【イベントレポート】ドコモの破壊的イノベーション ―事例で見る、大企業が社外と共創し爆速でビジネスを立ち上げる社内新規事業創出の仕組み3つの実践ポイント―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/06/21回では、イノベーション創造企業に成長したいけどなかなか上手くいかないと悩む皆様に向けて、
ドコモのオープンイノベーションをリードし、事業開発に大きく貢献してきた吉田氏と小栗氏に、破壊的イノベーションを巻き起こす社内新規事業創出の仕組み3つの実践ポイントについてご紹介いただきました。
「新規事業創出の制度はあるが、実際にリリースできた事業が一つもない」
「イノベーション創造企業を目指しているが、経営陣と現場との間に温度差を感じる」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
吉田 直政氏
株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 担当部長
NTTドコモでインフラ開発、サービス開発、新規事業創出に従事。オープンイノベーションをリードする新規事業創出プログラム「39Works」「トップガン」の企画・設計・実行を担当し、7年間で40以上のプロジェクト事業化挑戦に寄与。さらに技術を核にサービス企画、事業創出に携わり社内外のメンバーと20以上のプロジェクトを社会実装するなど、社内外を巻き込んだ革新的な新規事業を生み出す仕掛け人。
小栗 伸氏
株式会社NTTドコモ 12のAIプロジェクトを立ち上げた新規事業開発のプロ
NTTドコモ入社後、音声認識・機械翻訳・自然言語処理技術を軸にした製品企画・事業創出に携わり、「AI電話」をはじめとした12のプロジェクトを製品化・事業化。現在は、「トップガン」での事業創出に取組む傍ら、株式会社Visionary Engineを設立し、複数のスタートアップを支援。IFデザインなど、国内外で12件の賞を受賞。経済産業省「始動Next Innovator2021」にも選抜される新規事業開発のプロフェッショナル。
村田 拓紀
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー
中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。
酒井 あすか
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/06/21時点のものになります。
Contents
【事例】ドコモが7年間で41のアイデアを事業化したオープンイノベーションの裏側
ドコモの新規事業創出の仕組みは主に2つで、一つは社外コラボレーションを重視したオープンイノベーション型の「39works」、もう一つが社内の技術アセットを活用した「トップガン」だ。
今回は特に39worksに焦点を当て、仕組みや実際の新規事業創出の流れ、ポイントなど全体像について伺った。
ドコモの新規事業創出の仕組み「39works」とは
39worksのメリットは、社内で生まれたアイデアを形にするために社外のアセットを活用する点にある。協働によるスモールスタートで、クイックにビジネスを育むプログラムなのだ。「コラボレーション」、そして「アイデア」を活かす2つの側面を持った仕組みなのだといえる。
吉田:39worksは2014年から開始しています。ちょうど「リーン開発」や「アジャイル開発」といったキーワードが浸透し始めたタイミングでした。当時のドコモは通信インフラをベースに社内プロセスの全てが構築されていましたが、そういった自前のアセットで巨大な開発をするのではなく、社外と組んでクイックに小さく回す手法にチャレンジすべきだと考えてスタートしました。
39worksを通して生まれた企画数は延べ1161件。事業化プロジェクトは41件にのぼり、このうち2件は子会社設立にまで至っている。
新規事業創出の仕組みを創出した2つのポイント
39worksの仕組みを上手く動かすポイントは、「改善サイクルの高速化」と「傘を作る」の2点にあるという。具体的にどんな取り組みを行ったのか、一つずつ伺った。
[point.1]改善サイクルの高速化
村田:改善サイクルの高速化のために、会議体の変更をされたと伺っています。これはガバナンス目線と新規事業目線、両方のルールを共存させてシンプルにし、決裁者を少なくしたということですね。もともとは何が障壁だったのでしょうか?
吉田:決裁者の数が多いのが問題でしたが、これはこれで「さまざまな視点でサービスをより良いものにするため」という理由があります。しかし39worksはオープンイノベーション型で、「ドコモ」の冠を使わずに提供するモデルも存在します。その場合は相応にシンプルなチェック方法があるはずなので、最低限のメンバーで議論させてもらうようにしました。それが結果的にスピードアップにつながっています。
また39worksではステージゲート法を採用し、期間とKPIも明確に定めている。一定のフェーズで基準をクリアできなかった場合はピボット、あるいは検討を中止し、「止める」意思決定も迅速に行えるようノウハウを構築している。
[point.2]傘を作る
もう一つのポイントが「傘を作る」。これは端的に言えば、新規事業を創出するために39worksに興味を持つ人を増やし、協力を得やすいような体制を構築するということだ。
村田:人財獲得について掘り下げたいのですが、「考えや想いを可視化して伝える」点において、吉田さんはどんな取り組みをしていますか?
吉田:プロモーションの強化により、ある意味大げさでかっこいい内容を発信しつつ、他方では自分自身の考えをサマリーしたペーパーをそのときお会いした人になんとなく渡しておく、なんてことをしています。それがつながりになり、「今度一緒に仕事をしましょう」という話になったりして。大きい流れと小さい仕掛けを両輪で回すイメージですね。
村田:実際に小栗さんも、吉田さんの熱いメッセージをきっかけに新規事業に参加するようになったと伺っています。
小栗:新規事業とは全く関係のないプロジェクトで吉田さんとご一緒したときに、メッセージをいただきました。「これは自分と一緒に仕事がしたいと書いてあるんだ」と錯覚し、連絡を取りましたね(笑)。
アイデア創出から顧客獲得・事業成長まで仕組み化する39worksの全体像
そんな39worksの仮説検証ステップの全体像は以下の通りだ。アイデア創出から顧客獲得・事業成長までの段階を会社として仕組み化しているわけだが、多くの企業でボトルネックとなるのは最初の「アイデア創出」の段階だ。
村田:アイデアがなくなってしまうというのは、やはり新規事業創出の中では大きなイシューになるのでしょうか?
吉田:そうですね。基本的に後半フェーズにいくほどリソースがかかるため、次の弾を仕入れる余裕がなくなってしまうんです。ここは持続的に新しい知恵やアイデアをインプットする仕掛けが大事です。
新規事業創出の成功と失敗を分ける3つの要因
以上を踏まえ、新規事業創出の仕組みを構築したときに成功と失敗を分ける要因として考ええられるのは、以下の3つだ。
吉田:1は「登るべき山」としていますが、私はよく「高尾山を登るのか、エベレストを登るのか」という言い方をします。高度や場所に対する解像度が上がればメンバーの納得度は高くなりますし、ゴールさえしっかりしていればなんとかなりそうだとも思えます。プロジェクト成功のためには重要ですね。
社外と共創して爆速でビジネスを立ち上げる新規事業創出の方法論
さらに、新規事業創出の仕組みを作っていくには「3本の矢」が存在するという。「素地を構築する」「外部との文化・風土融合」そして「事業ごとの最適な手段選択」。これらについても、具体的に解説していただいた。
[point.1]素地を構築する
村田:素地を作るために、ドコモさんでは厳しい研修なども取り入れながら人材育成をしているそうですね。一方で人材育成は「アイデアソンの開催に止まってしまう」ケースに陥りやすいとのことですが、これはなぜ失敗につながるのでしょうか?
吉田:アイデアソン自体は悪くないのですが、アイデアソンが目的化するケースがときどきあります。その上でアイデアを出そうとしてもなかなか上手くいかず、いわゆる研修プログラムになってしまいます。成功するのは、「やりたいテーマ」ありきで、集合知をブラッシュアップするようなケースですね。
[point.2]外部との文化・風土融合
村田:外部との文化・風土融合もなかなか難しいところです。スライドにあるようにお互いの強みを持ち合うというのがまさに協業する目的だと思いますが、ここを実現するにはまず相性が重要なんですね。
吉田:そうですね。細かい手法もありますが、もう一歩先の大きな考え方や狙いを合わせます。そういう意味で私は「地図よりもコンパス」という言葉が好きです。地図を一つずつ描いて細かく設計するのは新規事業では無理なので、大きなコンパスの方向性を合わせるのが大事です。
小栗:ビジョンや想いがズレているとそのほかの細かい部分も本当に噛み合わなくなってしまいますから、私も初期フェーズであればあるほど重視します。
[point.3]事業ごとの最適な手段選択
村田:3つ目が事業ごとに最適な手段を選択していくということで、特に出口から手段を選択するのが重要だと伺っています。ドコモさんからは以下のような四象限のプロットをいただいていますが、これらを判断する基準はあるのでしょうか?
吉田:細かな基準よりも「事業がスケールする手法は何か」という観点を見ています。事業を作った人の想いやケーパビリティの話でもありますね。
また「出口から手段を選択」が重要なのは、結局出口で求められるKPI、KGIの基準とマッチしているかどうかをしっかり検証しておかないと、次に進めないからです。そういう意味でも、出口から見るのは大事ですね。
ドコモの破壊的イノベーションまとめ
今回のウェビナーのポイントを「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下のようにまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。ドコモの破壊的イノベーションにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。