年間1,000本以上の会議を主催するトップファシリテーターが“働き方改革”を支援〜社員の学びと成長の場としても機能〜
プリンター・スキャナー・液晶プロジェクターに代表される、エプソン製品の販売やサポートなどを行うエプソン販売株式会社。
「世の中を変えていきたい」「新しい価値を生み出したい」といったチャレンジスピリッツが根づく企業風土とあって、かねてより働き方改革への意識も高かったが、さらに次世代の働き方を牽引できる企業に飛躍するべく構想。そこで、社員同士のシナジーから最適案を生み出してほしいとプロジェクトを推進することに。
これまでにない新しい取り組み対して、外部のプロ人材がどのような支援を展開したのか。人事部の古屋晃司氏、プロジェクト参加メンバーの田之口智美氏、プロ人材・園部浩司氏に話を伺った。
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社員による部署横断プロジェクト組成を目指すも、立ち上げ・推進経験を持った人材がいなかった
古屋氏:当社では、2019年までに、社員一人当たりの労働時間を年間1,900時間にするという目標を掲げ、全社で業務改善に積極的に取り組んでいました。これにより、労働時間の短縮については、一定の成果は得られました。しかし、担当役員は成果に甘んじることなく、「これからの日本を代表する働き方を推進する会社にしたい」という強い思いを持っていました。また、同時に働き方は社員自身が形づくっていくものだという考えに基づき、社員に主体的に働き方の意識改革をしてもらいたいという希望もありました。こうした背景から、経営層から方針を提示するのではなく、社員からのボトムアップで施策を立案できるようにと、プロジェクト「miraiE」を立ち上げることになりました。あくまでも社員の発案に重きを置いていたことから、働き方改革の推進そのものに長けたプロフェッショナルにコンサルに入ってもらうことは想定していませんでした。しかし、本来の業務ではない、かつ部署の垣根を越えたメンバーによるプロジェクトは前例がなく、社内には経験やスキルを持った人材がいなかった。そこで、プロジェクトと会議の場を円滑に進行でき、成果を出すことができる人材を社内ではなく社外に求めました。
ファシリテーターはプロに依頼することに。メンバーのスキルアップも期待
古屋氏:そこで、他の組織課題についてもディスカッションパートナーとなってくれていて、役員からの信頼も厚かったサーキュレーションのコンサルタント中村春香さんに相談。中村さんから、ファシリテーションのプロにプロジェクト推進の実務支援をしてもらいながら、その過程でメンバーの育成を行なってもらうという提案をして頂きました。
ちょうど、社員にファシリテーションスキルを習得してもらい、会議を成長の場にしてほしいという想いとも重なり、最終的にプロのファシリテーターである、園部さんの活用が決まりました。園部さんは、様々なテーマや課題、プロジェクトを円滑に進行し、答えを導き出すためのサポートをされてきた実績をお持ちです。そのため、プロジェクトのリーダーやメンバーを支えるというポジションを担っていただきました。
プロジェクトメンバーの選考も協力。会議で意見を引き出して整理する役割を担う
園部氏:人材育成・組織改革・風土改革を得意領域とし、これまでにも企業の社内改革プロジェクトを支援してきました。会議をスムーズに進め、問題解決に導くスキルを教えるファシリテーション講座も数多く実施しています。
今回は、プロジェクトをはじめる前のメンバー選考から協力させて頂きました。どのような基準で、何名のメンバーを集めるのか、経営層や人事責任者の方と意見を交わしながら、2ヶ月半ほど時間をかけて練っていきました。メンバー募集に際しては自主性とやる気があり、会社へ変革を起こしてくれそうな人材であることを重視。あとは、部署ごとに偏りやばらつきがないように気を付けました。
会議は週1回、2時間と決め、その場に集まったメンバーが各自テーマを持って臨み、主体的に物事を思考できるような土壌づくりに重きを置きました。何より意識したのは「場づくり」です。皆さんに発言してもらい、皆さん自身で答えを導き出すということ。今回の支援において、私は答えを教えるコンサルタントではないので、会議に参加するメンバーの意見を引き出して整理していくこと、そのための問いの設計などを大切にしました。
園部 浩司 氏「枠、超えよう!」がモットーの現役プロファシリテーター
新卒でNECマネジメントパートナーに入社。経理部門で10年間下積み後、数値のスペシャリストとして事業計画部門へ異動。数値の強みを活かして経営(トップ)サポートを担当。
事業計画部門では、損益管理だけでなく、人材開発や組織風土改革までフィールドを広げ、様々なプロジェクトマネジメントを経験。
在籍事業部(300名)の組織変革プロジェクトリーダーも経験し、1年間で2億円の営業利益改善に導く。
企画力、プレゼン力、プロマネ力、ファシリテーション力を徹底的に磨き、全社(3,000人)の業務プロセス改革を責任者として推進。
これら大規模プロジェクトのマネジメント経験をベースに2016年4月独立。「枠を超えろ!」をモットーとした人材育成・組織変革・風土改革コンサル会社、園部牧場(株)を2016年4月設立。
プロジェクトの立ち上げ、会議の価値、ファシリテーションスキルを実体験で学ぶことができた
田之口氏:同じ会社で働いているとはいえ、バックグラウンドや環境が異なるメンバーが集まる中で、一つのテーマに対して進行していくこと自体が初めての経験でした。これがたとえば、営業部門の会議であれば、営業目標達成のために行われており、進捗状況の確認などをするというのが主な会議のパターンです。その点、働き方改革のプロジェクトともなると、何が正しいかもわからない中、目指すものを何に設定するかということから考えるのは、とても新鮮でした。多様なメンバーが会議を通して、答えなきプロジェクトを推進することが、どういうものであるべきか。きっと園部さんがいなければプロジェクトは迷走していたと思います。社内にはないノウハウをもたらしてくださったことについて、非常に大きな価値を感じています。園部さんが仕切ってくださったからこそ、進行のスピードが上がりました。また、ポストイットで意見をまとめあげていく手法や、ホワイトボードの使い方など、会議の進め方については一人ひとりが多くの学びを得た部分でもあります。隙と無駄が1ミリもない会議を通して、社内のメンバーだけでは見過ごしてしまったかもしれない問題点も浮き彫りになったと思います。それから、何より会議をすることそのものに、楽しさを感じることができたのも、大きな収穫です。やり方次第で会議はいかようにも充実したものになると、実感しています。それぞれの頭の中にあるアイデアを引き出して、まとめあげるために何が必要かを教わりました。
インプットしたノウハウをベースに自走でプロジェクトの達成を目指す
古屋氏:現段階で、働き方改革に向けた企画として10案の検証を進めています。たとえば、朝活の推進やサテライトオフィスなどです。このプロジェクトについては、2019年3月までは継続することになっていますが、園部さんによる支援はその前に一度区切りを迎えました。
田之口氏:正直なところ、園部さんが介在せず自分たちで同レベルのファシリテーションができるかというと、まだ不安はあります。しかし、学んだことは、着実に身になっていると感じていますので、自分たちで質の高いディスカッションを実施し、これまで以上にプロジェクトを推進していきます。
私たちが学んだ、成果が出るディスカッションやプロジェクトの進め方はプロジェクト内だけに留めず、所属する部署のメンバーにも共有していきたいです。ディスカッションは「A」か「B」かを採決することがゴールではありません。自分たちが決めたことをいかに主体性を持って行動に移せるか。つまりは「行動」をゴールに見据えることが大切だと感じています。この思いは会社全体に伝えていきたいですね。
古屋氏:サーキュレーション中村さんからの提案、そして園部さんによる支援によって、外部のプロ人材を活用することでもたらされるよい影響を実感しているところです。今後も、必要に応じてご相談させてもらいたいと思っています。