新サービス”SDGsプラン”リリース、経営層の理解促進とサステナビリティ経営を軸とした新規事業開発支援の裏側とは?
今回は、コンサルタントとしても豊富な経験を持つ当社(サーキュレーション)のソーシャルデベロップメント推進室代表信澤みなみ(以下:信澤)がご支援した、SDGs推進支援の事例をご紹介。コラボレーション改善クラウド「Unipos」を提供しているFringe81株式会社Uniposカンパニーの斉藤知明社長(以下:斉藤社長)やリーダー陣が、信澤の支援のもとどのようなプロセスでSDGsに紐付いた新サービス開発に至ったのか、全容をお伝えします。
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自社とSDGsの親和性を感じたからこそ、「世の中がSDGsをどう捉えているか」を知りたかった
社内における感謝や称賛を可視化し、社員がお互いに信頼し合う強固な組織づくりを支援
斉藤社長:Uniposカンパニーは親会社のFringe81とともに「Reshape The World」をといったビジョンを掲げ、世の中に価値提供していこうとしている企業です。こういった言葉を標榜し本気で世界を変えようと目指すなら、メンバー同士がお互いに信頼し合って企業活動に取り組める組織が強いと考えています。
こういった思想は、当社が提供している「Unipos」という製品に表れています。同製品はオンライン上でメンバー同士が感謝や称賛を伝え合い、周りの人たちがそれに拍手して共感できるツールです。お互いの活躍や貢献を知る、認める、信頼する。こういった積み重ねの結果、社員一人ひとりが「自分ごと」として社会に価値提供している集団になる。会社としてはこういった世界の創出を目指しています。
プロダクトとしては1年半ほど前に「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」というビジョンを新たに掲げ、事業をさらに推進しようとしていました。そんなとき耳に届いたのが、「SDGs」というワードです。
SDGsの思想を自社事業と結び付けるには知見不足を感じ、実際にSDGs事業に取り組んだ経験を持つ人材を求めた
斉藤社長:SDGsの思想は「社会の課題を自分ごととして捉え、日本、世界、そして地球をどう維持していくのかをみんなで議論する」というもので、シンプルに共感していました。少しおこがましいかもしれませんが、「個人が自分の会社を主体としながら、世の中に向き合えるようになってほしい」という、当社の考えに近いとも感じました。
そこで、SDGsと事業を絡め、上手く価値提供に活かす手段が無いだろうかと模索を始めたんです。懸念点は、社内にSDGsについての知識が全く無かったことです。安易に事業に結び付けたために、世間から「流行に乗っただけだな」と思われては悪印象になりますから、これはぜひ専門家に協力をお願いすべきだと思い、サーキュレーションさんにお声がけするに至りました。
必要としたのは表面的なSDGsの知識ではなく、大手企業をはじめとした世間のSDGsの捉え方
斉藤社長:プロ人材にアドバイスをお願いするといっても、SDGsの表面的な知識を求めていたわけではありません。SDGsが持つ17の目標とその内容自体はネット検索して読めばわかることですし、それを自分なりに捉えて再構築するスキルも、事業家である私が持っていると自負しています。
しかし、実際に世の中の大手企業がSDGsをどう捉えているのか、そしてどんな意義を感じて事業に取り込もうとしているのかは、いくらネットリサーチをしても出てきません。こういった部分の知見が欲しいと考えている中でご紹介いただいたのが、信澤さんでした。ご経歴を拝見すると、数々の大手企業にジョインしSDGs事業に伴走していらっしゃったので、当社のパートナーにぴったりだと感じました。
「自社にとってのSDGs」を考え出してもらうのがSDGs支援における一番のポイント
信澤:私はサーキュレーションの創業に参画し、成長ベンチャー企業に特化した経営、採用、広報、新規事業領域におけるコンサルタントとして活動。人事部の立ち上げ責任者、経済産業省委託事業の責任者としても従事してきました。
さらに「プロシェアリングで社会課題を解決する」ことを目指し、企業のサスティナビリティ推進支援や、NPO/公益法人との連携による社会課題解決事業を行うソーシャルデベロップメント推進室を設立。企業のSDGs推進支援、自治体・ソーシャルセクターとのコレクティブインパクトを目的としたプロジェクト企画、運営の実績も多数あります。
ご支援の際のポリシーは、アウトプットや答えを出すことを急がず、「問いかけと対話のプロセス」を重視したセッション設計をすること。「自社にとってのSDGs」を皆さんが考え、言語化していただけるように心掛けています。
ご依頼の中でまず着目したのは、Uniposさんの経営理念やサービスコンセプトにそもそも強い社会的意義があったことです。ここをSDGsが目指す世界観と上手くリンクさせられれば、Uniposさんの持つ社会的メッセージがより伝わりやすくなるはずだと感じました。
というのも、大企業の多くが「従業員が社会を自分ごと化する」という部分に課題を感じていることは、私も数々のご支援の中で実感していたのです。Unipos自体の利用が広がればこうした課題の解決、ひいてはSDGsが目指す持続可能な社会の創造にもつながるだろうというイメージを抱きました。
また、自社の活動をSDGsと結びつけるだけでなく、そこから新たなサービス可能性を見出すという発想はなかなか実践できないものなので、その点も素晴らしいと思いました。
答えを与えるのではなく、答えを出すための導き手となって議論の方向をフォローしてくれた
座学はわずか25分。知識を能動的に活用しようとするメンバーの姿勢を尊重し、ディスカッション中心で支援を推進
斉藤社長:今回の取り組みに参加したのはリーダーレイヤー10~15人ほどで、期間は半年ほどです。
信澤:今回は斉藤社長をはじめリーダーの皆さんが貴重な時間を割いて参加いただいたので、どんな形であれ必ず経営にプラスになるアウトプットを出したいと思いましたね。
半年間の支援をあえて4フェーズに区切ると、まずはSDGsの理解、次にSDGsと自社の関連性および優先順位の明確化、そして自社が目指す社会的存在意義の言語化、最後にサービスブランディング・営業PRという流れで進みました。
斉藤社長:初回にSDGs理解のための座学を行ってもらいましたが、信澤さんが主体で話した時間は25分くらいでかなり短かったです。1回目の研修のQ&Aやワークショップが非常に盛り上がったのを見て、2回目からはディスカッション中心にしようと決めてくれたのだと思います。
信澤:Uniposのみなさんは、「自分たちが答えを出す」という意識がかなり強かったと思います。何となく話を聞いて終わりにするのではなく、得た知識を自分たちに置き換えたらどんな可能性が生まれるのか、すぐに活かそうとするんです。
2回目以降のディスカッションでは、まず準備段階として参加者の皆さんにUniposの既存事業とSDGsにどんな関連性があるのかを純粋に結びつけてもらいつつ、自社サービスのポジティブな面とネガティブな面を両方分析してもらいました。
さらに、その中でどんなチャンスとリスクがあるのかをメンバー一人ひとりがスプレッドシートに記入し、シェアしながら認識合わせを実施。自社サービスとSDGsの関連性、そして可能性がどこにありそうかを、実際にディスカッションしてもらう形にしました。
斉藤社長:ディスカッションの進捗に応じて次のワークを決めてもらい、資料も毎回変更していただいていたので大変だったと思いますし、テンプレートに乗らなかった人たちのように思われていたかもしれません(笑)。しかし、議論をUnipos向けにアレンジしてくださったおかげでしっかり議論できました。
すぐに答えにたどり着くわけではなかったので、3ヶ月間ほど消化不良のままディスカッションを進めた感じではあるのですが、最初に「SDGsの因果関係図というアウトプットを作りたい」というゴールをメンバー全員と共有していたので、試行錯誤しながら議論を進められました。
自分たちのSDGsの解釈が世の中と一致しているのかどうかを、信澤さんとの問答によって見極められた
信澤:議論においては、皆さんにとってのSDGsを言語化してもらえるように、問いかけ重視で場の設計をしました。「これが正解です」とお伝えするのではなく、皆さんが自分で解を見つけ出せるようなやり方を意識していた感じですね。皆さんから質問をされたらSDGsに関する解釈の仕方を中心にご説明していました。
他社事例を含め情報を大量にお伝えするコンサルのほうが満足度は高いかもしれませんが、それよりも皆さんご自身でSDGsと事業の関連性について腹落ちしてもらったほうが、サービスや経営に活かせると考えたからです。
斉藤社長:誤解を恐れずに言うと、信澤さんは非常に性能の良い辞書のような存在でした。例えば学校教育における先生は正解に至るための方法を教えてくれますが、本当に重要なのは、辞書を使って自分が正解にたどり着くために必要な情報を引き出すことです。
あくまで主体は自分たちにある。実際、我々の場合は心から共感している使命がすでにある状態だったので、そこにたどり着くための新しい手段を模索するという感覚でした。
このとき大切だったのが、世の中で一般的にSDGsがどのように解釈されているのかをしっかり擦り合わせることです。自分たちだけで納得しても意味が無いので、投資家やエンタープライズカンパニーはSDGsをどう解釈しているのか、自分たちが考えるような解釈の余地はあるのかなどについて、信澤さんとかなり問答させていただきました。
議論の結果完成したSDGsの因果関係図をプロダクトの新プランに落とし込む際、レビューも担ってくれた
斉藤社長:議論を積み重ねた結果、納得のいくSDGsの因果関係図が完成し、最終的に「『はたらく』と『人』を大切にする世界」につながる一本の道筋が見えるようになりました。
具体的にご説明すると、まずUniposが企業に寄与できるのは「社会課題を自分ごと化する従業員が増える」という点です。つまり、会社として推進している事業だけではなく、事業がもたらす社会変容を自分の言葉で語れる人が増えるということです。
こういった状態をUniposの新しい「SDGsプラン」という形で実現できるとしたら、果たして世の中に響くのか。信澤さんとのセッションを通じて、「さまざまな企業が苦労している」と規模感や業界ごとの現在の大手企業における推進フェーズや、そこにおける課題感などが見えていきました。
自分たちが進む先に困っている方がいるかどうかはどれだけネットで調べてもわからないことですから、非常に助かりました。
信澤:議論した内容をいざサービスに落とし込むとなったら、Uniposさんはかなり素早く動かれましたね。営業戦略やマーケティングチームのアウトプットに対して、私はレビューを行っていました。
アウトプットに至るまでがスムーズだったのは、アウトプットを急ぐのではなく、SDGsと自社をどう結びつけるか徹底的に考えるプロセスに時間を割いたからこそだと思います。
斉藤社長: SDGsの因果関係図を作り上げる中で、自然とUniposというサービスも内包して考えていましたからね。SDGsの因果関係図が完成する頃には、「新サービスはこうしよう」と何となく決めていました。
社内エンゲージメントが高まっただけでなく、新プランは多数の企業から共感を得た
自社のメンバー自身が大きな意義を感じながら活き活きとプロジェクトに取り組めた
斉藤社長:今回の支援を通して印象的だったのは、参加メンバーが楽しそうだったことです。我々は組織づくりを支援している企業なので当然組織を見るのも楽しいのですが、今回はもう一歩先の社会にまで視野を広げた取り組みだったので、「これはやる意義があるぞ」とメンバーがさらに活き活きしていました。
エンゲージメントが高い状態にあったということですね。Uniposというサービスが単に「オンラインで感謝や称賛を送り合うことができるツール」で終わるのではなく、お客様や社会に大きな価値提供ができる存在になる可能性があると、期待を持てる状態だったのだと思います。
また、ディスカッションが終わるころには、参加メンバー全員がUniposのSDGsの因果関係図についてきちんと語れるようになっていたのも大きな成果だと考えています。リーダーが語れれば現場が質問できますから、リーダーが現場従業員にとっての信澤さんのような存在になって、また新たに解釈を深めていくことができそうです。
「SDGsプラン」によってUniposに新たに付与された社会的意義が、多くの企業から支持され始めている
斉藤社長:今回の成果である「SDGsプラン」のご提供は、すでにスタートしています。通常のプランは、AさんがBさんに感謝のメッセージを送ったら、会社から「ピアボーナス」と呼ばれるインセンティブが少額給与に上乗せされて支払われるというものでした。「SDGsプラン」では、この上乗せ分が自分の選んだ団体などに寄付され、成果レポートが送られてくるようになります。
自分の会社での行動や貢献が感謝されることで寄付ができ、社外の人からさらに感謝され、寄付金がどう使われたのか、世の中で何が起こっているのもがわかる。すると、自分の行動に少しずつ誇りが持てるようになっていきます。
自分の業務が単に「エクセルに入力してエンターキーを押している」のではなく、「社会に影響を与えられている」と考える習慣が身に付く。これが「SDGsプラン」の目指すところであり、すでに多くの企業から共感いただいています。
一方、我々はこれまでかなり従業員にフォーカスしてきました。そのため経営やマネージャーの方から、Uniposはまだまだ「従業員が使っているツール」と見られがちです。そうではなく、今後はマネジメント層にUniposを組織マネジメントに活かせるという感覚を持っていただきたいと考えています。Uniposが企業にとって空気のような当たり前の存在になれればうれしいですね。
自己満足で終わらない、地に足ついたSDGs事業を推進できたのは大きな価値
斉藤社長:今回は信澤さんにご支援いただいて本当にありがたかったと思っています。Uniposというサービスの在り方を捉え直す機会は当然社内にもあるのですが、どうしてもチーム内の凝り固まった視点になりがちです。そこに新たに「社会」という視点を与えていただいた結果、Uniposの枠が大きく広がりました。
何度も言うように、広げた枠が社会にきちんと適合していないと自己満足で終わってしまいます。信澤さんの存在があったからこそ、地に足を着けながら社会と擦り合わせる形でサービスの枠を広げられましたし、これはサービスとして大きな価値になりました。
信澤:斉藤社長をはじめ、Uniposのメンバーは一人ひとりがお客様や社会に対して強い思いをお持ちです。その上で、今回はUniposというサービスの社会的意義を強く感じましたし、プロダクトが持つ可能性を純粋に応援したいと思いました。
私自身も現在サスティナビリティを追求する中で「一人ひとりがきちんと自分らしく生きる社会を創りたい」という思いを持って活動しています。ソリューションは異なっても、Uniposさんは同志だと感じているので、これからもより良い社会を目指して一緒に取り組んでいければうれしいです。
今回の支援は、斉藤社長をはじめとしたUniposのリーダーレイヤーの方々が、信澤さんというSDGsのプロにどんな役割、知識を期待しているのかがかなり明確な案件でした。「自分たちがプロ人材の持つ情報を活かして絶対に答えを導き出す」――。そんな積極的な姿勢が、成功のポイントになったのだと思います。
本日はお忙しい中、ありがとうございました!
事業会社のSDGs推進案件におけるまとめ
課題・概要
大手企業が積極的にSDGsを導入し始めていることは認識しており、自社でもSDGsに絡めた取り組みをスタートしたいと考えていた。懸念点だったのは、SDGsに対する知識が不足したままでは「流行に乗っているだけ」という悪印象になってしまうこと。そこで数多くの大手企業でSDGsを支援してきた信澤さんがアサインされた。
支援内容
- SDGsの理解促進
- SDGsと自社の関連性および優先順位を明確化
- 自社が目指す社会的存在意義の言語化
- サービスブランディングおよび営業PR施策の壁打ち
成果
- SDGsの目指す世界観を理解
- 自社とSDGsの融合ポイントを発見
- SDGsの因果関係図から自社サービスを成長させる可能性を見出し、サービス化
支援のポイント
- SDGsを推進するためには、経営陣と認識統一をしながら自社とSDGsの因果関係を知り、自社の社会的存在意義を問いただし、何をするか決めることが重要。SDGsを本当の意味で理解し自社の活動と結びつける際は、豊富な知識と企業支援の実績があるプロのフォローがあると取り組みが加速する
企画編集:花園絵理香
写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)
取材協力:Unipos株式会社
※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。