これからの働き方『どうやったらマインド』を提言する、株式会社ぐるなび九州・沖縄ブロック長、福岡営業所長の大塚史也氏にお話をお聞きしました。

お話を伺った方:大塚史也氏

株式会社ぐるなび九州・沖縄ブロック長、福岡営業所長。茨城県出身。大学3年生まで毎年プロ野球のトライアウトを受け、その後ベンチャーに絞って就活を行い、2010年ぐるなび入社。休みの日は繁盛している飲食店巡りをするのが趣味。週に8店舗ほど回ることも。現在は営業所長としてお客さんに喜んでもらうため、従業員が楽しく働けるための環境づくりを推進している。

「どうやったらマインド」自律し真のニーズをとらえる

新卒は挑戦する環境に身を置きたかった

元々大学まで野球部に所属しプロを目指し、大学3年生まではずっと毎年トライアウトを受けていました。しかし経済的にも自分のことだけを考えてもいられないので、自分の好きなことは大学3年生までと決めていました。

それから就活をはじめましたが、プロ野球のトライアウトを受けていたこともあり、安定したキャリアよりは挑戦する環境に身を置きたいと思い、当時はとても厳しいと言われていたベンチャーに入ろうと決めました。

飲食業界に貢献したい

飲食業界に決めた理由は2つあります。

1つ目は茨城出身でちょうどその時、地元の大好きなお店がつぶれてしまいました。そこで飲食店に対して自分が携わり貢献したいと思いました。2つ目はぐるなびのサービスを今ほど理解していなかったのもあり、入れば美味しいものが食べられるのではないかと思って入社しました。

実際に社会人1年目に全部で200店舗くらい飲食店の繁盛店巡りをしました。

考え方が変わった3.11の震災

震災当時は新橋の飲食店に飛び込み営業をしていました。

その時はサウナやカプセルホテルに宿泊していた時もあり、100件に1件まともに話を聞いてもらえるかどうかで、包丁を突き付けられることもありました。

1回包丁を突き付けられて「死ぬか、帰るかしろ」と言われ、「いっそやってください」と言ったら商店街中を追いかけ回されたこともありました。これは後で笑い話になりました。

過酷な状態でしたが新橋も夜になると酔っぱらったサラリーマンが賑わう場所で今も思い入れのある場所です。

しかし2011年3月11日の震災が機に夜になっても誰もいない街になった時期がありました。

客がいなくても賃料や仕入れ等にお金がかかるため、飲食店としてもとてもつらい状況でしたし、何よりいつも賑わう新橋が夜誰もいなくなってしまっているのが悲しかったです。

ぐるなびという媒体を売るのではない 今自分にできることをする

それからぐるなびという媒体そのものを売るスタイルの営業が、今の自分に何ができるのか、今の状態のお店が何をお客さんに提供できるのかを考えるようになりました。

またこの時も飲食店の足取りは少なくなりましたが、コンビニからは食品がなくなっていることに気づきました。食品へのニーズは高まる一方で従来の飲食店に来る余裕がないのではないかと思い、飲食店としてお客さんにできることを一緒に考え、提案し始めていました。

『そんな甘いことはないです』~ある蕎麦屋さんとの出会い

ある蕎麦屋さんが印象にとても残っています。

その蕎麦屋さんは先任の方から引き継いで訪問した店舗でした。震災後でどこの飲食店もつらい状況で一緒にどうしていったら良いか模索していたところに「ぐるなびさんのサービス使ってるけど全然人が入らないし、蕎麦屋さん閉じてコンビニの店長でもやろうかと思っている」と言われました。

今までなら特に否定もしなかったと思うのですが、他の飲食店の苦労やお客さんに対して関係構築の方法を模索しているところで、その店主の姿勢に怒りを覚え、「何を言っているんですか、そんな甘いことはないです。」と言って始めてクライアントの言ったことを否定しました。

しかしそれをきっかけに店主は「そうだよね」と言い心を開き始めてくれました。

今の経営状況や苦労している点などを話し始めてくれました。

それから一緒になってどうやったら良くしていけるかを考え始めて最終的に200万円ほどの売上が900万円まであがりました。

その時に自分がいてくれたから頑張れたと感謝されたのが今でも印象的です。

福岡に移動した今でも自分が信じる人のためにこれからもやっていきたいと思い、この店舗は自分が担当しています。

お客さんに喜んでもらえることを従業員全員が考える。「全員力」

運動部だったのですが、階層構造のある先輩後輩関係は嫌いでした。

飛び込み営業も本当はあまり好きではないです。

しかし一方で数字は上げないといけない現状があるので、部下がそのような環境の中でどうやったら働きやすいかの環境を作るところをやっていきたいと思っています。

1人が一方的にノウハウを教えるのではなく、社内全体で問題を共有して解決策を考える中で、従業員1人1人が1つの問題に対して向き合い、相互に考えを発信する環境が必要だと思っています。

ステークホルダーだけでなく従業員も豊かにできる立場でありたい

ぐるなびはまだまだ激務な状況ですが、自分がお客さん1人1人に向き合う中で構築してきた信頼関係の重要さを伝えつつも、従業員1人1人がどうしたいのかをその人に合わせて一緒に考えることを大事にしています。その1人1人と向き合う中で大塚さんと関わって人生が変わったと言われる瞬間がとても嬉しいです。

またこのような自分の問題の向き合い方を実践し、行動で示すことで社内全体の当事者意識を高めていきたいです。

これからのワークスタイル『どうやったらマインド』自律し真のニーズを見つける

人のせいにせず自分がどうするのかを考えることが重要です。

仕事は我慢した対価でお金をもらうのではなく、問題1つ1つに対して利他の意識で自分に提供できるものは何なのかを常に考える人が増やしていきたいと考えています。

それは場所に応じて目の前の人に向き合い、その人のニーズのうち自分が力になれることは何かを考えることを指します。マーケティングをお客さんから社内の社員に対して、ある時は家族へと広げていったようなイメージと言えるかもしれません。

もちろんやれることには限りがあるので社内で完結する場合は社内で、しない場合は外部のプロ人材と協業の必要性はありますが、社会に対して自分には何ができるか考えてやれることを仕事と生活の境界なく仕事以外の場面でも常にやっていくことが重要になります。

取材・記事作成:金丸 嵩