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【イベントレポート】社内起業家の見つけ方 ―大手の新規事業支援実績50社以上のプロが語る、社内新規事業成功の鍵となる人材のアサイン方法と事例―

人材開発・人材育成

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2021年5月27日は、社内ベンチャーを立ち上げるにあたり、優秀な人材をアサインし成功確度を高めていきたいと考えている新規事業推進責任者の方々に向けて、新規事業立ち上げのプロ松澤氏に、大企業が社内新規事業を成功させる上で鍵となる人材をどうやって探し出せば良いのか、実例を中心に紹介いただきました。
「社内ベンチャーの仕組みはあるが、実はまだ大きな成功事例が出ていない。もしかしたら、適任者をアサインできていないのか?」
このようなお悩みを持たれている方は必見です。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

松澤 斉之氏

松澤 斉之氏

SBI大学院大学MBA講師
大学卒業後、商社等を経て、起業家育成学校の事務局長をつとめ数千人の起業家候補と接した経験とコーポレートアントレプレナー育成を新規事業として起案実行。国内最大規模の起業家育成プログラムを提供するスクールの企画運営統括責任者となり、その後マザーズ上場に貢献(後のビジネス・ブレークスルー)。また社内新規事業として企業内アントレプレナー育成サポート事業を立ち上げ、リクルート、三井不動産、NTTドコモなどの大手クライアントを獲得。現在は独立し主に大企業の新規事業開発を支援しながら、SBI大学院大学MBA事業計画演習講師としても活躍中。

中村 侑太郎氏

中村 侑太郎

プロシェアリング本部 ビジネスデベロップメント部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
新卒で大手人材紹介会社に入社しメディア媒体の営業を経験後、全社人事に抜擢され北海道・九州地方のエリアマネジャーとして新卒200名以上の採用業務全般を推進。その後当時20名規模のサーキュレーションに入社し製造業向けプロシェアリングコンサル部門の垂直立ち上げに貢献。全社採用責任者を経て現在はマネジャーとしてナショナルクライアント向けコンサルティング部隊を統括。

新井 みゆ

新井 みゆ

イベント企画・記事編集
新卒で入社した信託銀行では資産管理業務・法人営業・ファンド組成の企画業務に従事。「知のめぐりを良くする」というサーキュレーションのミッションに共感し参画。約1500名のプロ人材の経験知見のアセスメント経験を活かし、サービスブランディング、イベント企画等オンライン/オフラインを融合させた各種マーケティング業務を推進。

※プロフィール情報は2021/5/27時点のものになります。

Contents

なぜ、新規事業に“優秀”な人材はアサインされないのか?

新規事業立ち上げ手法を実施する際に浮かび上がる人材の課題

新規事業立ち上げという文脈で一つ大きなテーマとなるのが、その手法だ。広く考えるとM&A(買収)も新規事業を立ち上げる手法として捉えられるし、個人レベルにまで落とし込むと既存の業務以外の部分で行う自学自習が新規事業の芽となるケースもある。

その中でも、特に今現在何らかの新規事業を立ち上げたいと思っている企業においては、ワークショップやハッカソン、アイディアソン、社内ピッチコンテストなどの活用を検討していることも少なくないだろう。

一方ここで重要なのは、いずれの活動を誰が運営するのか、そして実際に新規プロジェクトが立ち上がったときに旗振り役として牽引できる人物が社内にいるのかどうかだ。

新規事業が失敗する要因は目的の曖昧さやノウハウ不足

実際に今回のウェビナー中に実施したアンケートでは、「社内から成功している新規事業がこの3年で1つ以上生まれましたか?」という質問に対し、「ないです、焦っています」と回答した人が実に75%にも上った。
ウェビナーのテーマ上、視聴者が何らかの課題を感じている状況にあるのは当然とはいえ、3年で1つも新規事業が生まれていない現状はそれだけ難易度の高さを示していると言える。

新規事業立ち上げが上手くいかない大きな要素の一つが、前項で触れたような「そもそも推進できる人物がいない、アサインできない」という状況だ。これを、以下の5つの内容に分解した。

どうすれば、新規事業立ち上げの適任者をアサインできるのか。あるいは、そもそも社内に適任者――「社内起業家」となり得る人物はいるのか。いないとすれば、どのように採用、あるいは育成すべきなのか。
今回のウェビナーではこういった疑問点に対する答えについて、これまで50以上の新規事業に携わってきた松澤氏に事例を交えながら伺った。

社内起業家の意味とは?求められるスキルの内訳は?

アントレプレナーシップと経営リソースを兼ね備えた人材が「社内起業家」

社内起業家は、一般的なスタートアップなどの起業家を意味する「アントレプレナー」と比較して、「イントラプレナー」とも呼ばれる。意味は文字通り、自社内において新規事業を立ち上げる力を持った人物のことだ。
アントレプレナーと社内起業家の大きな違いは、企業をバックボーンとした経営リソースや顧客基盤を最初から持ち合わせている点にある。

松澤:縦軸にあるアントレプレナーシップ、すなわち起業家的な考え方や精神といった要素は、「ひらめき」や「創造的破壊」など表に記載されている通りです。ただ、一般的な起業家と呼ばれる人たちには、経営資源もお金もありません。ですから、経営リソースも兼ね備えているのが社内起業家であると簡単に定義できます。
こういう人がもともと社内にいるかというと難しいのが現状なので、必要な素養を持った人を発見して育てていくという考えがまず重要です。

必要なスキルセットは事業フェーズによって大きく異なる

アントレプレナーシップに含まれる要素を満たす人を探すのは、松澤氏の語るように容易ではない。また、新規事業立ち上げといっても業務やフェーズは非常に多岐にわたっているため、単に「ひらめき」が優れているからと言って即座に社内起業家になれるかというと、やはり難しい。
そこで次は、新規事業立ち上げを「事業企画」と「企画実行」の2つのフェーズに分けた上で、それぞれに対して求められる社内起業家のスキルについてより具体的に教えていただいた。

松澤:事業企画段階では主にアイディアを出して事業の種にまで育て上げることになりますが、企画実行段階では企画を会社の稟議にかけるために、事業計画書を制度高く作っていかなければいけません。そこで求められるスキルが変わるというのが上記の図です。
当然これらのスキルを一人が全て持っているケースはあまり見たことがありません。リーダーを中心として必要なスキルを持った人たちを集めてくるのが、事業立ち上げの旅路となります。

社内起業家を見つけるのは経営幹部候補の発掘と同義

中村:この後人材のアサイン方法を伺っていきますが、実際に新規事業に携わった方々のキャリアステップについても教えていただけますか?

松澤:新規事業を立ち上げてそのまま事業部長になる、もしくは事業を子会社化して成長させていくのが一番に想定されるキャリアですね。

松澤:また、事業の立ち上げは難しく成功確度が低いからこそ、社内全体で人を育てていかなければならないことを知っている立場として、新規事業立ち上げ専任部署のトップになるというのが真ん中の部分です。あとは、当然既存事業に戻るキャリアパスもあります。
会社によって事情は異なると思いますが、おすすめしているのは真ん中ですね。新規事業立ち上げの難易度を経験した方が、自分の能力をインプットするような形で連続的に事業を生み出す仕掛けを作る。ここを担っていただくのがいいのではと思っています。

中村:さらにその先のキャリアである経営幹部の候補を見つける意味でも、新規事業に適した人をアサインするフェーズは非常に大事なんですね。

事例で学ぶ、社内起業家の発見・育成の手順

社内起業家に求められるスキルやキャリアパスを定義したところで、続いては松澤氏が実際に支援した事例を2つご紹介いただいた。

【事例1】事業企画フェーズにあった大手印刷メーカーA社

一つ目が、事業企画フェーズで支援に入ったという大手印刷メーカーA社の事例だ。同社は既存事業がシュリンクしていたため新規事業立ち上げの必要性を感じていたが、アイディアはゼロ。さらに受注型営業だったため受け身体質で、ボトムアップでの意見が出づらいジレンマを抱えていた。

中村:A社はプロジェクト進行フェーズに応じてメンバーを入れ替えたいが、人材のアサイン方法や事業の絞り込み方法がわからないといった状況でスタート。このフェーズで社内起業家に求められるのがアイディア発想力やビジネスシード評価能力、創造的プランニング力ということですね。具体的に松澤さんはどのようなステップで関わったのでしょうか?

松澤:リーダーがこのプロジェクトに入ることは決まっていたので、どういう人材を集めればいいのか、ある程度評価軸を言語化してお渡ししました。その上で「部下にこういう人がいる」という視点でまとめ、チームとして招集してもらっています。
企画側からは全員で40~50名の参加者がいたのですが、どの人材がどういう素養を持っているのか、新規事業の軸で評価してほしいというご依頼もありました。そこで事業立ち上げのプランをまとめるフェーズと並行して、素養がありそうな人についてフィードバックしています。

A社の事例は事業内容すら決まっておらず、新規事業としては本当に初期段階の支援。松澤氏はワークショップや課題への取り組みから、個人単位でスキルや素養を可視化し、評価にまでつなげた。
その結果、事業部内13のチームから出てきた60のアイディアを4ヶ月で13事業にまで絞り、ブラッシュアップ。社内が積極的に新規事業を構想できるような体験を経て、部全体が活発の良い雰囲気に変化したという。

【事例2】企画実行フェーズにあった大手メーカーB社

次の事例は、A社とは異なりすでに実施したい事業内容が決まっており、企画実行フェーズにあった大手メーカーB社の事例だ。
新たに自社ECの立ち上げを目論んでいたものの、メーカーという特性上EC開発のために必要な人材は採用しておらず、どの程度投資をすべきかわからない、誰をアサインしたらいいのかわからない状況だった。

松澤:この事例ではやりたいことを本当にやるべきなのか、やった場合にどうしたらいいのか知見が無い、人材育成もしなければいけない状況でした。支援期間は1年ですが、最初の3ヶ月は勉強のフェーズです。人材育成が必須であるファクトを紡ぎ出し、社長や会長にプレゼンをして事業部化するストーリーにしたいということだったので、まず人材育成を行った形ですね。

松澤氏が大手の新規事業立ち上げPJで意識した3つのポイント

2つの異なるフェーズの事例を踏まえて、松澤氏が意識したポイントは以下の3つだ。

松澤:まず、一つ目の意思決定者をプロジェクトオーナーにするというのは非常に重要だと思っています。ただ、その人が何を事業立ち上げの目的とするのか、定義がされていないことが多いんですよね。チームメンバーも空気を読みながら「新規事業の定義ってなんだっけ」と言っていたりする。人が育てばそれでいいじゃないか、と言う人すらいます。そうではなく、新規事業は立ち上げなければいけませんから、きちんと目標を設定することの重要性は必ずお伝えしています。
また、新規事業立ち上げに必要なスキルセットというのは、我々が知っている知識をただ伝えるのでは足りません。企業自身やクライアントの持つ言語、文脈の中でどういう人材要件になるのかをある程度言語化して、担当者や上長、役員が合意できるようにする必要があると考えています。そうでないと、担当者や役員が変わったときにまた新規事業の立ち上げで悩むことになるので、言語化は必要な作業です。

将来の責任者を見つけ、成功する社内ベンチャーを立ち上げるためのステップ

最後にご紹介いただいたのが、社内ベンチャー立ち上げの流れを体系化したストーリーだ。実際に新規事業が事業化されるまでには長い道のりがあるが、その最初の段階とも言えるチーム組成までは、4つのステップに分けられる。
ステップは大体3ヶ月程度の期間で、なおかつ週に1日程度アドバイザーが入ることを想定している。それぞれのステップについて、一つずつ簡単に解説いただいた。

【目的明確化】新規事業の目的をトップが数字で語れるようにする

松澤:新規事業の戦略的位置付けの言語化は、できているようでできていない部分です。言語化のための質問例は以下にある通りなのですが、特にトップの方や担当者がきちんと新規事業の目的を数字で語れるようにした上で、売上規模や撤退ルールなどを明確にする必要があります。ここは、アドバイザーが一緒にディスカッションをしながら決めていく場合も多いですね。

【必要スキルの言語化】各フェーズで求められるスキルを自社の文脈で設定

中村:次のステップは必要スキルの言語化ということですが、以下には事業企画フェーズと企画実行フェーズそれぞれに必要なスキルを設定するとあります。これはどういうことでしょうか?

松澤:やはり新規事業は2つのフェーズに分かれますし、万能に全てのスキルを持った人はいません。必要要件を持った人材を調達できるリーダーをきちんとアサインして、プロジェクトのフェーズごとに人をアサインする必要があるんです。

ここまでに松澤氏が再三述べているように、ただ単に「創造的プランニング力」「事業プラン作成能力」という文言を受け入れるのではなく、自社の文脈に落とし込んだ上で必要なスキルをより明確にし、人を評価し、社内起業家を掘り起こす。これが、人材アサインの土台になるのだ。

【人材アサイン】事業目線で見たときに最適な人物かどうかを見極める

中村:この次にいよいよ人材アサインに移りますが、新規事業向けの人材かを見極める質問を行うというのは、具体的にどんなことをされているのでしょうか?

松澤:必殺技のようなものは正直ありませんし、プロジェクトの内容によっても異なってきます。ただ、企業のプロトコルで動くのではなく、「事業を見極める」という視点が重要になると思いますね。本当に行動できるのか、数字で語れるのか、物事を自分の頭で考えて言っているのか、それは妄想ではないのか。こういったことも含めて、アサインする人を見極める必要があります。

中村:フェーズに応じて質問の仕方も変わりそうですね。

松澤:そうですね。どうしても会社のプロトコルになってしまうので見極めはかなり難しいです。だからこそ、事例でもご紹介したように外部のアドバイザーに人材を評価してほしいという依頼があったのだと思います。

【行動変容】分析・思考が正しいのかどうかヒアリングで実証する

中村:最後の行動変革では、分析・思考・行動の3つが重要そうですね。

松澤:私は数千人の起業家の方にお会いしてきましたが、一番重要なのは行動なのかもしれません。大学院で事業計画書を作るときも、自分が仮説として出した事業プランのタ―ゲット3人以上に、きちんとインタビューを取ってきてくださいと言っています。それを途中段階でやらなければ合格点を出しません。
これは意外とできないもので、「データではこうなっている」「代理店はこう言っている」と言うんです。でもそうではなく、きちんとお客様候補を探し出してその人に深く聞くことで学びを得られたり、自分の仮説が合っていた、間違っていたということが明確になります。
分析結果が違うならどこにチャンスがあるのか、自分のプランをどうするのかを思考して、またアクションをする。これを高速で回すのが重要です。

【結論】適任者のアサインが企業の新規事業成功確立を高める

ここまでの4ステップで重要なポイントをまとめると、以下のようになる。

中村:一旦既存事業の評価の仕組みから離れて、「新規事業の適任者」という観点で人材をアサインできると、非常に成功確度の高いチームが組成されるかと思います。
改めてこの4ステップの中で、松澤さんのような外部のプロが入るのはどの段階になるのでしょうか?

松澤:どの段階においても必要ですが、例えば社内でしっかり目的が設定されていれば特に外部人材は必要ありません。逆に初期段階で新規事業の目的がふんわりしていると、全部ほしいという幕の内弁当になってしまう事例も多いので、そんなときに外部のプロに状況を見て「こうじゃないですか」と意見されるとシャープに決まることがあるのではないでしょうか。そういう意味では目的の設定部分でプロ人材が入るのは特に重要かなと思います。
あとは人材のアサインも既存ルールにとらわれがちになったりしますが、外部人材とワークショップを4~5時間やるとある程度素養の見極めができるので、その部分だけで活用するのも一つの方法ですね。

社内起業家の見つけ方まとめ

今回のウェビナーのポイントを、「今すぐ取り組んでいただきたいこと」として以下の3点にまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。社内起業家の見つけ方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
社内起業家の見つけ方 ―大手の新規事業支援実績50社以上のプロが語る、社内新規事業成功の鍵となる人材のアサイン方法と事例―
本ホワイトペーパーは、2021年5月27日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。社内新規事業として企業内アントレプレナー育成サポート事業を立ち上げた経験を持つ松澤氏の実例をもとに、新規事業立ち上げの核となる人材の探し方から社内ベンチャーの立ち上げストーリーまでご紹介しております。