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ピッチイベントとは?目的や国内での開催事例とその傾向を紹介

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ピッチイベントとは?目的や国内での開催事例とその傾向を紹介

「ピッチイベント」は企業がオープンイノベーションを実践する場のひとつです。一般的には、ベンチャー企業やスタートアップが集まりアイデアや技術を短時間でプレゼンする場として知られています。しかし、この「ピッチイベント」を真のビジネスモデルに組み込むためには、単なる「単発のイベント」と位置づけるのではなく、企業の対外的に開かれた窓口として、定期的に開催することが大切です。そのためには、主催者としては「自由さ」「寛容さ」、そして「継続性」が担保された取り組みとすることを心がける必要があります。

この記事では、どうすればピッチイベントが成功するのかについて、主催者側の視点から紹介いたします。

「ピッチイベント」とは何か

「ピッチイベント」は「ピッチコンテスト」とも言われます。なかには聞いたことがある方がいるかもしれませんが、一般的にはスタートアップ企業が投資家などに対して自社の技術やサービスをプレゼンしたり、ベンチャー支援の企業や投資会社が、スタートアップ企業や起業家個人に対してプレゼンをする機会を提供したりなどの取組みがイメージされます。しかし、企業や組織が「ピッチイベント」を行う理由はそれだけではなく、「企業内外に開かれた交流の場を設ける」という目的もあるのです。

「ピッチイベント」の主催者的な定義:「オープンイノベーションの一手段」

「オープンイノベーション」とは、“企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること”を指します。下図で示すとおり「ピッチイベント」は、企業内外の技術やアイデアを、プレゼンを通じて価値創出の可能性を検討する場、つまり「会社・組織が持つオープンイノベーションを実現するための一手段」に位置づけられます。

企業や組織が「ピッチイベント」を主催する理由は、今後自社・自組織内で事業の構想・企画を行うにあたって、これまであり得なかった「イノベーションの種」を見いだし、自社のリソースと結合していくためです。「ピッチイベント」を行うと既存の自社やグループ内のアイデア、技術にとどまらず、社外のさまざまな主体が持つアイデアや技術を取り入れられます。技術革新のスピードがますます速くなり、これまでの自社だけのリソースやネットワークでは考えられなかったシーズも迅速に獲得しながら自社のイノベーションに活かし、生き残らなければなりません。そのため、自社・グループ外の新技術、ニッチな技術やアイデアを持つベンチャー企業やスタートアップ企業などが持つ技術やアイデアのプレゼンを通して、自社・グループ内の関係者がこれらを「自社・グループにおけるイノベーション」の手段として活用すべく考え続けることに意味があります。

オープンイノベーションの一手段としての「ピッチイベント」を挿入

国内でのピッチイベント開催事例

次に、これまでに日本国内で開催されたピッチイベントから代表的な事例をご紹介します。

これまで開催されたピッチイベントは、主にベンチャー支援を行う民間企業、証券会社系の事業者が主催して行うものと、国や地方公共団体などの公的団体が主催し、そこに賛同した民間企業が協賛などのかたちで参加して運営されるイベントとに大きく分かれる傾向があります。

また開催タイミングは、週一回や月一回といったタイミングで継続して実施し続けるイベントから、年一回のイベントの催し物のひとつとして開催されるものなどがあります。

また、対象やターゲットも「医療」や「福祉」、あるいは「地域経済」「グローバル経済」といったテーマや対象を特化したものから、特にテーマを限定せずに広く受け付けるものもあります。

「ピッチイベント」の事例①「Morning Pitch」

知名度・実績ともにあるピッチイベントのひとつに、2013年1月の開始からのべ250回以上開催している「Morning Pitch」があります。これは、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社と野村證券株式会社が主催し、毎週木曜日午前7時から9時まで開催されています。

Morning Pitchは、毎週5社のベンチャー企業が、大企業・ベンチャーキャピタル・メディアなどの、約100名のオーディエンス(観客)に対してピッチ(プレゼン)を行います。特に各回で審査を行うことや、賞を設定するなどは行っていませんが、イベントの際に参加者同士が交流することなどを通し、個別でビジネスを創出できるよう支援する工夫がなされています。

「ピッチイベント」の事例②”No maps NEDO Dream Pitch”with起業家万博

「No Maps」とは、北海道・札幌を中心とした民間企業・官公庁・教育機関を中心に組成された「No Maps実行委員会」が運営するピッチイベントです。2017年を初回として、「会議」「展示」「興行」「交流」「実験」の5つの事業区分を通じて、札幌・北海道を「社会実験・社会実装の聖地」にすることを目指し取り組まれています。

その取り組みのひとつとして、経済産業省北海道経済産業局と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、総務省北海道総合通信局等と合同で開催するピッチイベントがあります。

研究開発型ベンチャーを志す全国の起業家等が、投資家や起業家などの前でビジネスプランの発表を行い、優秀チームには、全国規模のピッチイベントへの参加権授与や、NEDOが実施するシリコンバレー研修・イベントへの応募資格付与や海外イベントへの渡航支援(一部)などの、ビジネス拡大に向けた取り組みを支援するという内容です。2018年は研究開発系ベンチャーの11チームが登壇し、当日の審査員による審査を経て5チームが「NEDO理事長賞」以下の賞を受賞。終了後にネットワーキングセッションも開催されました。

「ピッチイベント」の事例③HVC KYOTO

一方で、業界・業種特化型のピッチイベントもあります。HVC KYOTOは、JETRO、京都府、京都市、京都リサーチパーク株式会社が主催しています。ごく初期の技術インキュベーションに特化し、ライフサイエンス分野の革新的な発見を、世界のヘルスケア課題解決に資する製品へと成長させるプラットフォームを創出する「ピッチイベント」です。2017年の初回開催以来、延べ34のピッチ登壇者とメンタリングセッションを実施し、医療・医薬業界のみならず、IT、コンサルタント、学術、投資家など幅広い分野から260名(2018年実績)の参加者を得ました。事後のフィードバックでは、「企業・大学と幅広い出会いがあった」「他社のプレゼンやメンタリングが参考になった」「事前メンタリングが良かった」「今回の出会いを通じて、今後の共同研究などが開始する可能性が出てきた」など、非常に高い評価の声が得られました。

事例から読み取れる「ピッチイベント」の傾向

特定の企業がその会社の独自施策として開催している「ピッチイベント」については、目的が非常に明確です。例えば上述の「Morning Pitch」の場合、将来の事業成長、IPOなどに向けた長期的なクライアント関係構築を視野に入れた、「将来の顧客開拓」の一環として位置づけています。

一方で、国や公的団体が取りまとめ、民間事業者が参加している形態の「ピッチイベント」の場合、目的や内容は実にさまざまです。個々の民間事業者にとっては、オープンイノベーションを通じた新規事業開発やベンチャー企業・スタートアップとの関係構築が重要だと認識し、課題に対する問題意識を持っていても、単独ではこのような取り組みを運営できないようなケースがあります。この場合の「ピッチイベント」は、自社内だけで取り組み続けるのが難しいテーマも見受けられます。

「ピッチイベント」の会社・組織内での位置づけ

これまで述べたとおり、ピッチイベントは、自社・グループ内が直面する、あるいは今後直面するであろうビジネスとの課題を迅速かつ効果的に解決するため、自社・グループ内に持ち合わせていないシーズと接するための場です。

それぞれの組織や、それぞれの回ごとに、ピッチイベントの「開催テーマ」があります。そのテーマで、主催会社はWEBサイトやSNSなどでプレゼンしたいスタートアップやベンチャー企業を募集し、同時に社内やグループ内にも、ピッチイベントの傍聴者を募ります。

そして、スタートアップやベンチャー企業のプレゼンを通じて、「自社のビジネス課題をどうすれば解決でき、今後のイノベーションにつなげることができるのか」という視点で個々のプレゼンを評価します。コンテスト形式で開催されるものは、審査を通じて優秀な事業を選定します。そのうえで、それぞれのプレゼンについて今後の「連携方法」について検討していきます。

ピッチイベントの会社・組織における位置づけを挿入

「ピッチイベント」を通じた企業・組織における「オープンイノベーション」の実践方法

「ピッチイベント」をどのように開催するかは、「オープンイノベーション」を標榜する企業・組織において実務にたずさわる方にとっては大きな悩みどころだと思います。次に、「ピッチイベント」を開催するにあたっての課題と、対応方法について検討いたします。

ピッチイベント開催における「主催者の悩み」とは?

「ピッチイベント」も「オープンイノベーション」も、よく聞くようになったが、いざ自社で「ピッチイベント」を行うとなるとがまだまだよくわからないという方も多いでしょう。企業のピッチイベント担当者が検討すべき項目の一例としては以下が挙げられます。

  • ピッチイベントにおける登壇者のプレゼンテーションの方法(登壇者の一方通行にするのか、会場との質疑応答などを含めた双方向型にするのかなど)
  • 審査方法(誰に審査してもらうのか:高名な外部ゲストにお願いするのか、会場の傍聴者にも審査プロセスに入ってもらうのかなど)
  • 開催回数・頻度、参加回数(登壇者は一回限りの参加なのか、何度も繰り返し参加可能とするのか、など)
  • 聴衆の管理(対象者、出席管理など)

これからの「ピッチイベント」のあり方

ピッチイベントの開催は、単発型と継続型がありますが、自社・組織内においてピッチイベントが「オープンイノベーションの一手段」として定着していくためには、一度やって終わりのイベントではなく「継続的に自社内で開催されているイベント」に移行していく必要があります。

「ピッチイベント」を継続させるには、事務局機能とコーディネート機能が重要です。登壇者の発表や観客と登壇者とのやり取りなど、いつどこで「イノベーションの種」に出会えるかわかりません。したがって、登壇者のプロフィールやプレゼン内容を事前に観客に共有することはもちろん、イベント開催後にプレゼン内容を動画などで参照・共有できるようにすることも必要となるでしょう。主催者は単なる「事務局機能」を担うだけでなく、登壇者・観客の間を取り持つかたちで、興味内容に合わせて両者をつなげたり、それぞれの持っている技術・ニーズをわかるように「翻訳」して相手に伝えたりするなどのスキルが求められるのです。

「ピッチイベント」の成功の要素:「自由・寛容さ・継続性」

「オープンイノベーション」の一手段として企業・組織で「ピッチイベント」を位置づけ、有機的に機能させるには、「自由・寛容さ・継続性」の3つの要素が必要だと考えられます。以下、それぞれについて検討いたします。

ピッチイベント成功のための要素「自由・寛容さ・継続性」を挿入

「ピッチイベント」成功の要素①「3つの自由」

今後は大組織内でも「オープンイノベーション」の重要性が増してきます。アイディアや技術を具現化し、企業の内部の経営に組み入れるためには、意見や興味を持っている人が自由に参加でき、また同じアイデアを何度もブラッシュアップしたり、違うアイデアで再度チャレンジしたりできる場である必要があります。そのためには、登壇者、傍聴者ともに「出入り自由」「ブラシュアップ自由」「アイデア自由」などの「3つの自由」を設けるとよいでしょう。

できる限り「いつでも参加でき、いつでも退出できるもの」にするといっても、外部の登壇者や傍聴者を交えては情報の漏洩になるのでは、と気になる場合があるかもしれません。しかし、セキュリティを考慮した「閉ざされた空間」は「オープンイノベーションの場」としては好ましくありません。できるだけ開催ぎりぎりまで募集を締め切らない、「飛び入り参加」も受け入れる、途中退出も歓迎の姿勢で臨みたいところです。

「ピッチイベント」成功の要素②「寛容さ」

次に挙げる成功の要素として、「寛容さ」があります。「オープンイノベーション」とは、開かれた環境でさまざまな「違い」を受け入れ、「違い」の中からイノベーションを見出していくことが必要です。主催者は特に、登壇者の良いところを見つけ、さらに伸ばす姿勢、さまざまな意見や違いを受け入れる姿勢、そして何より新しいことに興味を示す「好奇心」が必要です。

「ピッチイベント」成功の要素③「継続性」

そしてもう一つの成功の要素として、「継続性」が挙げられます。ピッチイベントの定期的・継続的な開催は、社内外に対して「ピッチイベント」の存在を知らせる手段であるだけでなく、ピッチイベントを社内のエコシステムの中に組み込んで実施し続けることへの「意志表明」「覚悟の表明」にもつながります。その意味では、その会社の経営問題そのものにもつながる問題とも言えるでしょう。

まとめ

これからは、オープンイノベーションの手段の一つとして、「ピッチイベント」を事業会社自身で開催されるケースも徐々に広がっていくでしょう。開催当初は、会社や組織内部でピッチイベントを運営するための十分なノウハウがないために、社外の専門事業者のコンサルティングや運営協力などが必要になりすが、十分に程度組織内部にノウハウが蓄積されたら、自社または自部門内での運営を目指しましょう。

「ピッチイベント」を行う際は継続が重要です。実施にあたり立派な設備や施設は必要ありません。また必ず大々的に開催するということもありません。社内の会議室や、雰囲気の良い社員食堂やカフェを持っている会社でしたら、そのようなところでフランクに開催するレベルでもよいでしょう。大切なことは、会社や組織の内部と外部とをつなぐ「窓口」をつくることです。華美でなくともなるべく経費をかけず、ゆるい形式の開催でもよいので、実施し続けられる方策を考え、実行することを心がけていきましょう。

参考URL

http://morningpitch.com/

https://www.krp.co.jp/hvckyoto/detail/718.html

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