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使用目的別に見る、新規事業企画書の作り方のポイント解説

新規事業開発
使用目的別に見る、新規事業企画書の作り方のポイント解説

新規事業企画書を作るうえで重要なことは、「企画書を基に判断を行う側の人間が知りたいことに対して答えること」です。

新規事業企画書は、社内での決裁、融資の申し込み、補助金の受給申請の場などで必要となるものですが、それぞれ、決裁や審査を行う側にとって知りたいことが異なります。

独善的な内容ではなく見る側の視点に立った内容で作成することが重要なのです。

一般的な事業企画書と新規事業企画書の違いとは

新規事業の最大の特徴は、事業としての経験値が無いため、顧客の顔や市場の特性が分からないというところにあります。したがって基本的には、企画書の段階ではアイデアベースでの内容となります。

しかし、企画書を基に何らかの判断が行われるのであれば、判断する側の首を縦に振らせるための根拠を盛り込まなければなりません。既存の事業における事業企画書も当然判断の基となる根拠は必要ですが、事業としての経験値があるため客観的な内容で表すことができます。反面、事業としての経験値の無い新規事業では、客観性を見出すことが困難になります。

そのため、一般的な事業企画書よりも「客観的なデータや分析結果」「売れる仕組み」「長期的なビジネスプロセス」の信ぴょう性が問われるのです。それらを論理的に表せるのかどうかが、成果を得られるのかどうかに影響してきます。

一般的な事業企画書と新規事業企画書の違い

使用目的ごとの新規事業企画書の作り方ポイント

社内での決裁、融資の申し込み、補助金申請に関して、それぞれ新規事業企画書の作り方のポイントを解説していきます。

社内での決裁を得るための新規事業企画書の作り方ポイント

社内で新規事業の決裁を行うのは、主に社長や役員などの経営者であることが一般的です。経営者の観点から、自社や競合、投資の規模や回収可能性、リスクについて総合的に判断する必要があります。

以下の四点は確実に押さえましょう。

  1. 自分たちがやるべき事業なのか
  2. 投資する価値のある事業なのか
  3. 確実性はどの程度あるのか
  4. リスクはどの程度の大きさなのか

社内で決済を得るための新規事業企画書の作り方ポイント

自分たちがやるべき事業なのか

まずは、自分たちがやるべき事業なのかを判断するために、自社の存在価値や社会的意義、自社の強みが活かされた事業であるかがチェックされます。

そこで、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • なぜこのような事業をやりたいと考えたのか
  • 新規事業を行うことでどのような課題が解決できるのか
  • 事業に活かされる自社の強み

加えて自社分析や競合にも目を配り、SWOT分析などによる環境分析の結果が伴っていれば、自社が事業を展開する理由がより明確になり、望ましいでしょう。

投資するだけの価値のある事業なのか

自社でやる必要性があるのだとしても、将来的なリターンが望めなければ、新規事業を実践に移すことが難しくなります。継続的にニーズがあり、市場の中で勝ち続けられる根拠を示すことが重要です。
そこで、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 市場の規模やターゲットとする顧客のニーズの具体性と継続性
  • 事業展開の結果として、業界内でどのようなポジションを築くことが可能なのか
  • 自社が継続的に優れた製品、サービスを提供し続けられる理由 

確実性はどの程度あるのか

新規事業の実践の是非を考えるにあたっては、確実性の判断も重要になります。新規事業には投資のためのリスク判断が伴うからです。投資コストをどの程度の期間で回収できるのか、どの程度確実に回収できるのかが、決裁の結果を左右します。

リスクに対するリターンが明確であることを示すためには、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 自社が供給する製品、サービスがターゲットとする顧客から買われる理由
  • どの程度費用がかかり、収益が望めるのか。また価格設定の根拠
  • 自社の財務状態にどのような影響を与えるのか

売れる理由が不明確であれば、最初から絵に描いた餅です。費用と収益の予測に関しては、市場の規模や立ち上がりの予測、マーケティングやPR、開発に関する費用などを具体的に算出する必要があります。

事業を構成する一つ一つの要素につき、必要なコストや資金計画、結果として生まれる収益を時系列で記述し、中長期的な視点で予測損益計算書を作成し財務状態の変化を可視化することで、最終的な判断が行われやすくなります。

リスクはどの程度の大きさなのか

確実性と同様、リスクの判断も重要な要素となります。新規事業は事業としての経験値が無いため、既存の事業よりも失敗する可能性が高いといえます。失敗したときのリカバリーが可能な内容であるのならばリスクを認識した上でチャレンジすることが可能ですが、リカバリーが困難な内容である場合、チャレンジできないと決断するのも正当な判断です。

そこで、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 定性的なリスクの内容と、定量的なインパクトの想定
  • 発案者としての視点で分析した事業リスクの重要度付け

リスクの精査も行ったうえで発案したのだということが伝わることで決裁者からの信用を得られる効果があるのはもちろんのこと、決裁者が発案者とは異なる視点でリスクの分析を行うことで客観的な判断を行うことができます。

社内での決裁を得るための新規事業企画書の構成

これまでに挙げたポイントを含むために、以下の項目によって構成された新規事業企画書を作成することが望ましいでしょう。

  • 事業概要(誰に何を売るのか)
  • 新規事業を立ち上げる理由と目的
  • 自社と環境の分析
  • 市場や顧客のニーズ
  • 事業化のプロセスと展望
  • 製品やサービスが売れる理由
  • 売上・費用・収益の予測
  • 財務分析
  • リスク分析

社内で決裁を得るための新規事業企画書のその他の注意点

社内で決裁を得るための新規事業企画書に関しては、経営に携わる決裁者に対して、独自に作成したフォーマットによる説明を行います。
資料の作成にあたっては、以下の三点に留意するとよりわかりやすい内容になるでしょう。

  1. 読みやすいレイアウトであること
  2. 論理的な内容であること
  3. 戦略的な視点でまとめること

読みやすいレイアウトであること

レイアウトに関しては、決裁者に事業の全体像を正確にイメージしてもらうためにストーリー仕立てで読みやすい内容にまとめることが効果的です。

ビジュアルを駆使して要点を整理したストーリー仕立てでのパワーポイントのスライドに、取り組みの内容や分析結果、予測の根拠などをまとめたものを参考資料として添付する対応が望ましいです。

参考元;http://www.kjnet.co.jp/kikakusho/kikakusho5.php

論理的な内容であること

新規事業企画書の中身に関しては、論理的に結果を導き出す必要があります。

決裁者も自らの視点で内容の検証を行ったうえで最終的な判断を行うので、どのように結果が導き出されたのかというロジックが明確である必要があります。

参考元;https://preneur-preneur.com/how-to-write-a-business-proposal/

戦略的な視点でまとめること

経営者は、戦略的に物事を判断します。
将来目線で必要性を認識し、ゴール(目標)を想定し、ゴールにたどり着くために今使える資源をどのように配分し、どのような作戦の組み立て方を行うのがよいのか、というような思考で物事を考える人たちです。そのような経営者を巻き込むためには、目的とゴール、方法論、結果の見通し、理由の五つが一体となった説明の仕方をする必要があります。

つまり、新規事業企画書の中身を戦略的な視点でまとめることが効果的なのです。

参考元;https://www.finchjapan.co.jp/14/

融資を得るための新規事業企画書の作り方ポイント

融資の判断を行うのは、金融機関の決裁者です。融資を行う金融機関が最も気にすることは、融資したお金が利子付きで計画的に返済されるか、という点です。この点は、既存の事業に対する運転・設備資金の融資など、新規事業以外を目的とした融資に関しても同様です。

そこで、以下の4点を含むと良いでしょう。

  1. 動機は適切であるのか
  2. 確実性はどの程度あるのか
  3. 経営改善効果が見込めるのか
  4. 確実な返済は見込めるのか

融資を得るための新規事業企画書の作り方のポイント

動機は適切であるのか

融資を行うことは金融機関側にもリスクが生じることであるため、安易な試みであると判断された場合は、審査に進むことはできません。
そこで、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 新規事業に取り組むことで解決される課題の内容
  • 新規事業が社会や市場、顧客などに対して意義のあることの理由
  • 自社が継続的に取り組む理由

確実性はどの程度あるのか

審査をしてもらうためには、金融機関側が、確実性の見込める事業に対してお金を投資するのだという認識を持つ必要があります。
したがって、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 事業環境の分析結果
  • 市場の規模やターゲットとする顧客のニーズ
  • 自社が供給するモノがターゲットとする顧客から買われる理由
  • 事業の成功確率が高い理由(自身が経験したことのある事業である点など)

重要なことは、希望的観測に基づいたものではなく、再現性の高い経験則や客観的なリサーチ結果や思考に基づいたものであることです。

経営改善効果が見込めるのか

事業に対する融資は、経営改善効果が得られることを前提にして行われます。
現金預金が増えるとなぜ事業状況が改善するのか、明確に述べるため、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 融資を行うことで解決できる課題
  • 融資を行うことで得られる事業成果

事業規模の拡大や財務状態の改善、事業体制の強化など、具体的な改善効果を説明することがベストな対応です。

確実な返済は見込めるのか

融資の実行は、返済が行われることが前提となります。返済が困難であることが初めから明らかである場合は、審査に進むことはできません。
したがって、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 利益率と利子率の比較
  • 新規事業による利益額の予測
  • 財務状態の予測

いずれも客観的な根拠に基づいた内容を数字で表す必要があります。

ターゲットとする顧客のニーズや売れる理由が確実にあり、組織の体制・能力から現実的に実行できる、整合性のある内容でなければなりません。財務状態の変化に関しては、予測損益計算書や予測キャッシュフロー計算書のような形で表すことで、返済余力のあることを説明することが容易になります。

融資を得るための新規事業企画書の構成

事業計画書などの金融機関側が指定した様式がある場合は、その中で新規事業の内容を説明すればよいのですが、指定された様式が無い場合は、独自に作成した新規事業企画書の中で説明を行います。
新規事業企画書を作成するときは、審査者が共通的に知りたいと考えるポイントに対応するために、以下の項目によって構成された内容で作成することが望ましいです。

  • 事業概要(誰に何を売るのか)
  • 新規事業を立ち上げる理由と目的
  • 自社と環境の分析
  • 市場や顧客のニーズ
  • 製品やサービスが売れる理由
  • 事業化のプロセスと展望
  • 売上・費用・収益の予測
  • 財務分析と融資の効果
  • リスク分析

融資を得るための新規事業企画書の書き方例

新規事業を対象とした融資制度を利用する場合の新規事業企画書の書き方について説明します。説明に用いるのは、日本政策金融公庫が実施する「新事業活動促進資金」です。

新事業活動促進資金

新事業活動促進資金とは、経営の多角化や事業転換などの試みを行う中小企業に対して、新規事業化に必要な資金を貸し付ける公的融資制度です。

参考元;https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_sjkakushin_m_t.html

新事業活動促進資金における新規事業企画書の書き方

新事業活動促進資金では、事業計画書という名目の指定様式で、新規事業の内容や経営改善効果の説明を行うことが求められています。

参考元;https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/jigyoukeikaku_181019b.pdf

この様式は、公的金融機関に対して事業資金の融資を申し込むときに作成を求められる一般的な事業計画書と同様の内容であり、事業環境の変化や新規事業の内容、経営課題への対策を一体的に述べたうえで、財務状態の変化を中長期的な予測損益計算書と借入金残高の推移によって表し、資金使途や新規事業における目標内容を詳しく記述する構成になっています。
新規事業の内容に関しては金融機関側の融資担当者との面談時にも詳細な説明を求められるので、参考資料として、市場の分析や販売の予測などを行った結果をまとめたものを準備しておくことが望ましいです。
初めて目にする第三者が要点を理解しやすいように絵やグラフを用いてまとめておくことが効果的です。

補助金を得るための新規事業企画書の作り方ポイント

補助金や助成金は、返済義務がありません。しかし、補助金や助成金にはそれぞれ目的があり、取り組みの趣旨に合致した支援先に対して優先的に資金を提供する傾向があります。

そこで、以下の三点を盛り込むと審査において効果的でしょう。

  1. 取り組みが制度の趣旨に則しているか
  2. 資金使途は適切であるか
  3. 補助金の効果はどの程度あるのか

この内容に関しては、既存の事業を対象とした補助金支給の場合も同様です。

補助金を得るための新規事業企画書の作り方ポイント

取り組みが制度の趣旨に則しているか

補助金に関しては、対象となる目的や内容があらかじめ決められています。目的と合致しない目的や内容の取り組みである場合は、審査に進むことはできません。
そこで、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 制度の目的に則した取り組みであることの根拠
  • 新規事業に取り組みたい理由
  • 新規事業に取り組むことで解決される課題の内容
  • 新規事業の取り組みの概要

資金使途は適切であるか

制度の趣旨と合致をしていても、資金使途(使い道と金額)が適切であると判断されない限り補助金は支給されません。事業の内容を的確に分析し、資金計画を立て、客観的な必要資金の見積りが行えているかどうかが判断されます。
したがって、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 投資を必要とする理由やお金の使い道
  • 金額の算出根拠
  • 市場の規模やターゲットとする顧客のニーズ
  • 自社が供給するモノがターゲットとする顧客から買われる理由
  • 事業成果に見合う投資であることの根拠

金額の算出根拠に関しては、見積書などによるエビデンスを示すことがベターな対応です。

補助金の効果はどの程度あるのか

補助金は、何らかの改善効果が見込まれることを前提にして行われます。事業への取り組みプロセスが明確で、実現性があり、結果の予測に根拠のあることが求められます。
したがって、新規事業企画書の中で、以下の内容を具体的に盛り込むことが効果的です。

  • 補助金の効果が事業に対してどのような良い影響を与えるのか
  • どの程度の収益が見込めるのか
  • 自社の財務状態は、どのように変化していくのか

売上の予測に関しては、市場の規模や顧客のニーズ、売れる理由を根拠に想定する必要があります。財務状態の変化に関しては、中長期的な視点で予測損益計算書を作成し、グラフを用いて可視化する方法が一般的です。

補助金を得るための新規事業企画書の構成

補助金を支給する行政機関などが指定した様式がある場合は、その中で新規事業の内容を説明すればよいのですが、指定された様式が無い場合は、独自に作成した新規事業企画書の中で説明を行います。
新規事業企画書を作成するときは、審査者が共通的に知りたいと考えるポイントに対応するために、以下の項目によって構成された内容で作成することが望ましいです。

  • 事業概要(誰に何を売るのか、事業の目的)
  • 制度の趣旨に合致していることの説明
  • 資金計画と資金の使用用途
  • 市場や顧客のニーズ
  • 製品やサービスが売れる理由
  • 売上・費用・収益の予測
  • 財務分析と補助金の効果

補助金を得るための新規事業企画書の書き方例

新規事業を対象とした補助金制度を利用する場合の新規事業企画書の書き方について説明します。説明に用いるのは、大阪府が実施した「大阪中央地域支援事業助成金」です。

大阪中央地域支援事業助成金

都道府県単位で、管内の中小企業の新規事業への取り組みを支援するための事業が行われており、大阪府も平成19年度から平成28年度までの10年間、地域資源を活用した新しい事業にチャレンジする大阪府下の中小企業者等に事業の立ち上げ経費の一部を助成する補助金事業を行っていました。

参考元;http://www.osaka.cci.or.jp/fund/

大阪中央地域支援事業助成金における新規事業企画書の書き方

大阪中央地域支援事業助成金では、応募申請書と一体になった事業計画書という名目の指定様式で、新規事業の内容や経営改善効果の説明を行うことが求められています。

参考元;https://www.osaka.cci.or.jp/fund/sample2016.pdf

この様式は、中小企業が行う事業を対象とした補助金制度を申し込むときに作成を求められる一般的な事業計画書と同様の内容であり、内容に関しては、返済が必要とされないことで財務状態の変化に関する説明がコンパクトである反面、補助金の使い道(資金使途)や補助金を活用した事業のプロセス(実施計画、実施スケジュール)に関しては詳細な説明が求められます。

さらに、事業のアピールポイントや類似事業との差別的要因、取り組み内容に新規性や革新性、成長性があることに対する自己評価についても、詳細な説明が求められています。

取り組みを行う側が、単なる思い付きではなく、深い検討を重ねたうえで事業を構想化したのだということを審査者が確認する目的があると考えられます。

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