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【イベントレポート】ユニコーン企業の急成長を支える事業開発 いま新規事業責任者が考えるべき、SDGs起点でTAMの大きなビジネスを創る5つのポイントとは?

新規事業開発

17,000名のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月6~8回のウェビナーを開催しております。

2021年6月15日は、「壮大なテーマでビジネスを創る必要」があるが、「アイディアが出てこない、出てきても事業との紐付けに苦戦している」新規事業開発責任者のために、急成長企業の事業開発手法をお届けしました。
講師は、現在日本では10社しか存在しないユニコーン企業の1社であるTBMにて新規事業を管掌されている山口氏。
大手メーカー・戦略コンサル・スタートアップそれぞれで新規事業立ち上げに携わってきた山口氏から、ユニコーン企業として急成長するTBMの事業開発の裏側について語っていただきました。
TAMの大きなビジネス開発に関するTipsが満載なので、自社の戦略のヒントにしてみてください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

山口 太一氏

山口 太一氏

株式会社TBM 執行役員 CSO
新卒で富⼠ゼロックス株式会社に⼊社後、プロダクションサービス営業本部にて 新規ビジネス開発を担当。
その後、PwCにて事業再⽣⽀援業務・クロスボーダーM&A案件におけるM&A戦略検討から実⾏⽀援、PMIまで各種プロジェクトマネジメントを実施。
2015年にTBMに参画。執行役CSOとして資金調達や新規事業、業務提携、経営・事業戦略立案を管掌。

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

TAMの大きなビジネスに挑戦するユニコーン企業

日本には3社しか存在しないユニコーン企業の定義とは

ベンチャー企業の中でも、特に投資家から有望視されるほど高い成長性を持つ企業は「ユニコーン企業」と呼ばれることがある。代表例として有名なのは、かつてのFacebook社やTwitter社など。ベンチャー企業であればユニコーン企業を目指すのも一つの目標となる。

ユニコーン企業には一般的に明確な定義がある。それは「創業から10年以内」「評価額10億ドル以上」そして「未上場」であることだ。実はこれらの条件を満たす企業は、日本において3社のみだ。

テクノロジー活用とSDGs起点の事業開発が企業を急成長させる鍵

抜きん出た成長性と市場評価が求められるユニコーン企業。世界に目を向けると、ユニコーン企業数の多さでは中国とアメリカが群を抜いている。その中で市場傾向を見ると、2つの要素が見えてくる。
まずは、ユニコーン企業の多くはテクノロジーを活用している点だ。そして、現在はESG投資が急成長を遂げている点も見逃せない。テクノロジーとSDGs、これら2つの潮流を掌握することが、ユニコーン企業としての飛躍につながるのだと考えられる。

ここで触れておきたいのが、TAM(Total Addressable Market)の概念だ。TMAとは、端的に言えば市場規模のことで、商品やサービスのニーズの大きさと捉えても良い。
自社が事業開発で狙う市場のTAMが大きければ、必然的に狙える将来的な利益や会社としての成長性も大きくなり、ユニコーン企業へ成長することも可能だ。一方で、それこそテクノロジーやSDGsが関連した大きな市場にはそれだけ競合も多く、スタートアップ企業が生き残るのは難易度が高いというジレンマもある。

今回のウェビナーでは、こうしたTAMの捉え方も主眼に据えながら、講師の山口氏に株式会社TBMの事業開発についてお話を伺った。

環境配慮型の素材を開発・製造するTBM社の概要

創業からわずか10年で国内企業評価額3位にランクイン

TBM社は2011年の設立から急成長を遂げ、現在国内企業評価額ランキングは3位、企業評価額は昨年9月時点で1,233億円にものぼる。

事業内容は、環境配慮型の素材の開発とそれらを利用した製品の製造・販売など。国内に2つの工場を持ち、東京に大型のラボも構えている。
さらに事業会社からの資金調達は累計150億円以上。山口氏は、「製品を注文いただいている顧客に大手の事業会社が非常に多い」と語る。製品と顧客企業とのコラボ案件が、そのまま業務資本提携につながるケースも少なくないという。

CSOの山口氏がビジネスの大きな方向性のハンドリングを担う

山口氏自身は、TBM社においてCSO(Chief Strategy Officer)、すなわち最高戦略責任者を担う人物だ。もとは事業会社に務めた後に、コンサルファームで事業再生支援業務に従事。ものづくりのロマンを感じて、2015年にTBM社にジョインした。

村田:山口さんは大きく3つのミッションを持っていらっしゃるということですが、ご説明いただけますか?

山口:当社は素材開発の技術をベースとした企業です。技術を適用できる事業やマクロ的な環境が日々激しく動く中で、どういった方向に事業を注力していくのかを定め、計画に落とし込んでいます。
あとは新規事業の立ち上げも行っていますし、国内外の大手企業とのコラボレーションや共同開発、業務提携などを進めるための窓口役もしています。

TBM社の事業が芽を出す以前の段階から尽力してきたという山口氏に、TBM社における事業開発の全容を伺っていった。

他社と一線を画すユニコーン企業によるSDGs起点の事業開発の特徴

あくまで事業として環境保全に取り組むことを目指す

TBM社が手掛けている素材は、「LIMEX」と「CirculeX」の2つ。LIMEXは安価で豊富な鉱物資源である石灰石から生まれた新素材で、プラスチックや紙の代替として利用できる。CirculeXは使用済みのLIMEXや廃棄プラスチックなど再生材料を50%利用する、資源循環を促進する素材だ。

素材の在り方からもわかるように、TBM社が解決したい社会課題は、地球資源を守ることだ。

村田:SDGsの文脈があるとはいえ、「資源」という文脈をビジネス化していくのは難しいと思います。その中でTBM社は「エコノミー&エコロジー」を目指しているのが特徴的です。寄付ではなく事業として取り組むことに価値があると伺っていますが、これはどういうことですか?

山口:環境事業といっても、持っている人が持っていない人に寄付をするような取り組みではなく、しっかりビジネスとして成り立つ形で事業を進めることで、持続可能性を担保できるのだと思っています。
特にグローバルに事業を大きく広げていくなら、あくまでビジネスとして環境に優しいことをやっていくのがポイントです。

ユニコーン企業として評価される3つの要因

地球に優しい素材を取り扱い、事業としてサーキュラーエコノミーを創出しようとしているTBM社。それだけでも企業として評価されるには十分のように思えるが、TBM社がユニコーン企業として台頭してきた背景はほかにもある。

村田:TAMの大きさやグローバル視点での戦略、そして人材の多様性の3つがユニコーン企業として評価されている部分だとお伺いしていますが、まず御社としてはTAMというものをどう捉えているのでしょうか?

山口:全体としては「プラスチックの資源」を見ています。脱プラが叫ばれる現在においてもプラスチック市場は伸びていくと言われていますし、新興国での人口増加や生活の質の向上が求められることで、環境配慮型の素材はしっかり存在感を示していけると思っています。

村田:最初からグローバル視点で考えていらっしゃったのでしょうか?

山口:事業がスタートしたときから、グローバルに貢献していく視点はありました。逆に言うと素材というものは、あまり国境に縛りがないんです。今も国境を越えて原料のサプライチェーンができていますし、「この国でなければ通用しない」というようなものでもありません。コストと品質、そしてデリバリーさえ合致すれば、どこでも使っていただけるものだと考えています。

村田:人材の側面でいくと、いろいろな業界のご出身者がいるとお伺いしています。

山口:開発や製造部分はプラスチック業界出身者をはじめ、工場運営や大手メーカーの品質保証を長年やってきたようなメンバーに支えられているのですが、事業開発分野に関しては本当に多様な業界から集まっています。私のようなメーカーやコンサルの出身者もいれば、商社やサービス系、あるいはリサイクル関係やデジタル系など、かなり多種多様なバックグラウンドを持つメンバーから構成されています。

TBM社の事例に学ぶ、SDGs事業の急成長の裏側

新素材の完成を待つのではなく現状のリソースでできることを探った

ここからは、実際にCirculeXがローンチされるに至ったプロセスを見ていく。
TBM社の事業は、紙の代替技術の確立からスタートした。これがLIMEXだ。「政府の補助金を得て第一工場が立ち上がってからが苦労の歴史だった」と山口氏。
新素材は一朝一夕でできるものではないため、莫大な時間をかけて開発を進める一方、現状の技術で提案できる内容から商品化を進めてキャッシュ化を図ったという。

山口:技術開発が進むのを待たずに、今あるものをどう商品化するかという観点で、まずは名刺をローンチしたのが最初の商品開発の歴史です。

その開発の途上で大量の廃棄物が出たため、これもなんとか製品化できないかと試行錯誤したという。その結果、紙代替技術が一気にプラスチック代替商品へと転じた。山口氏はこの展開について「一つのブレイクスルーにつながった」と述べる。

華々しい成功とは裏腹に、手探りで進められてきた新素材の開発。これがステップ2までのあらましだ。次のステップ3で、TBM社はTAMの確認を行っている。

バックキャスティングで既存市場のゲームチェンジに挑む

村田:スタートアップは新規事業を開発するときに、TAMを商品・サービスを提供する側の視点で考えがちだと思うのですが、御社の場合はどのような着眼点を持っていたのでしょうか?

山口:うちはよく「逆算」という言葉を使いますが、バックキャスティングの考え方を持っています。当社の場合は「プラスチックを環境に優しいものに置き換えていきたい」という問題が先にあったので、まず商品を既存のプラスチックマーケットに置きました。
LIMEXという製品の価値を提供できるマーケットがある程度あることは意識していたのですが、より圧倒的な規模とスピードで普及させていくために、高効率にリサイクルできるLIMEXの特性をいかに活かすかが重要でした。新素材のリサイクルシステムをゼロから構築することは多大なソーシャルコストを要するため、グローバルで社会課題となっている廃プラスチックのリサイクルニーズに着目し、LIMEXの普及と回収を加速させるために立ち上げた事業がCirculeXです。LIMEXとCirculeXの2つがあることで、市場のかなり大きな範囲に向けて提案できる状況になります。まさに逆算して、今ある資産でできることと、新規事業でアプローチできることを分けて考えました。

新たな市場を切り開くのではなく、既存市場に対するゲームチェンジに取り組む。その結果生まれたのがCirculeXという新規事業であり、技術確立・ローンチにまで至っている。

ユニコーン企業が事業開発で意識している5つのポイント

開発面では泥臭い努力を重ねながらも、非常に戦略性の高い事業展開を行っているTBM社は、事業開発でどのようなポイントを意識しているのか。ここでは以下の5つを抽出していただいた。

この中で、特に「オープンイノベーション型の推進」と「デジタル活用」、さらに「社会課題へのアプローチ」について詳しくご紹介する。

オープンイノベーション型の推進

村田:まずはオープンイノベーション型の推進ということですが、そもそも内製で進めようとは最初から思っていなかったのでしょうか?

山口:最初はものづくり型の研究開発スタートアップ企業として補助金もいただいて工場を立ち上げていますので、基本的には自社開発でやっていこうと考えていました。
ただ、技術を確立して事業展開として海外に出ていくプロセスについては、自分たちでお金を出して世界各国に工場を作るのではなく、技術を必要としている方に出資いただき、当社はそこに技術共有をして事業を広めていくという構想がありました。コンセプトとして、「全て自前」という考えはあまりなかったですね。それよりも、パートナーシップを組みながらスピーディにグローバル展開していこうと考えていました。

デジタル活用

村田:ここまでのお話を伺っていると、どちらかというとリアルが強い事業だと思いますが、その中でもデジタルでの仕掛けを作っているということですよね。

山口:そうですね。スライドの内容がまさに事例としてはわかりやすいと思いますが、LIMEXや廃棄プラスチックに関しては、一部のスーパーと連携して回収ボックスを置かせてもらっています。消費者の方がご家庭からゴミを持ってきて箱に入れたら、スマホアプリにポイントを付与します。貯まったポイントは当社が持っているECサイトでの商品購入や、NPOやNGOへのキャッシュの寄付に利用可能です。消費者参加型でデジタルアプリケーションを組み合わせている形ですね。純粋なものづくりだけではなく、デジタル活用の取り組みはどんどん水面下で仕掛けています。

社会課題へのアプローチ

村田:例えば回収プロジェクトを行う際、一般の方々に対して「社会課題を解決しよう」という共感を高めていくのは意外と難しいのかなと思うのですが、この点は何か意識されていることはありますか?

山口:やはりそこは、エコノミーとエコロジーを両立するという観点で、「環境に優しいアクションが経済的でもある」というベースがないと、慈善活動になってしまいます。環境に良いことをするのがファーストチョイスとして合理性のあるものだと捉えていただく必要があるので、製品に価格競争力があることはもちろん、何らかのインセンティブがあるから環境に良い取り組みに参加しようと思えるように意識しています。そこは当社の中に根付いている思想の一つかもしれません。

ユニコーン企業の急成長を支える事業開発まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「すぐに取り組んでほしいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。ユニコーン企業の急成長を支える事業開発にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
ユニコーン企業の急成長を支える事業開発 ―いま新規事業責任者が考えるべき、SDGs起点でTAMの大きなビジネスを創る5つのポイントとは?―
本ホワイトペーパーは、2021年6月15日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。日本に数えるほどしか存在しないユニコーン企業の1社であるTBM社の山口氏のご経験を元に、ユニコーン企業として急成長する事業開発の裏側についてご紹介しています。