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【イベントレポート】元GE戦略人事が語る ―世界基準のコーチング研修を全社導入するロードマップと3つのポイント―

人材開発・人材育成

18,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021/10/21回では、コーチングを活用し、組織強化を図りたいと考えている事業部長様や人事責任者様に向けてコーチングのプロとしてご活躍されている桜庭氏に、GEグループ会社で戦略人事責任者を務めた経験をもとにコーチングを全社導入するためのポイントご紹介いただきました。
「チームの成長を促し、自律した人材マネジメントを育てられるような中間管理職を増やしたい」
「1on1制度やコーチング研修を導入しているが、ティーチングで終わっており、次の一手がわからない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

桜庭 理奈氏

桜庭 理奈氏

35 CoCreation合同会社 CEO(元GEヘルスケア・ジャパン株式会社 執行役員 人事本部長)
多国籍企業数社にて戦略人事として活躍したのち、アジアパシフィック地域統括のHRビジネスパートナーとしてGEヘルスケア・ジャパンへ入社後、人事本部長、執行役員を歴任。2020年に35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)合同会社を設立し、多様な業態や成長ステージにある企業で戦略人事のノウハウが不在の企業間で、シェアドCHROサービスを開発提供し、経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、アドバイザリー活動を伴走型で支援。経営者や人事担当者向けの執筆コラムも多数出版。国際コーチング連盟認定コーチ。New Field Certified Coach。Minds at Work公認・ITCマップ認定ファシリテーター。

中村 侑太郎氏

中村 侑太郎

プロシェアリング本部 ビジネスデベロップメント部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
新卒で大手人材紹介会社に入社しメディア媒体の営業を経験後、全社人事に抜擢され北海道・九州地方のエリアマネジャーとして新卒200名以上の採用業務全般を推進。その後当時20名規模のサーキュレーションに入社し製造業向けプロシェアリングコンサル部門の垂直立ち上げに貢献。全社採用責任者を経て現在はマネジャーとしてナショナルクライアント向けコンサルティング部隊を統括。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2021/10/21時点のものになります。

なぜ今、コーチング研修が注目されているのか?

多くの管理職はテレワーク下でのマネジメントスキルに自信がない

VUCAの時代を迎えた近年、企業の人材育成の観点で「コーチング」の有用性が注目されている。コーチングの詳細については後述するが、注目が高まる一因として挙げられるのが、マネジメントそのものの在り方の変化だ。
特にコロナ禍によるテレワークの浸透によって、多くの企業は社員を遠隔でどうマネジメントすべきかという課題に直面した。端的に言えば、「マネジメントの難易度が上がっている」のだ。これは、以下のデータでも見受けられる。

「テレワーク下でのマネジメントが難しくなった」と回答したのは、7割にものぼる。変化する業務形態やコミュニケーション方法に対応するため、暗中模索が続いているのだ。

コーチングとは質問と対話を通して組織全体の活性化を試みる手法

では、チームマネジメントの文脈で各社が導入を進めるコーチングとは、具体的にどのようなものなのか。混同しがちなカウンセリングやティーチングと定義を区別するため、以下の四象限に整理した。

コーチングとは、質問によってゴールを明確にし、対話を通じて目標達成を支援する手法のことであり、コミュニケーションによって「自分自身で課題に対する答えを見つけ出すこと」に主眼が置かれている。教師と生徒の関係で物事を「教える」ティーチングや、「過去」の出来事を参照しながら新たな見方を見出すカウンセリングとは異なり、コーチングは「問い」「未来」の志向を持った手法だと言える。

コーチングを全社導入させるロードマップとポイント

コーチング研修は基本的に2つのフェーズ――準備・実行段階に分けられる。その中で工程としてはまず受講者を選抜し、コーチングに関する基礎知識を習得。そして実際にコーチングを体感してから、定期的な振り返り及び周囲からのフィードバックを行う流れが一般的だ。この1サイクルにかける期間は、およそ3~4ヶ月弱が目安となる。

とはいえ、上記のような流れでコーチング研修を進めても、全社的な浸透には至らないこともある。今回桜庭氏には、5つのステップの進め方とよくある落とし穴について教えていただいた。

STEP.1受講者の選抜

中村:全社員にコーチングを施すのはどうしても難しくなると思いますが、どのような背景や観点でメンバーを選抜することが多いのでしょうか?

桜庭:以前私が社内の人事を担当していた頃は、役職者を集めて参加するケースが多かったです。ただ、ここ5年は「意義のある同じ課題を持っている」「成長して自分を変えたいと思っている」といった共通項を持つ人たちを、手挙げ方式で集める方法に変わってきました。
手挙げ方式で集まった方々は持っているエネルギーも吸収率も違いますから、変化のスピードや幅、深さも、人事の一方的なセレクションで集められた場合とはかなり異なります。

「なぜコーチングが必要なのか」を明示した上で、意志を持って手挙げしたメンバーを集めたほうが、着地として上手くいくケースが多いと桜庭氏は語る。

STEP.2基礎知識の習得

次が、選抜した社員に対してコーチングという手法の定義を理解してもらうステップだ。ここで重要なのは、「How」だけではなく、コーチングの真の意味を理解することだという。

桜庭:私自身、3、4年前まではコーチングというものを正しく理解していませんでした。日本のマーケットにも、コーチングを理解している方は少ないでしょう。コーチングは1980年代にアメリカで生まれ、2000年代の初期にようやく日本に伝播してきた新しいものなので無理もありません。
ですから企業の中で人事から「コーチングをやってほしい」とマネージャーに伝えても、イメージがつかないのです。「こうしなさい」と何かを教えるティーチングや、先輩が自身の経験を後輩に伝えるようなメンタリングとは違い、我々はコーチングを練習する機会がありませんでしたから。コーチングはいわゆる「利き手ではない」状態なので、まずはコーチングとそれ以外の手法の正しい理解からインストールします。

STEP.3コーチングの体感

中村:コーチングについて理解した状態で「体感」のフェーズに移っていくのだと思いますが、座学で学んだことをすぐに組織のメンバーに実践してはいけないのでしょうか?

桜庭:例えば頭で自転車の乗り方はわかっていても、実際に乗って転んでみなければ、運転できるようにはなりませんよね。それと全く同じです。コーチングについて座学でインストールしても、3日後には忘れてしまいます。

実際にコーチングを体感するには、2つのやり方があると桜庭氏。

桜庭:一つは、私のようにコーチングを生業としているプロからコーチングを受ける方法。もう一つは、社内あるいは会社を超えた「コーチングサークル」を作る方法です。いずれの場合もポイントになるのは、学んだことを実践してみて失敗し、それを次の実践に活かすPDCAを回すことですね。

STEP.4定期的な振り返り

コーチングを体感したら次に振り返りを行うが、ここで桜庭氏が重視するのがあくまで「自主的に取り組むこと」だ。

中村:そもそもの「自律した人材を育てる」という目的でコーチングを始める企業も多いという意味では、人事や講師がお膳立てをしては元も子もないということですよね。

桜庭:そうですね。コーチングというのは、教え、教えられるだけでは会得が難しいプロセスですから、自分が興味を持って実践してみるということが、非常に大事です。自律的で前のめりな組織を作りたい企業であればあるほど、コーチングを習得するという全社の仕組みの中で、自主的に「自律」を体感できる仕組みは作っておいた方が良いでしょう。

STEP.5周囲からのフィードバック

中村:最後に周囲からのフィードバックを受けるフェーズに移りますが、桜庭さんは参加者の前後の変化についてどのような観点で設定していらっしゃるのでしょうか?

桜庭:まず、コーチングの体感自体が、人事評価されるようなKPIに紐付くようなものではないということは理解しておくべきです。よく「コーチングの前後で人事評価をしていいか」というご質問をいただきますが、紐付けた瞬間に参加者の方は萎えてしまいます。評価に入れるのは、コーチングのカルチャーが根付いて、「良いリーダーやマネージャーはコーチングを体現している」という定義ができた状態になってからのほうがいいでしょう。
初期段階であれば、あくまでも本人やチームの成長のビフォーアフターに着目したほうがいいと思いますね。図る手法は例えば360度のフィードバックサーベイやチームへのヒアリングなど、いくつかあります。いずれにせよ、本人やチームの成長度をなんらかの形でフィードバックし合うことが、効果測定として有効です。

【まとめ】まずは経営者自らがコーチングを受けるのがおすすめ

ここまでのステップを踏まえ、よくある落とし穴とその乗り越え方について以下に簡単にまとめた。コーチングは一朝一夕に身に付かないものであることを踏まえて、経営者も参加者も、意志を持って一定期間取り組み続けることがポイントとなるようだ。

その上で桜庭氏は、「経営者自らコーチングを受けること」を勧める。

桜庭:コーチングを導入した企業のメンバーから、「すごく良かったのに、なぜ経営層は受けないのか」と至極もっともなコメントをいただくことがあります。まずは経営者自らがコーチングを体感して、意義があればカルチャーとして浸透していくといいと思いますね。

桜庭氏がコーチングを導入した事例

ここからは、実際に桜庭氏がプロ人材として支援した企業の中から2事例ピックアップいただき、コーチングの全社導入にどのようなポイントがあるのかを具体的に伺った。

【事例1】創業100年の大企業が「受け身体質」から脱却

チームリーダーが価値創造・自律を促せる対話ができることが目標

最初のケースは、創業100年、従業員1万名を超える大企業の事例だ。日々の業務に追われてイノベーションが生まれにくくなっている現状を鑑み、チームリーダーが「価値創造が生まれるような会話」ができるようになることを目指してコーチングの全社導入が行われた。

研修の実施においては、「コーチングの価値が理解できずに受け身の状態」「今現在のやり方こそが正解だという思い込み」という2つのボトルネックが存在していた。
桜庭氏がそれぞれを基礎知識の習得、そしてコーチングの体感で解消したという。

「アドバイスをするだけがマネージャーではない」と認識する重要性

桜庭:基礎知識の習得のステップにおいては私が「コーチングとコーチングでないものの違い」について話すのですが、当初参加者の方からは「アドバイスをすることがマネージャーの価値だと思っていた」とよく言われました。アドバイスをできないマネージャーは不適格だと思い込んでいたのです。

桜庭:しかし、コーチングというものは、「社員自身にどんな可能性があるのか、それに対してどう取り組んでいくのか」という会話を行うものです。非常に前向きなエネルギーとやる気を生み出し、これまでメンバーにアドバイスをする際に苦しかった部分を、楽しめるようになります。
企業からは、「そんな前向きなエネルギーで会話ができる自分はすごい」という新しい価値を感じられるのは、管理職の方に非常に有効だとフィードバックをいただきました。

コーチングを体感し、従来のやり方だけにとらわれない考え方に変化

もちろん、座学で「コーチングなら自分自身を変えられそうだ」と思うだけでは意味がない。桜庭氏はロードマップ通り、コーチングを体感するステップも実施。桜庭氏自身がプロとしてコーチングを行うことに加え、社内で小グループを作り社員自身がコーチングを主催。自分が超えられていない壁や持つべき自主性を理解してもらったという。

桜庭:小グループによるコーチングでは、「利害関係のない人とコーチングサークルを組むことで、心が解き放たれた」という声が非常に多かったです。何年かぶりに自分を取り戻したという言葉もあり、感動しましたね。

【事例2】越境コーチングで社員一人ひとりが「相互的に変化を促せる」存在に

大手企業数社が集まり他社の良い部分を持ち帰る形でコーチングを浸透

次の事例は、大手企業による「越境コーチング」を行ったケースだ。そもそも越境とはなんなのか、桜庭氏に解説いただいた。

桜庭:越境というのは、「自分の境目を超えてあちら側に行き、違う景色を見ること」を指します。実は先ほどの事例1も、部門を超えた取り組みなので越境の一つです。今回の場合は企業を越境してサークルを作り、コーチングを導入していくという形にしました。

参加したのは、人材や食品など異なる業界の上位大手企業。自分自身が変わかりたい、他社とつながってみたいという個人が集まって研修を行い、以下のような変化が生まれている。

ここでも導入にあたってはいくつかのボトルネックがあった。一つは、社内研修では気を使ってしまい自分の殻を破れないこと。もう一つは、自身のありたいリーダー像が描ききれないことだ。これはどちらかといえば、これまで自社内だけで研修を行った場合に、各企業がぶつかってきた壁だ。

自社以外の文化や考え方を得て新しい自分の可能性を発見

まず、「殻を破れない」とはどういうことなのか。ヒントは、参加者自身の属性にある。実際の参加者には、大きく「社内で自分はマイノリティだと感じている人」と「自分自身が何をしたかったのか見失っている人」がいたと桜庭氏。

桜庭:マイノリティというのは、先鋭的なアイデアを持っているにもかかわらず誰にも聞いてもらえない、あるいは会社のレガシーな部分の改善に着手しようとしたらそれを押し付けられてしまったなど、組織の中での生きづらさを感じている人たちです。社内で本音が言えない、自分のパッションを追うことが難しいと感じている人たちですね。

そういった人たちが越境コーチングをすることによって、普段とは違う視点での自己認知が叶った。他者からのフィードバックをもらうことで、自社以外の文化や考え方を発見するに至ったのだ。

4ヶ月間で起きた参加者の変化を相互に確認

もう一つのボトルネックは「自身のありたいリーダー像が描ききれない」ということだったが、4ヶ月の研修期間を経て行われた最終発表会で、参加者は大きな変化を感じていたという。

桜庭:今回の越境コーチングはサークル内で参加者自らがコーチやクライアント(コーチングを受ける人)の立場で会話を重ねたのですが、これまでは盲点になっていた可能性に気付き、「やっと前に進めそう」と感じる方が多かったようです。あとは、他者からフィードバックをもらえることがうれしいという感想もありました。
また、自分自身でも変化を感じつつ、関わっている参加者の成長や変化を促せる存在になったというのが、一番大きな持ち帰りだったかもしれません。

世界基準のコーチングの全社導入まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに実践していただきたいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。世界基準のコーチングの全社導入にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
元GE戦略人事が語る ―世界基準のコーチング研修を全社導入するロードマップと3つのポイント―
本ホワイトペーパーは、2021年10月21日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。コーチングを活用し、組織強化を図りたいと考えている皆様に向けて、コーチングのプロとしてご活躍されている桜庭氏のご経験をもとにコーチングを全社導入するためのポイントご紹介しています。