッションをメッセージとして届けていくわけですが、例えば採用向けか否かによって、メッセージングの内容は変えています。
実際にゴールを達成するためには露出の数が必要だと定め、テレビや日経への露出を何本取るべきか、期間とともにKPIを定めて戦略を打ち立てていきました。
このとき重要なのは、自分たちでアクションを評価することだという。
斉藤:KPIは会社ごとに異なりますし、基準もさまざまなので、自分たちで決めてスコアリングをしていきましょう。重要なのは他社比較ではなく、自社内の経年比較です。アクションを振り返り、指標をベースにしっかり評価を重ねていくのが大事ですね。
[step.2]上場準備期
上場準備期においては、上場に向けた広報体制の強化を行うため、株主をはじめとしたステークホルダーに自社の信頼性をメッセージングしていくことになる。
斉藤:コロプラ社の時はこの「守りの広報」において、社内向けに情報発信のためのルールやポリシーの整備と啓蒙を行いました。例えばSNSを使うにしても、言わないでほしいことなどをしっかり定めます。
啓蒙して終わるのではなく、社内研修や朝会などを通して継続的に浸透させるのが非常に重要です。
メディアポリシーの作り方については、例えばマクドナルドやローソンなどの企業が外向けに公表している例もあるため、参考にしながら自社なりのルールを作っていくのが良いそうだ。
[step.3]上場後/拡大期
最後のフェーズのゴールは、具体的な時価総額の到達。ターゲットは国内外の機関投資家となる。自社の成長戦略について、いわゆるIR・CSR活動を通して伝えていくのがこのタイミングだ。
斉藤:上場するとさまざまなステークホルダーとの付き合いが増えていきます。これまでは直接のお客様や従業員に向けて広報発信していたものが、例えば株主や投資家、地域社会に向けたものへと変化するでしょう。特に地域社会に関しては、CSRやSDGsなどの観点で自社が業界のリーディングカンパニーであるメッセージングをしながら、アクションを考えるのが重要です。
また投資家向けへのメッセージでコロプラが特にこだわっていたのが、利益や経営成績などの数字とともに、数字の裏付けとなる根拠、そして未来に向けた成長戦略をセットで説明することです。KPIとしては、カバレッジの数や説明会、1on1の参加人数などを追いかけていましたね。
樋口:最終的な時価総額は、利益×期待値の掛け算によって算出されるそうですね。
斉藤:時価総額にはさまざまな求め方がありますが、コロプラは利益×期待値を企業価値と言い換えて、ここをどれだけ高めていくかを意識しながらコミュニケーションをしていました。
その際、一般的には自社の技術力などを全面に押し出しがちなのですが、まずはマクロ情報として市場や業界を俯瞰しましょう。その上で「伸びていく市場があるからここで戦っていく」「自分たちにはこんな競合優位性がある」といった、ミクロ視点のストーリーを語るのがポイントになります。
成長ステージ別広報戦略まとめ
今回のウェビナーのポイントを以下のようにまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。成長ステージ別広報戦略にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。