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【イベントレポート】100億稼ぐ新規事業計画書の創り方 ―130以上の新規事業を手掛けたプロが事例で語る、R&Dと新規事業開発のゼロサムゲームで勝つ秘訣―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/06/07回では、多額の研究開発費を投下しても、全く新規事業につながらず苦戦している新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、新規事業のプロフェッショナル 田中氏に、新規事業の死の谷の乗り越え100億稼ぐ、新規事業計画書の創り方をご紹介いただきました。
「新規事業を大きくしたつもりなのに社内評価を得られず次の予算獲得にも苦労し、心理的安全性がない」
「多額の研究開発費を投下しても、全く新規事業につながっていない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

田中 翔一朗氏

田中 翔一朗氏

Tanaakk株式会社 代表取締役
東京大学在学中から個人事業で活動し、卒業後はSAPジャパン、オートノミー、日本HPで営業を経験。2018年国内最年少で上場企業取締役に就任(㈱バルクホールディングス)、2013年7月からTanaakk株式会社を創業し代表取締役を務める。通算130社の新規事業収益化実績をHITSERIES®️として標準プロセス化して提供。自身の2社のEXITを含め、7社の株式流動化実績。市場調査、プロトタイプ開発、クラウドDevOps、セキュリティ対策からRevOpsによる増収実現、資本政策までワンストップで提供できる新規事業のプロフェッショナル。

佐々木 博明氏

佐々木 博明

プロシェアリング本部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
ディー・エヌ・エー、リクルート、ビズリーチにてWebマーケティングや新規事業立ち上げなど幅広く担当。その後、PERSOL INNOVATION FUND合同会社でHRTech企業への投資案件やM&A業務に従事。サーキュレーション入社後は大手企業様へのDXや新規事業の支援に従事。製造業・流通業・通信など幅広い業界に対して、DX推進に必要なマーケティング・セールス・ECの戦略立案、業務・システム改革、組織改革などのコンサルティング実績を持つ。

酒井 あすか

酒井 あすか

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/06/07時点のものになります。

なぜR&Dに多額の予算が投資されても新規事業が育たないのか?

本来R&Dの目的は、研究や開発に予算を含む資源を投資し、新たなビジネスチャンスを創出することだ。新規事業を生み出す上では無視できない取り組みであり、現在市場を席巻しているテクノロジーという観点においても、R&Dの重要性は自明となっている。

実際にアメリカは、R&D投資に比例してGDPも成長傾向にある。しかしこと日本においては、R&D投資が実際の売上に直結していない。R&Dによる「爆発的成長」が、日本では見込めていないのだ。その理由は、以下の2つにある。

「100億の事業」を作るには、8年後に100億円という未来から現在に遡ったマイルストーンをおく『バックキャスティング』が必要になるが、日本のR&D投資を新規事業につなげる場合、前年比や前月比など、前例を踏襲する慣習である『フォアキャスティング』の枠を超えることが難しい。

実例で学ぶ、クラウドIoT事業のアイデア立案からカーブアウトまで実現した新規事業とは?

R&D投資の結果、どのように短期的な売上――100億規模の事業を作っていくのか。今回はここに主眼を置いて、ウェビナーを進めていった。

通算130社の新規事業収益化を達成した田中氏が取り組んでいる領域

講師の田中氏はこれまで数々の企業を支援してきた、資本政策までワンストップで提供できる新規事業のプロフェッショナルだ。通算130社の新規事業収益化を達成し、官公庁や国内大手上場企業を中心に実績を積み重ねている。
これまでに田中氏が取り組んできたのは、主にテクノロジー領域だ。国内最年少のCTOを務めた経験も活かしながら、5年で年商100億円のイノベーション型事業投資計画の策定と実行を大手企業と進めている。

成功事例.1:老舗自動車部品メーカー

まずは、田中氏が実際に手掛けた事例を2つご紹介していく。1つ目の事例は、愛知県豊橋市に本社を構える武蔵精密工業株式会社。老舗の自動車部品メーカーだ。
同社は国外のイノベーション型ベンチャー企業への投資とエグジット実績を国内にも転用するため、日本においてもイノベーション型投資と経営の成功事例を作るため、豊橋発ユニコーン企業の創出に2017年から取り組んでいる。

田中:武蔵精密工業さんはもともと部品やハードウェアに強い企業で、グローバルに数多くの工場を持たれています。その中で始まったのが保育園向けのハードウェア事業であるicuco(イクコ)だったのですが、ハードウェアには在庫リスクがあるため、なかなか1億円を10億円にスケールさせる動きに踏み出せていませんでした。
これに対して我々が行ったのが、事業モデルの転換です。クラウドベースのインフラを用いてスケーラブルなアーキテクチャを構築し、在庫も工場もいらず、売上が毎月積み上がるサブスクリプション型のIoTクラウドビジネスを生み出しました。

成功事例.2:スイスAIセキュリティ企業

もう一つの事例は、2007年に創業した海外のセキュリティ専業企業ImmuniWebの新規事業のカーブアウトだ。同社はIBMをも凌ぐと言われるほどの高度な技術を持つ十数名規模のプロフェッショナル集団だったが、スペシャリティが高いがゆえになかなか人員を確保できず、売上が伸び悩んでいたという。

田中:スケールのために、今でいうPTaaS(ペネトレーションテストアズアサービス)モデルのプロダクトを日本で販売してほしいと依頼されました。ネット上でワンクリックすれば、ペネトレーションテストを短期間低コストで行えるものですね。
労働集約型から資本集約型のAIビジネスに完全転換を図った結果、年間2倍以上の成長軌道に乗っています。

佐々木:どちらの事例も既存事業から発想を転換し、クラウドなどを用いて仕組み化するというのが起点にありますね。どうすれば従来の事業を10分の1のコストにできるのかと考え、推進していくことが100億ビジネスのポイントだと感じました。

経営から予算獲得できる100億稼ぐ事業計画書の創り方

では実際に。100億稼ぐ新規事業へとビジネスモデルを転換するにはどうすれば良いのか、5つのステップで解説していただいた。

STEP.1 課題抽出、問題定義

佐々木:最初の課題抽出や問題定義は、多くの方にとってすぐにできることではないと思います。どんな考え方で進めると良いのでしょうか?

田中:100億の事業を創るなら、早くて3年、平均で8年かかります。8年間で売上100億を目指すには1000人の従業員が必要で、労働費の支払いに100億円必要です。さらに資本回転率は100%が目安なので、売上を10億出すには資本が10億、100億なら資本も100億必要になります。まずはこういった相場観を知っておきましょう。

佐々木:投資が必要であるという、大前提の理解は大切ですね。

STEP.2 短期計画策定

次のポイントは、短期計画の策定だ。8年で100億の新規事業を目指すとして、まずは1億円のARR(Annual Recurring Revenue)――年間経常収益を作ることが目標になるという。

田中:1億円というと、地元の温泉施設や地元で一番売れているパチンコ屋さんぐらいの収益を得るイメージでしょうか。大体従業員一人あたりの売上が1000万円の規模になることが多いです。クラウドビジネスの場合も1000~1500万円程度が平均です。いわゆるユニットエコノミクスを一つの単位として、ここが上手くいったら全国展開も成功するという考え方をします。

佐々木:佐々木さんが実際に活用されている投資基準が、以下のスライドですね。ここにはどんなポイントがありますか?

田中:これはNASDAQに上場した企業や急成長企業の平均値を取ったハードレートです。VCが投資をする際にはARRをチェックし、これが1億円に達すると、次は5億円を目指して4億円出資するのが商習慣となっています。

同様に、「売上が10億円なら彼らは6年で100億を目指せると判断し、投資をする。これを一つの目安にしましょう」と田中氏。最初の1億が重要とされる背景には、投資行動の原則があるようだ。

STEP.3 ビジネスプラン化

ビジネスをスケールさせていくイメージが握れたら、次に必要なのがビジネスプランの策定だ。実際に前年度比3倍の増収が実現できる原理について、市場調査や収益シミュレーションで提示する形になる。

田中:ここは事業投資に対してリスクとプレミアムを数値算定する話になります。リスクとは「不安」や「チャレンジ」の意味ではなく、株式価値が上下どの程度の振れ幅に収まるかを指します。プレミアムは、現在価値に対して将来の成長率を勘案した場合の余剰価値です。要するに「5年後に時価総額100億円になる企業が今10億で購入できるのなら、現在の純資産価値にプレミアムが乗っていたとしても、リスクを換算して、リターンの獲得可能性の方が高いと判断し、外部投資家は資金を出す(10億円で企業を購入すれば複利で年+60%の投資となる)」という内容が親会社の取締役会で投資判断を仰ぐ際の交渉材料になります。

収益シミュレーションについては、例えば以下のような具体例の提示も可能だ。

佐々木:ビジネスプランの細かい話をするというよりは、どのようにビジネスをスケールさせていくのかを握ってからプランの見せ方を工夫するということですね。

STEP.4 予算獲得

次に多くの新規事業担当者の課題となるのが、予算獲得だ。ポイントは、仮に赤字だった場合に、役員をどう説得して追加予算を取るのかだ。

田中:例えば決算上赤字だったとしても、一番上手く言っている部分――ユニットエコノミクスが成立している領域は必ずあるはずです。それが資本集約型であれば、単位あたりの資本投下により3年後には黒字化し、以後7年は利益を生み出し続けられます。量産化に伴い限界費用が下がり、限界利益が上がるモデルだと説明するのが大切ですね。

STEP.5 長期計画策定

最後は長期計画策定――特に、最終的に狙うべきカーブアウトについて、ポイントを教えていただいた。

田中:カーブアウトとは、端的にいうと経営陣や新規事業推進者のための武器です。子会社として事業を切り出せば、親会社からは売上1億に対して1億円の価値しか見出してもらえなくても、外部投資家からは10億円の時価総額をつけてもらえます。
つまり、カーブアウトは親会社としてはダウンサイドリスクを切り落とせる戦略でもあるんです。カーブアウト時点で親会社からの投資総額(キャッシュフローの下限)は確定し、子会社の時価総額が10億円になれば親会社の純利益(非上場株式評価益)になりますし、仮に300億で上場するなら、株式を50%保有しておけば、5年前後のプロジェクトで150億のキャピタルゲインも狙える。これをまた再投資に使えば、親会社・子会社ともに事業の早期段階で損失を最小化した上で、利益を最大化できるスキームになるでしょう。

100億稼ぐ新規事業計画書の創り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、以下のようにまとめた。

また、今回のウェビナーを受けて今すぐ取り組むべき内容には以下の3点となる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。100億稼ぐ新規事業計画書の創り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
100億稼ぐ新規事業計画書の創り方 ―130以上の新規事業を手掛けたプロが事例で語る、R&Dと新規事業開発のゼロサムゲームで勝つ秘訣―
本ホワイトペーパーは、2022年6月7日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。多額の研究開発費を投下しても、全く新規事業につながらず苦戦している新規事業責任者・経営企画責任者の皆様に向けて、新規事業の死の谷の乗り越え100億稼ぐ、新規事業計画書の創り方をご紹介しております。